惜しまれつつも、姿を消していった名車は数多くあります。
いくつか名前が出てくるものの、私が最初に思い浮かぶのは「三菱 ランサーエボリューション」。
“無骨な外見”と”パワフルな走り”には、私だけでなく、一体どれだけの人が虜になったことか…。
というわけで今回は、かつて世界を制した名車「ランエボ」について、その圧倒的な加速性能を考察していきたいと思います。
0-100km/h加速にも触れながら、ランエボに秘められた”戦闘力”を存分に語りつくしましょう。
ランエボの加速性能
すさまじい加速性能で有名なランエボですが、実際にはどれだけ速いのでしょうか?
具体的な数字を元に、加速の秘密を解説したいと思います。
0-100km/h加速の実力
加速性能に関してよく比較されるのが、「0-100km/h」のタイムですよね。国産市販トップクラスの車をまとめてみたので、ご覧ください。
0-100km/h 加速タイム | 車種(詳細タイム) |
3秒以下 | GT-R NISMO(2.7秒) NSX(3.0秒) |
4秒台 | レクサス GS F(4.3秒) レクサス RC F(4.3秒) レクサス LC500(4.6秒) インプレッサ WRX STi(4.7秒) スカイライン 350GT(4.9秒) レクサス IS350(4.9秒) ランサーエボリューションⅩ(4.9秒) |
5秒台 | スープラ(5.0秒) フェアレディZ verST(5.1秒) レジェンド(5.1秒) RX7 R1(5.2秒) WRX STI(5.2秒) レクサス LS500h(5.3秒) S2000(5.4秒) シビック タイプR(5.6秒) ロードスター RF(5.8秒) |
少し前はメーカーから公称値が発表されてましたが、最近ではめっきり見なくなりました。そのため、これらは厳密なデータではありませんが、加速性能の目安にはなるかと思います。
さて、ランエボの最終型である「Evolution-Ⅹ」ですが、ここでは4.9秒とさせていただきました。モデルによっては5.2秒とも言われますが、フルノーマルでも5秒を切るタイムが一般的な認識だそうです。
ランエボよりも確実に勝るモデルは「GT-R」「NSX」「レクサス」といった、1,000万円クラスのプレミアムスポーツくらいのもの。
日産GT-Rの加速性能を解説!0-100km/h加速タイムはどのくらい?ホンダNSXの加速性能を解説!0-100km/h加速タイムはどのくらい?「スカイライン」「インプレッサ」などはほとんどランエボと互角のレベルなので、これらも含めて、国産を代表する加速性能といえるでしょう。
インプレッサは速いのか?加速性能から0-100km/h加速タイムまで解説!ちなみに、プリウスはこのタイムが11秒程度なので、一般的なラインと比べるといかに速いかわかりますよね。
プリウスの加速性能を解説!0-100km/h加速タイムはどのくらい?ランエボの原点
ランサーエボリューションの走りの原点は「ラリー」にあります。路面状況を問わず速い事が要求されるため、必然的に”公道でも速い車”へと進化してきました。
その神髄は、小型ボディに似つかわしくないハイパワーエンジンと、4WDで武装した足回りにあります。
初代ランエボは、三菱の中間セダン「ランサー」に、当時モータスポーツに参戦していた「ギャラン」用の「4G63」型ターボエンジンを移植するような形で誕生しました。
F1などと異なり、市販車を改造した車両で行うラリーでは、小型車へ強引に大型エンジンを詰め込むことはよくある話です。
脅威のエンジンスペック
ランエボは4世代にわたり販売されましたが、エンジン性能がモデルチェンジごとに向上してます各モデルのエンジン性能はこちらをご覧ください。
項目 | 第4世代 | 第3世代 | 第2世代 | 第1世代 |
エンジン型式 | 4B11 ターボ | 4G63 MIVECターボ | 4G63 ターボ | 4G63 ターボ |
最高出力 | 300ps/6,500rpm | 280ps/6,500rpm | 280ps/6,500rpm | 270ps/6,250rpm |
最大トルク | 43.0kg・m/ 3,500rpm | 40.8kg・m/ 3,000rpm | 38.0kg・m/ 3,000rpm | 31.5kg・m/ 3,000rpm |
種類 | 直列4気筒DOHC 16バルブICターボ | 直列4気筒DOHC 16バルブICターボ | 直列4気筒DOHC 16バルブICターボ | 直列4気筒DOHC 16バルブICターボ |
総排気量 | 1,998cc | 1,997cc | 1,997cc | 1,997cc |
ボア× ストローク | 86.0mm× 86.0mm | 85.0mm× 88.0mm | 85.0mm× 88.0mm | 85.0mm× 88.0mm |
圧縮比 | 9 | 8.8 | 8.8 | 9 |
※直列4気筒、DOHC、MIVEC、エンジンの詳細は以下の記事をご参照ください。
直列4気筒エンジンの特徴!どんな音?搭載車を日本車/外車の車種からそれぞれ紹介!DOHCエンジンとは?仕組み/構造は?ツインカムとの違いとは?!MIVECエンジンとは?サウンドが特徴的?VTECの仕組みとの違いまで解説!2Lエンジンとは思えないパワー!?
