ジムニーは日本車のなかでも歴史の長い車で、初代ジムニーが登場したのは1970年。
当初からジムニーの設計はオフロード走行を主眼におかれています。現在でもクロスカントリーSUVに採用されるラダーフレームとリジッドサスペンションを取り入れて、非常に頑丈な車に仕上がっています。
また新型の4代目ジムニーで一気に近代化しました。代を重ねるごとに環境性能や燃費、乗り心地といった乗用車としての性能も高くなっており、オフロードだけではなく日常使いもできる車になっています。
軽自動車としてはかなり特殊な存在。ジムニー以外の軽自動車がすべてモノコック構造の乗用車となっているなかにあっても、ジムニーは変わらず当初の設計思想を守っておりそれは最新型でも変わりません。
そんな頑丈であるジムニーですが、実際の故障率はどれくらいなのでしょうか。この記事ではジムニーの故障率について、実際のデータを用いながら解説していきます。
ジムニーの故障率
では早速ジムニーの故障率を見ていきましょう。
故障率はメーカーで見る
現在車種単体の故障率というものは一切一般には公表されていないもので、わたしたちが簡単に車の故障割合がどのぐらいかということはじつは調べることができません。
そういったデータはメーカーの機密情報であり、公開できる類いのものではないからです。
そのため車の故障率がどれぐらいかを見るためには民間調査会社が独自に調べているデータを見る必要があり、その一つである米国J.D.パワー社が毎年公表している「自動車耐久品質調査」が参考にできます。
この調査は各国市場の実際の自動車ユーザーに、新車購入から3年~5年の間に起こったトラブルの件数を聞き取り調査して、それをメーカーごとのランキングとしてまとめたものです。
2017年 日本自動車耐久品質調査
ランキング | メーカー | スコア |
1 | トヨタ | 59 |
2 | レクサス | 63 |
3 | ホンダ | 74 |
業界平均 | 74 | |
4 | メルセデス・ ベンツ | 75 |
5 | スズキ | 79 |
6 | 三菱 | 80 |
6 | 日産 | 80 |
8 | ダイハツ | 82 |
8 | スバル | 82 |
10 | MINI | 88 |
11 | マツダ | 93 |
ジムニーがラインナップにあるスズキ自動車はこのランキングでは5位となっており、決して悪い位置ではありません。
また故障の少なさを表すスコアにおいて、3位のホンダとはそう差は大きくなく、トップクラスの信頼性は確保されていると見てもよいでしょう。
トップのトヨタとは結構差が開いていますが、これはトヨタの信頼性が飛び抜けて高いためです。
スズキは大型車は持っておらず中、小型車のような数の多い大衆車がメインのメーカーですが、信頼性はなかなか良いようですね。
スズキ以外の日本車メーカーの故障率は、以下の記事で詳しく解説しています。こちらも参考にしてみてください。
トヨタは故障が多い?壊れやすいのか故障率をもとに解説!ホンダは故障が多い?壊れやすいのか故障率をもとに解説!レクサスは故障しない?逆に多い?故障率を徹底解明!新型ジムニーも信頼性は高く故障は少ない
ジムニーはラダーフレームやりジッドサスペンションといったような特徴の目立つ車ですが、その基本コンポーネントであるエンジンやその他の部品は基本的にスズキの軽自動車に使われているものと同じです。
新型ジムニーでは最新型のワゴンRやスズキ ハスラーなどですでに実績のあるエンジンが採用されており、このR06Aエンジンはジムニーとしては初めてなものの、スズキ車としては十分信頼性のあるものとなっています。
新型ジムニーの噂が聞かれたころからR06Aエンジンの搭載は予想されていましたが、これまでのジムニーの弱点であった燃費の改善のためにハイブリッドが採用されるのではといわれていました。
しかし実際にはハイブリッドは見送りとされ、燃費は従来のジムニーより1割増しぐらいに収まっています。
ですがハイブリッドでなくなったことは信頼性の面ではメリットにもなるもので、複雑なシステムと電気系統を持つシステムがないことは故障が少ないこととなるでしょう。
