自動車用エンジンには昔から2つの主流があり、ガソリンエンジンとディーゼルエンジンの2種類ともに重要な存在です。
ディーゼルエンジンは近年クリーンディーゼルエンジンに進化したのですが、現時点でガソリンエンジンとクリーンディーゼルエンジンの違いはどういう所にあるのでしょうか。
今回はガソリンエンジンとクリーンディーゼルエンジンを比較してみます。
ガソリンエンジン、クリーンディーゼルの基本
ガソリンエンジンとディーゼルエンジンはどちらも内燃機関およびレシプロエンジンの一種で、エンジンの基本構造はかなり似ています。
内燃機関の種類と仕組み/構造!外燃機関との違い4つと類似点4つ!将来性あり?!レシプロエンジンとは?種類は?仕組みや構造まですべて解説!ガソリンエンジンもディーゼルエンジンも、ピストンで圧縮した後に燃料に点火して爆発エネルギーを動力に変化させる点は同じです。
ですが使用する燃料と燃焼方法の違いでそれぞれのエンジンの特徴が生まれており、それぞれ得意とする領域と苦手とする領域が生まれます。
まずはガソリンエンジンとディーゼルエンジンおよびクリーンディーゼルエンジンの特徴を簡単にご説明します。
ガソリンエンジンの特徴
ガソリンエンジンはその名前の通りガソリンを燃料とするエンジンで、ガソリンの点火をするのに火種が必要な火花点火機関です。
ガソリンは液体から気体に気化しやすい燃料で、一般的には気化したガソリンと空気をあらかじめ混合した混合気をシリンダーに取り込み、圧縮後に火花で点火して爆発させます。
火花はスパークプラグという電気火花を発生させる部品で作り出しており、ガソリンエンジンの稼動には電力が必要不可欠です。
レシプロエンジンの効率を決める大きな要素に圧縮比という指標があり、ピストンで圧縮する比率を表すものですが、ガソリンエンジンには「ノッキング」という問題があってあまり圧縮比を高くできません。
その特性から低速時のトルクがあまり大きくできないのですが、その代わり高速域は得意としており、一般的には乗用車に数多く採用されるエンジンとなっています。
なおガソリンエンジンについては以下の記事でさらに詳しく解説しています。詳細まで知りたい方はこちらもあわせて参考にしてみてください。
ガソリンエンジンのメリット3つとデメリット5つ!仕組みと将来性の特徴を解説!ディーゼルエンジンとクリーンディーゼル
ディーゼルエンジンは燃料に軽油を使用し、点火には燃料の自己着火を利用するエンジンです。
自己着火とは燃料の温度が一定以上に達した際に火種などがなくても燃料が燃えだす現象です。
ディーゼルエンジンは空気の圧縮による温度上昇を使って自己着火を起こしており、ガソリンエンジンとの最大の違いとなっています。
ディーゼルエンジンはピストンでまず空気のみを圧縮し、そこに直接燃料を噴射することで燃料の気化および自己着火を起こしています。
この特徴からディーゼルエンジンには高い圧縮比が必要で、ガソリンエンジンを上回る圧縮比のためにエンジン効率は高くなります。
そのため低速トルクが太く加速もよいのですが、一方で高速域は少し苦手としています。また排気ガスに含まれる有害物質がガソリンエンジンより多く、その処理が大変という側面もあります。
実は自己着火はガソリンでも起こるもので、ノッキングとはまさにガソリンエンジンで自己着火が起こってしまった異常燃焼を指します。
つまりディーゼルエンジンはコントロールされたノッキングで燃焼するエンジンと言ってもよく、ディーゼルエンジンではノッキングはありません。
昔のディーゼルエンジンは排気ガスが汚いまま排出されていたので大きな環境問題となっていたのですが、その排気ガス浄化のシステムを取り入れたエンジンが、今回比較対象の「クリーンディーゼルエンジン」です。
排気ガス処理の触媒や、エンジン制御の精密化、デバイスの追加などにより、昔とは比べ物にならないほど排気ガスがキレイになっています。
なおディーゼル、クリーンディーゼルについては以下の記事でさらに詳しく解説しています。詳細まで知りたい方はこちらもあわせて参考にしてみてください。
ディーゼルエンジンとは?仕組み/構造を簡単にわかりやすく解説!クリーンディーゼルエンジンとは?メリット2つとデメリット3つ!仕組み/構造の特徴まで解説!ガソリンエンジンとクリーンディーゼルエンジンの構造の違いは、そのままエンジンの性格やその他の要素を決める要因となっており、さまざまな点でメリット、デメリットがあります。
