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レシプロエンジンとは?種類は?仕組みや構造まですべて解説!

よく自動車のエンジンのことを「レシプロエンジン」などと呼ぶことがありますが、その本当の意味をご存じですか?

車のエンジン、ガソリンエンジン、などといった意味で普段使ってはいませんか。

今回は聞きなれているけど意味がイマイチな、レシプロエンジンについてご説明しましょう。

レシプロエンジンとは

レシプロエンジン
レシプロエンジンは英語では「Reciprocating Engine」と書くのですが、Reciprocatingとは往復を意味します。

つまり何かしらの往復運動を伴うエンジン、ということであり、おおむねピストンの往復運動で動力を取り出すエンジン全般の総称です。

自動車用のガソリンエンジンやディーゼルエンジンもレシプロエンジンですが、実はレシプロエンジンというくくりではもっとたくさんの種類のエンジンがあり、決してガソリンとディーゼルだけではないのです。

歴史的には星の数ほども種類があるのですが、今回の記事では私たちの身の回りにあるレシプロエンジンをご紹介していきます。

レシプロエンジンの分類

まずは主要なレシプロエンジンの種類をご紹介します。

レシプロエンジンは大まかには外燃機関と内燃機関に分けることができ、ガソリンエンジンなど身近なエンジンはほとんど内燃機関です。

ちなみに外燃機関と内燃機関についてもレシプロエンジンだけでなく他形式もあり、例えばマツダ自動車の有名な「ロータリーエンジン」はガソリンの内燃機関ですが、往復運動はしないのでレシプロエンジンではありません。

外燃機関という言葉はあまり聞かないと思いますが、エンジンを作動させるためのエネルギーをエンジン外部で産み出す形式のエンジンをそう呼びます。

それに対してよく耳にする内燃機関は、作動エネルギーはエンジンの内部で産み出されてエンジンを作動させるエンジンのことです。

外燃機関がどういうものかは追々説明していくとして、レシプロエンジンの種類をざっとまとめると次のようになります。

エンジン形式燃料点火方式
外燃機関蒸気機関エネルギー源は
さまざま活用可能
スターリングエンジン
バキュームエンジン
内燃機関ガソリンエンジンガソリン火花着火(スパークプラグ)
ディーゼルエンジン軽油自己着火
HCCI(予混合燃焼)
エンジン
ガソリン自己着火
LPGエンジンLPG(液化天然ガス)火花着火(スパークプラグ)
グローエンジンアルコールグロープラグ
水素エンジン水素火花着火(スパークプラグ)

内燃機関についてはその使用燃料と点火方式でさまざまな種類に別れており、その特徴で用途が限られてきます。

外燃機関については燃料は基本的にエンジンの外で燃焼させるため、雑な言い方をすれば燃えるものであればなんでもOKなエンジンです。

なおすべてのレシプロエンジンに言えることですが、ピストンの往復運動を連続して行うためにはフライホイールという弾み車が必要です。

ピストンが何かの力で押されるのはよいのですが、ピストンをもう一度戻す際にも力は必要ですので、フライホイールの回転運動でそれを産み出します。

ピストンを押す際の力でフライホイールも回すので多少出力はとられるものの、滑らかな往復運動の実現のためには必須です。

エンジンを動かし始める時にはまずフライホイールを回してきっかけをつくる必要があり、車のスターターはまさにその役割をモーターで行っているのです。(フライホイールを回さないといくら燃料を燃やしてエンジンは動きません)

それではそれぞれのエンジンをご説明していきましょう。

外燃機関のレシプロエンジン

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外燃機関で代表的なエンジンはなんといっても蒸気機関で、これこそがすべてのレシプロエンジンの元祖とも言えます。

