クラウンといえば日本が誇るプレミアムセダンであり、日本でのネームバリューは不動の地位といえます。
しかしいろいろな日本車が海外で販売されている中、なぜか海外でのクラウンの評判はありません。
実はクラウンは日本専売のモデルで、海外ではほとんど販売されていないのです。
なぜ日本が誇るプレミアムセダンであるクラウンを、海外では積極的に販売しないのでしょうか。
ここではその理由を解説していきます。
クラウンの海外販売状況
クラウンのレビューは海外からはほとんどきません。それもそのはず、車に対する要求が大きい欧米・欧州にはクラウンは販売されていないのです。
なぜそのようなことになってしまったのでしょうか。クラウンの海外販売の状況を解説していきます。
実はクラウンはアメリカでの販売に一度失敗しているのです。
クラウンの海外戦略の失敗
実はクラウンは初期の頃は欧米で販売されていました。
それは1957年。トヨタはアメリカにディーラーを構えアメリカ販売に力を入れようとしていた時期でした。
しかし日本とはぜんぜん違うアメリカの道路事情にはクラウンは合わず、まともに走ることもできないという状態で、パワー不足という角印を押されてしまいました。
その後、排気量を増やし出力向上の改良を施しましたが、今度は連続高速走行によってオーバーヒートを起こしてしまったり、車自体の構造が弱く、操縦安定性が不安定で危険な車というふうに言われてしまいました。
その他にもエンジンがかからなくなるなど電装系の面でも不安定さが目立ち、車としての技術レベルの差がひどく、結局アメリカでの使用に合わないため一旦輸出を停止してしまったのです。
しかしその後もクラウンの対米輸出はうまくいかず、4代目の終了に合わせてクラウンの海外販売は終了しました。
その後の海外販売の状況
その後、中東やアジア諸国など、経済事情が日本ほど進んでいない国で大排気量タイプのエンジンを積んだクラウンが販売されるようになりました。
しかしどちらかというと後進国への市場を開くためのものであり、トヨタのブランド力を強める積極的な販売とは言い難いところはあります。
ただそのおかげで現在中国ではクラウンは高級車として捉えられるようになっており、クラウンマジェスタをベースに開発した、大きめのクラウンが中国で製造販売されており、好調な販売を続けています。
クラウンマジェスタの詳細は以下の記事で解説しているので、こちらもぜひご覧ください。
クラウンマジェスタの試乗レビュー!乗り心地の感想・インプレッション!クラウンが海外で販売されていない理由
一度欧米での販売戦略に失敗し撤退を余儀なくされたクラウンですが、現在の車はかなり進化しており海外でも十分戦える性能を持っていると言えます。
それでもなぜトヨタはクラウンを海外市場に出向かせないのでしょうか?
それには5つのクラウン特有の車格と販売戦略があったのです。
国内の道路事情に合わせた車両
クラウンは他の大型セダンと違い、日本国内の道路事情に合わせて開発されています。
そのため車両の全幅はこのクラスの大型車に比べ、小さめにできています。
そのおかげで狭い道路にもこのクラスの車にしては入りやすく、日本国内の立体駐車場などにも入りやすいサイズとなっています。
さらにクラウン独特のふわふわした乗り心地は、日本国内の道路の制限速度で気持ちよく乗ることができるように最適な調整がされています。(乗り心地の詳細は以下の記事をご参照ください。)
新型クラウン(ハイブリッド/ターボ)の試乗レビュー!乗り心地の感想・インプレッション!そのため、欧州や欧米での高速走行を想定しておらず、海外の道路では安定性が足りなかったりと不安定となります。
したがって体格の良い外国人にとってはクラウンは狭く感じたり、ハイスピードで走る道路では安定感に欠けるなど良いとこ取りはできていないのが現状です。
日本人が好む味付け
クラウンというネームバリューは日本人のDNAに組み込まれているかのように良くも悪くも響きます。
その乗り心地もフワフワした柔らかい足回りとすばらしい静粛性、取り回しのしやすい小回りの良さと必要以上に大きくない車幅とすべてが日本人が好むように開発されています。(静粛性の詳細は以下の記事をご参照ください。)
