「いつかはクラウン」そんなキャッチコピーにもあるように、長らく国内トヨタの高級車として人々の憧れの存在でもあったクラウンは1955年に誕生しました。
しかし、近年ではレクサスブランドの誕生などもあり、「高級車としての存在感は薄らいできたのではないか?」という意見から、「やっぱりクラウンは今でもトヨタの最上級車だ!」という風に考えている方もいて、クラウンに対する印象は多様化してきていると言えます。
2018年、フルモデルチェンジにより若返りをはかった15代目クラウンは果たして今も高級車なのか? それとも一般大衆車に含まれるのか? 徹底的に解説していきたいと思います。
トヨタは高級車というよりは上質な車としてクラウンを生産している
クルマはお手頃な価格のものから家を一軒買うのと同じくらいの値段がするもの、はたまた億を超えるスーパーカーと言われるものまで、とても幅広く多種多様なものが世の中には存在しています。
そういった中で自分の取り巻く環境によって、高級車と大衆車のボーダーラインは個人個人で変わってくるものかもしれません。
そこで、実際にメーカーとしてクラウンは高級車という括りで考えているのか? また、一般的にクラウンの価格帯は高級車と言えるのか? 深掘りしていきたいと思います。
メーカーのクラウンに対する想い・考え方
クラウンを取り扱っているトヨタの販売チャンネルは、基本的に「トヨタ店」のみとなっています。(東京トヨペットのみクラウンの取り扱いあり)
トヨタの販売チャンネルは以下の4つのチャンネルで構成されています。
- トヨタ店
- トヨペット店
- カローラ店
- ネッツ店
それぞれのチャンネルは、ターゲットにしているユーザー層が異なっています。
※店ごとの違いの詳細は以下の記事で解説しているので、詳細まで知りたい方はこちらもあわせて参考にしてみてください。
トヨタと「ネッツ」「トヨペット」「カローラ」の違いとは?わかりやすく解説!クラウンは上質な車種の多いトヨタ店で販売されている
この中でも「トヨタ店」は最も歴史のある販売チャンネルで、その歴史や伝統に裏付けられた確かなおもてなし、上質さをユーザーに提供することを謳った販売チャンネルで、4つの販売チャンネルの中では最も取り扱い車種の価格帯が高くなっています。
クラウン以外だと、国内だけでなく海外も含めて活躍する、歴史ある本格派ハイエンドSUVの代名詞ランドクルーザーもトヨタ店専売となっています。
アクアやルーミーといった150万円前後の価格帯の車の取り扱いもありますが、こうした販売ラインナップからもトヨタ店の販売チャンネルとしての位置付けは、ある程度ご理解いただけるでしょう。
アクアの口コミ/評判!価格から外装や走行性能まで全てチェック!ルーミーの口コミ/評判!価格から外装や走行性能まで全てチェック!よって、少なくとも世界のトヨタというメーカーはクラウンを、トヨタブランドを代表する上質かつ歴史あるmade in Japanの車という認識で車づくりをしていると言えます。
今までのクラウンとの違い
15代目のクラウンは顧客の若返りをはかり、ラグジュアリースポーツをまとって生まれ変わりました。
今まで「マジェスタ」「ロイヤル」「アスリート」という3つのシリーズがあったものを1つに集約した形になりました。(下の画像はマジェスタ、ロイヤル、アスリートの順番で並んでいます。)
そして、木目調などをあしらい落ち着いた雰囲気のあった歴代クラウンとは違い、カーボン調のパネルを採用するなど全体的にスポーティーな要素が増えました。
保守的な人からは批判的な意見もあるようですが、先代クラウンはアスリートがもっとも売れ筋であったにも関わらず、世間の人たちは伝統的な落ち着きのあるロイヤルをクラウンとしてイメージするようです。
ちなみにそれぞれの位置付けを簡単に説明すると以下のようになります。
- マジェスタ…もっとも高級なクラウン
- ロイヤル…落ち着きのある上品なクラウン
- アスリート…スポーティーなクラウン
トヨタはこうしたイメージを打破して、革新的に挑戦し続けるという強い想いを持って現行型の開発に挑みました。
その強い想いがあってこそ、3つのシリーズを廃止するという思い切った決断ができたのでしょう。クラウンの開発責任者は以下のように語っています。
ひと言で言えば、世界のどこに出しても戦えるクルマ、世界基準をすべて凌駕するクルマにしようと決めたんです
1ランク上のユーティリティ
最新機能や快適装備といったものは基本的にはじめは高級車に装備されて、それが徐々に一般的になると様々なクルマにも装備され、身近になってくるものです。
例えば、本革シート仕様は全席シートヒーターが装備されており、さらにフロントシートのみですが、暑い夏に重宝するシートベンチレーション機能が備わっています。
以前は、高級車のレザーシートに快適装備として付いてたシートヒーターも、軽自動車やコンパクトカーのファブリックタイプのシートでも装備されているのが珍しくなくなってきました。
しかし、シートベンチレーション機能を持ったクルマはまだまだ少なく、真新しい機能です。シートベンチレーション機能があると聞くと、「高級なクルマなんだな」という印象を受けます。