蒸気機関こそありとあらゆる機械動力の元祖とも言えるもので、その起こりは紀元前のローマが最初と言われています。

ヘロンの蒸気機関といわれる水を入れた球を熱することで蒸気が発生し、それが球につけられたL字の管から噴出することで球が回転する仕組みです。

この方式はレシプロエンジンではなく蒸気タービンに繋がる発明なのですが、蒸気を機械の動力にした最初の試みです。

そこから実用的な蒸気式レシプロエンジンに繋がるには実に1500年以上の歳月がかかるのですが、その間にも蒸気機関自体はさまざまな形式が産み出されたことでしょう。

それではまずは蒸気機関のレシプロエンジンをご紹介します。

蒸気レシプロエンジン

蒸気レシプロエンジンは基本的には蒸気の圧力でピストンを動かすエンジンです。

この最初の発明者とされているのはフランス人のドニ・パパンで、1690年に最初の蒸気レシプロエンジンを考案して発表しました。

この時点ではまだ実用化にほど遠かったものの、それをベースに1712年にイギリスのニューコメンが実用的な蒸気レシプロエンジンを考案し、鉱山などで使用し始めました。

さらに1769年にニューコメン機関を改良したエンジンを、仕事の単位でも有名なジェームズ・ワットが開発し、ここから本格的な蒸気動力の時代がやっていきます。

イギリスの産業革命はまさにここから起こったもので、蒸気エンジンの登場は工場の機械化、蒸気船や蒸気機関車の実用化など、さまざまなものが機械動力で動くようになったのです。

初期の蒸気エンジンでは、シリンダーに入った蒸気でピストンを押し下げ、その蒸気を何らかの方法で冷却することでシリンダーに負圧を作りピストンを再び押し上げる、という仕組みの機関でした。

蒸気は石炭を燃料としたボイラーで水を熱して産み出され、最初は高圧の蒸気を産み出すほど頑丈なボイラーがなかったので、低圧の蒸気を作っては冷却して水に戻し循環させる形にしていました。

しかしその後高圧蒸気をボイラーで作り出せるようになると、高圧蒸気でピストンを押し下げた後はその蒸気を排出してピストンを戻して往復運動をできるようになりました。

それまでピストンの片側にしかかかっていなかった蒸気も、ピストンの両側に交互に送り込まれることで強制的にピストンを往復運動させることができ、いちいち冷却しなくても交互に蒸気の導入と排出を繰り返せば効率は向上します。

作り出した蒸気は循環しないものの、高圧蒸気はけた違いの出力を産み出すことができてさらなる動力の機械化に拍車がかかりました。

このエンジンにより内燃機関のレシプロエンジンの基本とも言えるガスの導入、排出の仕組みができたともいえ、まさにすべてのレシプロエンジンのもとが蒸気レシプロエンジンにはあるのです。

ちなみに燃料は石炭が一般的ですが、燃えればなんでもよいので石油やガス、ごみ焼却などでも可能です。

そう聞くと火力発電所の蒸気機関を思い浮かべますが、現代の火力発電所は蒸気タービンという蒸気で羽を回して動力を得る機関なので、レシプロエンジンとは違います。

スターリングエンジン

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スターリングエンジンも蒸気エンジンと同時期に生まれたエンジンで、1816年にスコットランドの牧師であるロバート・スターリングが考案しました。(海外の牧師さんには発明家が多いです)

スターリングエンジンは初期の蒸気機関とにた作動原理があり、シリンダー内に入れてあるガスを熱することで膨張させてピストンを動かすエンジンです。

その後ガスを冷却することでピストンを戻すのですが、蒸気機関と違うのは外で蒸気を産み出すのではなく、作動ガスはシリンダー内に密封されている点です。

作動ガスを熱するのはあくまでシリンダーの外からで、蒸気機関のようにボイラーは必要ありません。

エンジンの動作だけならひとつのシリンダーを熱して、次に冷却する、というサイクルで作動するのですが、それでは効率が悪く出力が出せません。

実用的にはシリンダーを2個一組にして、ひとつを高温側、ひとつを冷却側とし、その間を作動ガスが通る管で繋ぎます。

そうすると高温側のシリンダーで熱されたガスは高温側ピストンを押して動力を発生させると共に冷却側ピストンも押します。

しかし冷却側ではガスは冷やされるため負圧が発生してピストンを戻す力となり、冷却側ピストンが戻ることでエンジンが一回転するという仕組みです。

高温側ピストンと冷却側ピストンは接続されており、互いの動きを伝えあって滑らかな回転を実現しています。

わたしたちの日常生活ではまず触れることのないエンジンですが、蒸気機関以上に燃焼させるものはなんでもよく、またコンパクトにできるので、一部の乗り物には活用されていま
す。

また子供の工作キットなどにもなっており、エンジンの仕組みを知る上でもっとも簡単で分かりやすい教材でもあります。(私も作ったことがあります)

バキュームエンジン

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バキュームエンジンは別名真空エンジンとも呼び、これも初期の蒸気エンジンで実用化されたもののひとつです。