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ガソリンエンジンとクリーンディーゼルの違い
ガソリンエンジンとクリーンディーゼルエンジンの違いは様々な項目に及んでおり、特性の違いが採用される車の違いにも影響します。いくつかの項目において両者を比較してみましょう。
まず簡単に各項目における評価をまとめてみます。◎、◯、△の3段階で比較します。
項目 | ガソリンエンジン | クリーンディーゼル車 |
走行性能 | ◯ | ◯ |
燃費性能 | ◯ | ◎ |
音と振動 | ◎ | △ |
環境性能 | ◯ | △ |
CO2排出量 | ◯ | ◎ |
維持費 | ◎ | ◯ |
コスト面 | ◯ | △ |
税金関係 | △ | ◯ |
走行性能
まず大きな差があるのが車の走行性能で、主に低速時と高速時の特性が変わります。
車の走行性能を表す特性は主に2つあり、エンジン回転数が低く速度も低い時のトルクと、エンジン回転数が高く高速走行時の最高出力です。
低速トルクの太い特性は発進時の加速や、重量のある車を力強く走り出させることに長けており、オフロードなどの走破性にも必要なスペックです。
一方最高出力の特性は高速道路などでの最高速度に影響しており、一般的には最高出力が高いほどスピードを出しやすく、また高速走行時の効率も高くなります。
ガソリンエンジンは圧縮比の低さから低速トルクはそこまで高くないのですが、ピストンなどの可動部品が軽量なことから高回転までエンジンを回すことが可能であり、高回転域での最高出力を出すことを得意としています。
圧縮比の低さは燃焼エネルギーの少なさと直結しますので、その分エンジン部品にかかる負荷が低いことが高回転性能につながり、またエンジン自体を軽量小型に仕上げられます。
そのためガソリンエンジンは一般道路を走る大衆車向けのエンジンであり、また最高出力を重視するスポーツカーにもマッチします。
それに対してクリーンディーゼルは圧縮比の高さから低速トルクの太さに優れており、車の発進加速も良くなります。
この特性から重量のあるトラックなどの商用車や、オフロードを走るSUV、クロカンなどの車種にマッチしていますが、一方で乗用車としても発進加速の良さは運転のし安さに直結します。
一方で高い燃焼エネルギーに耐えられるようにピストンなどの部品が重たく頑丈になるので、それらが高速で動く高回転域は苦手としています。
この特性の違いから日本では乗用車はガソリンエンジン、トラックなどの商用車はクリーンディーゼルという分け方が一般的となっていますが、近年はクリーンディーゼルの乗用車も増えてきており、その発進加速の良さは新しい走行感覚として受け入れられつつあります。
なおクリーンディーゼルのトルクについては以下の記事でさらに詳しく解説しています。詳細まで知りたい方はこちらもあわせて参考にしてみてください。
(クリーン)ディーゼルエンジンのトルクが大きい理由!トルクの大きい車種ランキングとともに解説!燃費性能
エンジンの性能で大きな要素のひとつに燃費性能がありますが、これに関してはガソリンエンジンとクリーンディーゼルエンジンには明確な差があります。
燃費性能を大きく左右するのはここまで何度も登場しているエンジンの圧縮比で、一般的には圧縮比が高いほどエンジン効率も高く、燃料のエネルギーを効率的に動力に変換できます。
ということは燃料消費量を節約できるということであり、一般的には圧縮比の高いクリーンディーゼルエンジンのほうが燃費は良くなります。
この特性から現在最新のクリーンディーゼルエンジン車はカタログ燃費が30km/L〜20km/Lぐらいとなっているのですが、ガソリンエンジン車の場合には25km/L〜15km/L程度が一般的であり、3割程度はディーゼルエンジンのほうが良くなる傾向にあります。
ですが実際の道路を走った際の実燃費はまた別で、それぞれのエンジンが得意な領域で走る距離が多いほうが基本的に燃費は良くなります。
クリーンディーゼルは下道で低速走行が主なときには良い燃費を発揮しますが、高速道路での高速走行が多いと燃費は低下します。またガソリンエンジンはその逆で、高速で低速走行するほうが実燃費が伸びます。
ですが欧州などでは高速が多いにもかかわらずクリーンディーゼル車の人気は高く、それは元来の燃費の良さと、後述するCO2排出量の少なさからくるものです。
