「重厚」「堅牢」「安全」といった言葉を連想させるメルセデス・ベンツ。
まさに、「大人が乗るプレミアムカー」というイメージそのもので、優雅なクルージングが似合うブランドですよね。
いっぽうで、その都会的な雰囲気から「雪道は走れるのか?北国じゃ乗れないんじゃないの?」なんて思う方も多いようです。
というわけで今回は、メルセデス・ベンツがメーカーとして「どれくらい雪道性能が高いのか?」について解説していきたいと思います。
Twitterの投稿や、車種ごとの性能、そして他メーカーとの比較なども調べ上げたので、ぜひ最後までご覧になってくださいね。
ベンツの雪道走行性能
具体的な解説の前に、ベンツに対する世間のイメージを見てみたいと思います。いくつか気になる投稿を見つけたので、参考までにご覧ください。
そうですよね。雪道だとFRのベンツよりFFのフィットのほうが安心感はあるかもですね(^^;
— こた (@kotalian5) 2018年7月11日
ベンツの雪道性能に関しては、このように心配の声が多いようです。
高級車というイメージが強く、なおかつFRベースのモデルが多いことが大きな理由でしょう。日本車と比較して、ベンツは4WDのラインナップが少ないですからね。
そのせいか、圧倒的に価格の低いフィットのほうが「雪に強い」と感じる人も少なくありません。
フィットは雪道に弱い?雪道走行の性能について分析してみました!新しめのベンツの4駆は雪道でもスタッドレスタイヤいらないほど電子制御すごいからねw
— SAKURA☃MIAくん (@mephistphires) 2014年11月18日
いっぽうで、ベンツの4WDモデルはなかなか評価が高いんですよ。「スタッドレスいらず」というのはさすがに言いすぎですが、本格な雪に対応できるだけの性能をもっています。
この点についてはのちほど詳しく解説しましょう。
ゲレンデヴァーゲン、SUVですよ。素のベンツも北国生まれの車ですから雪道には強いんですけどね。知人に乗せてもらったことがありますが、足回りの安定感と包み込まれるようなボディの頑丈さ(金庫の中に入ったような) が国産車とは別次元でした。
— 凛々 (@Rin_Me) 2018年2月14日
ベンツのモデルは、全体的に日本車よりもボディ剛性が高いです。この強いボディが外力をしっかり受け止めるので、積雪で荒れた路面でも安心して走ることができるのです。
とくにオフロード向けにつくられたゲレンデヴァーゲンは、かなりの雪道性能を誇る一台。
ベンツの雪道走行性能の理由
それでは、ベンツの雪道性能について解説をしていきましょう。モデルによって性能に差があるので、ここでは駆動方式の仕組みについて着目してみたいと思います。
4WDシステム「4MATIC」の性能
ベンツの新型モデルには「4MATIC」という4WDシステムが採用されています。モデル名にも表示されているので、この名前にピンとくる方も多いことでしょう。
日本の雪国は道路環境がとくに過酷といわれますが、北部でも4MATIC仕様車に乗っている人が一定数いることから、評価の高いシステムといえますね。その仕組みについて、用語を交えながら簡単に解説してみたいと思います。
ざっくり考えると、FFベースのモデル(GLAなど)に採用される「アクティブ・トルクオンデマンド方式」と、FRベースのモデル(セダン全般やGクラスなど)に採用される「電子制御LSD付きセンターデフ方式」に分類することができます。
FFベースの4MATICは、広義では「スタンバイ式4WD」という分類に入り、基本的には前輪駆動です。ただし、センサーが前輪の空転を感知したとき、電子制御カップリングや油圧クラッチを働かせて後輪へと動力を分配するため、雪の上では常に前後輪を駆動させることになります。
いっぽう、FRベースの4MATICはというと、センターデフ(遊星ギア)によって前後輪トルクを45:55に分配しているので、FRベースではありますが雪には強いんですよ。車種により基本的なトルク配分は異なり、33:67のモデルもあります。
FRベースの雪への対応力は、「電子制御式LSD」の働きも大きいです。LSDとは、一定環境においてディファレンシャルギアをロックする機構のこと。