ですが前述の2つに比べると実用性に乏しく、現在では模型エンジンとして使われています。

バキュームエンジンは外で燃やした高温のガスや空気をエンジン内に吸い込むことで作動するエンジンで、簡単に言えば燃えている炎をそのままエンジンに吸い込みます。

エンジンに吸い込まれた炎や高温の空気はピストンが動くとともに膨張して冷却されるため、そこで発生する負圧でピストンが戻ろうとします。

その行程で内部のガスを排出してやればピストンの往復が可能となり、排出しきったエンジンに再度炎を吸い込むことでサイクルができ上がります。

蒸気機関やスターリングエンジンよりさらに簡単な構造で稼働するため、模型のキットなどにするにはもってこいのエンジンです。

その反面出力がでないことや、炎の大半がエンジンの外で消費されるので効率が悪く、機械動力には向きません。

動きを見ている分には炎が出たり入ったりして面白いのですが。

内燃機関のレシプロエンジン

では次に現在のエンジンの主流とも言える内燃機関のレシプロエンジンをご説明しましょう。

外燃機関は常にエンジンの外に熱源を持ち、燃料を燃やしたエネルギーでガスや蒸気などを発生させてエンジンを作動させます。

それに対して内燃機関はエンジンの内部で燃焼を起こすことでエネルギーを得ており、おもに燃料の爆発によってピストンを直接作動させます。

外燃機関よりコンパクトにまとまり出力もあるので、1800年の頭に実用的な内燃機関が開発されて以来わずか数十年で小型の蒸気機関を置き換えるように普及しました。

また蒸気機関の搭載が難しい車の分野においてとくに発展が目覚ましく、それまで馬車が主流だった車にも機械化の波が訪れたのです。

内燃機関のレシプロエンジンは外燃機関よりはるかに種類が多いのですが、それは内燃機関が決められた燃料で作動するようになっているためです。

蒸気機関ならどんな燃料でも燃えればかまわないのですが、内燃機関の場合は爆発を伴う燃焼が必要なので燃料の種類と点火方式でさまざまなエンジンが登場しています。

それはのちほどご説明しますが、まずは内燃機関の動作を決める「ストローク」についてご説明しましょう。

内燃機関はストロークが重要

外燃機関にはない内燃機関の特徴として、「ストローク」と呼ばれるものがあります。

内燃機関は作動するのに次のような4つの行程が必要で、この動作をどんな順番で行うかを決めるのがストロークです。

エンジン
動作行程
働き
吸入行程エンジンに混合気(燃料と空気)を取り込む
圧縮行程混合気をピストンで圧縮する
燃焼行程
(膨張行程)
混合気に点火してピストンを押し戻す
※動力の発生行程
排気行程燃焼の終わったガスをエンジンから排出する

よくバイクのエンジンなどで、「2スト」「4スト」などと呼ばれるのがこのストロークで、現在主流なのはこの2つである「4ストローク」と「2ストローク」です。

このうち最初に登場した実用エンジンは2ストロークとなります。

後述する各内燃機関はほとんど4ストローク機関が主流ですが、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンでは2ストロークも使われます。

4ストロークエンジン

4ストロークエンジンは現在内燃機関の主流となっている形式で、クランク4つの行程を順番にこなしていく形式です。

  1. 吸入行程ではピストンの下降に合わせて混合気をシリンダーに吸い込みます。
  2. 圧縮行程ではピストンの上昇によって混合気を圧縮します。
  3. 燃焼行程では圧縮された混合気に点火して爆発を起こし、ピストンは再び下降します。
  4. 排気行程では再度ピストンが上昇して燃焼が終わったガスを押し出します。
この4行程を繰り返すことでエンジンは回転を続けることができるのです。

4ストロークエンジンでは各工程を専用の行程で行えるので各工程の働きがしっかり出せる一方、クランクシャフト2回転で出力を出す燃焼行程が1回しかないので、後述する2ストロークエンジンより出力がダウンする特徴もあります。

2ストロークエンジン

2ストロークエンジンは大きく2つの行程に分けて作動するエンジンで、クランクシャフトが一回転する間に①上昇行程、②下降行程の2つを行います。

  1. 上昇行程では、ピストンの上昇に伴って吸気および排気(2ストでは掃気)を一緒に行い、さらに行程の最後で吸気を圧縮します。圧縮するときには吸気と掃気ポートは閉じられるので、圧縮するときにガスが漏れることはありません。
  2. 下降行程では吸気に点火して燃焼行程が発生しピストンを押し下げますが、その行程の途中で掃気ポートが開いて排気ガスを排出します。またピストンが下端に差し掛かる前ぐらいに吸気ポートも開き、掃気されて圧力の低い状態の時に吸気を吸い込み始めます。
この2つの行程でエンジンが作動するので構造が単純で済み、コストも下げられます。