また、先代から採用されているトヨタマルチオペレーションタッチは、ナビの下に備わるタッチ操作可能な液晶パネルで、ここで空調設定の変更や様々な車両システムの設定や変更ができるようになっています。
また、一部グレードで標準装備されているドアのイージークローザーは、ミニバンのスライドドアでもない限り、なかなか一般的な乗用車ではお目に掛からない装備のひとつです。
こうして、目に見えて分かる装備等を見るだけでも、他の国産車と比べてさすがはクラウンと感じるところが多いのではないでしょうか。
なおクラウンの内装については以下の記事で詳しくまとめているので、詳細まで知りたい方はこちらもあわせて参考にしてみてください。
【画像/写真】新型クラウンの内装/インテリア!運転席周りや後部座席から荷室/トランクまで紹介!クラウンの価格帯は間違いなく高級車と言える
クラウンの価格帯は以下のとおりです。
搭載エンジン | 車両価格帯 |
2.0Lガソリンターボ | 460万円〜559万円 |
2.5Lハイブリッド | 497万円〜632万円 |
3.5Lハイブリッド | 623万円〜718万円 |
またグレード構成には各エンジン共にRS仕様と標準仕様があり、RS仕様はよりスポーティーなクラウンで、実質アスリートの後継という位置づけになっています。各仕様ごとに価格帯を分けた表は以下のとおりです。
RS仕様搭載エンジン | 車両価格帯 |
2.0Lガソリンターボ | 500万円〜559万円 |
2.5Lハイブリッド | 541万円〜601万円 |
3.5Lハイブリッド | 690万円 |
標準仕様搭載エンジン | 車両価格帯 |
2.0Lガソリンターボ | 460万円〜541万円 |
2.5Lハイブリッド | 497万円〜632万円 |
3.5Lハイブリッド | 623万円〜718万円 |
価格は先代より大幅にアップ
先代まではロイヤル・アスリートで400万円を切るモデルがあったのですが、現行型は最低でも460万円〜です。装備の差はあれど、価格帯が高くなりました。
ちなみに先代マジェスタは642万円〜714万円という価格帯で、3.5Lハイブリッドを搭載したクラウンが623万円〜718万円なので、3.5Lハイブリッドモデルは従来のマジェスタの位置づけですね。
価格帯を見てもわかるようにクルマは、グレードによって安いものから高いものまでかなり大きな開きがあります。
しかし、今まで「いつかはクラウン」と言われてきたクルマのベースグレードの価格が、先代と比べておよそ80万円も値上がりしていることを考えると、まだまだクラウンは高級車と言えるでしょう。
3.5Lハイブリッドはレクサスと同じパワートレイン
実質、マジェスタの後継とも言えるグレードのパワートレインに採用されている3.5LのV6エンジン+マルチステージハイブリッドシステムのパワートレインは、レクサスの「LS500h」や「LC500h」に搭載されているものと同じものです。
LSやLCは誰もが納得のレクサスのフラッグシップモデルで、1,000万円オーバーが当たり前のクルマです。
レクサスLSの試乗レビュー!乗り心地の感想・インプレッション!そんなクルマと同じパワートレインが、一般大衆車に搭載されるでしょうか?
クルマの心臓とも言えるパワートレインに、トヨタの技術力を示す最新かつ高性能なエンジンとハイブリッドシステムが搭載されている事実だけを見ても、高級車ブランド「レクサス」がある現在でも、クラウンは間違いなく高級車と呼ぶのに十分な説得力があるのではないでしょうか。
実際にクラウンを購入するのにかかる費用
幅広い価格帯のクラウンですが、一番の売れ筋はいくらくらいのグレードなのでしょうか。まず、初期受注の内訳をパワートレイン別でみてみましょう。
80%が2.5Lのハイブリッドモデルで、15%が3.5Lのハイブリッドモデル、5%が2.0Lガソリンターボモデルです。その中でもっとも人気かつおすすめのグレードは「2.5 RS Advance」です。価格は5,799,600円〜。
高級車らしい本革シート仕様で、2.5Lハイブリッドのラインナップの中でちょうど中間域の価格帯で、もっともバランスのよいグレードです。
また2.5Lハイブリッドのパワートレインがもっとも燃費が優れている点も決め手のひとつとなっているのでしょう。先代モデルもアスリートが売れ筋だったのでその流れはかわらず、RS仕様の人気が高いことも納得です。
値引きなどがあるとしても、オプション装備などを含めていくと乗り出し600万円オーバーになのは、ほぼ確実でしょう。
もしクラウンを買おうと考えているなら、あわせて正しい値引き交渉のやり方も覚えておくといいですよ。
このやり方を知らないと最大60万円以上も損しますよ。詳しく知りたい方は、下記の『たった1分で車を60万円値引きできる裏技』のページをご覧ください。 たった1分で車を60万円値引きできる裏技!安く購入する秘密のテクニックとは?!年収以上のクルマの購入はハードルが高い=高級車
ご自身の経済状況を考えたときに、いくらくらいのクルマであれば生活に支障をきたすことなく購入できると思いますか?
