「走破性の高い車といえば?」
車好きな人にこの質問をすると、多くの人が「ジムニー」の名前を挙げることでしょう。
「走破性=ジムニー」という図式はもはや常識ですよね。
そんな「軽オフロード最強モデル」として名高いジムニーですが、2018年7月に待望の新型モデルが登場したことで大きな話題となっています。 およそ20年ぶりのフルモデルチェンジを迎え、走破性がどう進化したのか注目が殺到。
というわけで、評価の高かった先代ジムニーの『走破性』に今一度目を向けて、『強み』と『弱み』のそれぞれを解説しましょう。
新型 4代目ジムニーの変更点についても少しだけ触れたいと思います。
ジムニーの走破性:良い点・できること
ジムニーは「走破性に優れている」という話があまりに有名すぎるため、「どういった点が優れているのか?」というのは意外と知られていないように思えます。
先代ジムニーの走破性における「強み」について見ていきましょう。
世界最強のオフロード車「ジムニー」とは?
まずはスズキ「ジムニー」という車について、簡単に復習したいと思います。
ジムニーの起源はアミューズメント施設の遊具を製作していた「株式会社ホープ」に端を発します。
1950年代にホープ自動車として販売していた「ホープスターON 4WD」という軽自動車が、ジムニーの雛型。
そして当時目を付けた鈴木修氏(現スズキ会長)が製造権を買収し、改良を加えてスズキ「ジムニー」として販売し始めたのが1970年のこと。
以来40年以上もの間、軽オフロード車の王座に君臨し続けているのです。
ジムニーは70年代からひたすら「悪路への挑戦」を念頭に、機構が磨かれてきました。よって他メーカーがジムニー以上、もしくは同様の性能の車を作るのは、事実上不可能と言われています。
つまりライバルというライバルが存在しないということ。
① 日本に最適化された構造
日本は海外に比べて、道が狭く坂道が多い特徴があります。こういった背景から、軽自動車という規格が誕生したわけですが、軽自動車の中でもとくにコンパクトな部類に入るジムニーは、日本での使用に適しているのです。
コンパクト&ハイポジションなボディ
全長 | 3,395mm |
全幅 | 1,475mm |
全高 | 1,715mm |
地上最低高 | 200mm |
ホイールベース | 2,250mm |
車両重量 | 990kg |
先代ジムニーのボディ寸法はこちらをご覧ください。
走破性において注目したいのは200mmという地上最低高。オフロードを視野に入れているジムニーは、路面からボディ底面まで、20cmのクリアランスが確保されているのです。
これにより縁石や輪留めを難なく回避。ちょっとした凹凸もクリアできるので、日本の田舎道でも安心ですね。
さらに車高だけでなくドライビングシートも高く設計されているため、一般的な乗用車よりも上からの視点になります。
加えてボンネットが視切りやすいデザインなので、前方の死角が少ないことも大きなメリット。
- 小さいボディ
- 高い車高
- 見切りやすいデザイン
見渡しやすくて車庫入れも簡単なので、運転免許を取り立ての方でも、安心して運転することができますね。
なお新型ジムニーのボディサイズは、先代からほとんど変更されていません。「全高」と「車重」だけこのように増えています。
- 全高:1,725mm(+10mm)
- 車重:1,030kg(+40kg)
動力性能も十分
雪道や勾配も多い日本では、動力性能も重要な要素です。ジムニーは「XC」と「XG」の2グレードが用意されていますが、どちらもターボ仕様となっています。
ターボエンジンとは?仕組み/構造は?メリット2つとデメリット4つ!最高出力 | 64ps/6,500rpm |
最大トルク | 10.5kg・m/3,500rpm |
種類 | 水冷直列3気筒 DOHC12バルブICターボ |
排気量 | 658cc |
燃費 | 14.8km/L |
このように、最大10.5kg・mのトルクを発揮するので、登坂や追い越し、高速道路の合流などの加速もストレスを感じません。
また、駆動方式はパートタイム4WDということで、日本の環境にも適しています。街乗りでは2WD(FR)、砂利道では4WD、雪道では4WD-Lと、路面状況に応じて使い分けが可能です。(ジムニーの雪道性能の詳細は以下の記事をご参照ください。)
ジムニーは雪道に弱い?雪道走行の性能について徹底分析しました!このエンジン性能ですが、新型ジムニーでは以下のように変更されました。
最高出力 | 64ps/6,000rpm |