前述したように、ギャランの「4G63」型エンジンを移植して生まれた車です。平凡な市販セダンのボディにハイパワーエンジンを搭載したことで、強力な戦闘力を手にしました。
当時の日本は「馬力280ps規制」があった時代なので、この数値が限界でした。ところが実際には、「カタログ値を上回るスペックだった」と、ファンの間でもっぱらの噂です。
カタログ値を良く見せるため、数字をカサ増しするのならわかりますが、ランエボの場合は低く見積もって280psと公称していたのだと。
とくに第3世代のランエボⅧ、Ⅸあたりは、ノーマルで310psくらい出ていたというのです…。
この秘密はターボの”強力さ”にあります。公表されていませんので、あくまで噂ですが、ノーマルの状態でブースト圧1.5kpaほど出ていたのだと…。
ターボ車に乗っていない方はピンと来ないかもしれませんが、1.5kpaのブーストは相当のものですよ。
スポーツカーに慣れていない人がブースト1.5kpaの加速を体験したら、たぶん心臓が縮み上がるくらい恐怖すると思います。それくらい速いです。
なおターボエンジンについては以下の記事でさらに詳しく解説しているので、興味のある方はこちらもあわせてご参照ください。
ターボエンジンとは?仕組み/構造は?メリット2つとデメリット4つ!ロング型からスクエア型へ
エンジンの特性は「ボア×ストローク」の数値から、ある程度読み取ることができます。
これは、シリンダー(燃焼室)の「内径(ボア)」と「ピストン距離(ストローク)」の比率を表したもので、トルクと回転数のバランスが決まるのです。
- ロングストローク型:ストロークが長いため、トルクを出しやすい。実用的車向け。
- ショートストローク型:ストロークが短いため、回転数を高めやすい。競技車向け。
- スクエア型:ボアとストロークが同じ大きさのため、バランスが良い。
大まかにこんな特徴があります。
第1~3世代のランエボは「ボア×ストローク比」が85:88なのでロングストローク型、第4世代はスクエア型に分類されますね。
ラリー走行に向けて作られたランエボは、低速域でも高いトルクを出せるようにロングストローク型に設計されていました。そのため静止状態から圧倒的な加速力を発揮します。
一方で、高回転に長けていないため、ブースト(ターボ)を存分にかけれなかったり、高回転域で若干物足りなかったりと、いくつか弱点はありました。マニアに言わせれば「音が汚い」「フィーリングが悪い」とも…。(ターボの音の詳細は以下の記事をご参照ください。)
ターボエンジン音の特徴!「プシュー」「キーン」音の正体とは?それを改善したのが最終型の第4世代モデルです。ストロークを減らしてスクエア型に改良することで、低速トルクはもちろん、高回転域でも存分にパワーを発揮できるようになりました。
従来のランエボのように静止から一気に加速して、そこからも伸び続けて「暴力的」に加速します。常にシートにへばりつくような感覚は、まさに圧巻。
車体のつくりこみ
ランエボの速さの秘密は、エンジンだけではありません。そのエンジン性能を受け止める「ボディ」にも秘密があるのです。
加速・コーナリングに適した駆動
ゼロからの発進は、タイヤがどれだけグリップするかが非常に重要。泥・砂・アスファルトなど、あらゆる路面で高いパフォーマスを発揮できるように、ランエボは三菱が命を注いだ4WD機構を搭載しています。
動力をあますことなく路面へと伝えるので、その加速力は乗用車とは比較になりません。