おそらく多くの人は、ご自身の年収(月収)と照らし合わせて考えるでしょう。
平成27年度の調査で日本人のサラリーマンの平均年収は420万円、男性のみの場合で521万円、女性のみの場合で276万円だそうです。売れ筋グレードのクラウンを購入するために支払う金額は、先ほど紹介したように600万円をこえてきます。
例えばこの600万円を10年という長期で金利3%のフルローンで購入したとしましょう。
そのときの月々の支払いはおよそ58,000円です。都心部は除きますが、ふつうに家賃分くらいの出費となるはずです。
これに加えて維持費もかかるわけですから、平均的な年収のユーザーであれば生活を圧迫することは目に見えています。
やはり平均年収以上の自動車の購入のハードルが高いことは間違いありません。
もちろん、もっと価格の安いグレードを選んだ場合や、頭金を数百万円単位で貯金しているとなれば話は別かもしれません。
それでも、ここで説明したクラウンの価格帯と、クラウンに施されている各装備や質感を踏まえるとクラウンは十分に高級車と呼べるはずです。
クラウンの世間でのイメージ
メーカーとして、またコアな価格帯を見ると十分に高級車と言って差し支えないことが分かったところで、実際のところ世間的にはクラウンはどのような印象を持たれているのでしょうか。
Twitterのツイートをもとにいくつか紹介していきましょう。
クラウンはやっぱり高級車
クラウンアスリート(200か210)
個人的にクラウンは200と210が好き
クラウン=高級車、高級車=乗り心地だけどその高級車に走りを求めた時どんな車に仕上がってるのか乗ってみたい pic.twitter.com/ITn2qp0JI0
— ZZ@teamSSC (@wangan_riko) April 15, 2018
デザインもロングノーズボディで格好良かったですからね(*^^*)
今や高級車=Lサイズミニバンですもんね
国産高級セダンで健闘してるのはクラウンだけと言うのは寂しいです— 日々徒然@サブ(車・旅行) (@hibi_sub) April 2, 2018
やはり、クラウン=高級車という世間のイメージは今もなお根付いているようで、クラウンについて書かれたツイートの多くから、クラウンは高級車として認識されていることは間違いないと言えそうです。
また高級セダンの中でも他メーカーの高級セダンは販売台数が伸び悩んでいる中、クラウンは2017年の1年間で3万台近い台数を販売しています。
多くの人にとって憧れの車でありながら、セダンのみをラインナップしている車種の販売台数では1位と、販売実績も堂々たるものです。
(様々なボディタイプを合算した販売台数実績では、カローラやインプレッサの2車種方が順位は上です。)
クラウンは決して高級車ではないという声
クラウン乗りの人には申し訳ないけど
みんな乗ってるし高級車じゃないように見える— に (@Platinum___V) December 6, 2016
ゼロクラからクラウンが大衆車化してる、、、いつかはクラウンと言われていたのに、、、センチュリーゎ別格としてマジェ、セルシオ、レクサスの存在がデカすぎる(>_<)次の型からマジェ消してクラウンとマークXをトヨタ店にしてアリオンをトヨペット店にすればいいと思う
— いのうえりょ-たろ (@315tarochin) 2012年1月29日
高級車はなかなか手の出せない希少な車という考え方であれば、よく売れて街中でも見掛けることの多いクラウンは、あくまで大衆車のひとつということでしょうか。
また中古などで手の届きやすくなった先代クラウンを若い年代の方が乗っていたり、保安基準に適合しないような下品な改造をされた個体も稀に見かけます。
そのためにクラウンにあまり良いイメージを持っていない方もいるようで、そうなると高級車とは一体…と頭を悩ませてしまうのも事実です。
クラウンで直4は酷いなー。
環境の為かもしれないけど
いつかはクラウンの高級車から
大衆車のクラウンになっちまったなー。
マジェスタがどうなるかだね。
クラウンのハイブリッドは10年乗っても元取れないまで言われてる。
24万キロぐらい走らないといけないみたい。走れるし壊れないけど— かっぱ大明神 (@xxxxkappaxxxx) April 30, 2017
また、昔からのイメージで高級車=排気量が大きいV型エンジン、その分維持費も掛かる車と考える人にとっては、直列4気筒の2Lエンジンを搭載したクラウンは高級車として見れないとも。
