ディーゼルエンジン車は欧州で幅広い支持を得ている車種で、日本でもここ数年で一気に種類が増加している車種でもあります。
ですがディーゼルエンジン車の特徴の一つとして同クラスのガソリン車よりも価格が高いという点があります。
今回はそんなディーゼルエンジン車の価格についてご説明します。
ディーゼルエンジン車の価格・値段の高さ
ディーゼルエンジン車がガソリンエンジン車より価格が高いのは事実であり、それにはきちんとした理由があります。
ですがまずは実際のいくつかの車種でディーゼルエンジン車とガソリンエンジン車がどのぐらい違うかを見てみましょう。
マツダ デミオ
マツダは日本メーカーとしてはディーゼルエンジン車を数多くラインナップしており、ひとつの車種でディーゼルエンジンモデルとガソリンエンジンモデルをそろえています。
その中でもデミオは同社のコンパクトカーのエントリーモデルで、比較的低価格の車種となっています。
スペック | xD(ディーゼルターボ) | 15C(自然吸気ガソリン) | 13C(自然吸気ガソリン) |
エンジン形式 | S5-DPTS(SKYACTIV-D) | P5-VPS(SKYACTIV-G) | P3-VPS(SKYACTIV-G) |
エンジンスペック | 1,498cc 直列4気筒DOHC16バルブ ターボ+インタークーラー | 1,496cc 直列4気筒DOHC16バルブ | 1,298cc 直列4気筒DOHC16バルブ |
最高出力 | 105ps(77kW)/4,000rpm | 110ps(81kW)/6,000rpm | 92ps(68kW)/6,000rpm |
最大トルク | 25.5kgf・m(250N・m)/1,500rpm~2,500rpm | 14.4kgf・m(141N・m)/4,000rpm | 12.3kgf・m(121N・m)/4,000rpm |
燃費(JC08モード) | 26.4km/L(AT) 30.0km/L(MT) | 19.0km/L(AT) | 24.6km/L(AT) |
価格 | 1,782,000円〜2,192,400円 | 1,490,400円〜2,019,600円 | 1,393,200円〜1,776,000円 |
※直列4気筒、DOHC、ディーゼルターボの詳細は以下の記事をご参照ください。
直列4気筒エンジンの特徴!どんな音?搭載車を日本車/外車の車種からそれぞれ紹介!DOHCエンジンとは?仕組み/構造は?ツインカムとの違いとは?!ディーゼルターボとは?速いのがメリットで寿命がデメリット?搭載車種も紹介デミオには1種類のディーゼルエンジンと2種類のガソリンエンジンモデルが設定されており、その価格差がよくわかります。
デミオのエントリーモデルは1.3Lエンジンモデルですが、ディーゼルエンジンは1.5Lでそのスペックには開きがあります。
価格面では300,000円〜500,000円ぐらいの価格差があり、スペックもさることながらコストメリットではガソリンエンジンに勝てません。
また同じ排気量の1.5Lガソリンエンジンと比較しても、トルクの高さがディーゼルエンジンの特徴ですが、価格面ではやはり開きがあります。
(クリーン)ディーゼルエンジンのトルクが大きい理由!トルクの大きい車種ランキングとともに解説!1.5Lガソリンエンジンは1.3Lガソリンエンジンよりコストがかかるのでそこには100,000円程度価格差が生まれますが、さらにディーゼルエンジンのほうが100,000円〜200,000円は高額です。
なおデミオについては以下の記事でも取り上げているので、興味のある方はこちらもあわせて参考にしてみてください。
デミオの加速性能を解説!0-100km/h加速タイムはどのくらい?デミオは雪道に弱い?雪道走行の性能について徹底分析しました!三菱 デリカD:5
デリカD:5はミニバン系の車種としては珍しくディーゼルエンジンモデルがあり、ガソリンエンジンモデルとともに人気の高い車種です。
スペック | 4WDクリーンディーゼル | 4WDガソリンエンジン | 2WDガソリンエンジン |
エンジン形式 | 4N14 | 4B12 | 4J11 |
エンジンスペック | 2,267cc 直列4気筒DOHC16バルブ ターボ+インタークーラー | 2,359cc 直列4気筒DOHC16バルブ | 1,998cc 直列4気筒DOHC16バルブ |
最高出力 | 148ps(109kW)/3,500rpm | 170ps(125kW)/6,000rpm | 150ps(110kW)/6,000rpm |
最大トルク | 36.7kgf・m(360N・m)/1,500rpm~2,750rpm | 23.0kgf・m(226N・m)/4,100rpm | 19.4kgf・m(191N・m)/4,200rpm |
