「世界の自動車シェアのトップ3を答えてください」
この質問に対し、「フォルクスワーゲン」か「トヨタ」の2択で迷う方が多いと思います。
実はそれ、もう古い情報なんですよ。
2017年、販売台数ランキングの勢力図が逆転し、1位フォルクスワーゲン、3位がトヨタとなりました。
2位についたのは…お察しの通り「ルノー・グループ」です。
ルノーの車はルックスがおしゃれで大人気!日本でも、8年連続で販売台数を伸ばしています。
なぜ、ルノーはここまで伸びてきたのでしょうか?
今回は、各国でブレイク中の欧州メーカー「ルノー」について、国産車とも比較しながら解説したいと思います。
ルノーはどこの国の車?
まずは、ルノーはどういった自動車メーカーなのか簡単に見ていきましょう。
創業120年を数えるフランスメーカー
ルノー(RENAULT)は1899年、フランスで誕生しました。今から数えると、なんと120年前までさかのぼるのです。
BMWが1918年、フォードが1920年、そしてトヨタが1933年創業なので、かなりの老舗であることがわかりますね。(BMWの詳細は以下の記事をご参照ください。)
BMWとは何?何の略か正式名称から意味まで解説します!創設者のルイ・ルノー氏が、21歳のときに自動三輪車を四輪改造したことからスタートします。この試作機が、パリで一番高い丘「モンマルトル」の坂道を登ってみせたことで、一躍有名に。
当時の車では、モンマルトルの坂道を登ることはできなかったため、さぞ驚いたことでしょう。
これを可能にしたのは、ルノー氏が考案した「ダイレクト・ドライブ・トランスミッション」の働きです。後に特許を取得し、世界中のメーカーに採用されることとなります。
これを機にルノー氏は、前身となる「ルノー・フレール社」を、2人の兄と設立しました。
1900年代初頭、ヨーロッパではモータースポーツが大流行しており、これにルノー・スレール社は積極的に参加。数々の勝利を収め、培った技術を市販車にフィードバックしていきます。
こうして、フランス中で認知されていったルノー・フレール社は、メーカーとして急成長。当時のパリの街中は、ルノー製のタクシーで溢れていたといいます。
終戦後、国の支配下に!?
1914年になると、フランスは第一次世界大戦を迎え、ルノー・フレール社にも転機が訪れます。
戦争に備え、軍で使用する戦車や戦闘機などを、大量受注するのです。これは第二次世界大戦まで続き、1945年には行政命令が下され、国有化されることとなります。
事実上、国の圧政下に置かれ、名前も「ルノー公団」へ変更されました。
そんな状況でも車作りを続け、密かに開発を進めていた「4CV」の商品化に成功します。このモデルはすぐさま大ヒットを記録、50年代の主力商品として大きく貢献。日本でも販売され、タクシーとして普及されていました。
軍備の生産から完全に手を引いたルノー公団は、本格的に車の生産を開始。「クルマのジーンズ」と呼ばれた「ルノー4」、販売台数をヨーロッパ1位に押し上げた「ルノー5」など、ヒット作を連発します。
「車を単なる移動手段ではなく、上質な居住空間として捉える」
この理念のもと、ヨーロッパ中で大旋風を巻き起こしました。
民営化を機に再スタート
自動車メーカーとしての地位を確固たるものにしたルノー公団は、1996年に民営化され、晴れて「ルノー株式会社(RENAULT S.A.)」となります。
ヨーロッパの次に目を向けたのは、アジアやアメリカといった地域。つまり、世界市場で競争力をつけることを目指しました。
2000年になると、日本にアジアの販売拠点を展開します。ご存知の方も多いと思いますが、日産自動車と提携を果たしました。(日産の詳細は以下の記事をご参照ください。)
日産車の決定的な特徴5つ!魅力から欠点まですべて解説します!日本への介入を皮切りに、ルーマニアの「ダチア(DACIA)」、韓国の「サムスン(SMUSUNG)」とも提携。ルノーグループとして、世界中に活動拠点を置くこととなるのです。
ルノー・ジャポン
日産と提携したことで、「ルノー・ジャポン」を展開。日本に進出したルノーですが、その経営方針は何度か変更されました。
「アジア太平洋地域における、統括本部直轄の日本法人」
最初はこのような名目で、東京に本拠地を置きます。しかし、日産車への大きなメス入れを行うなかで、日産トレーディング(日産車の輸出入を行う法人)と合併し、業務を移行。
そして日産の立て直しが成功し、2012年になると日産の完全子会社として、経営方針を変更しました。日産の子会社というポジションではありますが、当初の状態に戻ったというわけです。
現在は横浜にある「日産自動車 グローバル本社」のオフィス内に本拠地を構えています。
日産との合同ディーラーを合わせれば、日本全国に70店舗を展開。充実したラインナップと、手厚いサービスが好評で、着々とファンを増やしています。
フランスでは大衆車として大活躍
フランスでは、「ルノー=大衆車」という感覚。普段の足としてルノー、高級車という感覚でベンツやBMWの高級モデルに乗るのだそう。(ベンツ、BMWのステータス性の詳細は以下の記事をご参照ください。)