つまり、シャフトの回転がロックされるため、いずれかのタイヤが空転しても他のタイヤは動き続けるのです。
少し長くなりましたが、簡単に説明するとこんな感じ。4MATICはスポーツ向けなイメージですが、強いグリップ力を発生することから、日本の雪道でもしっかり走れるシステムといえますね。
横滑り防止装置「EPS」の活躍
ESP(Electronic Stability Program)とは、自動で車体の挙動を制御するシステムのこと。いわゆる「横滑り防止装置」のことですね。BMWでは「DSC(Dynamic Stability Control)」、トヨタなら「VSC (Vehicle Stability Control)」と呼びます。
仕組みとしては、各種センサーがタイヤの空転を感知したとき、個々のタイヤへブレーキをかけたり、エンジン出力を制御するなどして、駆動力を適切に分配するようなものです。
具体的に、左コーナーを曲がるケースを想定してみましょう。重心が一番かかるのは、前方外側に位置する右前輪ですが、コーナーを曲がり切れないと判断した場合、右前輪から荷重を抜くようにシステムが働きます。
どうするのかというと、対面の左前輪へ独立したブレーキをかけることで、左側にもふんばる力を作ってあげるんですね。前輪のトルクバランスが保たれるので、結果として左に曲がろうとする力が高まります。
ベンツのEPSは業界内でも評価が高いんですよ。ドライバーが認識できない些細な挙動の乱れを、システムが早い段階で自動的修正してくれるため、雪の上でも安定して走ることができます。
もしベンツ車を買おうと考えているなら、あわせて正しい値引き交渉のやり方も覚えておくといいですよ。
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続いては、ベンツのおすすめモデルについて具体的に見ていきたいと思います。FRモデルが多いベンツですが、今回は4MATICを備えた人気モデルを選んでみました。
Cクラス セダン
項目 | C180 | C200 |
種類 | 直列4気筒DOHCターボ | 直列4気筒DOHCターボ+モーター |
排気量 | 1,595cc | 1,496cc |
最高出力 | 156PS/5,300rpm | 184PS/5,800-6,100rpm |
最大トルク | 25.5kgf・m/1,200-4,000rpm | 28.6kgf・m/3,000-4,000rpm |
車重 | 1,490kg | 1,550kg |
全長×全幅×全高 | 4,690×1,810×1,445mm | 4,690×1,810×1,425mm |
最低地上高 | 130mm | 130mm |
駆動方式 | FR | FR/フルタイム4WD |
※直列4気筒、DOHC、ターボ、の詳細は以下の記事をご参照ください。
直列4気筒エンジンの特徴!どんな音?搭載車を日本車/外車の車種からそれぞれ紹介!DOHCエンジンとは?仕組み/構造は?ツインカムとの違いとは?!ターボエンジンとは?仕組み/構造は?メリット2つとデメリット4つ!ダイナミックなエクステリアと、上質なインテリアが魅力的な「Cクラス」。ベンツのセダンラインとしては廉価なモデルですが、小気味良い走りがとても人気です。
1.5Lモデル「C200」、1.6Lモデル「C180」、2.0Lモデル「C220」の3種類がラインナップされており、C200にのみ4MATICが設定されています。今回はCクラスを代表して、C180とC200の公式諸元を引用してみました。
グレード間ではそれほど大きなスペック差は感じませんね。大きな違いは、やはり4WDの設定でしょう。C200なら、駆動方式は遊星ギアを用いたFRベースの4MATICを選択できるので、雪道でも安心です。
エンジン性能、車重、そして最低地上高は、このクラスのセダンとしては標準的。深い積雪などは厳しいですが、フルタイム4WDであることから、日常使用には十分なスペックといえますね。
GLAクラス
項目 | GLA180 | GLA250 |
種類 | 直列4気筒DOHCターボ | 直列4気筒DOHCターボ |