クラウンの静粛性はいかに?!エンジン音やロードノイズはうるさい?つまり日本人が日本国内で運転するのに最適な車に仕上がっているため、海外市場ではどうしても中途半端な車となっており使い勝手が悪く感じられてしまうのです。
中途半端な車格
日本でも販売されているハイブリッド搭載で低燃費が売りのトヨタカムリ。日本ではクラウンより下の車格として販売されていますが、実はクラウンより車体が大きく中が広くできています。
そのため海外では車内の広くて大きなカムリのほうが需要が呼び込めます。さらにカムリの上にはアヴァロンというフラッグシップセダンがいるためクラウンの入り込む場所がありません。
そしてクラウンはプレミアムセダンという位置づけのため、FR特有のスポーツセダンというジャンル分けで持っていくこともできません。
高級車として売るには、トヨタの上位ブランドであるレクサスがいるためそこも厳しいのです。
※クラウンが高級車かどうかについては以下の記事で考察しています。こちらも参考にしてみてください。
クラウンは高級車じゃない?大衆車?世間のイメージを元に解説!さらに車体のサイズとしてもそれなりに長い全長を持ちながらも日本国内に合わせた狭い全幅は、車のスタイルとしても中途半端です。
つまりこの中途半端な車格は日本ならではの仕様になっていて、海外での需要はあまりありません。
レクサスブランドの存在
先ほどお話したとおりで、海外では完全にトヨタの上位ブランドとなっているレクサスがあります。そのためトヨタブランドでプレミアム路線を追求するのは難しいという現状があります。
国内でトヨタがセルシオという名前で売っていたLSも、今では完全に海外で運転するための仕様になっています。(LSの詳細は以下の記事をご参照ください。)
レクサスLSの試乗レビュー!乗り心地の感想・インプレッション!それと同様にクラウンをレクサスブランドにして販売するという手もあるかもしれません。
しかしそれも難しいのです。例えば、レクサスで販売されているクラウンサイズのセダンにGSがあります。(GSの詳細は以下の記事をご参照ください。)
レクサスGSの試乗レビュー!乗り心地の感想・インプレッション!この車とクラウンを比較してみると車幅がGSの方が40mmも広く、体格の大柄な欧米人からするとクラウンでは狭く感じてしまいます。
対応できるスピードレンジも全く違うため、安定感のない走りにレクサスブランドの名前を落としてしまう可能性があります。
国内仕様でできているクラウンをレクサスでプレミアムセダンで売ることも無理なのです。
車両価格
クラウンの価格は4,606,200円〜7,187,400円ほどです。
中低速域での走行に適した車体にチューニングされたクラウンは、同じ価格帯の車と比べるとどうしても高速走行での性能で劣ってしまいます。
それなりのお金を出しているのに高速道路ではコンパクトカー程度の安定しかないクラウンではこの価格帯ではその他のメーカーにどうしても負けてしまいます。
なお日本では正しい値引き交渉をやれば、上記の価格よりもずっと安くクラウンを購入できます。
このやり方を知らないと最大60万円以上も損しますよ。詳しく知りたい方は、下記の『たった1分で車を60万円値引きできる裏技』のページをご覧ください。 たった1分で車を60万円値引きできる裏技!安く購入する秘密のテクニックとは?!海外で人気のある日本車とその理由
日本国内に合わせて開発されたクラウンは海外では戦っていけない理由を解説していきました。
では海外でも通用している国産メーカーの車はどんな車なのでしょうか。
ここでは海外でも売れており、日本国内でも販売されている車をピックアップしていきます。
トヨタ カムリ
先ほど紹介したトヨタ カムリです。カムリは国内ではミドルクラスセダンとして販売されています。海外でも同様にミドルセダンとして展開されています。
国内では2.5lエンジンと2.5lハイブリッドが売られていますが、海外ではそこに3.5lのV6エンジンが追加されています。(V6エンジンの詳細は以下の記事をご参照ください。)
V6エンジンの特徴!どんな音?搭載車を日本車/外車の車種からそれぞれ紹介!やはり大排気量はアメリカ市場には重要なようです。