ベンツは高級車じゃない?大衆車?ドイツでの価格は意外すぎた?!BMWは高級車じゃない?大衆車?ドイツでの位置づけまで解説!ルノーは「普段使い」という点にこだわり、B・Cセグメント(日本でいう3ナンバーサイズ)の車をメインにラインナップしています。
「RENAULT -Passion for life-」といったブランドメッセージを掲げています。これは「あなたの情熱を送ってください」と日本流に解釈が可能。
ルノーは「人の生活に合った車は、人生を豊かにすることができる」と、このように考えています。車作りと通じて、人々の暮らしの質を高めることが理念なのです。
現在では一般向けラインのモデルしか生産しておらず、高級車は販売してません。
フランス人はもともと長く使える物を好むため、丈夫で庶民的なものを愛する国民です。そのためフランス車は大衆向けモデルが非常に多い。
でもこういうことが教育をつくり、アートを作り、服文化を作っていく気がする。パリの高級住宅街にいくと、高級車がほとんどいない。ポルシェもアウディも、アルファだってあんまり見ない。あるのはFiatやルノーといった大衆車ばっかり。discret=控えめな美を良しとするフランス人。
— 鈴木健次郎 (@KENJIROPARIS) 2011年2月15日
こちらのツイートにある通り、フランスではお金持ちの人でもルノーに乗っています。ルノーの車作りには、フランス人の謙虚な嗜好がよく表れていますよね。
もしルノーの購入を考えているなら、値引き交渉の正しいやり方を覚えておくといいですよ。
このやり方を知らないと最大60万円以上も損しますよ。詳しく知りたい方は、下記の『たった1分で車を60万円値引きできる裏技』のページをご覧ください。 たった1分で車を60万円値引きできる裏技!安く購入する秘密のテクニックとは?!ルノーと国産車の3つの違い
国民の考え方や国の風土など、国によって特徴があるのが車の面白いところ。大衆車ということですが、日本車と比べるとどんな違いがあるのか、気になりますよね?
「デザイン」「エンジン性能」「乗り心地」の3つの観点から、国産車との違いを解説します。
目を惹くデザイン
フランスといえば、そうアートの国。ルノーのデザインは、フランス人の芸術センスがよく現れています。
ルノーは日本でいう3ナンバーサイズ、または5ナンバーサイズをターゲットにしています。ハッチバック、ミニバンタイプのものが多いため、パッと見は日本車にも似た雰囲気。
しかし、細部に視線を向けると、日本車に比べ「奇抜なデザイン」をしていることに気が付くでしょう。
デザインのコンセプトは
- シンプル
- 官能的
- 温かみ
の3つ。情熱を大切にする、ルノーらしいキーワードですよね。
合理的なシンプルフォルムに加え、遊びのあるモチーフを多く採用。フロントエンドのダイヤモンド・ロゴと、流れるようなボディラインで、一目見てルノーとわかるスタイリングに仕上がっています。
また色へのこだわりが物凄く強い。同クラスの日本車と比較すると、その差は歴然でしょう。
例えば、コンパクトカーに相当するルノー「トゥインゴ(TWINGO)」は、ポップなパステルカラーのみを採用。ブラックなネイビーなど、暗い色味はラインナップに入っていません。
日本車は、カラーバリエーションが多く、「トヨタ・パッソ」は12色も展開しているんです。(パッソのデザインの詳細は以下の記事をご参照ください。)
パッソに男が乗るのはダサくない3つの理由!女じゃなくてもいい!トゥインゴは5色しかラインナップしていませんが、そのかわり、1つ1つがハイクオリティ。
ルノー独特のラテン調カラーで、気分が明るくなること間違いありません。
パワフルなエンジン
エンジンのパワフルさも、ルノーの特徴です。
フランスは農業が盛んな国なので、いたる所に農道があります。そのため舗装されてない道を走る機会が多く、エンジンが発展していきました。
トゥインゴより一回り大きな「ルーテシア(LUTECIA)」を例にとり、見てみましょう。
ルーテシアの方が一回り大きいですが、同クラスの「ホンダ・フィット RS」と比較してみましょう。フィットRSとのエンジンスペックの諸元は以下のとおりです。
項目 | ルノー ルーテシア | ホンダ フィットRS |
排気量 | 1197cc | 1496cc |
種類 | 直列4気筒ターボ | 直列4気筒NA |
最高出力 | 118ps/5000rpm | 132ps/6600rpm |
最大トルク | 20.9kg・m/2000rpm | 15.8kg・m/4600rpm |
車重 | 1220kg | 1070kg |
燃費 | 17.4km/L | 19.2kmL |
価格 | 199万円 | 205万円 |
※直列4気筒、NA、エンジンの詳細は以下の記事をご参照ください。
直列4気筒エンジンの特徴!どんな音?搭載車を日本車/外車の車種からそれぞれ紹介!NAエンジン(自然吸気エンジン)とは?メリット5つ!音が最強の魅力?!ルノー車はトルクが大きい
排気量、価格、エンジン出力、そして燃費においてはフィットが勝っています。(フィットの燃費の詳細は以下の記事をご参照ください。)
フィットの燃費は悪い?街乗りや高速の実燃費は?改善し向上させる方法まで解説!一見してみると、フィットRSの方が動力性能が優れているように思えます。
待ってください。トルクを見て何か気がつきませんか?