またクランクシャフト1回転ごとに燃焼行程がありますので、単純計算では4ストロークエンジンの倍の出力が出ることになります。

しかし各工程が入り交じっている関係上、吸気に排気ガスが残留するので出力下がってしまう欠点もあります。

さらに2ストロークエンジンではピストンなどの潤滑油であるエンジンオイルを燃料に混ぜないといけない関係上、エンジンオイルも燃料と一緒に燃やしてしまいます。

そうなると排気ガスが汚くなってしまい、排気ガスの規制をクリアするのが年々難しくなって、現在ではほとんど2ストロークエンジンはなくなってしまいました。

小型で高出力という特徴が2ストロークエンジンのメリットですが、スクーターなど小型バイクなどにも採用されなくなったのは排気ガス規制に対応できなくなったからです。

内燃機関のレシプロエンジンの種類

それでは各種類の内燃機関をご紹介していきましょう。

なお自動車用として代表的なガソリンエンジンやディーゼルエンジンについては別記事で詳しく解説しますので、ここでは概要のみとなります。

ガソリンエンジン

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ガソリンエンジンは現在の自動車、バイク、航空機、船舶などに使われる主流のエンジンで、燃料にガソリンを、点火には火花を出すスパークプラグが使われます。

レシプロのガソリンエンジンでは4ストロークも2ストロークもありますが、どちらも共通することはあらかじめ気化したガソリンと空気の混合気を作り出し、そこに点火する点です。

ガソリンは比較的燃焼しやすい燃料で、ピストンで混合気を圧縮しすぎると火花がなくても自己着火が起こってしまい、意図しないタイミングで燃焼が始まってしまいます。(ノッキングといいます)

そのためある程度の圧縮比にとどめておいて、最適なタイミングで火花で点火させる構造をとります。

ガソリンエンジンの出力調整は空気の量で調節する方式で、燃料の量は基本的に一定です。

これにより非常にレスポンスのよいエンジンが実現でき、高出力、高回転型のエンジンに向いている形式です。

乗用車やバイク、小型船舶、小型飛行機などには最適で、また振動や騒音が少ないのも利点です。

反面、圧縮比を高くできないので低速、高トルクのエンジンにはあまり向かず、それは後述するディーゼルエンジンのほうが得意です。

ディーゼルエンジン

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ディーゼルエンジンはおもにトラックやバス、機関車、大型船舶、産業機械用の動力として使われるエンジンで、燃料に軽油を使い、点火は燃料の自己着火で行います。

ガソリンエンジンは燃料の名前で呼ばれるのに対し、ディーゼルエンジンは発明者のルドルフ・ディーゼルからその名前が来ています。

燃料の軽油はガソリンよりも燃焼しにくい燃料で、50℃以下の温度なら軽油に火を近づけてもなかなか燃えません。

一方で自己着火温度は軽油のほうが低く、燃料が255℃になると軽油は自動的に燃焼が始まります。

この特徴をいかし、ディーゼルエンジンでは圧縮行程で空気のみを圧縮して温度を上げ、そこに軽油を噴射することで一気に燃料を自己着火温度まであげて爆発的に燃焼させることができるのです。

しかしガソリンの自己着火温度の方が高いならディーゼルエンジンにガソリンでもいいじゃないか、と思うのですが、実は燃焼するスピードはガソリンのほうが圧倒的に早く、あまりに激しい爆発が起こってしまってコントロールが非常に難しいのです。

軽油はガソリンのように簡単に気化しないので空気と簡単には混じらず、エンジンに噴射された軽油は液体の状態から少しずつ自己着火していきます。

そのため燃焼速度が比較的遅く、噴射する燃料の量によってエンジンの出力をコントロールすることができます。

圧縮比を高めにできるのでロングストロークで低速、高トルクエンジンに向いており、トラックなどの貨物輸送用にはもってこいです。

また自己着火する燃料ならさまざまなものが使用できるのも特徴で、軽油以外にも重油や灯油、アルコール燃料まで適用幅が広いエンジンです。

こういったメリットがある反面、振動や音が大きく、また高回転、高出力には向かないために乗用車ではネガティブなイメージを持たれることもあります。

燃料の燃焼速度が遅いことで不完全燃焼が起こりやすい形式でもあり、昔のディーゼルエンジンは黒煙をたくさん吐き出していました。

現在は新世代のクリーンディーゼルエンジンが主流となっており、振動や音の低減、燃焼制御の改善などでかなりガソリンエンジンに匹敵する性能がでるようになってきており、また黒煙なども後処理装置でクリーン化できるようになりました。

