「最後のロータリーモデル」と称されるRX-8は、流麗なフォルムとスムーズな走行感覚が人気のスポーツカーです。
「若者の車離れ」と囁かれるこの頃ですが、このモデルに憧れる若人もけっこういるんですよね。
優れたデザインもそうですが、スポーツカーなら走行性能にも注目したいところ。
というわけで今回は、ロータリースポーツの最終型「RX-8」について、加速性能に注目して解説していきたいと思います。
エンジン性能や0-100km/h加速タイムを参考にしながら、ライバル車とも比較してみたので、ぜひご覧になってください。
RX-8の加速性能
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流麗なフォルムとロータリーエンジン特有の走行感が人気のRX-8ですが、こと直線加速については「本格スポーツカーには及ばない」とよくいわれます。
もちろん、乗用車とは比較にならないほど速いのですが、あくまでも「走ってる感を楽しむモデル」という意見が多いですね。
これを踏まえたうえで、RX-8の加速性能を順序だてて解説していきたいと思います。というわけで、まずはこちらの諸元表をご覧ください。
項目 | 諸元 |
種類 | 水冷式直列2ローター |
排気量 | 1,308cc |
最高出力 | 215PS/7,450rpm |
最大トルク | 22.0kgf・m/5,500rpm |
車両重量 | 1,340-1,360kg |
PWR | 6.28kg/PS |
TWR | 61.3kg/kgf・m |
0-100km/h | 6.8秒 |
※水冷、ロータリー、エンジンの詳細は以下の記事をご参照ください。
水冷エンジンのメリット5つ!バイクだけでなく車にも搭載されてる?!ロータリーエンジンとは?仕組みのメリット5つとデメリット6つを解説!補足させていただくと、「エンジン種類~車重」の項目は公式カタログから引用し、「PWR・TWR」は平均重量から算出しました。「0-100km/h加速」のタイムは、オーナーさんの口コミを元にしています。
それでは、具体的な評価を見ていきましょう。
0-100km/h加速タイムの評価
まずは、0-100km/h加速のタイムからチェックしてきましょう。RX-8の加速タイムですが、おおむね「6.8秒」といわれています。なかには、もっと速いタイムで走っている人もいるようですが、おそらくチューニングを施しているのでしょう。
このタイムは比較的速い部類に入るのですが、第一線のスポーツカーと比較すると、やはり物足りない数値ではあります…。
参考までに、こちらにトヨタの人気モデルのタイムをまとめてみたので、参考にまでにどうぞ。
車種 | 0-100km/h加速タイム |
マークX(3.5L) | 5.9秒 |
86 | 7.3秒 |
クラウン(ターボ) | 7.5秒 |
アルファード 3.5L | 8秒 |
プリウス | 9.5秒 |
ヴォクシー | 11秒 |
なお上記の表にある車種の加速性能については以下の記事で解説しているので、興味のある方はこちらもあわせて参考にしてみてください。
マークXは速いのか?加速性能から0-100km/h加速タイムまで解説!クラウンの加速性能を解説!0-100km/h加速タイムはどのくらい?アルファード/ヴェルファイアの加速性能を解説!0-100km/h加速タイムはどのくらい?プリウスの加速性能を解説!0-100km/h加速タイムはどのくらい?エンジン性能の評価
タイムはまずまずといったところですが、エンジン性能はどういった特性をもつのでしょうか?出力・トルクをチェックしてみたいと思います。
2.0L NAクラスのパワー
車好きからは「おにぎり」とも呼ばれるロータリーエンジンは、独特な機構から繰り出される出力やサウンドが秀逸です。
排気量としては1.3Lなのですが、特殊なつくりによって1.5~2倍の排気量に相当するパワーを発揮します。
ざっくりいうと、通常のレシプロエンジンがクランクシャフト2回転で1回燃焼するのに対し、ロータリーエンジンは1回転のうちに3回も燃焼するんです。つまり、通常の1.3Lクラスの3倍近いパワーを取り出せるということ。
レシプロエンジンとは?種類は?仕組みや構造まですべて解説!これによって、「215PS」「22.0kgf・m」という2.0Lスポーツに匹敵する出力を得ているのです。際立って強力ではありませんが、まずまずのスペックといえるでしょう。
ロータリーエンジンの「異質」な加速感
RX-8の加速感は「異質」という一言につきます。こればかりは運転してみないと掴みにくいのですが、簡単にいうと「常にフラットな加速感」というイメージ。