そうなです。ルノーの車は、日本車に比べてトルクがかなり大きく設計されているんです。実際、走破性においては、エンジン出力よりもトルクの方が重要ですからね。
いくらターボモデルとはいえ、排気量の差でイーブンです。(ターボエンジンの詳細は以下の記事をご参照ください。)
ターボエンジンとは?仕組み/構造は?メリット2つとデメリット4つ!最高出力では劣っているのに、最大トルクが勝っているなんて、すごくないですか?
この数値は、ホンダ車のミドルクラスセダン「アコード」の中級グレードに匹敵します。
低速域で力を発揮する
さらに見てみると、ルーテシアの最高出力は「5000rpm」、最大トルクはなんと「2000rpm」で発揮されるように設計されているんです。参考までにフィットRSは、「6600rpm」「4600rpm」ですね。
何が言いたいかというと、ルノーは日本車に比べて、低回転域で力を発揮する仕様なんです。
低回転でパワーを出せるってことは、街乗りでかなり使いやすいってことですよね?
特に最大トルクの「20.9kg・m/2000rpm」という数値は、日本車ではまずお目にかかれません。というか、おそらく存在しないと思います。
2000rpmっていうと、信号発進で達する回転数ですからね。もしかすると発進スピードは国産スポーツカー並みかもしれません。
乗り心地がいい
ルノーの特徴として、欠かすことのできないのが、「シート&サスペンションの性能」です。つまり、日本車に比べて乗り心地がいいということ。
未舗装の路面は、車と人への負担が大きいです。そのためルノーは衝撃吸収を徹底的に研究し、高性能なサスペンションの搭載に成功しました。
人によっては、「宙に浮いているようだ」と感じる人さえいます。
またシート性能も非常に高く、同クラスの日本車はまるで違う座り心地です。
今シトロエンC3に乗っている。以前は、ルノー5GTターボに乗っていた。フランス車は、大衆車でも、スポーツタイプでも、とにかくイスが抜群にいい。長時間座って運転していても疲れない。乗ったことはないが、高級車は言うに及ばずだろう。これは、技術というより文化ではないだろうか。感心する。
— 加藤泰弘 (@yas0808) 2010年7月23日
「腰が弱い人」「長時間運転する機会のある人」は、一度乗ったら病みつきになると思いますよ。
他の外車とはここが違う
というわけで、ルノーの特徴についていろいろ語ってきました。最後にルノーの価格について、少しお話したいと思います。
ルノーは価格帯も庶民的なのです。外車というと、日本車よりも高く、高級なイメージがありますよね。
ルーテシアとフィットの諸元表で気づいたと思いますが、ルノーは日本車とほとんど変わらない値段なんです。他国の輸入車と比較してみると、これほど差があります。
- ルノー:200~500万円
- メルセデス・ベンツ:300~3,500万円
- BMW:300~1,600万円
- アルファロメオ:250~1,000万円
- フィアット:200~400万円
- シボレー:170~700万円
- フォード:200~700万円
※スーパースポーツモデルは除く
※BMW、ベンツの価格の詳細は以下の記事をご参照ください。
BMWの決定的な特徴7つ!長所から欠点まですべて解説します!ベンツは新車/中古でいくらで買えるか?全車種の価格を車検費用とともに解説!簡単に価格とまとめてみました。イタリアの大衆メーカーである、フィアットが同等の価格帯ですね。ほぼ日本車と変わらない価格なので、外車なのにそれほど敷居が高く感じられません。
デザインも性能も優れていて、なおかつ金額も良心的なので、日本でもこれまで以上に増えていくと思います。気になるようでしたら、ぜひ日産との共同ディーラーで実物を見てはいかがでしょうか?
ちなみにルノーのなかで日本で人気の車種はカングーです。以下の記事で性能などを紹介しているので、興味のある方はこちらもあわせて参考にしてみてください。
カングーは故障が多い?壊れやすいのか故障率をもとに解説!ルノーカングーがキャンプに最適な理由5つ