ガソリンエンジンとともに、自動車その他の用途で主流であり続けるエンジンです。

HCCI(予混合燃焼)エンジン

このエンジンはあまり聞きなれないと思いますが、次世代の内燃機関として注目されている技術であり、日本のマツダが実用化あと一歩のところまでこぎ着けています。

HCCIは(Homogeneous-Charge Compression Ignition)の略であり、予混合圧縮燃焼エンジンとも呼ばれます。

このエンジンはガソリンエンジンとディーゼルエンジンのメリットを併せ持つことを目的としたエンジンで、燃料はガソリンですが点火方式は圧縮着火を採用します。

ガソリンエンジンのようなレスポンスのよさと高出力を持ちながら、ディーゼルエンジン並みの高圧縮非も実現して効率と燃費も向上させたい、さらに排気ガスもガソリンエンジン並みのクリーンさにしたい、という野心的なエンジンです。

HCCIの構想自体は何十年も前からあるのですが、前述したとおりガソリンでの自己着火機関というのは燃焼のコントロールが非常に難しく、名だたる世界のメーカーが挑戦するもいまだ実用化に至っていないエンジンです。

しかし近年のさまざまなデバイスの電子制御化と燃焼状態のシミュレーション解析の精度が上がったことで実用化にはかなり近づいており、世界でもマツダがいち早くHCCIに近いエンジンを量産開始する予定です。

マツダのSKYACTIV-Xと呼ばれるエンジンはSPCCI(Spark Controlled Compression Ignition)という形式で、普通のガソリンエンジンと同じくスパークプラグがあります。

しかしスパークプラグの役目は燃焼のきっかけ作りでしかなく、混合気はあらかじめ自己着火しないぎりぎりの温度まで圧縮されています。

スパークプラグで爆発した混合気の一部は他の混合気をさらに圧縮しますので、その時点でガソリンが自己着火温度に達して残りの混合気すべてが自己着火で燃焼するわけです。

こうすれば予期せぬノッキングは抑制でき、完全ではないにしてもHCCI燃焼も実現できるのです。

マツダはこのエンジンの実用化でそれまでのガソリンエンジンより3割以上も燃費を改善できるとしており、エンジン単体でもハイブリッド車並みの低燃費エンジンとなるようです。

一応分類上はガソリンエンジンと呼ばれることが多いHCCIですが、機構的にはガソリンエンジンともディーゼルエンジンとも違う第三のエンジンといえるでしょう。

LPGエンジン

LPGは液化天然ガスとも呼ばれ、天然ガスを高圧縮して液体状態で保管しているものです。

それを燃料として点火にはスパークプラグを使うエンジンがLPG式のレシプロエンジンです。

LPGはガソリンや軽油よりも燃焼時のエネルギーが高く高出力化が容易で、さらにLPGはCO2発生量が少ないので排気ガスもガソリンなどよりクリーンです。

エンジン自体も本体は既存のガソリンエンジンの改造で対応でき、LPGの噴射装置や配管類の置き換えで設計できます。

なんだかメリットばかりのエンジンのように見えますが、最大の問題は燃料たるLPGの不安定さです。

天然ガスをLPGに圧縮するには10気圧弱の圧力が必要で、圧力がなくなれば一瞬にして気化します。

そのため自動車に搭載するには高圧に耐えうるLPGタンクと配管類が必要で、ガソリン以上に燃料の漏れに対しての危機感が高いです。

少しでも漏れれば一気に可燃性のガスが噴出するので、初期のLPG車では火災事故も多かったそうです。

さらに燃料補給にも専用の大型設備が必要で、ガソリンスタンドで簡単に給油というわけにはいきません。

こうしたデメリットから一般向けにはあまり普及しておらず、専用の燃料補給設備を持つタクシーなど商用車に使われます。LPGは単価が安いので、長距離を走るタクシーにはありがたいのです。