最大トルク | 9.5kg・m/3,500rpm |
種類 | 水冷直列3気筒 DOHC12バルブICターボ |
排気量 | 658cc |
燃費 | -km/L |
数字の上ではあまり変化は感じられないですが、先代モデルよりも低速でトルクを発揮できる仕様になっています。そのため、発進がよりスムーズになりました。
燃費についてはまだ公称されていませんが、噂では20km/Lに迫ると言われています。
なお上記の表にある水冷、直列3気筒、DOHC、エンジンの詳細は以下の記事をご参照ください。
水冷エンジンのメリット5つ!バイクだけでなく車にも搭載されてる?!直列3気筒エンジンの特徴!どんな音?搭載車を日本車/外車の車種からそれぞれ紹介!DOHCエンジンとは?仕組み/構造は?ツインカムとの違いとは?!② 本格オフロードもこなす走破性
本格的なオフロード走行は、ジムニーにとっては「お家芸」です。普通なら走れないような場所さえ苦にしない走破性は、世界中から高く評価されています。
ラダーフレームによる構造
従来のジムニーは「ラダーフレーム」という構造がベースとなっています。フレームがはしご状になっていることから、このように呼ばれています。
簡単に説明すると、シャシー(駆動部)とキャビン(居住区)が別々のパーツとしてプラットフォームを形成する構造のこと。シャシーが骨組みの役割を果たし、キャビンはその上に乗る外装というイメージですね。ゆえに「別体式フレーム」とも呼ばれます。
ボディがいくら傷ついても、シャシーさえ無事なら問題なく走行できることが最大の利点です。
ハードな路面を走行する上では欠かせない構造で、「ランドクルーザー」などの本格クロカンSUVは、どれもラダーフレームで構成されているんです。(ランクルの走破性の詳細は以下の記事をご参照ください。)
ランクルの走破性を徹底解剖!クロカン・オフロード性能はいかに?!一方で、現在の一般的な乗用車は、モノコックフレームという構造がベースになっています。
これは駆動部分からボディに至るまで、車全体が骨組みとなっている構造のこと。
「乗り心地に優れる」「大量生産が可能」というメリットはあるものの、ボディを損傷すると一気に強度を失うので、ハードなオフロードには向きません…。
もちろんラダーフレームの機構は新型モデルにも受け継がれていますよ。
リジットサスペンションの採用
走破性には「リジットサスペンション」の性能も大きく影響しています。こちらもジムニーをはじめ、本格的なオフロード車に見られる特徴です。
別名「車軸懸架式(リジットアスクル)」とも呼ばれ、左右の車輪が車軸でつながっていることから、理論上もっとも頑丈なサスペンションとされています。
片方のタイヤが障害物に乗り上げたとき、もう片方が路面を押し付けるので、凹凸の多い不安定な路面でも効率よく動力の伝達が可能。オフロードで圧倒的な走破性を発揮します。
一般的な乗用車は、乗り心地を重視して「独立軸サスペンション」を採用しています。1輪で障害物をクリアできるので、安定した姿勢で乗り心地はいいのですが、障害物が大きいと乗り越えられません。
新型モデルはリジットサスペンションも搭載。この辺の機構に関しては、今後もずっと受け継がれていくでしょう。
③ 軽自動車とは思えない耐久性
軽自動車はコストが低い分、車としての耐久性も低いというのが常識です。ところがジムニーは、ハードな走りを視野にいれているので、軽自動車とは思えない耐久力を秘めた車なのです。
しっかりメンテナンスして、先代ジムニーを30万km乗っている人もザラにいますよ。
単純な構造が生むタフさ
先ほど解説した通り、ジムニーは一般的な車とは異なる構造をしています。タフなフレーム構造によって、ボディが痛んでも問題なく走れます。
また、コンピュータやセンサーといった電子制御を、最低限に留められているので、大部分が機械的な機構となっています。極端な話「原始的なつくり」をしているので、ちょっと故障しても動く車なんです。
最近の車は電子制御が多く、少しの故障で自走不可能になってしまうケースも珍しくありませんからね…
なお耐久性については以下の記事でさらに詳しく解説しています。詳細まで知りたい方はこちらもご参照ください。
ジムニーの耐久性が高い4つの理由!強度が半端ない?!整備性も抜群
いくらタフな先代ジムニーでも、故障したらメンテナンスが必要…。ハードな走行にはリスクが伴いますからね。
ところが、ジムニーは整備がとても簡単。原始的なつくりなので、パーツの交換が簡単なんですね。この整備性の高さも、ジムニーの大きな強みといえるでしょう。