V型エンジンの特徴!どんな音?搭載されている車/バイクの車種も紹介!直列4気筒エンジンの特徴!どんな音?搭載車を日本車/外車の車種からそれぞれ紹介!しかし、エンジンのダウンサイジング+過給機付きは、国内外問わず今の自動車業界のトレンドで、大排気量が売りだったアメ車ですらダウンサイジングが進んでいるので、クラウンに限った話ではありません。
Twitterから分かったのはこのようなクラウンに対してのネガティヴな意見は少数派で、やはり多くの人にとってクラウンは憧れの車であり、高級な車というのが世間のイメージだということでしょう。
クラウンの海外での位置付け
国内でのクラウンのイメージが大体掴めたところで、海外におけるクラウンの立ち位置というのは、どういったものなのでしょうか。
実はクラウンは、中国では先代マジェスタベースのクラウンが販売されていたものの、欧米諸国を含めたそのほかの国では新車販売されていないので、一般的には認知度が低いというのが現状です。
しかし、ネットなどで情報が簡単に手に入るようになった今、一部のクルマ好きなユーザーからは海外でも人気の高いカムリよりも上位に位置する車であるという認識は持たれているようですね。
カムリの口コミ/評判!価格から外装や走行性能まで全てチェック!また、新車販売から数年経つと中古車として出回る例もあるようですが、それも決して数は多くないようです。
それもそのはずで、海外においてはトヨタの高級車ブランド「レクサス」が日本国内で展開するよりも前から存在していたことが大きく影響しており、トヨタの高級な車に乗るのであればレクサスを選択するというのが自然な流れになっているのではないでしょうか。
一方で、クラウンのスタイリッシュな外観や、made in Japanの信頼度の高さは外国人も認めるところで、「どうして自分の国では新車販売がないのか?」「日本国内だけにとどめておくのは勿体無い!」との声も多く聞かれます。
なおクラウンの海外での販売については以下の記事で詳しく取り上げているので、興味のある方はこちらもあわせて参考にしてみてください。
クラウンの海外販売が積極的でない5つの理由!なぜ輸出されないのか解明!結論:クラウンは物足りなさはあるが高級車と呼べる車
ここまで、クラウンに対するメーカーの思い、国内外のユーザーのイメージを深掘りしてきましたが、クラウンという車は高級車と呼ぶに相応しいのでしょうか。
今では外車を含めて1,000万円をゆうに超えるクルマも珍しくなく、そうしたクルマを所有し良さを知ってしまっている人にとっては、400万円代からの価格帯でラインナップされているクラウンには物足りなさを感じるかもしれません。
例えば日産はトヨタのように海外向け高級車ブランド「インフィニティ」を国内に展開していないとは言え、フラッグシップのシーマは794万円〜というクラウンよりも高い価格帯です。
さらにチューニングのベースとしても人気のクラウンは、手の入れ方によっては本来のクラウンというクルマの良さが失われてしまう場合もあり、そんなクルマを「本当の高級車」として認めたくないという考えの人もいます。
しかしそれらの価値観は世間ではあくまで少数派です。
また「天空」という突き抜けるようなスカイブルーカラーに代表される12色の「ジャパンカラーセレクションパッケージ」を展開するような遊び心があったり、今現在のトヨタとしてのクラウンのPRの仕方からも分かる通り、絶対的な高級車としての地位を昔ほど訴求している訳ではありません。
しかしそれは決してクラウンの地位が陥落したとかではなく、クルマが売れなくなってきている現代において、自信作クラウンに対して少しでも多くの人が関心を持ってもらうためのトヨタの戦略のひとつなのです。
初代から数えこれまで途切れることらなく何十年も続いてきたクラウンの歴史や価値観は揺るぎないものとして、私たち日本人の心の中に知らず知らずのうちに刻まれています。
日本人により丁寧に作り込まれた日本人のためのクラウンは、今でも「いつかはクラウン」であることに違いはなく、決して気軽に普段の足として買える価格帯ではありません。
そんなクラウンは間違いなく、日本を代表する高級車だと言えるでしょう。
なおクラウンについては以下の記事でも取り上げているので、興味のある方はこちらもあわせて参考にしてみてください。
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