2018年のフルモデルチェンジによって、15代目へと生まれ変わったトヨタ「クラウン」。
「マジェスタ」「アスリート」「ロイヤルサルーン」がラインナップからなくなり、シリーズ展開が大きく変更されたモデルでもあります。
そして、新しくなったパワートレインも大注目の的です。
というわけで今回は、トヨタが誇る国産上級セダン「クラウン」について、加速性能に注目して解説していきたいと思います。
エンジン性能や0-100km/h加速タイムを引用し、ライバル車とも比較していくので、気になる方はぜひ参考にしてみてください。
クラウンの加速性能
2018年に15代目へと生まれ変わったクラウンですが、モデルチェンジによって走行性能が格段に進化したと話題になっています。
とりわけ加速については、「上位モデルはスポーツカー並みの性能」とまでいわれているんですよ。
解説していくにあたり、こちらに「2.0Lガソリンターボ」「2.5Lハイブリッド」「3.5Lハイブリッド」の3モデルの主要諸元をまとめてみました。これをもとにして、まずは数字から加速性能を評価していきたいと思います。
項目 | 諸元 | ||
種類 | 直列4気筒DOHC | ICターボ 直列4気筒DOHC+モーター | V型6気筒DOHC+モーター |
排気量 | 1,988cc | 2,487cc | 3,456cc |
最高出力 | 245PS/5,200-5,800rpm | エンジン:184PS/6,000rpm モーター:143PS | エンジン:299PS/6,600rpm モーター:180PS |
最大トルク | 35.7kgf・m/1,650-4,400rpm | エンジン:22.5kgf・m/3,800-5,400rpm モーター:30.6kgf・m | エンジン:36.3kgf・m/5,100rpm モーター:30.6kgf・m |
車両重量 | 1,690-1,730kg | 1,730-1,890kg | 1,860-1,900kg |
PWR | 7.06kg/PS | 10.27kg/PS | 6.35kg/PS |
TWR | 48.46kg/kgf・m | 61.76kg/kgf・m | 62.09kg/kgf・m |
0-100km/h | 7.5秒 | 8.4秒 | 6.5秒 |
※V型6気筒、直列4気筒、DOHC、エンジンの詳細は以下の記事をご参照ください。
V6エンジンの特徴!どんな音?搭載車を日本車/外車の車種からそれぞれ紹介!直列4気筒エンジンの特徴!どんな音?搭載車を日本車/外車の車種からそれぞれ紹介!DOHCエンジンとは?仕組み/構造は?ツインカムとの違いとは?!補足させていただくと、「エンジン種類~車重」の項目は公式カタログから引用し、「PWR・TWR」は平均重量から算出しました。「0-100km/h加速」のタイムは、オーナーさんの口コミを元にしています。
0-100km/h加速タイムをチェック
さっそく見ていくのは、0-100km/h加速のタイムです。日常生活でここまで加速する機会は考えられませんが、性能を見るうえではてっとり早い指標ですからね。
まず、ガソリンモデルは「7.5秒」ということで、ターボモデルだけあり、なかなかの速さです。上級セダンの小排気量モデルとしては、及第点は得られる性能といえるでしょう。
続いて、2.5Lハイブリッドモデルですが、タイムはやや劣る8.4秒。現行クラウンとしては唯一4WDシステム「E-FOUR」が設定されているモデルですが、環境性能を重視してか、加速性能は標準的なものですね。
そして、3.5Lハイブリッドモデルですが、なんと「6.5秒」という驚異的なタイムを記録しています。たしかにこれなら、スポーツカー並みといっても過言ではありせんね。
タイムだけではイメージできない方は、こちらのトヨタ車の一覧を参考にしてみてください。
車種 | 0-100km/h加速タイム |
マークX(3.5L) | 5.9秒 |
ハリアー(ターボ) | 7.0秒 |
86 | 7.3秒 |
アルファード 3.5L | 7.5秒 |
プリウス | 9.5秒 |
ヴォクシー | 11秒 |
なお上記の表にある車種の加速性能については以下の記事で解説しているので、興味のある方はこちらもあわせて参考にしてみてください。