グローエンジン

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グローエンジンは超小型エンジンに向いている形式で、燃料には燃焼効率の高いアルコール系燃料を使い、点火にはグロープラグと呼ばれる電熱線の加熱による温度上昇で点火されます。

スパークプラグほど一瞬で点火しないので点火時期は決まりませんが、その反面小型化が可能です。

その特徴から自動車用としては不向きなものの、模型用の超小型エンジンには向いています。

エンジン構成は最小限で済み重量も軽くできるので、模型飛行機やヘリコプターなどの飛行する模型にも使えます。

模型用なので安全性の高いアルコールが採用され、さらに排気ガス規制がないので出力の高い2ストローク機関が一般的です。

模型が趣味の人なら割と一般的なエンジンだと思いますが、普段は触れることのないエンジンですね。

水素エンジン

水素エンジンは水素と酸素の爆発反応を利用したエンジンで、水素を燃料にして火花点火するエンジンです。

水素の爆発は学校の実験でやったことのある人も多いと思いますが、酸素と混ぜた水素に点火すると爆発的に化合して水が生成できます。

この反応は古くから知られており水素エンジン自体は内燃機関開発の初期にもありました。

構造的にはLPGエンジンとほぼ同等であり、さらに石油由来の燃料を使用しないため排気ガスにCO2が一切含まれないのが素晴らしい点です。

酸素ではなく空気を使うと空気中の窒素と反応して有害な窒素酸化物を生成してしまいますが、後処理技術で処理は可能です。

しかしLPG以上に水素の扱いは難しく、液化水素をタンクで貯めるにしても、水素吸蔵合金という特殊な金属を使うにしても、かなり重量のあるものになります。

また水素は天然ガスのように自然界で出てくるような気体ではなく、水の電気分解などで人工的に作り出さなくてはなりません。

そのため燃料代がかなり高額となり、さらに専用の水素ステーションまで必要となるため普及の目処はたっていません。

一応商用のバスなどで水素エンジンの搭載実績はあり、短い期間でしたが水素エンジンバスが走っていました。

またBMWが自社の高級車である7シリーズに水素自動車バージョンを発売したことがあり、世界初の量産型水素エンジン搭載車でしたが、上述の理由もあって1代限りでなくなりました。

現在では水素エンジンの開発自体はあまり進んでおらず、それよりは同じく水素を燃料とする燃料電池車にシフトしています。

しかし燃料電池車も水素の貯蔵と充填には同じ問題を抱えており量産自動車にするにはまだまだハードルが高そうです。

外燃機関の動き

レシプロエンジンの動き方は内燃機関の場合はほとんど同じであり、2ストロークと4ストロークで大きく違うぐらいです。

このあたりはガソリンエンジンの記事で別にご説明しますので、今回はなかなか見ることのできない外燃機関の動きを動画でご紹介しましょう。

まずは一般的な蒸気レシプロエンジンである蒸気機関車のエンジンをご説明します。

蒸気機関車の蒸気エンジン

これはカットモデルの模型ですが、基本的な往復運動をする蒸気式レシプロエンジンとなります。

動画の1:40秒辺りから仕組みがわかりますが、ピストンの左右に交互に高圧蒸気を導入して動力を産み出します。

高圧蒸気が続く限りはエンジンは稼働し続け、エンジン本体は非常にシンプルな構造になります。

それでは次はスターリングエンジンをご紹介しましょう。

スターリングエンジンの動作


こちらも模型で加熱側のシリンダーがわかりやすいようにガラスでできていますが、そのガラス管をただ熱してフライホイールを回しただけでエンジンは延々と回り続けます。

エンジンには蒸気や燃料を送るパイプなども不要で、ただ単純に熱するだけで動くのがスターリングエンジンです。

非常に軽快に回るのですがその分トルクは少なくなっています。熱源は本当に何でもよく、とにかく加熱側が熱されればエンジンとして成立するのです。

最後に面白いバキュームエンジンをご紹介します。

バキュームエンジンの動作

これも模型ですが、基本的にバキュームエンジンは模型として楽しむエンジンです。

エンジンの先端の穴に火を近づけてフライホイールを回すと、エンジンが回りだすとともに穴を塞いだり開けたりする弁が動作します。

火で暖められた空気を吸ってピストンが動き、それを排出することでピストンが戻ります。

非常に簡単な機構ながらエンジンとしては機能しており、自作エンジンをつくって楽しむ人も多いようです。

レシプロエンジンの長所・短所

レシプロエンジン各形式の長所や短所は前述しましたが、ここでは外燃機関と内燃機関の長所、短所を比較してみましょう。

外燃機関レシプロエンジンの長所、短所

外燃機関は蒸気機関にしてもスターリングエンジンにしても、エンジン本体がコンパクトにまとまることが特徴で、またある程度燃料の種類に依存しないのも大きな長所です。

外燃機関でもっともパワーのある蒸気機関では高圧蒸気を作り出す必要はあるものの、エンジン本体には難しい構造は不要であり、またエンジン内部では爆発などが起こらないので安全です。