なおクリーンディーゼルの燃費については以下の記事でさらに詳しく解説しています。詳細まで知りたい方はこちらもあわせて参考にしてみてください。
クリーンディーゼル車は燃費が悪い?低燃費車を比較してランキングで紹介!音と振動
エンジンはピストンの上下運動やクランクシャフトの回転運動を元とする振動があり、ガソリンエンジンとディーゼルエンジンではその振動の大きさと、振動が元となったエンジン音の大きさに差があります。
これについてはディーゼルエンジンは圧縮比の高さと燃焼方法によって大きな振動と音を発生するエンジンとなっており、クリーンディーゼルエンジンでも変わりません。
クリーンディーゼルエンジンは作動時に独特なガラガラ音があるのが特徴で、これはガソリンエンジンでは「ノッキング音」と呼ばれるものと一緒です。ディーゼルエンジンはノッキングと同種の原理で燃焼しますので、必然的にこの音が出るのです。
またクリーンディーゼルの高い圧縮比は大きな燃焼エネルギーを生み出しますが、その爆発力はガソリンエンジンより大きく、エンジン振動もガソリンエンジンよりクリーンディーゼルのほうが大きくなってしまいます。
エンジンの振動は車体に伝わってさまざまな音を発生する原因となっており、車全体としてもディーゼルエンジン車のほうがうるさくなってしまいます。
その点でガソリンエンジンは比較的音が静かで振動も少なく、車に乗っている人にとってはクリーンディーゼルより上質なものになります。
クリーンディーゼルでも振動対策や遮音材などによって振動や音を減らすことは可能ですが、どこまで静かにしてもガソリンエンジンの比には及ばないのが現状です。
なおクリーンディーゼルの音については以下の記事でさらに詳しく解説しています。詳細まで知りたい方はこちらもあわせて参考にしてみてください。
(クリーン)ディーゼルエンジンの音の特徴!カラカラ音の原因と低減対策まで全て解説!環境性能
エンジンが発生させる排気ガスによる環境への影響は前述でも触れたとおりディーゼルエンジンのほうが厳しく、クリーンディーゼルとなった今でも問題は残っています。
ガソリンエンジンでも排気ガス中に有害物質は発生しますが、ガソリンエンジンで主に発生するHC(炭化水素)、CO(一酸化炭素)、NOx(窒素酸化物)といった有害物質は、「三元触媒」と呼ばれる優秀な触媒のおかげでほとんど無害化されて排出されています。
三元触媒の実用以前はさまざまな問題がありましたが、実用化後にはこの触媒一種類でガソリンエンジンの排気ガス処理は可能となりました。
ですがディーゼルエンジンの場合は上記3つの有害物質に加えてPM(粒状黒鉛)の発生量が多く、PMの発生条件とNOxの発生条件が相反する関係にあるためにどちらかを減らすとどちらかが増えるというジレンマに陥ります。
※PM(煤)の問題の詳細は以下の記事をご参照ください。
(クリーン)ディーゼルの煤問題とは?除去・洗浄や対策方法まで全て解説!そのためディーゼルエンジンの排気ガス処理には次の3種類の触媒が必要となります。
触媒種類 | 処理する有害物質 | 発生時 |
DPF(Diesel particulate filter) | PM(粒状黒鉛):黒煙の原因 | エンジン低負荷時 |
酸化触媒 | HC(炭化水素)、CO(一酸化炭素) | エンジン低負荷時 |
・NOxトラップ触媒 ・尿素SCR触媒 | NOx(窒素酸化物) | エンジン高負荷時 |
ディーゼルエンジンは燃焼後にも排気ガスに使われなかった酸素が多量に残っていることから三元触媒が使えず、HCとCOのみの処理をする「酸化触媒」、NOxのみを処理する「NOx触媒」が必要となります。
このようにクリーンディーゼルの排気ガス処理には高い技術力と大きなコストがかかってしまうため、年々厳しくなる各国の排気ガス規制に対してクリーンディーゼルは開発が厳しくなる傾向にあります。
ガソリンエンジンではこういった問題はほぼなく、現行技術のアップデートで十分将来的にも対応可能です。
なおガソリンエンジンでも「直噴エンジン」の場合にはPM発生が多いという点があり、現在は規制されていないものの将来的には直噴ガソリンエンジンのみに規制が出る可能性はあります。
直噴エンジンとは?メリット3つとデメリット4つ!不具合と耐久性が欠点?!CO2排出量の差
上記のように排気ガス規制に対して不利な側面のあるクリーンディーゼルエンジンですが、それでも欧州でのシェアが高いのにはこのエンジンがもつCO2排出量の少なさがあります。