さらに新型ジムニーはラダーフレームの剛性アップやボディへの振動伝達の減少などの改良により、車全体のロールや振動が前型車より少なくなっています。
車の振動は故障を引き起こす原因の最たる物ですので、その原因が少なくなっていることはより故障を少なくする要因となります。
現時点では新型ジムニーは発売間もないということで故障の多さ、少なさについての実績はまだ不透明です。
スペック的には前型車より頑丈で、確実に耐久性が高くなっています。耐久性の詳細は下記の記事をご参照ください。
ジムニーの耐久性が高い4つの理由!強度が半端ない?!一方で発売当初の新車というのは車の成熟がまだなされていない頃なので、一般的には細かいトラブルが多い時期です。
もしこれから新型ジムニーを購入する人はこういった点は考慮しておく必要があり、だいたい1年後ぐらいには目立ったトラブルは解決されていることでしょう。(どのみち大人気過ぎて納車まで1年以上かかりますが…)
中古のジムニーの故障しやすさ
ジムニーは中古車の台数が非常に多く、いまだに1970年代の初代ジムニーも一定の人気があって中古車として購入可能なほどです。
初代から3代目のジムニーがこれにあたりますが、残存する台数が非常に多いこともあり中古車の状態は非常にさまざまです。
一般的に車の寿命といわれているのは、年式で10年経過、もしくは走行距離で100,000km以上であり、古いジムニーについてはこれ以上経過している中古車決して珍しくありません。
この寿命というのは車の部品が経年劣化などによって壊れ始めてくる時期であり、古いジムニーにはそういったトラブルは付き物となっています。
そこまで経過していない現行ジムニーであれば、中古車といってもまだまだ信頼性は残っているといえ、スズキのほかの軽自動車と大きな差はないでしょう。
ですのでジムニーの中古車というのはとにかく状態の見極めが重要であり、値段が安いからといって安易に年式の古い車や走行距離の多い車に手を出すべきではありません。
ジムニーの走行距離の限界は以下の記事で詳しく解説しています。あわせてご参照ください。
ジムニーの走行距離の限界は?寿命はどのくらいか解説!またジムニーはオフロード走行が可能ということで結構激しい乗り方をされてきた車も少なくありませんので、年式や走行距離が大丈夫だからといって状態の悪い中古車もあります。
そういったジムニーは予想外のトラブルに見回れますので、修理歴の有無を見るのは当然として、下回りに傷やへこみがある場合も要注意です。
とにかくジムニーは値段もですが程度も状態もさまざまな中古車がありますので、しっかり見極めをする目が必要でしょう。
なおジムニーの中古車を買う際の注意点は、以下の記事でさらに詳しく解説しています。中古車を買おうと思っている方は、参考にしてみてください。
絶対読んでください!ジムニーの中古車を購入時の11の注意点!ジムニーオーナーの評判
ジムニーの故障についての実態は実際に乗っているオーナーさんが一番わかっておられます。
Twitterにはそういった評判がいくつも投稿されていますので、今回はその中からいくつかご紹介しましょう。
30年も乗り続けられるジムニー
長期入院中のJA11V-5
どうやら
ターボブロー+排気マニホールド割れまぁ、ありがちな故障。
車齢を考えるととりあえず直して、
次の車検までに後継車を手配しようと思う。いよいよ二台30年近くも乗ったジムニーを降りる日が来るのか?#ジムニー
— やまちゃん (@yamachan_spd) April 24, 2018
この方のジムニーは初代ジムニーですでに30年以上が経過しています。
今回の故障部位はターボとエキゾーストマニホールドのようで、ターボについてはジムニー通じて比較的故障の多い箇所です。
しかし故障はすれど修理をしっかりしてメンテナンスしていれば、30年も乗り続けられる車であることは証明されたということですね。
ジムニーのメンテナンスについては以下の記事をご参照ください。
ジムニーにはどんなメンテナンスが必要?費用はこんなにかかります!クラッチも負荷の多い部品
走行不能で入庫してきたジムニーの修理です!