整備性の高さには、「モデルサイクルの長さ」も一役買っています。初代の登場から40年が経つにもかかわらず、フルモデルチェンジはたったの3回。先代「JB23型」モデルにいたっては1998年から2018年まで、実に20年もの間現役でした。
1モデルの販売期間が長いということは、それだけ部品も多く供給されることを指します。部品交換の際、受発注がスムーズに運ぶので素早く整備が行えるんです。
なおジムニーのメンテナンスについては以下の記事で詳しく解説しています。興味のある方はこちらもあわせて参考にしてみてください。
ジムニーにはどんなメンテナンスが必要?費用はこんなにかかります!ジムニーの走破性:悪い点・できないこと
走破性においては無敵のジムニーですが、弱点といえる部分もいくつかあります…。フルモデルチェンジにおいては、ここがチェックポイントですね。
① 普段使いにはやや不便
先代ジムニーは走破性を高めるあまり、乗り心地が悪くなってしまいました。この2つは共存できない要素なので仕方ないですが、気になる方は、購入前にチェックした方がいいでしょう。
燃費が悪い
先代ジムニーの燃費は軽自動車としては圧倒的に悪いといわれていました。過去のモデルに比べれば改善したものの、やはり最近の軽自動車には今一つおよびませんね。
- MT:14.8km/L
- AT:13.6km/L
こちらが先代ジムニーの燃費メーカー公称値です。
アウトドアやオフロードを走るにはメリットのある車ですが、街乗りや通勤に使うのはややコストパフォーマンスは悪いことは否めません。
最近のコンパクトカーには劣るものの、レギュラーガソリンで13km/Lを超えるので、個人的には十分だと思いますが…。
ですが、先ほど触れたように、燃費性能はフルモデルチェンジにて大きく改善されました。
乗り心地が悪い
ラダーフレーム構造は走破性には適していますが、乗り心地を犠牲にして成り立っています。
ホイールベースも2,250mmと短く、ホイールサイズも16インチと、ボディに対して大きいので、静粛性・直進安定性も悪いです。
そのため、日常使用を考えると、疲れてしまうかもしれませんね。長時間の運転にも向かない車でしょう。(長時間の運転について以下の記事で詳しく解説しています。)
ジムニーで長距離ドライブは疲れる?長距離移動の快適さについて解説!② 車内空間が狭い
歴代ジムニーの弱点として、多くの人が挙げるのが「車内の狭さ」です。居住室・荷室ともに、軽自動車のなかでも狭い部類に入ります。
170cmの男性が乗っても、圧迫感を感じることでしょう。とくに後部座席が使いにくいので、2人乗りの車と考えた方がいいかもしれません。
荷室も「幅920mm」「長さ330mm」と、かなり狭いです。後部座席を倒してフラットにしても、長さは1,100mmです。
大きな荷物や長い荷物は積めません。アウトドアの使用には、別途ルーフキャリアを装着することをおすすめします。
この不評だった車内空間ですが、新型ではけっこう改善されているようです。室内寸法の変更点は以下をご覧ください。
- 室内長:1,795mm(+55mm)
- 室内高:1,200mm(-10mm)
- 室内幅:1,300mm(+80mm)
室内高は1cm下がっていますが、長さ5.5cm、幅にいたっては8cmも長くなっています。先代モデルに比べて快適になっていることは間違いありませんね。
ただやはりキャンプなどのレジャーではあまり使いにくいでしょう。(詳細は以下の記事をご参照ください。)
ジムニーがキャンプに不向きな理由3つ!ソロキャンプなら可能?!ジムニーの走破性をほかの車と比較
それでは、同クラスの車種と比較すると走破性がどれほど違うのか、見てみましょう。「軽クロスオーバー」「軽オフロード」「軽トラ」の3ジャンルと比較したいと思います。
軽クロスオーバー
クロスオーバーSUVとは、乗用車の基本構造をベースに、SUV風のデザインに仕上げた車のことですね。
- スズキ「ハスラー」
- ダイハツ「キャスト アクティバ」
この2車種が代表的です。
居住性・乗り心地に関しては軽クロスオーバーの方が優れていますが、走破性に関しては先代ジムニーには到底かなわないでしょう。
なおハスラーの走破性については以下の記事で詳しく解説しています。興味のある方はこちらもあわせてご参照ください。
ハスラーの走破性を徹底解剖!クロカン・オフロード性能はいかに?!軽オフロード
ジムニーと同クラスといえば、このジャンルが該当しますね。
- 三菱「パジェロ ミニ」
- ダイハツ「テリオスキット」
ジムニーを除けば、この2車種が人気です。