燃費(JC08モード) | 13.6km/L | 10.6km/L | 12.4km/L〜15.0km/L |
価格 | 3,419,000円〜3,934,000円 | 2,855,520円〜3,731,400円 | 2,408,400円〜2,761,560円 |
デリカD:5にも1種類のディーゼルエンジンと2種類のガソリンエンジンが設定されており、また2種類のガソリンエンジンはそれぞれ2WDと4WDに別れます。
ガソリンエンジンは2WDの2.0Lエンジンがエントリーモデルで、2.4Lの4WDはそれより400,000円〜1,000,000円高い上位機種となっています。
しかしディーゼルエンジンモデルは排気量こそ2.2Lと少し小さいのに、価格面では最廉価モデルでも600,000円高、上位モデルだと2.4Lガソリンエンジンの上位機種より200,000円高額となっています。
このように国産メーカーのディーゼルエンジン車は、同クラスのガソリンエンジンと比較すると200,000円〜600,000円と大きな価格差が生まれるのが一般的です。
なおデリカD:5については以下の記事でも取り上げているので、興味のある方はこちらもあわせて参考にしてみてください。
デリカD:5の口コミ/評判!価格から外装や走行性能まで全てチェック!デリカD:5の燃費は悪い?街乗りや高速の実燃費は?改善し向上させる方法まで解説!BMW 320d
ディーゼルエンジン車は欧州からの輸入車にも多く設定されており、その一つが高級車メーカーとして名高いBMWの3シリーズです。
3シリーズはBMWの最も有名なセダンタイプの車種で、320dは3シリーズのディーゼルエンジン車を表すモデル名で国内の輸入車のクリーンディーゼル車代表車種の一つです。
3シリーズにはガソリンエンジンにさまざまな排気量のエンジンが設定されていますが、今回は同クラスである320iの2.0Lエンジン同士で比較してみます。
スペック | 320d BluePerformance | 320i |
エンジン形式 | B47D20A | B48B20A |
エンジンスペック | 1,995cc 直列4気筒DOHC16バルブ ターボ+インタークーラー | 1,998cc 直列4気筒DOHC16バルブ ターボ |
最高出力 | 190ps(140kW)/4,000rpm | 184ps(135kW)/5,000rpm |
最大トルク | 40.8kgf・m(400N・m)/1,750rpm~2,500rpm | 27.5kgf・m(270N・m)/1,350rpm~4,600rpm |
燃費(JC08モード) | 21.4km/L | 16.0km/L |
価格 | 5,620,000円〜7,240,000円 | 5,430,000円〜6,690,000円 |
3シリーズは日本では高級輸入車に位置づけられるモデルであり、その価格帯は前述のディーゼル車とは違うランクのものとなっています。
価格自体は5,000,000円〜7,000,000円代と高いのですが、面白いことにガソリンエンジンとディーゼルエンジンの価格差だけを見ると200,000円〜600,000円と日本車の価格差に近いものがあります。
ここまでの価格情報を見てみると、ディーゼルエンジン車は一貫してガソリンエンジン車より数十万円程度の価格差があることが分かるでしょう。
なお他のディーゼルエンジン車の価格については以下の記事でも詳しくまとめているので、詳細まで知りたい方はこちらもあわせて参考にしてみてください。
クリーンディーゼル搭載車一覧とおすすめ車種まとめ!SUVからミニバンまで全て紹介!これから車の購入を考えているなら、値引き交渉の正しいやり方を覚えておくといいですよ。このやり方を知らないと最大60万円以上も損します。
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ディーゼルエンジン車の価格・値段が高い理由
さてディーゼルエンジン車の値段が高い理由ですが、ガソリンエンジン車との構造の違いがその理由です。
現在最新のディーゼルエンジンは「クリーンディーゼルエンジン」と呼ばれており、次のようなコスト増加要因を抱えています。
エンジン本体構造が頑丈
まずディーゼルエンジンが基本的な構造的にガソリンエンジンよりコスト増となる理由として、エンジンの中心構造である本体系部品が頑丈にする必要があり、そのためのコストがかかっているのです。
ディーゼルエンジンは軽油を燃料として圧縮着火を燃焼方式にもつエンジンで、ガソリンエンジンのガソリンが燃料で火花点火するエンジンとは違っています。