スターリングエンジンは出力があまり出ませんがエンジンの動作は完全な閉鎖空間で行われますので、頑丈に作ることもできます。

その反面外燃機関は燃焼するための設備をエンジン以外に持つ必要があり、出力を大きくしようとしたら燃焼設備の大型化が不可欠です。

そのため蒸気機関全体としてはかなりの設備が必要となるので、基本的には向上などの設置設備で使うことに適しています。

自走するものには搭載が難しいか大型化が必須で、蒸気機関車や蒸気船など大型のボイラーを搭載できるサイズの乗り物にしか使えません。

スターリングエンジンではボイラーほどの設備は要りませんが、燃焼設備を持つということは変わらないので実用的なエンジンは割と大型化してしまいます。

こういった短所があるため、大型設備以外では内燃機関が数多く使われるようになったのです。

内燃機関レシプロエンジンの長所、短所

内燃機関のレシプロエンジンはボイラーなどが不要なため、エンジン全体の設備としては外燃機関より小型化できるのがメリットです。

エンジン内部の爆発力によって力を得る内燃機関は燃料の持つエネルギーを瞬時に得られる機関であり、レスポンスと出力の制御が容易に行えます。

外燃機関ではボイラーの燃焼を減らす、蒸気の量を減らすなどでコントロールするのですがあまり反応はよくなく、内燃機関ほど微妙で正確なコントロールは難しいです。

小型で反応のよいエンジンはとくに自動車や飛行機には必須の性能で、内燃機関でなければ実用性は薄かったでしょう。

その反面エンジンの構造は外燃機関より複雑になり、とくに爆発を伴うシリンダー周辺はかなり頑丈にしなければなりません。

またエンジン自体が熱を発するため放熱構造も持たなければならず、エンジン本体の技術的難易度は高いといえるでしょう。

また燃料は特定のものに限定されることが多く、違う燃料では満足に動作しません。

燃料供給の簡便さ、コストなどが内燃機関エンジンの使い勝手を左右します。

とはいえガソリンや軽油はいまの世の中では手に入りやすいので一般的なエンジンになりましたし、世界中どこでも手にはいるということなら汎用性は高いといえるでしょう。

レシプロエンジン搭載の乗り物

それでは今回ご紹介したレシプロエンジンが実際に搭載されている乗り物をご紹介しましょう。

なお模型用のエンジンとして実用化されているものは省きます。

蒸気レシプロエンジンの実用例

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蒸気式のレシプロエンジンを搭載している乗り物と言えば、なんといっても蒸気機関車(SL)でしょう。

今回の記事でもなんどかご紹介していますが、蒸気機関車はボイラーで産み出した高圧蒸気を使ってピストンを稼働させるレシプロエンジン機関車です。

構造が単純なので非常に頑丈であり、昔生産された蒸気機関車が現在も何両も走行していることがそれを証明しています。

山口や栃木などでは現在も商業路線としてしっかり現役で、修理やメンテナンスは行われているものの基本的な構造はいまも変わりません。

かつては蒸気自動車や蒸気船などさまざまな蒸気レシプロエンジンを積んだ乗り物がありましたが、現在では蒸気機関車が唯一といえるでしょう。

スターリングエンジンの実用例

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スターリングエンジンは出力があまり高くないので車や列車にはちょっと使いづらいのですが、その特徴を最大限活かす搭載例としては「潜水艦」の発電エンジンとして最新の艦にも搭載されています。

