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HCCIエンジンとは?実用化でロータリー復活?メリット/デメリットを解説!

自動車用のエンジンはこれまで主にガソリンエンジンとディーゼルエンジンの2種類があり、それぞれ独特な構造と特徴を持つエンジンです。

しかし現在世界中で研究が進んでいるエンジンの一つに「HCCIエンジン」というものがあり、ガソリンとディーゼルの特徴を併せ持つ次世代のエンジンとして期待されています。

今回はそんなHCCIエンジンについてご説明します。

HCCIエンジンとは

日産 HCCIエンジン

HCCIエンジンとは「Homogeneous-Charge Compression Ignition」の略であり、日本語では「予混合圧縮着火」と呼んでいます。

このエンジンの名前はあまり聞いたことがないかと思いますが、それもそのはず、まだ研究段階のエンジンで、実用化されていないからです。

研究自体は20年も前から始まっているのですが、実現すればこれまで以上に効率的なエンジンとなることが予測される反面、制御が難しくて実用化の障害になっています。

このエンジンはガソリンエンジンとディーゼルエンジンのいわば良いとこ取りのエンジンで、次のような特徴と構造を持ちます。

ガソリンエンジンとディーゼルエンジンの特徴

まず簡単にガソリンエンジンとディーゼルエンジンの特徴をご説明しますが、それを表にしたものが次になります。

特徴ガソリンエンジンHCCIディーゼルエンジン
燃費(圧縮比)
低速トルク
最大出力
排気ガス浄化

ガソリンエンジンとディーゼルエンジンはともにレシプロエンジンの一種で、シリンダー内のピストンで空気と燃料を圧縮し、そこに点火することで爆発的な燃焼を起こして出力を得るエンジンです。

ガソリンエンジンはガソリンを燃料にスパークプラグによる火花点火で燃焼させるエンジンで、火花着火機関と呼びます。

ガソリンは燃焼エネルギーが高くエンジン出力を高くすることが出来、またディーゼルエンジンの軽油に比べて排気ガス浄化も行いやすい特徴があります。

ガソリンと空気はシリンダーに入れる前に混合してあるのが基本ですが、直噴エンジンというガソリンエンジンでは空気のみ圧縮し燃料を後から噴射する構造のエンジンもあります。

それに対してディーゼルエンジンは直噴ガソリンと同じような構造をもっており、空気だけをシリンダーに入れて圧縮した後に、燃料となる軽油をシリンダー内に噴射します。

MEMO

ですが軽油は火花着火が難しく、圧縮着火という燃料の温度が上がったことによる着火を使って爆発的に燃焼を行います。

空気を圧縮すると温度が一気に上昇するので、そこに燃料を噴射すればシリンダー内の熱により発火するのです。

ディーゼルエンジンは圧縮着火を行うためにシリンダー内の圧縮比が高くなっており、ガソリンエンジンよりもエンジンの効率が高いという特徴があります。

また燃焼エネルギーが大きいことから低速トルクが太いという面もあり、停止からの加速などはディーゼルエンジンのほうが強力です。

これらの特徴を見ると、もしガソリンエンジンの圧縮比を高めて熱効率を上げ、さらに燃料をガソリンにする、つまりディーゼルエンジンの特徴をもったガソリンエンジンがあればもっと性能の高いエンジンができます。

これこそHCCIエンジンの基本構想であり、夢のエンジンです。

HCCIエンジンの構造

HCCIエンジンは予混合+圧縮着火を組み合わせたエンジンであり、燃料と空気はあらかじめ混合し、その混合気をディーゼルエンジンのような圧縮着火で点火するエンジンです。

ガソリンエンジンはこれまで圧縮比10~14程度が限界とされていましたが、HCCIエンジンでは圧縮着火のためディーゼルエンジン並の16~18を狙います。

これによりガソリンエンジンで30%、ディーゼルエンジンで40%が限界だったエンジンの熱効率を50%以上にできると言われており、エンジンの出力やトルクが向上することが期待できます。