(クリーン)ディーゼルの燃料は軽油?灯油やガソリンを給油しても走れる?ガソリンエンジンは「ノッキング」という特有の問題があってエンジンの圧縮比を高めることができず、エンジン内部で発生できる燃焼エネルギーが比較的低いです。
しかしディーゼルエンジンにはそういった縛りがなく、軽油自体の持つ燃焼エネルギー自体もガソリンより高いため、ディーゼルエンジンのほうが燃焼エネルギーが高くエンジン効率も高く出来ます。
ですが燃焼エネルギーが高いということはエンジンのシリンダーやピストン、コンロッド、クランクシャフトなどにかかる負荷も高まるわけで、それに耐えられるようなエンジン本体構造が必要になってしまいます。
そのような頑丈な部品構造をもたせると当然ながら部品コストの増加を招きますので、ディーゼルエンジンは基本構造からガソリンエンジンより高コストにならざるをえないのです。
しかし本体構造によるコスト増加はせいぜい数万円程度となりますが、前述した大きなコスト増加要因はこれ以外の点にあります。
なおディーゼルエンジンの構造については以下の記事でさらに詳しく解説しているので、詳細まで知りたい方はこちらもあわせて参考にしてみてください。
ディーゼルエンジンとは?仕組み/構造を簡単にわかりやすく解説!燃料噴射装置が高価
最新のクリーンディーゼルエンジンは「コモンレールシステム」と呼ばれる燃料噴射装置を持っており、軽油の燃焼効率を高めるために非常に高圧の燃料を細かな霧のようにエンジン内部に噴射しています。
ですがこのコモンレールシステムの構成部品はどれも高額な部品で、ディーゼルエンジンのコスト増加に拍車をかけています。
コモンレールシステムは燃料である軽油を20気圧という非常に高い圧力に高めることが特徴で、ガソリンエンジンの何倍もの燃料圧力になっています。
この燃料の圧力に耐えられるような燃料配管やコモンレールなどの部品は総じて頑丈にならざるを得ず、どうしてもコストは増加します。
またこの高圧燃料を作り出しているのは専用の高圧燃料ポンプですが、ポンプというもともと複雑な部品であるのに加えて高圧に耐えられる構造を持たせなければならないことから、この高圧燃料ポンプもコスト増となります。
さらにはその高圧燃料をシリンダー内に噴射する燃料インジェクターも頑丈であることは当然ですが、さらに電子制御により非常に細かく燃料噴射をコントロールする部品となっており、噴射制御部分にも大きなコストがかかっています。
また燃料インジェクターは各シリンダーに1本ずつ必要なので、ディーゼルエンジンに多い直列4気筒エンジンでは4本のインジェクターが使われます。
これらの燃料噴射システムはトータルで100,000円近くかかるほどの高額部品ですが、現在のクリーンディーゼルの中核となる技術であり欠かせることはできません。
なおクリーンディーゼルエンジンの仕組みの詳細は以下の記事で解説しているので、詳しいところまで知りたい方はこちらもあわせて参考にしてみてください。
クリーンディーゼルエンジンとは?メリット2つとデメリット3つ!仕組み/構造の特徴まで解説!排気ガス処理装置の価格高騰
もう一つクリーンディーゼルエンジンの中で大きなコスト増加要因となっているのが排気ガス処理装置です。
ディーゼルエンジンの排気ガスにはガソリンエンジン以上に有害物質が多く、昔のディーゼルエンジンは排気ガス処理装置が弱かったので、大気汚染の大きな原因となっていました。
そのため年々ディーゼルエンジンの排気ガス規制は世界中で厳しくなっていき、ディーゼルエンジンの構造もそれに合わせて排気ガス処理装置の開発が進んでいます。
現在では有害物質をほとんど排出しないほどその性能は向上しており、次の主要な有害物質に対応した排気ガス処理触媒が搭載されています。
処理する有害物質 | 触媒種類 | 処理方法 ※化学式ではありません |
HC(炭化水素)、CO(一酸化炭素) | 酸化触媒 | HC+CO→CO2(二酸化炭素)+H2O(水) |
PM(粒状黒鉛) | DPF(Diesel particulate filter) | PMを再燃焼→CO2 |
NOx(窒素酸化物) | NOxトラップ触媒 | NOx(NO、NO2)→N2(窒素)+O2(酸素) |
※NOxトラップ触媒か尿素SCR触媒のどちらかを使用 | 尿素SCR触媒 | NOx+尿素水→NH3(アンモニア) NH3+O2、NOx→N2(窒素)+H2O(水) |
これらの触媒はそれぞれ担当する有害物質の種類が違いますが、どの触媒にも希少な物質である貴金属が触媒物質として使われており、これがコスト増加要因の最たるものです。
触媒の性能を左右する最大の要因は触媒容量にあり、排気ガス処理能力を高めるためには触媒を大きくしなければならず、貴金属の使用量も増えます。
ディーゼルエンジンの排気ガス規制は毎年のように厳しくなっていきますので、ディーゼルエンジンの触媒にかかるコストは常に増加傾向にあるのです。