故障原因はクラッチでした
酷い状態ですね…まぁ遊んでる車はしょうがないかな
そんなに重症じゃなくてよかった pic.twitter.com/xVylBbsls4— オートプロデュースベレッツァ ジムニー垢 (@BELLEZZAr294) August 18, 2017
クラッチもジムニーとしては負荷の高い部分で、走行距離が増えてくるとどうしてもクラッチ滑りが起こってきます。
マニュアルミッションがメインのジムニーですし、オフロード走行をすればどうしてもクラッチは消耗してきてしまう部分でしょう。
この方は修理して乗り続けられますが、中古車のなかにはクラッチが痛んだままの車も少なくありませんので、できればオフロードを走ったことのないジムニーを選ぶのが良いでしょう。
佐藤茂道(著者)
以下の記事でも書いていますが、やっぱりジムニーはオフロード性能が神なので、車好きの方はオフロードで使っていることが多いでしょうね。中古は本当に注意しましょう。
足回りには負荷が高い
ジムニーフロント・ナックルの
キングピンがとうとうダメに…
左は既にガタガタ( ´△`)
ジムニーには付き物の故障だが
左右で6万は痛いなぁ( ω-、) pic.twitter.com/iaXTZlsOGy— あきji (@akiji0119) November 30, 2017
ジムニーの弱点のひとつにフロントナックルのキングピンがあり、ここはオフロード車たるジムニー特有の弱点といえます。
のちほど詳しくご説明しますが、ほかの軽自動車ではここのトラブルはまずおこらないので、ジムニーだけで注意すべき点です。
もしジムニーの購入を考えているなら、値引き交渉の正しいやり方を覚えておくといいですよ。
このやり方を知らないと最大60万円以上も損しますよ。詳しく知りたい方は、下記の『たった1分で車を60万円値引きできる裏技』のページをご覧ください。 たった1分で車を60万円値引きできる裏技!安く購入する秘密のテクニックとは?!ジムニーの故障事例
ジムニーの故障事例はいろいろとありますが、今回は前述のツイートにあった3箇所について詳しくご説明することとしましょう。
これらの故障事例は3代目ジムニーについてのものですが、同様の構造は新型ジムニーでもみられますので、今後同様なトラブルが起こる可能性は高いでしょう。
しかしそれには結構な走行距離や年数が必要なので、すぐに起こるものではありません。
エンジンのタービンブロー
ジムニーはその使い方からトルクフルなエンジンが求められるため、エンジンにはスズキの軽自動車エンジンの中でもパワフルなターボエンジンが採用されてきました。
しかしターボエンジンはいくつか注意するべき点があり、とくにタービンブローが大きなトラブルとなります。
排気ガスのエネルギーで吸気を圧縮するターボは、常に排気ガスの高温にさらされており、また高速回転も必要なため非常に負荷の高い部品です。
そのためタービンの回転部分のベアリングにはオイルによる冷却が必須となっており、ターボへのエンジンオイルの流れは非常に重要なものです。
そのためターボエンジンのエンジンオイル交換は5,000kmごととされており、常にオイルをきれいに保つことが必要なのです。
しかしメンテナンスが悪かったり、またエンジンの冷却性能が別の原因で悪くなったりすると、真っ先に影響があるのがターボであり、ターボの冷却が満足に満たされない場合にはまずタービンの焼き付きが発生します。
またタービンブレードの破損や、それに付随するターボ内部部品の故障などが起こり、最終的にはターボブローで完全に故障となります。
修理にはターボの交換が必要となり、費用は関連部品とあわせて150,000円〜300,000円もの高額修理が必要となってしまい、軽自動車であるジムニーでは車の費用にたいしていささか高額すぎる修理費用です。
こうならないためにはとにかくエンジンオイルのしっかりしたメンテナンスと、定期点検時にラジエーターやウォーターポンプなどの冷却関連部品にトラブルがないかをチェックするしかありません。