排気量 | 1,595cc | 1,991cc |
最高出力 | 122PS/5,000rpm | 211PS/5,500rpm |
最大トルク | 20.4kgf・m/1,250-4,000rpm | 35.7kgf・m/1,200-4,000rpm |
車重 | 1,480kg | 1,600kg |
全長×全幅×全高 | 4,430×1,805×1,505mm | 4,430×1,805×1,510mm |
最低地上高 | 150mm | 150mm |
駆動方式 | FF | 4WD |
世界的なSUVのニーズの高まりから生まれた「GLAクラス」は、普段使いを考慮したコンパクトSUVモデルです。日本で輸入車に乗ると、大きすぎて使いこなせないことが多々ありますが、GLAは取り回しやすいサイズ感が人気。
ラインナップは1.6Lモデルの「GLA180」、2.0Lモデルの「GLA250」の2種類で、GLA250にのみ4WDが設定されています。こちらはCクラスと違って、FFベースのトルクオンデマンド式ですね。
スリップを検知してから四輪駆動に切り替わるシステムですから、走破性に関しては国産コンパクトSUVと大差はありません。
ただし、ターボチャージャー付きのエンジンを搭載しているので、トルクの大きさでは国産モデルを上回りますね。車重1,600kg、最低地上高150mmということで、雪道への対応力も高そうです。
GLAには、急勾配などのシチュエーションにおいて、アクセルとブレーキを自動制御することで、ドライバーがステアリング操作に集中できる「DSR(ダウンヒル・スピード・レギュレーション)」を備えているので、雪の峠道でも安心です。
また、ステアリング舵角、登坂角、車両傾斜角、方角をCOMANDディスプレイに表示し、車両状況が一目でわかる「オフロードスクリーン」を装備しています。
Gクラス
項目 | G350d | G550 |
種類 | 空冷V型6気筒DOHCディーゼル ICターボ | V型8気筒DOHCツインターボ |
排気量 | 2,986cc | 3,982cc |
最高出力 | 245PS/3,600rpm | 422PS/5,250-5,500rpm |
最大トルク | 61.2kgf・m/1,600-2,400rpm | 62.2kgf・m/2,000-4,750rpm |
車重 | 2,550kg | 2,450kg |
全長×全幅×全高 | 4,575×1,860×1,970mm | 4,660×1,930×1,975mm |
最低地上高 | 235mm | 235mm |
駆動方式 | フルタイム4WD | フルタイム4WD |
※V型6気筒、8気筒、空冷、エンジンの詳細は以下の記事をご参照ください。
V6エンジンの特徴!どんな音?搭載車を日本車/外車の車種からそれぞれ紹介!V8エンジンの特徴!どんな音?搭載車を日本車/外車の車種からそれぞれ紹介!空冷エンジンの魅力4つ!水冷エンジンとは違いが大きい?!最後に紹介するのはもちろんこれ。ベンツ屈指のクロカンモデル「Gクラス」です。1979年に発売され始めた「ゲレンデヴァーゲン」の現行モデルで、強力なエンジンユニットや堅牢なボディを脈々と受け継いできた至高の一台。
ラインナップは3.0Lディーゼルモデル「G350d」、4.0Lツインターボ「G550」の2種類が用意されています。どちらも当然、駆動方式は遊星ギア式の4MATICです。
最大の特徴は、本格オフロードを考慮したタフなつくりにあります。プラットフォームは駆動部と居住区が別体となった「ラダーフレーム構造」を採用。
加えて、サスペンションには走破性に長けた「コイルスプリング式リジットアスクル」を用いているので、抜群の走破力をもっているんです。
さらに、トルク性能は驚異の62.2kgf・mというパワフルさで、最低地上高も235mmを誇るので、向かうところ敵なし。
車重の重さが気にはなりますが、ブレーキングやコーナリングに気を付ければ、日本の過酷な雪道でも容易に走ることができるでしょう。
ベンツと他のメーカーの雪道走行性能を比較
ベンツの雪道性能はある程度わかりましたが、他社と比較するとどうなんでしょうか?