またこれまでのガソリンエンジンは燃料と空気の量の比率が14.7という理論空燃比という数字があり、燃料が完全燃焼するのに必要な空気量を示します。

ポイント

ですがHCCIで圧縮着火となれば、薄い燃料でも燃料自体が発火するので確実に着火出来、高い空燃費でも燃焼が可能となります。

この特徴は燃費に大きな影響があり、燃料消費量が大幅に削減された結果、車の燃費がリッター50km/Lを超えることも期待されています。

このように基本構造的に効率も燃費も向上できるHCCIエンジンは理想的なエンジンで、世界中で研究されているのもわかります。

ですがHCCIの実用化にはさまざまな障害があり、とくにHCCIの肝である圧縮着火の制御という面で大きな問題を抱えています。

HCCIの実際問題

HCCIは理論的には素晴らしいエンジンなのですが、その実現には「ノッキング」という問題がつきまとっています。

ノッキングの現象

ノッキングはガソリンエンジンの設計に大きな障害となるもので、燃料であるガソリンが異常燃焼する現象です。

ガソリンエンジンはスパークプラグの点火をきっかけに燃焼が始まりますが、ピストンで混合気を圧縮している途中でガソリンが圧縮着火してしまうと、正常なタイミング外で爆発が起こってしまいます。

そうなるとエンジンの動きが不安定になる以外にも、大きな振動やエンジンへの負荷の増大が起こります。

この特徴からガソリンエンジンは圧縮比を高めすぎるとノッキングが問題となってしまい、圧縮比を高めることが出来ませんでした。

一方で圧縮比の高いディーゼルエンジンは空気のみを圧縮するのでノッキングは起きず、その後に燃料を噴射することで圧縮着火が起こって点火できます。

ですがこの方式だと空気と燃料が十分に混ざりきらず一部が燃え残るため、排気ガスの有害物質が増えるというデメリットも持ちます。

ガソリンエンジンはその点が優秀だったため、ディーゼルエンジンより熱効率は落ちるものの、ノッキングの起きない低い圧縮比に留めながら使われているのです。

HCCIとノッキングは紙一重

さてノッキングで燃焼が起こる現象と、HCCIで圧縮着火するという現象は、構造としては全く同じものです。

空気とガソリンの混合した混合気に高い圧力がかかることで温度が上がり、ガソリンが自己着火するためです。

ノッキングとHCCIの燃焼の違いはそれが起きるタイミングにあり、ピストンが最も混合気を圧縮した上死点付近で圧縮着火がちょうど始まれば、HCCI燃焼が成立します。

ですが圧縮の途中で圧縮着火が起こってしまうと、それはノッキングとなり正常なエンジンではなくなります。

この2つのタイミングの差は本当に極小であり、一分間に数千回転するようなエンジンにおいてはほんのわずかなタイミングのズレが差となってしまいます。

HCCI燃焼を成立させるためにはこの圧縮着火のタイミングを完璧に制御する必要があり、ノッキングの起こらないギリギリの領域で圧縮し、なおかつ燃料と空気は予め混合して排気ガス性能もよくしなければ、HCCIは完成しません。