「ロータリー×NA」という組み合わせによって、回転数に応じてどんどんトルクが盛り上がってくるんですよ。
NAエンジン(自然吸気エンジン)とは?メリット5つ!音が最強の魅力?!通常、トルクを強く発揮できる回転領域というものがあるため、あるポイントに達したら加速力が上がりますよね?ターボ車はとくに顕著といえます。
いっぽう、RX-8の場合はトルクが上下せず、抑揚のないままレブリミットまで回り続けるんです。言い換えると、常にトルクのおいしい部分を使えるということ。
爆発的な加速こそありませんが、このフラットな加速が一部のファンを虜にしているのですね。
ボディ性能の評価
加速性能を語るなら、エンジンだけでなくボディのつくりこみにも注目してみましょう。
軽量性はなかなか優秀
4人乗りとしても活躍するRX-8ですが、その重量はなんと1,340kg。小型軽量なロータリーエンジンを積んでいるので、2.0Lセダンなどと比較するとずいぶん軽いんですよ。
加えて、フロントミットシップに配しているので、前後重量比は5:5という数値です。つまり、軽量性や重量バランスという点で見ると、けっこう優秀なモデルなんですね。
車の軽量性を示す指標に、「PWR(パワーウェイトレシオ)」「TWR(トルクウェイトレシオ)」というものがあります。簡単にいうと、出力・トルクに対するボディ重量のことですね。「数字が小さいほど加速が速い」と考えるとわかりやすいでしょう。
RX-8はというと、PWRが「6.28kg/PS」、TWRが「61.3kg/kgf・m」という数字です。2ドアスポーツやハイパワーモデルと比べると劣りますが、まずまずの数値といえます。
これについても、トヨタの人気モデルを一覧にしてみたので、よかったら参考にしてください。
車種 | PWR | TWR |
マークX(3.5L) | 4.87[kg/PS] | 40.1[kg/kgf・m] |
86 | 6.15[kg/PS] | 58.9[kg/kgf・m] |
クラウン(ターボ) | 6.90[kg/PS] | 47.3[kg/kgf・m] |
アルファード (3.5L) | 7.14[kg/PS] | 58.4[kg/kgf・m] |
プリウス | 13.98[kg/PS] | 94.5[kg/kgf・m] |
ヴォクシー | 10.33[kg/PS] | 79.7[kg/kgf・m] |
安定した重量配分バランス
RX-8の重量については、前後重量のバランスにも触れておきましょう。
前述のとおり、ロータリーエンジンは同程度のパワーのエンジンと比較すると、小型かつ軽量なことが特徴といえます。このエンジンを、フロントミットシップにレイアウトしているので、前後重量が5:5という比率に保たれているんです。
したがって、フロントに重量のある通常のFRよりも、後輪にかかるトラクション(荷重)が大きくなります。
これは言い換えると、リアタイヤが強くグリップできるということ。コーナーリングもさることながら、加速においても有利な要素となるのです。
もしRX-8を買おうと考えているなら、あわせて正しい値引き交渉のやり方も覚えておくといいですよ。
このやり方を知らないと最大60万円以上も損しますよ。詳しく知りたい方は、下記の『たった1分で車を60万円値引きできる裏技』のページをご覧ください。 たった1分で車を60万円値引きできる裏技!安く購入する秘密のテクニックとは?!RX-8の実際の加速感
数字だけではいまいちピンと来ないと思うので、TwitterやYouTubeも参考にしてみましょう。オーナーさんの投稿をいくつかピックアップしてみたので、実際の加速感をご覧ください。
Twitterで加速感をチェック
言うならば、
エイトに加速性能を求めるのは無駄!
だからセブンに求める!みたいなノリよね、すーごく分かった←— しんじぃ ☞🍔 (@SinInsieme_rx8) 2018年12月30日
SNSの反応を見ると、半数がこういった内容のものです。つまり、「加速性能を第一に求めるなら、その他のモデルに乗る」ということですね。
加速の性能について、本格的なスポーツ走行を想定されたモデルと比べると、やはり見劣りしてしまうのが現実。前後の重量バランスなどは優れているのですが、加速を高めるなら、エンジンの出力がもう少し欲しいところ。
たとえば前身のRX-7なんかは、車重1,280kgに対して、最高250PS、最大30kgf・mのパワーを発揮しますからね。
ロータリーエンジンに加速性能を求める人は、ほとんどがRX-7に手を出すでしょう。
RX-8を遅いって言う人に、「サーキットのタイム見る限りそんなに遅くないと思うんですけどね」って言っても大体は理解してもらえない。
じゃあ何で速さってものを言ってるの?