クリーンディーゼルは前述で述べたとおりガソリンエンジンよりも燃料消費量が少ないというメリットがあり、構造的に燃費が良いエンジンです。
燃料消費量が少ないということは、その分燃料燃焼時におけるCO2発生量が少なくなるわけで、地球温暖化の原因物質であるCO2だけに限ってみればクリーンディーゼルのほうが排出量は少なくなります。
また燃料である軽油についても、成分的に燃焼時のCO2生成量がガソリンより少ないという特徴があり、この面においてもCO2排出量を削減することができます。
欧州では環境保全のために、特にCO2排出量の大小が注目されており、その観点と燃費の良さからクリーンディーゼルエンジン車が選ばれているのです。
なおクリーンディーゼルの燃料については以下の記事でさらに詳しく解説しています。詳細まで知りたい方はこちらもあわせて参考にしてみてください。
(クリーン)ディーゼルの燃料は軽油?灯油やガソリンを給油しても走れる?車の維持費
車の購入時に気にすることの一つに「年間の車の維持費」という項目がありますが、ガソリンエンジンとディーゼルエンジンを比較した場合にはディーゼルエンジンのほうがコストがかかりやすいという特徴があります。
どちらのエンジンもエンジンとしての基本構造にはあまり変化がなく、使われる部品も昨日や耐久性に差はあるものの、基本的な保証の考え方はメーカーごとに一定です。
そのため維持費という観点で見た場合に、この2つのエンジンで差が生まれやすいのはエンジンオイル交換の面です。
エンジンオイルはエンジン内部の潤滑、冷却、密閉、ゴミ除去などさまざまな役割を果たしており、劣化が進むので一定距離ごとに定期交換が必要なものです。
ガソリンエンジン車は一般的には10,000kmごとに交換するようにメーカー基準が定められていますが、一方でクリーンディーゼルは5,000kmごとに交換が必要です。
その差を生みしているのはターボチャージャーの存在で、クリーンディーゼルには出力とトルクの底上げのために必ずと行ってよいほど装着されています。
ターボエンジンとは?仕組み/構造は?メリット2つとデメリット4つ!ターボチャージャーは排気ガスのエネルギーで吸気を圧縮してエンジン出力を上げる部品ですが、その内部には高速の回転部分があり、そこの潤滑と冷却のためにエンジンオイルが循環しています。
そのため自然吸気のガソリンエンジンと比べるとエンジンオイルの劣化が早くなっており、5,000kmごとの交換が推奨されているので、その分維持費はメンテナンス費用の形でクリーンディーゼルのほうが維持費が高いと言えるでしょう。
ターボ車のエンジンオイルの交換時期は?おすすめのオイルはこれ!なおクリーンディーゼルの維持費については以下の記事でさらに詳しく考察しています。詳細まで知りたい方はこちらもあわせて参考にしてみてください。
(クリーン)ディーゼルの維持費は安いかハイブリッド、ガソリンと比較!お得か高いか決着!コスト面
ガソリンエンジンとクリーンディーゼルにはエンジン本体のコストについても明確な差があり、その差はそのまま車両価格の差に直結します。
エンジンコストで高いのはクリーンディーゼルのほうで、その要因はまずエンジン本体です。
ディーゼルエンジンの本体系は高い燃焼エネルギーに耐えられるように頑丈にする必要があり、必然的に重たく高コストになります。
またエンジンの燃料ポンプなどその他のデバイスも大型で複雑な部品が多く、ガソリンエンジンに比べるとほとんどの部分が割高となります。
またクリーンディーゼルエンジンには不可欠な排気ガス処理の触媒も、貴金属の触媒を多用するので非常に高価な部品です。
しかも年々厳しくなる排気ガス規制に対して触媒を大型化しなくてはならず、クリーンディーゼルエンジンのコスト増加はとどまるところを知りません。
そのせいで将来の排気ガス規制への対応が難しいとして、クリーンディーゼルエンジンの開発を中止するメーカーも出てきているほどです。
その一方でガソリンエンジンは基本構造がクリーンディーゼルエンジンより軽量コンパクトにできるのでコストを抑えることができ、各種デバイス類もディーゼルエンジンほど高価ではありません。
触媒も三元触媒にも貴金属は使われていますが、そもそも大きさが小さくて済んでいますし、クリーンディーゼルのように3種類も不要な点で大きなコストメリットが生まれています。
こういった違いから一般的にクリーンディーゼル車の価格はガソリン車より高く、大衆車で300,000円近い価格差が生まれています。