ガソリンエンジンでも直噴技術を使えばノッキングも抑えられますが、ディーゼルエンジンと同じ用に空気と燃料の混合が不十分だと排気ガスが問題となってしまいます。

HCCIの構想が出てきてから20年以上立ちますが、この燃焼の制御を行う技術がとにかく成立せず、一時期は夢で終わるエンジンなどと言われたこともあります。

HCCIエンジンのメリット・デメリット

メリット、デメリット

HCCIエンジンには当然のことながらメリットが多く、完全なHCCI燃焼が実現できれば素晴らしいエンジンとなることは間違いありません。

ですが前述したようにコントロールが難しいというのがデメリットとして大きく、実用化の大きな壁となります。

HCCIエンジンのメリット

HCCIエンジンのメリットについては前述でもご説明しましたが、ここではもう少し詳しく解説していきます。

圧縮比を高められ、熱効率が向上する

HCCI化で得られる最大のメリットはガソリンエンジンの圧縮比の向上で、エンジンの熱効率を高められることです。

エンジンの熱効率は高ければ高いほど燃料のエネルギーを動力に変換できるので、内燃機関のエンジンはどこまで圧縮比を上げて熱効率を追求できるかが鍵となります。

HCCI化でノッキングすることなく圧縮着火が出来ればまさに理想的なエンジンとなりますので、これまでの内燃機関の熱効率を一気に高めることが期待されます。

向上した熱効率の高さは燃費を改善させることができますが、その他にもエンジンの出力やトルクも上昇します。

HCCI化によって性能面でも15%もの改善が見込まれるという研究もあり、燃費と性能両面を伸ばすことができる技術なのです。

スーパーリーンバーンが可能

HCCIでは圧縮着火という特徴を活かして、これまでより燃料が薄い状態での燃焼「スーパーリーンバーン」が可能になるとされています。

エンジンの空燃比は14.7が基本ですが、それより空気の多い状態、つまり空燃費が14.7以上で18程度の「リーンバーン」状態でも燃焼は可能です。

少ない燃料で燃焼ができるので燃費改善が大いに期待されて1990年ごろにトレンドが起こったのですが、これまでの火花点火の場合にはあまりに燃焼が薄いため火炎が伝わらず、失火などの問題が出てきます。

そのせいで排気ガス中の有害物質が増える結果となってしまい、リーンバーンによる燃費改善は一度失敗しました。

ですがHCCIでは圧縮着火を行って燃料自体が燃焼するので、薄い燃料でも燃焼が可能です。火炎伝播による燃焼形態ではないから可能になるのですが、高い圧縮比を持つHCCIだからこその構造です。

これにより従来までのリーンバーンを超えるスーパーリーンバーンが可能になり、空燃比が20~30というとても薄い燃料でも燃焼が可能となるので、燃費に対する大幅な改善が見込まれます。

ディーゼルエンジンより排気ガスがきれい

排気ガス

HCCIと同じ圧縮着火を行うディーゼルエンジンは、排気ガスに有害物質が多いことが問題なのですが、これは燃料と空気の混合が不完全だから起こる現象です。

ですがHCCIはガソリンを燃料にするうえに、予混合:つまりあらかじめ燃料と空気を混合させるため、ディーゼルエンジンより排気ガスがきれいという特徴を持ちます。

ディーゼルエンジンに使われる軽油は圧縮着火には向いている燃料なのですが、燃料が蒸発する気化が起こりにくい燃料でもあり、空気とはもともと混ざりにくいのです。

その点ガソリンはすぐに気化するので混合器の生成が早く、予混合状態を作り出すのに適した燃料です。

混合気がしっかり生成できていれば、薄い燃料での圧縮着火でも混合気全体が燃焼できるので、不完全燃焼による有害物質の排出は少なくなります。

また燃料が薄いことで燃焼温度が低いので、ガソリンエンジンでも問題となるNOx(窒素酸化物)の生成も少なくなります。

環境性能に対する規制が年々厳しくなっている中で、HCCIはその打開策でもあるのです。

スロットルバルブ、スパークプラグが不要

完全なHCCIエンジンの場合、それまでのガソリンエンジンには不可欠だったスロットルバルブやスパークプラグが不要となります。

スロットルバルブとスパークプラグはガソリンエンジンに特有の部品で、圧縮着火のディーゼルエンジンにはありません。

スロットルバルブはエンジンに送る空気量をコントロールしてエンジン出力をコントロールし、スパークプラグは燃料の火花点火のために必要です。

ですがHCCIでは出力コントロールはディーゼルエンジンと同じく燃料量でコントロールできますし、圧縮着火のためにスパークプラグも不要です。

そうなるとエンジンの部品が少なくなりコスト面、重量面でもメリットが大きくなります。

またスロットルバルブは空気抵抗が大きく損失になっている部品なので、エンジンの効率も高めることができます。

HCCIエンジンのデメリット

上記のようなHCCIのメリットは非常に大きいものがあり、完全な実用化がなされれば素晴らしい性能になります。

ですが現段階ではHCCIの燃焼が可能な領域は非常に狭いといわれており、車の走行領域の全般で活用できるわけではなさそうなのです。

HCCIの燃焼は前述したとおり、ノッキングは起こらないけど圧縮着火は必要、という厳しい条件で成立するものであり、コントロールが非常に難しいです。

ですが自動車の走行領域は低速で負荷の少ない場面だけではなく、高速でエンジン回転数の高い領域まで幅広く、その都度エンジンにかかる負荷も大小様々です。

そのため負荷の低い状態ならHCCIがコントロールできたとしても、負荷が高まるとノッキングの危険が高まって対応がどんどんむずかしくなり、HCCIが実現できるのは一部だけという状況となります。