マークXは速いのか?加速性能から0-100km/h加速タイムまで解説!ハリアーの加速性能を解説!0-100km/h加速タイムはどのくらい?アルファード/ヴェルファイアの加速性能を解説!0-100km/h加速タイムはどのくらい?プリウスの加速性能を解説!0-100km/h加速タイムはどのくらい?エンジンの性能をチェック
これだけの加速性能を誇るのは、もちろんエンジンに秘密があります。最高出力と最大トルクから、その性能を評価してみましょう。
3.5Lハイブリッドはスポーツカーに匹敵するパワー
2.0Lガソリンモデルと2.5Lハイブリッドモデルは、それぞれ「245PS、35.7kgf・m」「184PS、22.5kgf・m」という数値。
モーターも加味すると、ハイブリッドモデルの出力はもう少し高くなるかと思います。いずれにせよ、強力なユニットといえるでしょう。
しかしながら3.5Lハイブリッドモデルは、エンジンの「299PS、36.3kgf・m」だけでも驚異的にも関わらず、モーター単体でも「180PS、30.6kgf・m」という数値なのです。これなら0-100km/h加速のタイムにも納得ですよね。
レクサス「LC」と共通のパワートレイン
12代目~先代のクラウンは、3.5Lハイブリッドモデルに「2GR-FSE」エンジンを搭載し、「1KM」モーターを組み合わせていました。これはレクサス「GS」などと共通のパワートレインですね。
レクサスGSの試乗レビュー!乗り心地の感想・インプレッション!対して現行の15代目クラウンは、「8GR-FXS」エンジンに「2NM」モーターを組み合わせているんです。このパワートレインは、2019年現在でレクサス「LC500h」とクラウンにしか搭載されていません。
従来のパワートレインとの大きな違いは、モーターを燃費性能ではなく、動力性能の底上げのために採用している点にあります。とはいえ、エンジンだけで走行するモデルよりも環境性能は高いですよ。
ちなみにLC500hの0-100加速タイムは「4.7秒」といわれています。1,300万円超えの最上位クーペのパワートレーンが導入されているんですから、現行クラウンは従来と一線を画すモデルといえるでしょう。
ボディの性能をチェック
エンジンについて目を通したところで、続いてボディのつくり込みもチェックしてみたいと思います。
フルモデルチェンジで変化した、「軽量性」と「トランスミッション」に着目してみましょう。
PWR・TWRから見る軽量性
「PWR(パワーウェイトレシオ)」「TWR(トルクウェイトレシオ)」という言葉がでてきましたが、あまりピンとこない方もいらっしゃるかもしれませんね。
これはエンジン性能から見たボディ軽量性を指すもので、車両重量を最高出力・最大トルクで割ることで求められます。つまり簡単にいうと、「数字が小さいほど加速が速い」ということです。
2.0Lガソリンは「7.06kg/PS、48.46kg/kgf・m」とまずまずの数値。2.5Lハイブリッドは「10.27kg/PS、61.76kg/kgf・m」と、上級セダンとしては少し低めです。
お待ちかね、3.5Lハイブリッドは「6.35kg/PS、62.09kg/kgf・m」という数値になります。エンジン単体でも十分強力ですが、モーターも合わせて考えたら「5.8kg/PS、40kg/kgf・m」は超えるでしょう。数値だけを見ると、これはスポーツカーのそれです。
ちなみに、先ほどのトヨタ車の0-100km/h加速一覧を、PWR・TWRで書き換えるとこうなります。
車種 | PWR | TWR |
マークX(3.5L) | 4.87[kg/PS] | 40.1[kg/kgf・m] |
ハリアー(ターボ) | 8.66[kg/PS] | 56.0[kg/kgf・m] |
86 | 6.15[kg/PS] | 58.9[kg/kgf・m] |
アルファード (3.5L) | 7.14[kg/PS] | 58.4[kg/kgf・m] |
プリウス | 13.98[kg/PS] | 94.5[kg/kgf・m] |
ヴォクシー | 10.33[kg/PS] | 79.7[kg/kgf・m] |
マルチステージハイブリッド
さらに細かい点を見ると、トランスミッションにも従来との変更点があります。
通常、ハイブリッドモデルというと、CVTをトランスミッションに採用するイメージがありますよね?