なおクリーンディーゼル搭載車については以下の記事で詳しく紹介しています。興味のある方はこちらもあわせて参考にしてみてください。
クリーンディーゼル搭載車一覧とおすすめ車種まとめ!SUVからミニバンまで全て紹介!これから車の購入を考えているなら、値引き交渉の正しいやり方を覚えておくといいですよ。このやり方を知らないと最大60万円以上も損します。
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税金面
車を所有していると必ず何種類かの税金を支払わなければなりませんが、これについてもガソリン車とクリーンディーゼル車では差が生まれます。
というのもクリーンディーゼル車は現在日本の税制上で「エコカー減税」の対象となっており、燃費の低さとCO2排出量の少なさからハイブリッドカー並のエコカーとして扱われています。
そのためガソリン車とクリーンディーゼル車の違いは大きく、各種税金面の違いを見ていきましょう。
なおこれらの制度は今後変更される可能性はあります。
自動車税
自動車税は車を所有している人にかけられる税金で、毎年4月に税金が発生します。
現在の制度では自動車税の減免範囲が次のように決められています。
減税率 | 車種 |
75%減税 | ・電気自動車 ・燃料電池車 ・天然ガス自動車(平成21年排ガス規制NOx10%以上低減車) ・プラグインハイブリッド自動車 ・クリーンディーゼル乗用車(平成21年排ガス規制適合車) ・ガソリン車(ハイブリッド車を含む)のうち平成27年度燃費基準+20%達成かつ平成32年度燃費基準達成(平成17年排ガス規制75%低減車) |
50%減税 | ・平成27年度燃費基準+20%達成かつ平成32年度燃費基準未達成(平成17年排ガス規制75%低減車) ・平成27年度燃費基準+10%達成車(平成17年排ガス規制75%低減車) |
現在の制度ではクリーンディーゼル車はどんな車種でも75%減税を受けられるのに対し、ガソリンエンジン車は何年度の燃費基準に対して上回っているかで減免範囲が決まります。
簡単に言えばガソリン車(ハイブリッド含む)は燃費が良ければ75%減免となりますが、燃費が下がるごとに50%減免、減免なしとなっていくのです。
これによって発生する自動車税額は次のとおりです。
総排気量 | 減額無し | 75%減税 | 50%減税 |
~1,000㏄ | 29,500 | 7,500 | 15,000 |
1,000㏄~1,500㏄ | 34,500 | 9,000 | 17,500 |
1,500㏄~2,000㏄ | 39,500 | 10,000 | 20,000 |
2,000㏄~2,500㏄ | 45,000 | 11,500 | 22,500 |
2,500㏄~3,000㏄ | 51,000 | 13,000 | 25,500 |
3,000㏄~3,500㏄ | 58,000 | 14,500 | 29,000 |
3,500㏄~4,000㏄ | 66,500 | 17,000 | 33,500 |
4,000㏄~4,500㏄ | 76,500 | 19,500 | 38,500 |
4,500㏄~6,000㏄ | 88,000 | 22,000 | 44,000 |
6,000㏄~ | 111,000 | 28,000 | 55,500 |
自動車税はエンジンの排気量で決まる税金ですが、日本で最も多く走っている1,000cc〜2,000ccの範囲では75%減税と減税なしでは毎年数万円の費用差が発生することとなります。
前述した車の維持費や、価格面では不利なクリーンディーゼル車ですが、税金の面では有利な点もあるのです。
自動車重量税
自動車重量税は車検時に発生する税金で、車の重量に対して税額が決まります。
こちらもエコカー減税の対象車には大きな税金面でのメリットがありますが、ガソリン車はエコカー減税対象車でないものもたくさんあります。
車両重量 | 2年自家用 | ||||||
免税 | 50%減税 | 本則税率 | エコカー以外 | ||||
右以外 | 13年経過 | 18年経過 | |||||
H28.3.31まで | H28.4.1以降 | ||||||
0.5t以下 | 免税 | 2,500 | 5,000 | 8,200 | 10,800 | 11,400 | 12,600 |
~1.0t | 5,000 | 10,000 | 16,400 | 21,600 | 22,800 | 25,200 | |
