プジョーは現在同じフランスの自動車会社であるシトロエンと共同で自動車を開発。プジョーシトロエングループ(PSA)としてプジョーは中小型車、シトロエンは中型大型車と分けて車を販売しています。
日本にもプジョーシトロエンの会社はあり、台数は少ないものの毎年一定数が販売されています。フランス車独特の魅力に惹かれた人も少なくありませんね。
一方でフランス車は日本車に比べると信頼性は低いと言われており、それがネックでフランス車に乗らないという人もたくさんいます。
たしかに昔プジョーが単独の会社だったときにはそうでした。しかしプジョーシトロエンとなり、またそれ以外の他社とも部品共用を進めているプジョーの現在はどうなのでしょうか?
この記事ではプジョーの故障率について詳しく解説していきます。
プジョーの故障率はかなり低くて優秀
それでは早速プジョーの故障率を見ていきましょう。
プジョーの故障率
プジョーの車の故障率はメーカーが詳細なデータを収集していて開発に活用しているのですが、そのデータは一切一般には公開されておらずわたしたちには内容がわかりません。
しかし自動車メーカー以外の民間調査会社などが車の故障率や信頼性についてのデータを独自に収集しており、これらは一般に公開されているものが多いです。今回はこれを参考にしていきます。
プジョーは日本では販売台数の割合が少なすぎて、日本市場のランキングには載っていません。
ただ欧州の自動車大国であるドイツ市場での調査にはプジョーも入っており、こちらが参考になります。
この調査では、アメリカの調査会社J.D. パワー車が毎年各国市場の自動車の耐久品質を調べており、それをランキング形式で発表しています。
実際の自動車のユーザーからの聞き取り調査という形をとっており、新車購入後3年~5年までの間に起こったトラブルの少ないメーカーが上位に入っています。
ランキング | メーカー名 | スコア |
1 | キア | 99 |
2 | ヒュンダイ | 105 |
3 | トヨタ | 109 |
4 | 三菱 | 113 |
5 | シュコダ | 114 |
6 | プジョー | 125 |
7 | 日産 | 129 |
7 | オペル | 129 |
9 | ホンダ | 132 |
10 | フォード | 137 |
11 | セアト | 138 |
12 | ルノー | 139 |
13 | フォルクス ワーゲン | 146 |
業界平均 | 151 | |
22 | シトロエン | 195 |
参考:J.D. Power 2017 Germany Vehicle Dependability Study J.D. Power
ドイツは欧州車のみならず、日本車、韓国車、アメリカなどその他の国のメーカーが入り乱れる激戦区。その中でもプジョーは6位とかなり健闘。韓国メーカーやトヨタ、三菱には及ばないものの、日産、ホンダよりは上位につけています。
スコア的にも日産、ホンダと大差ないことから、ドイツ市場では日本車と同等クラスの故障率の低さといえるでしょう。
トヨタ、日産、ホンダの故障率はこちらでも詳しく解説しています。こちらもあわせてご参照ください。
トヨタは故障が多い?壊れやすいのか故障率をもとに解説!ホンダは故障が多い?壊れやすいのか故障率をもとに解説!日産車は故障が多い?壊れやすいのか故障率をもとに解説!さらに同じフランスのルノーが12位、同一グループのシトロエンに至っては22位と下位に沈むなか、フランスメーカーではプジョーだけが頭ひとつ飛び出ています。
これはフルラインナップを擁する他の二つのメーカーに比べて、プジョーは比較的負荷の少ない中、小型車がメインということも関係しているでしょう。
あくまでドイツ市場でのことなので直接日本に適用できるわけではありませんが、それでも現在のプジョーの故障率は悪いわけではありません。
フランスメーカーの故障率は以下の記事で詳しく解説しています。興味のある方はご参照ください。
ルノーは故障が多い?壊れやすいのか故障率をもとに解説!シトロエンは故障が多い?壊れやすいのか故障率をもとに解説!日本と欧州では故障の考え方が違う
ドイツでは信頼性が高いレベルにあるプジョーですが、これは一転日本市場に移ると故障が多いメーカーに数えられる可能性は高いです。
別の記事でも書いていますが、フォルクスワーゲンとも同じパターンです。
フォルクスワーゲンは故障が多い?壊れやすいのか故障率をもとに解説!日本で故障率が高くなってしまうのは、日本と欧州で車のトラブルや故障に対する考え方が大きく違うからです。
日本と欧州のメンテンナンスの考え方
日本で故障の少ない車というと、1年間ほとんどメンテナンスなどしなくても動き続けてくれる車ですよね。事実大半の日本車はそれほどまでのクオリティを持っています。
一年の間に行うメンテナンスはせいぜいオイル交換と毎年の定期点検ぐらいなもの。ほとんどほったらかしというのが日本での車の扱いでしょう。
欧州ではメンテナンスを頻繁に行う前提で車作りがなされており、その都度耐久性がなくなった部品は積極的に交換してクオリティを保つことを目指しています。
そのため軽度のトラブルであれば故障とはとらえない人も多く、メンテナンスで直るレベルであれば問題ないと考えるのです。