駆動方式がFFのため、非常に広い車内となっています。シートも大きくできており、ゆったりできる車内は海外でも人気が出るのがわかります。
乗り心地は市街地ではちょっと硬めですが、そこまで気になるほどではなく、高速道路での運転だと安定して走りそうな乗り心地です。
なおカムリについては以下の記事でも取り上げているので、興味のある方はこちらもあわせて参考にしてみてください。
カムリの口コミ/評判!価格から外装や走行性能まで全てチェック!カムリの燃費は悪い?街乗りや高速の実燃費は?改善し向上させる方法まで解説!日産 スカイライン
スカイラインは国内では日産ブランドで販売されているスポーツセダンです。海外では日産の上位ブランドであるインフィニティで取扱がされている車です。
国内では2lターボと3.5lハイブリッドが展開されていますが、アメリカでは2lターボと3lターボエンジンが搭載されています。(ターボエンジンの詳細は以下の記事をご参照ください。)
ターボエンジンとは?仕組み/構造は?メリット2つとデメリット4つ!ちなみに3lターボエンジンは300馬力のタイプと400馬力のタイプがあります。
駆動方式はFRのスポーティセダンで、現在世界一速いハイブリッドとして有名です。車内空間は前列は十分な広さを持っていますが後席は狭さを感じる作りです。
低速走行時は硬めのセッティングのためか路面の状態を結構拾いますが、高速道路などでは非常に安定感のある走りです。
しかしアダプティブステアリング(ハンドルと問屋が直接つながってないステアリング)のおかげでハンドルに余計な振動が伝わってこないため、低速時の振動は多少改善されているようです。
マツダ アテンザ
アテンザはマツダのフラッグシップセダンとして展開されているセダンです。海外ではMATSUDA6というネーミングで販売されています。
アメリカではディーゼルではなく、2.5lのガソリン車とターボ車の2種類のエンジンが搭載されており、加速力などパワーを重視している欧米らしいラインナップになっています。
駆動方式はFFで車内もある程度広く、マツダならではのデザイン性も含め人気があります。
国内ではゴツゴツした乗り心地が不満という声が多いですが、やはり高速走行が必要な海外の道路事情にはそれが安定感があり、適しているのかもしれません。
なおアテンザについては以下の記事でも取り上げているので、気になる方はこちらもあわせてご参照ください。
アテンザの口コミ/評判!価格から外装や走行性能まで全てチェック!アテンザの燃費は悪い?街乗りや高速の実燃費は?改善し向上させる方法まで解説!スバル レガシィ
レガシィは国内ではスバルのフラッグシップセダンとして展開されている車です。海外でもレガシィという名前で販売されています。
アメリカでは2.5lエンジンの他に3.6lエンジンも選ぶことができます。エンジンのパワーを重視しているアメリカ市場にはしっかりと適応しています。
その他にもスバルの4WDやアイサイトと言った装備は海外でも定評があり、非常に人気のあるメーカーとなっています。
レガシィの走行性能は以下の記事でも解説しています。興味のある方はこちらもご参照ください。
レガシィB4は速いのか?加速性能から0-100km/h加速タイムまで解説!クラウンは日本人による日本人のための車
クラウンが海外で販売されていないのは日本の道路事情に特化した高級車であり、海外ではイレギュラーな車なのです。
トヨタ以外のメーカーは海外販売のために作った車を日本に持ってきて売るため足回りがゴツゴツして感じたり、車幅が広く取り回しが難しいなど、日本人の感覚に合わない車になりがちです。
つまりトヨタのクラウンは日本人が日本の道路を走るために開発した高級車だったのです。クラウンが海外で販売されている他の車に比べて劣っているわけではなく、日本の車文化に合わせた専用の珍しい高級車だったのです。
これからクラウンを買おうと思っている方は、以下の記事もぜひあわせてご覧ください。購入の参考になりますよ。
【画像/写真】新型クラウンの内装/インテリア!運転席周りや後部座席から荷室/トランクまで紹介!新型クラウン(ハイブリッド/ターボ)の試乗レビュー!乗り心地の感想・インプレッション!