潜水艦に必要な性能はなんといっても静粛性で、普通のディーゼルエンジンや原子力潜水艦の原子炉は潜水艦のレベルとしては結構煩いものです。

昔は浮上時のみディーゼルエンジンでモーターを回してバッテリーに充電し、潜航時にはそのバッテリーとモーターでスクリューを回して静かな航行をしていました。

しかしそれでは潜航時にはバッテリーが切れるまでしか潜っていられず長期間の潜航には不適当だったのです。

そこで静かで発電用には向いているスターリングエンジンに白羽の矢が立ち、1995年にスウェーデンの潜水艦に初採用されました。

自衛隊の最新鋭潜水艦にも採用されており、長らく実用的でないと言われてきたスターリングエンジンに日の目が当たっています。

潜水艦という環境はスターリングエンジンにとっては最高の環境で、高温側シリンダーを燃焼させるのは何でもよい上に、低温側シリンダーを冷やすのに海水という最高の冷媒が使えるからです。

スターリングエンジンは高温側と低温側の温度差が大きいほど効率も出力も大きくなるエンジンなので、空気などより遥かに冷却性の高い海水はスターリングエンジンに最高の環境です。

なお潜水艦のエンジンはスターリングエンジンだけではなく、ディーゼルエンジンも同時に搭載されています。

発電能力はディーゼルエンジンのほうが優れるので静粛性が要らない場所ではディーゼルエンジンを使い、作戦中などはスターリングエンジンを補助として使うわけです。

今後は大容量のリチウムイオン電池の搭載によって十分な電池容量が得られるため、スターリングエンジンはなくなる予定です。

ガソリンエンジンの実用例

次に内燃機関に移りますが、ガソリンエンジンについては実用例は星の数ほどあり、もっとも身近なレシプロエンジンのひとつでしょう。

詳しくは別記事でご説明しますが、自動車を筆頭として、オートバイ、小型船舶、小型飛行機、産業機械、DIY用機械の動力など、非常にさまざまなものがあります。

基本的には小型で出力がほしい機械に向いているエンジンであり、農業関係の人は扱うことが多いエンジンですね。

ディーゼルエンジンの実用例

こちらも詳しくは別記事に譲りますが、ディーゼルエンジンはガソリンエンジンより幾分大型の用途に向いています。

トラックなどの運送業、大型船舶、軍艦、潜水艦、戦車、建築機械、農業機械など、出力よりトルクが重要な比較的低速で使われるエンジンにディーゼルエンジンが採用されます。

またいまでは少なくなりましたがディーゼル機関車など電化されていない路線の主役としての役割もあります。

HCCIエンジンの実用例

HCCIエンジンについてはまだ開発段階で実用例がありませんが、マツダが開発を主導していることから自動車への搭載はそう遠いことではないでしょう。

その前段階であるSPCCIエンジンは2019年に登場予定だそうなので、非常に大きな期待が持てます。

登場した暁にはマツダの環境対策エンジンの主役として、順次ラインナップが更新されていくことでしょう。

LPGエンジンの実用例

LPGエンジンを搭載した乗り物といえば、まずはタクシーが一番身近な存在です。

最近のタクシーは高級セダンやハイブリッドカーなど種類が一杯ありますが、もっともオーソドックスなセダンタイプのタクシーはほとんどがLPGです。

タクシーのトランクを開けると大きなタンクが目にはいると思いますが、それこそがLPGを貯蔵しているタンクです。

乗用車としても購入することは可能で、全国で数は少ないもののLPGスタンドも使用できます。

また他にも小型トラックやフォークリフトなどでも使われていたりします。産業機械の分野ではわりとオーソドックスなエンジンで、市販のプロパンガスなどを使って稼働するものも数多くあります。

水素エンジンの実用例

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水素エンジンについては実用例が非常に少なく、市販車として採用された例は前述のBMW ハイドロジェン7が唯一といえるでしょう。

ハイドロジェン7には通常の7シリーズに搭載されたV12ガソリンエンジンを改造して水素燃料仕様とした、V12水素エンジンが搭載されました。

排気量は6.0Lで232馬力を発生させるそれなりによい性能を持っていましたが、水素充填のインフラの問題やほかの環境対応車の登場で1代限りとなりました。

さらに燃料である水素には金属に浸透して脆くしてしまう水素脆性という特徴があり、長期間の使用を想定した場合にエンジン本体の鉄やアルミの材料自体が耐久性を失うという問題もありました。

それ以外では日本の大学が開発した水素エンジンバスやトラックの試験車や、レシプロエンジンではないのですがマツダがかつてロータリ水素エンジンなども開発していました。

しかし現在ではどちらも下火であり、エンジン技術以外での水素エンジン実用化の難しさがわかります。