ところがクラウン3.5Lには「マルチステージハイブリッド」という、LS500hと共通のユニットが搭載されているんですよ。
レクサスLSの試乗レビュー!乗り心地の感想・インプレッション!CVTは無段階でギア比を高めることで燃費が向上する一方、パワフルさに欠けることが難点でした。対してマルチステージハイブリッドは、電動で10段階のギアチェンジを行うので、中~高回転域でもモーターの駆動力を活躍させることができるのです。
関係者いわく「130km/hまでモーターのパワーが発揮される」とのこと。単にモーターが強力なだけでなく、駆動部分にも工夫が施されているんですね。
クラウンの実際の加速感
数字だけではいまいちピンと来ないと思うので、TwitterやYouTubeも参考にしてみましょう。興味深い投稿をいくつかピックアップしてみたので、実際の加速感をご覧ください。
Twitterで加速感をチェック
たぶん初めてクラウン乗った訳だけども、もうすごいとしか言い表せません笑
2.5Lとはいえ加速は力強かった🙄 この上に3.5Lがあると思うと…
なんと言っても静粛性と乗り心地、直進安定性は凄まじい…!大阪〜名古屋間で途中峠道通ったけど安定感ありすぎて…過去乗った車どれよりも峠道が楽しかった☺️— こへ (@rentalcar_otaku) 2018年12月25日
こちらの投稿者さんは、2.5Lハイブリッドモデルに試乗されたようですね。力強い加速を受けて、「ものすごいとしか言い表せない」と感想を残しています。
静粛性と乗り心地が優れているだけでなく、安定性も抜群なので、峠道でもストレスを感じないんですよね。さすがジャパニーズラグジュアリーというだけあります。
3.5L V6+マルチステージHVの新型クラウンがエンジン出力299psのモーター出力180psでシステム出力が359ps。
同じ条件で車重が約2000kgになるLC500hで0〜100km/h加速が約4.7秒だから車重が1700kg後半ぐらいのクラウンだと0〜100km/h加速は4.4秒あたりいくんじゃないか? pic.twitter.com/YWhWYL84fl
— いろは6 (@Kaz3647M3) 2018年6月17日
LC500hは共通のパワートレインを採用しているのですから、3.5Lハイブリッドの加速性能が並みなわけありません。
クラウンのほうが車重が軽いことから、少し前は「LC超えの加速」とも噂されていました。
実際には、ボディ剛性や空気抵抗(Cd値)、そしてトランスミッションの構造が異なるため、クラウンのほうが加速は劣るわけですが、それだけのポテンシャルを秘めてるというのは男のロマンですよね。
最近、クラウンのCMでニュルで鍛えたというのが流れている。シビック タイプRとかなら、購入の評価に入れるが、クラウンにサーキット走行性能は必要ない。クラウンは乗り心地と静粛性が命、サーキットに合わせてサスやダンパーが硬めの設定なら本末転倒、暴走族のシャコタンと同レベルです。
— ayama (@ayamasan) 2018年9月6日
いっぽうで、ちょっと辛口な意見もいくつか見られます。内容は主にこのようなもので、ようするに「クラウンは加速よりも乗り心地」ということですね。
実は現行型へ移行したことで、加速性能は向上したものの、乗り心地が多少悪くなってしまったのです。
グレードやシルエットの大幅な変更も合わせて考えると、ターゲットをより若年層に移す狙いなのでしょう。
You Tubeで加速感をチェック
まずは、2.0Lガソリンターボモデルからご覧いただきましょう。こちらはメーターを撮影した動画で、開始から1分10秒で0-100km/h加速の計測が始まります。
計測の結果、メーター推移では「7.49秒」、加速から「8.16秒」というタイムとなっています。2.0Lのミドルクラスセダンとしては、なかなかな加速性能ですね。
それでは3.5Lハイブリッドの0-100km/h加速…といきたいところですが、参考になる動画が投稿されていませんでした。そのため、こちらのインプレッション動画をご覧ください。
レーシングドライバーであり自動車評論家でもある中谷明彦氏がおっしゃっているように、このモデルは「パワーがものすごい」の一言につきます。
最上位グレードとしてはヤンチャな気もしますが、私個人としては、この攻めた設定が好きですね。
もしクラウンを買おうと考えているなら、あわせて正しい値引き交渉のやり方も覚えておくといいですよ。
このやり方を知らないと最大60万円以上も損しますよ。詳しく知りたい方は、下記の『たった1分で車を60万円値引きできる裏技』のページをご覧ください。 たった1分で車を60万円値引きできる裏技!安く購入する秘密のテクニックとは?!クラウンの加速性能を他の車と比較
クラウンの加速感については一通り解説が終わりました。続いては、ライバルにあたるモデルと、その実力を比較してみたいと思います。
今回比較してみるのは、クラウンと同じくミドルクラスに該当するメルセデスベンツ「Cクラス」、アウディ「A4」、日産「フーガ」の3台です。
メルセデスベンツ Cクラス 4MATICアバンギャルド