欧州車は基本的にこの考え方で作られているので、ともすると日本車より消耗品の劣化が早い場合がありますが、これはあくまでメンテナンスの範疇なのです。
この欧州との違いについては以下の記事でも深掘りしています。
比較してみた!ドイツ車と日本車の決定的な違い5つ!日本車に慣れすぎた結果のトラブルも
しかしそのようなメンテナンスありきの作り方をされた車を日本に持ってくると、欧州では問題ないレベルのトラブルでも故障ととらえられてしまいます。
そういった車に対する考えの違いがもとで、プジョーに故障が多いと思われている可能性も大きいです。
佐藤茂道(著者)
私たち日本人があまりにも日本車のクオリティに慣れすぎていて、メンテナンスをおろそかにしがちという証ですね。
とはいえ走行距離が増えてきたり年式が古くなれば、トラブル自体が増加傾向にあるのは間違いありません。(走行距離の寿命の詳細は以下の記事をご参照ください。)
中古車は走行距離が何万キロまで安心して乗れる?答えはこれだ!日本車とは違って5年もしくは50,000kmを超えた辺りからトラブルが増えてくる傾向にあるようです。
それぐらいの時期になったプジョーは、よりメンテナンスの重要性が増しているわけです。
中古のプジョーの故障しやすさ
中古車のプジョーは走行距離が多くなると特にトラブルが増えやすいです。それゆえ走行距離が多く年式も古いプジョーでは、中古車価格は大幅に下がります。
前述した5年もしくは50,000kmというラインがひとつの目安ですが、日本人の感覚では中古のプジョーは故障しやすいと言えます。
日本車では8年~10年、80,000km~100,000kmまでノートラブルの車も多いことを考えると当然でしょう。しかしメンテナンスをしっかり行えばまだまだ乗り続けられる車です。
一概に中古だからといってプジョーのすべてが故障しやすいわけではありません。中古車を選ぶ基本である走行距離や年式をしっかり見極める必要があるでしょう。
逆に、もし中古車価格が大幅に安くなっているプジョーがあったら、なにかトラブルの可能性があるのだと考えておかなければなりません。
中古車の価格の安さについては以下の記事でも解説しているので、こちらもあわせて参考にしてみてください。
外車の中古車はなぜ安い?5つの意外な理由とは?!プジョーオーナーの故障に対する評判
日本でプジョーに故障が多いかどうかは実際にプジョーに乗っているオーナーさんの声を聞くのが一番です。
Twitterにはそういった意見が多数投稿されていますので、参考にいくつかご紹介しましょう。
プジョーのエンジン定番トラブル?
おかありです。
今朝エンジンかけたらこんな警告出ました。
検索かけたら高圧燃料ポンプやイグニッションコイルあたりが怪しそうです。 pic.twitter.com/hfg0WtBCIU— なとり復興桜@風邪引いた (@fukko_sakura) March 12, 2018
プジョーでは定番の故障らしいです。
同じエンジン積んでるクーパーではあまり聞きませんが— なとり復興桜@風邪引いた (@fukko_sakura) March 12, 2018
この方のプジョーは車種はわかりませんが結構走行距離を重ねられているようで、ある日エンジンの警告灯がついたそうです。
どうやらプジョーのエンジンにありがちのトラブルのようですね。これについてはのちほど詳しく解説しましょう。
フランス車伝統の弱点AL4
愛車プジョーのミッションAL4が完全に壊れたみたい(ToT)
他にも故障箇所があるのでもはやこれまで。
愛車と別れるのは辛いがよくここまでがんばってくれました。
感謝。
— ルルパパ (@rurupapa_esprit) November 2, 2017
この方のプジョーにはAL4と呼ばれる4速ATが搭載されていますが、このミッションはフランス政府肝入りで開発されたにも関わらずトラブルが多いことで有名です。
プジョーだけでなく同じミッションを採用したシトロエンやルノーでもトラブルが多発したもので、これについてものちほど詳しく解説します。
なお今現在はもっとトラブルの少ないミッションになっており、AL4の悪夢はおもに中古車で見られます。
故障の少ないプジョーもあり
プジョーに7年乗ってて故障らしい故障といえばスロットルワイヤーが外れかけてアクセル踏んでも加速しなかったのが1回ポッキリだったので輸入車の故障率が高いってのは都市伝説か使い方が悪いかどちらかだと思ってる。
— どなべ.core (@rbp200) September 29, 2017
プジョーが故障が多いのかとおもいきや、7年乗っていて重大なトラブルはなかったという方もいらっしゃいます。
前述したようなピンポイントの弱点はあるものの、プジョー全般でいうとマイナートラブルは多いものの走れなくなるほどのトラブルは少ないという意見も多く見かけました。
日本車と比べてしまってはちょっと不公平ですが、プジョーもそこまで悪い車ではないのです。
もしプジョーの購入を考えているなら、値引き交渉の正しいやり方を覚えておくといいですよ。
このやり方を知らないと最大60万円以上も損しますよ。詳しく知りたい方は、下記の『たった1分で車を60万円値引きできる裏技』のページをご覧ください。 たった1分で車を60万円値引きできる裏技!安く購入する秘密のテクニックとは?!