街乗りに速いも遅いもないし、0-400とかなら遅いけど、そもそも走るステージ違うし。
とりあえず、かっこいい。 pic.twitter.com/ONZiUX8zPh— 永田 光 (@NA_0330) 2017年6月24日
いっぽうで、こういった意見も多く見受けられます。
こちらのオーナーさんはRX-8でサーキット走行をしているようですが、実際にコースを走らせると「評判ほど遅くない」と感じているのだそう。コーナーリングには強いので、トータルで考えると走行性能は申し分ないとのこと。
たしかに、本当に加速を求めるなら、「4WD×ハイパワーターボ」のインプレッサやランサーエボリューションを選びますよね。そういった意味では、そもそも比べることがおかしいのでしょう。
なおインプレッサ、ランエボについては以下の記事で取り上げているので、興味のある方はこちらもあわせて参考にしてみてください。
インプレッサは速いのか?加速性能から0-100km/h加速タイムまで解説!ランエボは速いのか?加速性能から0-100km/h加速タイムまで解説!医者をRX-8に乗せて本気で走ったら
加速感、ブレーキの感じ、車線変更の滑らかさ、9000rpm付近の音、力強さ、全部が気持ちいいと言っていた。
ど本質を突かれて、間違い無いなと確信した。
いいクルマでいい運転ができたららとんでもなく気持ちいい状態が生まれる。
これをちゃんと世に伝えたい。 pic.twitter.com/wIP0V3Atkp
— コガ🚗運転上手にしたげる屋🌹 (@akinarikoga) 2019年1月9日
加速について「性能」ではなく「体感」という部分で見ると、この車は秀逸だと思います。
何がいいって、加速フィーリングが滑らかで気持ちいいんですよ。これについてはエンジン性能の項で解説したとおりですね。
心地いいサウンドを響かせながら、高回転まで淀みなくトルクが発揮される感覚は、多くのファンを虜にしています。
ブレーキやコーナリングなどもスムーズにこなすので、クルージングを心の底から楽しめる一台なのです。
You Tubeで加速感をチェック
こちらの動画は見栄えよく編集されているので、RX-8がとてもかっこよく見えます。無論、もともとかっこいい車ではあるのですが。0-100km/h加速については、開始40秒ほどから測定が始まっていますね。
タイムは「8.136秒」とのことで、先ほど紹介したタイムよりも遅い結果となっています。これは、使われているのが前期型モデルとういのが原因なのでしょうか?
探してみたところ、後期型モデルの0-100mkm/h加速を測定した動画を発見しました。こちらでは加速タイムが6.8秒となっていますね。
後期型は前期型よりもパワーアップしているので、このような結果になったのでしょう。RX-8でも加速性能を意識したいという方は、なるべく後期型を選んだ方がいいようです。
RX-8の加速性能を他の車と比較
それでは、実際に国産のスポーツモデルと比較してみて、その実力を測ってみたいと思います。
今回比較して参考にするのは、現行のスポーツモデルであるトヨタ「86」、マツダ「ロードスター」、スバル「WRX」の3台です。
トヨタ 86
まずは、NAの4シーターFRスポーツという共通点を持つ「86」から比較してみます。
年式はずいぶん異なりますが、スタイリングも似ていますし、加速性能はどちらが上手なのでしょうか?