「車輪駆動」「制動力」を制御して挙動を最適に保つ「AYC(アクティブヨーコントロール)」によって、ゼロスタートだけなく、コーナリング・立ち上がり加速でも圧倒的な性能を誇ります
パワーウェイトレシオも優れている
ランエボの重量はおよそ1,500kgと、2Lクラスの中では重い部類ですが、エンジンの出力が高いため重さをまったく感じさせません。
車種 | パワーウェイトレシオ |
GT-R NISMO | 2.87kg/ps |
NSX Sports-Hybrid SH-AWD | 3.51kg/ps |
レクサス IS-F Dynamic Sports Turning | 3.93kg/ps |
レクサス LC500 | 4.07kg/ps |
フェアレディZ verNISMO | 4.28kg/ps |
シビックタイプR type-R | 4.34kg/ps |
ランサーエボリューション RS Evolution-Ⅵ | 4.5kg/ps |
RX-7 type-RZ | 4.54kg/ps |
WRX STI S208 | 4.59kg/ps |
これは「パワーウェイトレシオ」といって、”1馬力が負担する車重”を指しています。簡単にいうと、”数値が低いほど速い”ってことです。
0-100km/h加速で見られた名前が多いですよね。パワーウェイトレシオで見ても、このあたりの車が”国産トップ”の加速性能を持つということになるでしょう。
加えてランエボは、ボディのタフさも有名。ラリーで戦う車なので、あらゆる環境下にも耐えられるので、普通なら無茶なカスタムも苦にしません。
アメリカで超ハイパワーに改造されたランエボが、フェラーリをちぎる動画もたくさんUPされています。
もしランエボを買おうと考えているなら、あわせて正しい値引き交渉のやり方も覚えておくといいですよ。
このやり方を知らないと最大60万円以上も損しますよ。詳しく知りたい方は、下記の『たった1分で車を60万円値引きできる裏技』のページをご覧ください。 たった1分で車を60万円値引きできる裏技!安く購入する秘密のテクニックとは?!ランエボの実際の加速感
実際のオーナーの投稿を見てみましょう。
Twitterから感想、Yotubeから加速の動画を選んでみたので、ぜひご覧ください。
オーナーも大好評の加速力
ランエボってブーストアップしてなくても1.5まで上がって加速がえぐかった
— よしひろ@ (@NxY520) 2017年11月20日
興味のある人は、一回ぜひ体験してみてほしいですね。
私は過去にインプレッサ(GDB-C)をブーストアップして乗っていましたが、1.5km/hの加速は本当にものすごいですよ。
とりあえず昨日はランエボ最期のラストランをしてきました。
やっぱランエボはいいな〜
2000ccしかないのにあの加速、コーナリングの良さ
いい車でした。
とりあえず何年かかるかわかりませんが時間をかけて少しずつでも直していきまた乗りたいと思ってます^_^ pic.twitter.com/79n7Pq0HUu— 大場 (@CT9A0211) 2018年5月27日
その動力性能の高さは2Lクラスと思えないレベルです。
加速もさることながら、コーナリング性能が高くて”誰が乗っても速くなる車”ともいわれていましたね。
先月納車した新しい相棒ランサーエボリューションVI CP9A GSR
踏めば踏んだだけどんどん加速するしその加速もエグいし急カーブだって踏みながら曲がれるしほんと乗ってて楽しいクルマ!