プジョーの故障事例と修理費用
さて先ほどのツイートにもありましたが、いくつか実際のプジョーの故障事例をご紹介しましょう。
直噴エンジンのトラブル
現行のプジョーには環境性能を高めた直噴ガソリンターボエンジンが採用されていますが、このエンジンは走行距離が増えてくるとトラブルが増える傾向にあります。とくに日本の道路状況で発生しやすいです。
直噴エンジンとは
直噴ガソリンエンジンというのは、普通のエンジンのように空気と燃料をあらかじめ混ぜるのではなく、シリンダー内の圧縮した空気の中に直接燃料を噴射する形式。
同クラスの通常エンジンに比べて高出力化することができるのを逆に利用し、現在ではエンジンのダウンサイジングに活用されています。
メリットが多く小型のエンジンで燃費もよいのが特徴であり、欧州では採用の進んでいるエンジンです。
プジョーの直噴エンジンはBMWが開発してさまざまなメーカーに採用されている機種であり、プジョーのほかにシトロエン、MINI(BMW傘下)などにも採用されています。
そんな次世代の高性能エンジンですが、いくつかデメリットもあり、それがトラブルのもとになっているのです。
直噴エンジンの詳細は以下の記事で解説しているので、興味のある方はこちらも目を通してみてください。
直噴エンジンとは?メリット3つとデメリット4つ!不具合と耐久性が欠点?!カーボンの堆積
直噴エンジン固有のデメリットといえば、燃料の燃えカスであるカーボンの堆積。プジョーのエンジンではこのカーボン堆積の頻度が結構多く、インテークやバルブなどに過剰に堆積することがあります。
そうするとエンジン出力の低下やエンジン回転の不安定化などの不具合が現れます。
直噴エンジンは構造上燃料が完全に燃えないことが多く、それがカーボンとなってエンジン内部に堆積していきます。
これ自体は直噴エンジンの故障でもよくある現象なのですが、車の運転条件が低速でストップアンドゴーが多い状況だとカーボンの発生が多いのです。
欧州では高速道路の利用も多く平均スピードが高い状況にあわせてエンジンのセッティングがされています。
しかしそれを日本に持ってくると、まさに低速+ストップアンドゴーの多い道路状況が続くため、カーボンの発生が多いのです。
前述したような不具合が起こってディーラーなどに入庫するとこのトラブルが見つかるのですが、修理は基本的に堆積したカーボンの除去のみとなり、部品交換などは起こりません。
費用的には100,000円いかないぐらいで済みますが、エンジンを大きく分解しますのでその過程でほかの交換部品が見つかることもあります。
※カーボン除去の詳細は以下の記事で解説しています。詳しいところまで知りたい方はこちらもご参照ください。
直噴エンジンのカーボン除去対策3つ!高回転で回しオイル交換のメンテナンスが最適?!このトラブルは決して故障ではなくメンテナンスで対応する部類のものですが、走行距離が50,000km前後で発生するので日本車より故障が多いように見えてしまいます。
しかしオイル交換を短いインターバルで行うことでもこのトラブルは軽減されるので、メンテナンスの基本であるオイル交換をあまりしない日本車の感覚で乗るのは大きな間違いです。
燃料ポンプの故障
もうひとつ直噴エンジンのトラブルで多いのが高圧燃料ポンプの故障で、これは部品交換での修理が必要です。
直噴エンジンでは燃料を高圧で噴射する必要があり、普通の燃料ポンプよりパワーのある高圧燃料ポンプが必須。
しかし高圧ということは負荷が高いということでもあり、エンジン部品の中でも故障しやすい部品とも言えます。
故障率としては50,000km走行まではそこまで多くはありませんが、それ以降では発生度は上がってきてしまうので注意が必要です。
費用は50,000円〜100,000円ぐらいの修理費用となるでしょう。
ただしこのトラブルが発生するとエンジンが始動しなくなりますので、自走できず運搬してもらう費用も発生します。
任意保険などのロードサービスに加入していれば無料で運んでもらうこともできるので、プジョーに乗るならそういう点を重視して保険を選ぶとよいでしょう。