項目 | 諸元 |
種類 | 水平対向4気筒DOHC |
排気量 | 1,998cc |
最高出力 | 200PS/7,000rpm |
最大トルク | 20.9kgf・m/6,400-6,600rpm |
車両重量 | 1,270kg |
PWR | 6.35kg/PS |
TWR | 60.7kg/kgf・m |
0-100km/h | 7.6秒 |
0-100km/h加速のタイムで比べると、RX-8のほうがわずかに速いですね。1秒近い差があるので、単純な発進加速はRX-8が勝っていると考えて間違いないでしょう。
ポイントはトルク性能にあるようです。TWRで見ると若干優れているものの、86が最大トルクを発揮するのは6,400-6,600rpmと、RX-8よりも1,000rpmも上の領域なんですよ。加えてPWRも優れていますしね。
なお86については以下の記事でも取り上げているので、興味のある方はこちらもあわせて参考にしてみてください。
トヨタ86(ハチロク)の試乗レビュー・感想!乗り心地はいかに?!【画像/写真】トヨタ86の内装/インテリア!運転席周りや後部座席から荷室/トランクまで紹介!マツダ ロードスター RF
マツダの現在のフラッグシップスポーツといえば、ご存知「ロードスター」です。
同社のモデルですが、どちらが速いのか気になりますよね。パワーが近い2.0Lの「RF」モデルと比較してみたいと思います。
項目 | 諸元 |
種類 | 水冷直列4気筒DOHC16バルブ |
排気量 | 1,997cc |
最高出力 | 184PS/7,000rpm |
最大トルク | 20.9kgf・m/4,000rpm |
車両重量 | 1,100kg |
PWR | 5.98kg/PS |
TWR | 52.6kg/kgf・m |
0-100km/h | 7.4秒 |
0-100km/h加速を見比べてみると、こちらもRX-8のほうが優れたタイムを出していますね。PWRではロードスターのほうが優れた数値なのですが、これはトルクというよりエンジンの特性に要因があるようです。
ボディが軽量ではあるものの、ロードスターの最高出力は184PSと、RX-8より30PS劣る数値。加えてトルクを4,000rpmを使い果たしてしまうので、高回転域ではパワー不足になってしまうのでしょう。
出足の速さは軽量なロードスターが有利ですが、もう少し先までの加速となるとRX-8のほうが上手といえますね。
なおロードスターについては以下の記事でも取り上げているので、興味のある方はこちらもあわせて参考にしてみてください。
ロードスターの加速性能を解説!0-100km/h加速タイムはどのくらい?ロードスターを買って後悔している人はいるか?実態を調査してみた!スバル WRX STI
最後に比較するのは、国産スポーツのなかでも最高峰に位置するスバル「WRX」。いわずとしれたハイパフォーマンスカーですね。
RX-8よりも加速性能に優れていることは間違いありませんが、どのくらい差があるのか見極めてみましょう。
項目 | 諸元 |
種類 | 水平対向4気筒DOHC16バルブ ICターボ |
排気量 | 1,994cc |
最高出力 | 329PS/7,200rpm |
最大トルク | 44.0kgf・m/3,200-4,800rpm |
車両重量 | 1,480kg |
PWR | 4.50kg/PS |
TWR | 33.63kg/kgf・m |
0-100km/h | 4.7秒 |
WRXの0-100km/h加速はまさに圧巻のタイムですね。ターボと4WDで武装しているので、RX-8より速いことは当たり前ですが、100km/hへ到達するのに5秒かからないんですよ。
最高出力は329PS、最大トルクは44.0kgf・mと、トルクにいたってはRX-8のば倍の数値を発揮します。これだけエンジンがハイパワーなので、1,500kg近い車重でもPWR・TWRも大きく上回る性能になるのです。
加えて、四輪にバランスよく駆動力を伝える機構なので、発進時のグリップ力が文字通り桁違い。これによって、0-100km/hタイムで2秒もの差を出しているんですよ。
なおWRXについては以下の記事でも取り上げているので、興味のある方はこちらもあわせて参考にしてみてください。
WRX STIの加速性能を解説!0-100km/h加速タイムはどのくらい?スバルWRXとはどんな車か?読み方から9つの特徴まで解説!RX-8はバランスに優れた好モデル
というわけで、RX-8の加速性能についての解説は以上になります。
冒頭でネガティブな発言をしましたが、けっして加速が遅いわけではありません。ただ、「加速性能を第一に考えて乗る車ではない」ということなのです。
ブレーキ性能やコーナリング性能には目を見張るものがあるので、トータルバランスを考えれば、かなりおすすめのモデルですよ。
なおRX-8については以下の記事でも取り上げているので、興味のある方はこちらもあわせて参考にしてみてください。
RX-8は故障が多い?壊れやすいのか故障率をもとに解説!RX-8は雪道に弱い?雪道走行の性能について分析してみました!