しかし、ジムニー以外の軽オフロード車は、「ビルドインラダーフレーム」と呼ばれる、モノコックフレームにラダーフレームを溶接した構造がベースとなっています。完全なシャシー別体式ではないということですね。
「リンク式コイルスプリング」という車軸懸架式サスペンションなので、それなりに走破性には優れるものの、先代ジムニーには及びません。
なおパジェロミニの走破性については以下の記事で詳しく解説しています。詳細が知りたい方はこちらもご参照ください。
パジェロミニの走破性を徹底解剖!オフロード・クロカン性能はいかに?!軽トラ
走破性という点においてジムニーに近いスペックを持つのが、意外にも軽トラなんです。その理由はジムニーと同様、別体式のフレームを採用していることに起因しています。
- ダイハツ「ハイゼット」
- スズキ「キャリィ」
- ホンダ「アクティ」
この3車種が代表格といったところでしょうか。
フレーム構造やパワートレインは悪路に対応していますが、軽トラに採用される足回りは、「リーフ式サスペンション」と呼ばれるものです。
足の構造に加え、エンジン性能も劣ることから、先代ジムニーの走破性には及ばないでしょう。
もしジムニーを買おうと考えているなら、あわせて正しい値引き交渉のやり方も覚えておくといいですよ。
このやり方を知らないと最大60万円以上も損しますよ。詳しく知りたい方は、下記の『たった1分で車を60万円値引きできる裏技』のページをご覧ください。 たった1分で車を60万円値引きできる裏技!安く購入する秘密のテクニックとは?!ジムニーの走破性の評価
これほど魅力的な車なので、Twitterを探ってみると、たくさんがツイートがでてきます。気になったものをいくつか紹介しましょう。
@Sugiyamaryan
ジムニーはああ見えてハマーよりも走破性あるそうですよ( ゚д゚) pic.twitter.com/Sm9ZfYyqhz— Mr.ランボー@ 30日F2侵攻作戦 (@M4Shermanto) 2013年9月8日
一部では、ジムニーの走破性はハマーにも勝ると噂されています。ハマーといえば、軍用にも使用される大型オフロードですよね…。
そんな怪物みたいな車と比較されるなんて、ジムニーの走破性は恐ろしいの一言です。
ところが先代ジムニーは、一部で軍事車両としても採用されているので、実はこれおかしい話じゃないんですよ。
まぁ、輝夜さんですから??
どんな道でもジムニーは最強の走破性を誇ります?? pic.twitter.com/UG8oaYRsEh— タコちゃん@最幸?ら (@takotakoland_i) 2018年6月12日
ジムニーのファンは日本全国にたくさんいます。四駆乗りのオフ会やミーティングも、いたるところで開催されていますよね。
林道や川を走り、ドロドロになって…最高の楽しみ方ですよね。(ジムニーの楽しみ方の詳細は以下の記事をご参照ください。)
ジムニーが楽しい車である6つの理由!運転が最高に面白い?!スコップを背負ったり、牽引ロープを付けたり、リフトアップしてるジムニーを、街でも見かけませんか? そうです、彼らは林道を開拓する猛者たちなのです。
第二次世界大戦で、卓越した耐久性と走破性で大活躍したジープ。そのシャーシとジムニーのシャーシを比べてみると、ジムニーが直系の子孫であることがよくわかる。そこいらのSUVとは訳が違うのである。 pic.twitter.com/dZpHQx9KyP
— MD22 (@m_baja) 2014年8月3日
こちらの方はジムニーをよく分析なさってますね。
このシャシー構造こそが、先ほど解説したラダーフレーム。フレーム構造がボディと「一体式」なのか「別体式」なのか、その一点で真のオフロードSUVかどうか判断できるのです。
ジムニーの走破性は世界トップクラス
というわけで、長々と先代モデルのジムニーについて解説してきました。ジムニーという車がどれだけ特異な国産車か、伝わりましたよね。
こと「走破性」に関しては、世界でもトップクラス。
かくいう私も、ジムニーに憧れている男の一人なのです。「もし軽自動車に乗るなら、絶対ジムニー!」と心に決めているほど…。
やや普段使いに向かない点はありますが、「コスト」「デザイン」そして「走破性」という点から、先代ジムニーは間違いなく最高の国産車の一つです。
ジムニーについては以下の記事でも取り上げているので、興味のある方はこちらもあわせて参考にしてみてください。
絶対読んでください!ジムニーの中古車を購入時の11の注意点!ジムニーは故障が多い?壊れやすいのか故障率をもとに解説!