AL4トランスミッションの故障
プジョーの2010年ごろまでの車種に搭載されていた4速ATがAL4と呼ばれるミッション。このミッションには当初からトラブルが非常に多くこの時期のプジョーの大きな弱点となっています。
2010年以降は日本のアイシン精機のトランスミッションが採用されるようになってトラブルは激減したようです。
AL4は構造上トラブルが多い
AL4はオールフランスで開発された肝入りのトランスミッションで
- PSAグループ
- ルノー
- シーメンス(部品メーカー)
の共同開発です。
そのため多くのフランス車に採用されたこのミッションですが、どうにも構造上バルブ系のトラブルが頻発するようになっています。
走行距離20,000kmに満たない場合でも故障が発生する事例があります。
故障が起こると変速ができないギア固定のトラブルが出てしまい、すぐにでも修理が必要な状態となります。
原因の大半はさきほどいった制御用のバルブが動かなくなるためで、一度ミッションを分解してバルブの交換が必要です。
トラブル費用もかかる
費用的には50,000円〜100,000円ぐらいの修理費用となりますので、なかなか費用もかかります。
またAL4はミッションオイルの交換も頻繁に行った方がよいようで、メーカー推奨で100,000kmまで無交換とうたっていても、20,000kmごとに交換する人も多くいます。
トラブルがひどい場合にはミッション載せかえも視野にはいる故障であり、そうなると200,000円以上の費用がかかるでしょう。
現行のプジョーでは心配することはありませんが、中古車でAL4を搭載している車種にはトラブルが起こりがちですので、その辺りをしっかり見極めましょう。
電気系統の故障
プジョーに限らず輸入車に多いトラブルに電気系統の故障がありますが、電気系統と一口にいってもいろいろな部分があります。
エアコン、センサー、モーターの故障が多い
輸入車の電気系統は高温多湿な日本の環境にはいまいち馴染みが悪いようで、センサーやモーターのような部品の故障が多くなります。
中でもトラブルの頻度が多いのがエアコン関係で、エアコンコンプレッサーの故障や、ブロアの故障などいろいろな点にトラブルの可能性があります。
修理には基本的に部品交換となり、費用は部位によって100,000円以下のものもあれば200,000円に届くものまでさまざまです。
パワーウィンドウのトラブルも起こりやすい
またほかにはパワーウインドウのモーターが故障することが多く、窓ガラスが下がったまま上がらなくなるトラブルが起こります。
この場合はモーターだけの交換ではなく、パワーウインドウレギュレーターと呼ばれるパワーウインドウ関係の部品全体を交換する流れになります。
費用は200,000円前後と高額で、輸入車の修理費用が高いといわれているのはプジョーにもあてはまります。
電気系統は走行距離が多くなってくることで発生頻度もあがりますので、高走行の中古車には注意が必要です。
プジョーは買っても大丈夫か?
プジョーは「猫足」と呼ばれるしなやかな足回りが特徴の車で、日本車にはない魅力がたくさん詰まっています。この魅力については以下の記事で詳しく書いてます。
プジョーの決定的な特徴7つ!魅力から欠点まですべて解説します!日本車では決して味わえない体験を経験できるのもフランス車たるプジョーならではといえるでしょう。
故障率もフランス車の中ではよい方なのはデータが証明していますが、日本の環境は欧州車には厳しい条件であることは間違いありません。その状況ではなかなか日本車以上の故障率の少なさとはなりません。
しかししっかりしたメンテナンスを施しておけば、致命的なトラブルも起こりにくいメーカーです。その辺りをしっかり認識して乗れば、とっても素晴らしい車のひとつになるでしょう。
プジョーに関してはほかにも以下のような記事があります。興味がある方はぜひご覧ください。
プジョーはどこの国の車?国産車との違いはこの3つだ!プジョーのイメージは悪い?!乗ってる人のイメージまで徹底調査!