4枚目は前乗ってたb4ちゃん手放す直前にパシャリ。#愛車紹介#車好きと繋がりたい pic.twitter.com/I2bHl6UW8E— クズちん (@kuzu_chinpo) 2018年5月25日
ランエボには市街地モデルの「GSR」と、競技ベースモデルの「RS」がありますが、GSRも十分バケモノです。
エボⅥは個人的に一番好きなモデルなので、できることなら私も乗りたいものです…。
動画で見るランエボの加速
日本で撮影されたものですね。この角度だとかなり迫力があります!
見たところ外見はノーマルっぽいですが、それでもこの加速力!2速に入ったあたりからの挙動が素晴らしい!
こちらは海外の動画ですね。コルベットを相手にこの差はすごい…。
音からしてエグいカスタムをしているのでしょう。ハードなカスタムに耐えられるのもランエボの魅力です。
ランエボの加速性能を他の車と比較
ランエボの加速性能をライバル車と比較してみましょう。
今回比較対象にしたのは、長きにわたって競ってきたライバル車「インプレッサ WRX」と、加速性能についてよく議論される「スカイライン GT-R」です。
スバル インプレッサ WRX
ランエボと同じくWRCのベース車として開発され、世界レベルのラリーで培ったノウハウで日本の自動車業界を牽引してきました。
性能項目 | 数値 |
最高出力 | 308ps/6,400rpm |
最大トルク | 43.0kg・m/4,400rpm |
ボア×ストローク | 92.0mm×75.0mm |
こちらは「インプレッサ」としては最終型のスポーツモデル「GV型(3代目)」のエンジンスペックです。「出力」「トルク」ともにランエボⅩと等しい性能ですが、注目すべきは「ボア×ストローク」の数値。
インプレッサの「EJ20」エンジンは、ショートストローク型に設計されているので、高回転域でパワーを発揮しやすい特性を持ちます。
最大トルクの回転領域で見ても、ランエボは3000回転付近なのに対し、インプレッサは4400回転と、その違いは一目瞭然です。
したがって、高回転域ではインプレッサに分がありますが、発進や立ち上がりでの加速は低回転域でトルクを発揮するランエボに軍配が上がるでしょう。
WRXのなかでもWRX STIについては、以下の記事で加速性能の詳細を解説しています。気になる方はこちらもご参照ください。
WRX STIの加速性能を解説!0-100km/h加速タイムはどのくらい?日産 スカイラインGT-R
ここで比較するGT-Rは「スカイライン」の名を冠して販売された最後の5代目(R34)型です。
現行R35型GT-Rの加速は、モデルによってはF1にさえ匹敵するレベルですから、さすがのランエボも比較になりません…。
性能項目 | 数値 |
最高出力 | 280ps/6,800rpm |
最大トルク | 40.0kg・m/4,400rpm |
ボア×ストローク | 86.0mm×73.7mm |
パッと見た感じ、それほど差はないように感じますね。数字の印象では、ゼロスタートならランエボに分があるように思えます。
しかし、スカイラインGT-Rに搭載された「RB26」エンジンは”2.6Lの排気量”と”ツインターボ”によって、ショートストローク型ながら低速から鋭くトルクを発揮します。(ツインターボの詳細は以下の記事をご参照ください。)
ツインターボエンジンとは?仕組みは?搭載車を日本車/外車の車種からそれぞれ紹介!つまり、「全域でトルクを発揮する恐ろしいエンジン」なのです。
少なくともノーマルの状態においては、ランエボの上をいく加速性能といえるでしょう。
三菱の誇る最強マシン
つまるところ、ランエボは国産トップクラスの加速をもつマシンなのです。
乗っているだけで車好きから一目置かれる、まさにそんな車。加速性能とコスパを考えたら、これ以上の車はそうないと思いますよ。
なお加速性能については以下の記事でほかの車種を取り上げているので、興味のある方はこちらもあわせて参考にしてみてください。
フェアレディZの加速性能を解説!0-100km/h加速タイムはどのくらい?アリストは速いのか?加速性能から0-100km/h加速タイムまで解説!