というわけで、同じ欧州ブランドである「BMW」「アウディ」、そして国産代表として「スバル」と比べてみたいと思います。
BMW
ベンツとは少し異なり、よりスタイリッシュでスポーティなキャラクターが人気のBMW。こちらもFRに強いこだわりをもつブランドで、フラッグシップモデルの多くはFRベースです。
4WDシステムは「XDrive」というものを採用し、ベンツとは少し異なり、センターデフの代わりに電子制御カップリングを用いた「アクティブ・オンデマンド方式」という仕組みになっています。ちょうど国産車でいうとマツダの「i-ACTIVE AWD」に似た仕組みですね。
フルタイム4WDではなく、スタンバイ式4WDに分類されますが、こちらも優れた駆動方式として認知されています。スポーティなエンジン性能も相まって、ベンツの4MATICとは同等の性能と考えてよいでしょう。
なおBMWの雪道性能については以下の記事でさらに詳しく解説しているので、詳細まで知りたい方はこちらもあわせて参考にしてみてください。
BMWは雪道に弱い?雪道走行の性能について徹底分析しました!アウディ
欧州ブランドとしては格下に見られがちですが、走行安定性にはおいて高く評価されるアウディ。ベンツやBMWとは異なり、フラッグシップモデルのほとんどがFFベースのつくりをしています。
4WDシステムには「Quattro」という機構を採用しており、雪道に強いとされています。BMWと同じく、センターデフの代わりに電子制御カップリングを用いていますが、こちらは常時駆動するフルタイム4WDのシステムです。
さらに、エンジンを縦にレイアウトすることで重量バランスを高めているので、常に均等にグリップすることが可能。電子制御も優秀なので、日本の豪雪地帯でも優れた安定性を発揮します。
したがって、雪道性能に関してはベンツよりも上手といえるでしょう。実際、ドイツ車のなかでは北海道では一番見かけるブランドですからね。
なおアウディの雪道性能については以下の記事でさらに詳しく解説しているので、詳細まで知りたい方はこちらもあわせて参考にしてみてください。
アウディは雪道に弱い?雪道走行の性能について徹底分析しました!スバル
最後に比較するのは、雪道最強メーカーともうたわれるスバルです。国内では抜群の信頼性を誇りますが、ベンツと比較するとどうでしょうか?
まず、スバルの4WD方式ですが、シンメトリカルAWDというバランスに優れたシステムを使用しています。
水平対向エンジンを縦置きに配し、左右対称にレイアウトされてるので、4輪に均等に荷重をかけることが可能です。つまりグリップが安定しているということですね。
また、スバルで多く採用されるAWDシステム「ACT-AWD」はトルク配分を60:40、つまりFFをベースとして、常時すべてのタイヤを駆動させる仕組みになっています。バランスの良さも加わって、四輪の接地性が極めて高いんですよ。
レヴォーグ(2.0L)やWRX S4などスポーツ走行も意識したモデルは、さらに上位の4WDシステムを搭載しているので、ベンツよりも優れているとみて間違いないでしょう。したがって、メーカーとしてスバルのほうが雪道では上手です。
なおスバルの雪道性能については以下の記事でさらに詳しく解説しているので、詳細まで知りたい方はこちらもあわせて参考にしてみてください。
スバルが雪道に強い理由3つ!雪道走行性能が最強の車種はこれだ!ベンツは雪道走行する車として十分に優秀
というわけで、ベンツの雪道についての解説は以上になります。スバルなどと比較すると若干劣りますが、それでも十分優れた雪道性能を持っているんですよ。
個人的には、普段使いも考えるとGLAなどのSUVモデル、優雅にクルージングを楽しむならCクラスなどのセダン、そして本格的な走破性を求めるならGクラスがおすすめですね。
他にもラインナップがあるので、よかったらチェックしてみてください。
なおベンツについては以下の記事でも取り上げているので、興味のある方はこちらもあわせて参考にしてみてください。
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