このことはHCCIエンジンを開発する各社も認識しており、実用的なエンジンとするために、低負荷時はHCCI、高回転域は普通の火花点火エンジンにするという2種類の方式を併用する形式が有力視されています。

そのためHCCIエンジンではありますがスパークプラグも必要となり、燃料噴射量などを調整しながらHCCIと普通のガソリンエンジンを適宜切り替えていきます。この方式ではHCCI燃焼の時にはスパークプラグは使いません。

こういった方式は割と早いうちに生み出されていたのですが、それでもHCCIエンジンは未だ実現できておらず、非常に開発が難航しています。

ですがこのスパークプラグを持つという方式を逆転の発送で使うことで、HCCIエンジンの実用化にいち早く近づけたメーカーがあり、後ほど詳しくご説明します。

HCCIエンジンの評価・口コミ

HCCIエンジンはまだ実用化されていないので走りなどの評価はありませんが、期待感は非常に高いようでTwitterにもいろいろと意見があがっています。

エンジン効率向上にはHCCIが必要

自動車メーカーだけでなく部品メーカーなどもエンジンの熱効率向上の開発を進めており、熱効率50%というのは一つの目標です。

ですが既存の技術ではガソリンエンジンもディーゼルエンジンも効率の限界まで来ており、HCCIという新技術がなければそこまでの効率向上は望めないでしょう。

実験室レベルでは動くHCCI

どうやらこの話はどこかの研究所や大学でHCCIを研究されている方のことのようですが、回転数一定の定常運転であればHCCI燃焼は十分動くレベルにあるようです。

ですがやはり回転数の変動する実際の車は難しいのがこの当時の現状だったようですね。

HCCIエンジンの実用化

さてHCCIの開発は日本メーカー、欧州メーカーなどの主要メーカーほぼ全てで研究が行われており、最初に実用化するのはどのメーカーかと思われていましたが、意外なことに日本の中規模メーカーであるマツダでした。

マツダのSPCCIエンジン

マツダ SPCCIエンジン

マツダは2000年頃からエンジンの高効率化に焦点を当てて開発を進めており、ハイブリッドなどの電動化による効率化ではなく、内燃機関による環境対策を重視しています。

その中には当然HCCIもあったのですが、なんとマツダはHCCIに先駆けて「SPCCI(Spark Controlled Compression Ignition:火花点火制御圧縮着火」という方式で、HCCIに限りなく近いエンジンを実現しようとしています。

詳しくは別の記事でご説明していますのでそちらも参照頂きたいですが、SPCCIでは前述のHCCIにスパークプラグを付けたことを活用しており、HCCIの圧縮着火のきっかけにスパークプラグでの点火を活用する方式です。

シリンダーの圧縮はノッキングと圧縮着火がぎりぎり起こらない状態に留められていますが、そこに一部だけ火花点火で点火すると、そこで生まれた圧力がシリンダー内に伝わります。

そうなると圧力がかかった領域では圧縮着火に十分な条件が整うことで、HCCIの燃焼が始まるのです。

この構造によりHCCIの弱点であった点火の制御を確実に行うことができ、完全なHCCIではないものの同様の効果を発揮できるエンジンとなります。

もちろん高回転域では通常のガソリンエンジンと同じ火花着火機関としなければなりませんが、他のメーカーがHCCIの実現に二の足を踏んでいる状況の中では、マツダの方式は大きな一歩といえるでしょう。

このエンジンはSKYACTIV-Xという名称で、2019年から量産車に搭載される見込みです。

マツダのロータリーエンジンへの展開は?

マツダといえばかつてロータリーエンジンという非常に難しいエンジンを実用化したメーカーであり、HCCIエンジンの技術がロータリーエンジンにも応用されるのでは?と期待する声が結構あります。

というのもロータリーエンジンは排気ガス規制への対応が難しくなったことで現在は生産されておらず、長い間復活が待ち望まれていたからです。

HCCI化により排気ガス規制への対応ができれば復活の余地もあり、またロータリーエンジンの泣き所であった燃費の改善も期待できます。

ですがロータリーエンジンは機構的に圧縮比を向上させることが難しいエンジンでもあり、HCCIの必要条件である高圧縮は厳しい面もあります。

SPCCIの応用で多少は補えるかもしれませんが、HCCIが実用化されたからといってロータリーエンジンへの展開はもっと先のことになりそうです。