輸入プレミアムセダン代表として、クラウンとよく比較されるのが「Cクラス」です。そのなかでも、価格がほど近い「4MATICアバンギャルド」と加速性能を比べてみましょう。
項目 | 諸元 |
種類 | 直列4気筒DOHCターボ |
排気量 | 1,496cc |
最高出力 | 184PS/5,800-6,100rpm |
最大トルク | 28.6kgf・m/3,000-4,000rpm |
車両重量 | 1,550kg |
PWR | 8.42kg/PS |
TWR | 54.20kg/kgf・m |
0-100km/h | 8.1秒 |
1.5Lと一回り小さいことから、0-100km/h加速は「8.1秒」というタイムです。ターボ×4WDということですが、排気量の差から、クラウンのガソリンモデルよりやや劣る加速性能といえます。
エンジンの性質が近いことから、数値で単純比較すればどちらか上がわかりますね。Cクラスは「184PS、28.6kgf・m」というエンジン性能ですが、クラウンよりも数値は低いです。
ボディは軽量なものの、PWR・TWRが「5.42kg/PS、54.20kg/kgf・m」とクラウンより劣っていることからも、加速性能の優劣は簡単に判断できますね。
なおベンツについては以下の記事でも取り上げているので、興味のある方はこちらもあわせて参考にしてみてください。
ベンツは新車/中古でいくらで買えるか?全車種の価格を車検費用とともに解説!壊れやすい?ベンツは故障が多いのか故障率の実態とは?!アウディ A4 2.0TFSI クワトロスポーツ
続いて比較してみるのは、アウディのミドルクラスセダン「A4」です。
2.0Lターボということでクラウンとは同格ですが、4WDという点でA4のほうが有利に思えますが、どういった結果になるのでしょうか。
項目 | 諸元 |
種類 | 直列4気筒DOHC16バルブICターボ |
排気量 | 1,984cc |
最高出力 | 252PS/5,000-6,000rpm |
最大トルク | 37.7kgf・m/1,600-4,500rpm |
車両重量 | 1,610kg |
PWR | 6.39kg/PS |
TWR | 42.71kg/kgf・m |
0-100km/h | 5.8秒 |
まず0-100km/h加速のタイムですが、A4は「5.8秒」という非常に優れた数値を計測していますね。欧州車はメーカーから公称されることが多いので、間違いないでしょう。
A4の性能を見てみると、「252PS、37.7kgf・m」「6.39kg/PS、42.7kg/kgf・m」とクラウンよりも強力なことが一目瞭然。加えて、駆動方式は4WDですからね。
これなら0-100km/h加速のタイムもうなずけます。したがって、A4はクラウンのガソリンターボモデルより優れた加速性能といえます。
なおアウディについては以下の記事でも取り上げているので、興味のある方はこちらもあわせて参考にしてみてください。
アウディが高い3つの理由!価格が高額な車種ランキングとともに解説!壊れやすい?アウディは故障が多いのか故障率の実態とは?!日産 フーガ 370GT FOUR
最後に比較するのは、日産のプレミアムセダン「フーガ」です。価格帯とキャラクター、そしてグレード展開において、国内では一番のライバル車種にあたるのがこのモデル。
上位グレード「370GT FOUR」と3.5Lハイブリッドの加速を比べてみましょう。
項目 | 諸元 |
種類 | V型6気筒DOHC+モーター |
排気量 | 3,498cc |
最高出力 | エンジン:306PS/6,800rpm モーター:68PS |
最大トルク | エンジン:35.7kgf・m/5,000rpm モーター:29.6kgf・m |
車両重量 | 1,820-1,870kg |
PWR | 5.95kg/PS |
TWR | 50.98kg/kgf・m |
0-100km/h | 5.5秒 |
フーガの0-100km/h加速タイムですが、圧巻の「5.5秒」をマークしていますね。この加速は、まさしくスポーツカーの領域です。クラウンも強力な加速を発揮しますが、フーガは一段上の加速性能と考えていいでしょう。
見比べてみると、まずエンジン単体のパワーがクラウンを上回っていますね。モーターの駆動力は劣るものの、PWR・TWRで見てもクラウンより優れた数値を発揮しています。
加えて、駆動方式にも大きな差があります。4WDのフーガ3.5に対して、クラウン3.5にはFRの設定しかありません。もし4WDがラインナップされていたら勝負はわかりませんが…。
クラウンは走行性能と質感を備えた優秀なセダン
というわけで、クラウンの加速性能についての解説は以上になります。
日本では持て余すほどのパワーを備えた現行クラウンですが、刷新されたエクステリアとエンジン性能は、男心をくすぐりますよね。
速い上級セダンを求めるなら、間違いなくおすすめの一台といえるでしょう。
なおクラウンについては以下の記事でも取り上げているので、興味のある方はこちらもあわせて参考にしてみてください。
新型クラウン(ハイブリッド/ターボ)の試乗レビュー!乗り心地の感想・インプレッション!【画像/写真】新型クラウンの内装/インテリア!運転席周りや後部座席から荷室/トランクまで紹介!