~1.5t | 7,500 | 15,000 | 24,600 | 32,400 | 34,200 | 37,800 | |
~2.0t | 10,000 | 20,000 | 32,800 | 43,200 | 45,600 | 50,400 | |
~2.5t | 12,500 | 25,000 | 41,000 | 54,000 | 57,000 | 63,000 | |
~3t | 15,000 | 30,000 | 49,200 | 64,800 | 68,400 | 75,600 |
自動車重量税の場合にはクリーンディーゼル車は現在免税扱いになっており、車検時に本則税率より数万円のコストメリットが生まれます。
ガソリン車はその燃費の達成度合いに応じて変わりますが、ハイブリッドカーでもなければ免税まではいきません。
この制度は初回車検時と最初の継続車検時の2回に限られているとはいえ、新車で購入した人には大きな費用面のメリットとなります。
なおハイブリッドとクリーンディーゼルを比較した記事もございますので、こちらもあわせて参考にしてみてください。
「ハイブリッド」vs「クリーンディーゼル」の違い8つ!燃費や維持費まで比較!自動車取得税
自動車取得税は車の購入時に発生する税金で、購入費用に対して計算式を適用して決められます。
新車購入時のみならず中古車購入時にも発生しますので、車の購入時には必ず発生すると考えるとよいでしょう。
燃費基準 | エコカー減税控除額 |
・電気自動車 ・燃料電池自動車 ・天然ガス自動車(平成21年排ガス規制NOx10%以上低減) ・プラグインハイブリッド車 ・クリーンディーゼル乗用車(平成21年排ガス規制適合の乗用車) ・平成32年度燃費基準+20%達成車 | 450,000円 |
平成32年度燃費基準+10%達成車 | 350,000円 |
平成32年度燃費基準達成車 | 250,000円 |
平成27年度燃費基準+10%達成車 | 150,000円 |
平成27年度燃費基準+5%達成車 | 50,000円 |
自動車取得税の減免制度もエコカー減税の対象者かどうかで決められており、クリーンディーゼル車は一律450,000円の控除を受けることが出来ます。
一方ガソリン車は燃費基準の達成度合いで大きく控除額が変わっており、クリーンディーゼル車と数十万円の開きがある場合も少なくありません。
自動車取得税は車の購入費用の一部と考えることができるので、クリーンディーゼル車は車自体の価格が高くても税金の控除でそれを補填できると言えるでしょう。
ガソリンエンジンとクリーンディーゼルはどちらがいいか
ガソリンエンジン車とクリーンディーゼル車には性能面、またはコストの面で様々な違いがあり、その特徴を考慮してどちらを購入するかを決めると良いでしょう。
ガソリンエンジン車は出力特性が素直でレスポンスに優れ、音も振動も静かなことから乗用車向けと言えます。
また車両価格自体はクリーンディーゼル車よりも安く購入しやすい半面、税金の面ではそこまでのメリットはありません。
それでもそもそもの車両価格が安ければガソリン車のほうがコストメリットは高いと考えてよいでしょう。
一方クリーンディーゼル車は音や振動の面ではデメリットがあるものの、そのトルクフルな走行感覚はこれまでの日本車にはあまり見られなかったものです。
街乗りなどでの快適な発進加速は運転も楽しく、クリーンディーゼルのほうが軽快な場面もあります。
高速走行はさすがにガソリン車には劣りスピードも伸びませんが、一般道走行メインなら十分です。
クリーンディーゼルの車両価格がガソリンエンジン車より高いのは確かですが、同一車種でガソリン車とクリーンディーゼル車がある場合、自動車取得税の減免額を考慮するとそんなに大きな差にならない場合もあります。
あとは燃費の差と燃料代の差で差額分を埋めていくという考え方です。
これらの違いを考慮した上で、最終的には実際に車を試乗してみてどちらが自分にとって良い車かどうかを見極めてから決めると良いでしょう。
なおディーゼルエンジンについては以下の記事でも取り上げているので、もっと詳しく知りたい方はこちらもあわせて参考にしてみてください。
クリーンディーゼルが今後普及しない理由3つ!将来性はあるか未来予想!規制が厳しすぎる?!(クリーン)ディーゼルのメンテナンスのポイント5つ!費用や水抜き、アドブルーまで解説!