一方ガソリンエンジンは三元触媒と呼ばれる一種類の触媒で全ての有害物質を処理することが可能で、その排出量も少ないことから触媒容量も小さくて済みます。
触媒は一種類でも数万円〜100,000円弱する高額なものなので、その搭載個数が多いことがディーゼルエンジンを高額にしています。
過給器+インタークーラーの装着
これはディーゼルエンジンに限ったコスト要因ではありませんが、現在のディーゼルエンジンにはほぼ全てに過給器であるターボチャージャーと冷却器のインタークーラーが装着してあり、その部品追加分コストが増加します。
インタークーラーターボとは?仕組み/構造は?ターボチャージャーとの違いまで解説!ディーゼルエンジンは最高出力の面ではガソリンエンジンに劣るデメリットがあるのですが、ターボチャージャーとインタークーラーの装着によってその対策が可能となるため、商品性の向上のためにディーゼルエンジンに装着することが一般的となっています。
またディーゼルエンジンはターボチャージャーと相性が良くて、エンジン効率向上や排気ガス対策のためにも必要な部品となっています。
ガソリンエンジン車でもターボチャージャーやインタークーラー付きのエンジンはありますが、国産車の大半は過給器のない自然吸気エンジンでありコスト面ではやはり自然吸気エンジンに分があります。
NAエンジン(自然吸気エンジン)とは?メリット5つ!音が最強の魅力?!それと比較してしまうとディーゼルエンジン全般はターボチャージャーとインタークーラーおよび関連部品であるホースや配管類の分コストがかかりますので、数万円程度は上がってしまいます。
遮音材の追加
ディーゼルエンジンにはガソリンエンジンにはない特有のカラカラ音が発生する特徴がありますが、この音はディーゼルエンジン車の大きなデメリットの一つなので対策として遮音材の追加が必要になります。
ですが遮音材は効果的に使うには結構なコスト増加原因となります。
遮音材はその名の通り音を遮断するための材料で、車外から車内に聞こえる音や、エンジン音が車内に伝わるのを防いで静かな車内を作り上げるものです。
スポンジのような吸音効果のある材料を車体パネルの内側などに貼り付けるのですが、音というのは少しでも隙間があると静かにならないので、効果を出すためには結構な面積に貼り付ける必要があります。
ガソリンエンジンより煩いディーゼルエンジンなので、特に乗用車系の車種に対しては車の魅力を保つために遮音材の設定は必要です。
ですがそのためにはどうしても車両価格の上昇は避けられず、ディーゼルエンジン車が高額になってしまう原因になります。特に高級車になるほど遮音材の必要性が高まるので使う量も増え、さらなるコスト増加要因となります。
車がうるさいというのは購入を決めるかどうかの大きな理由となるのである程度静かにしなければなりませんが、その分車両価格も上がってしまうというジレンマを抱えています。
なおディーゼルエンジン車の音については以下の記事でさらに詳しく解説しているので、興味のある方はこちらもあわせて参考にしてみてください。
(クリーン)ディーゼルエンジンの音の特徴!カラカラ音の原因と低減対策まで全て解説!ディーゼルエンジン車のコストパフォーマンス
ディーゼルエンジン車はどうしてもガソリンエンジン車よりもコストが高いのですが、ガソリンエンジンよりコストパフォーマンスのある面もあり、燃費の部分で有利な特徴を持ちます。
ディーゼルエンジン車はガソリンエンジン車よりも燃料の消費量が少なく、これがディーゼルエンジン車がエコカーとして認定されている理由です。
また日本ではディーゼルエンジンの燃料である軽油がガソリンよりも単価が安く、レギュラーガソリンよりも約10円ほど安くなります。つまりガソリンエンジンよりも燃料が少なくて済み、さらに値段も安いということで燃料に関する維持費が安いのです。
この特徴からディーゼルエンジン車がガソリンエンジン車より高額であっても、長い目で見ると燃料費の差でそのコスト差が埋まっていくという側面があります。
当然走行距離の多さに応じて差が埋まっていくのですが、現在のクリーンディーゼル車の燃費と燃料代で考えると300,000円程度の車両価格の差を埋めるのであれば、走行距離100,000km程度が必要となります。
ディーゼルエンジン車は頑丈で長く乗り続けることができる車種ですので100,000km走行も決して不可能ではありませんが、そのコストパフォーマンスが現れるにはかなり時間がかかるのが難点です。
なおディーゼルエンジンについては以下の記事でも取り上げているので、興味のある方はこちらもあわせて参考にしてみてください。
クリーンディーゼル車は燃費が悪い?低燃費車を比較してランキングで紹介!ディーゼルエンジンの寿命/耐久性は走行距離や年数だとどれくらい?