また車の走らせ方も重要で、暑い夏の日などにずっと低速でまた風もない日に車を走らせれば、エンジンの熱量はどんどん上がっていきターボへの負荷も大きくなります。
そういった状況が続けばエンジンの劣化が進みタービンブローの危険も増えてきますので、あまり無理な走行をさせすぎないことも大事です。
なおターボエンジンについては、以下の記事で詳しく解説しています。エンジン自体に興味がある方は、こちらもご覧ください。
ターボエンジンとは?仕組み/構造は?メリット2つとデメリット4つ!フロントナックルのキングピンの損傷
フロントナックルは車のフロントサスペンションに繋がっているステアリングの部品のひとつで、キングピンという太いピンを中心にタイヤがステアリングに合わせて回転します。
現在の乗用車にはあまり使われなくなってきた構造ですが、ジムニーのようなオフロード車でサスペンションの負荷が高い車などには使われ続けています。
しかし当然負荷が高いということは故障する可能性も高いということであり、とくに走行距離が多かったり、オフロードを頻繁に走ったジムニーには起こりやすいトラブルです。
キングピンが折れるということはあまりありませんが、キングピンがはまっている相手部品やベアリングなどの軸受け部などに負荷がかかり、それこそツイートにあるように軸がガタガタになってしまいます。
そして運転時には異常振動が起こったりハンドルが定まらなかったりと、運転性能にも影響が出てきてしまいます。
修理にはフロントアクスルの分解と部品交換が必要で、費用は一ヶ所で50,000円前後が相場です。
左右どちらかのキングピンに問題があればもう片方にも同様のトラブルは起こり得ますので、両方とも修理した方が安心できます。
運転中にハンドルの調子が悪いと感じたら、このキングピンを疑いましょう。
クラッチプレートの交換
クラッチはマニュアルミッションには必須のものであり、エンジンの動力をトランスミッションに伝え、また変速時にはクラッチを切ることでスムーズに変速するための部品です。
現在はほぼすべてが摩擦クラッチとなっており、強い力で押し付けることで滑ることなく動力を伝達できています。
しかしジムニーのようなオフロード車では悪路などを走る場合にタイヤに非常に大きな負荷がかかります。
その状態で無理にアクセルを吹かすとタイヤは動きづらいのにエンジンは回ろうとするので、その間にあるクラッチはかなり大きな負荷を受け、悪ければクラッチが摩擦に耐えられなくなり焼けたり滑ったりというトラブルが起きます。
一瞬であればそこまで重大なトラブルにはなりませんが、続けて負荷をかけ続ければ最終的にクラッチは全く役を果たさなくなります。
またクラッチを使って変速する際には半クラッチを使いますが、半クラッチの状態を長く続けるとやはりクラッチの消耗を招き、同様にクラッチ滑りのトラブルが起こる可能性は高くなります。
これについてはクラッチの使い方、運転の丁寧さを心がければ防げることですので、ドライバーの技量に依るところが大きいです。
修理にはクラッチプレートの交換が必要であり、費用的には50,000円〜100,000円の間です。
クラッチの消耗は使い方次第といえるのですが、だいたい50,000kmぐらいで一度交換するぐらいのペースとなるでしょう。
ジムニーは買っても大丈夫か?
ジムニーは日本の自動車のなかでもかなり特別な車であり、以下の記事で詳しく解説していますが、オフロード向きの軽自動車という唯一無二の魅力があります。
ジムニーの魅力とは?6つの良さをわかりやすく解説!それだけではなく乗用車としても優秀な車で人気は高く、街中でも、また中古車市場にもかなりの台数が存在します。
車自体の信頼性についてはジムニーは国産車のレベルをもっており、また長いモデル期間のおかげもあって不具合はほぼ出尽くしたといってもよいでしょう。
しかしジムニー独特の構造によるトラブルや、ジムニーのようなオフロード車の使い方でトラブルが起こります。
こういったトラブルは中古車ではとくに注意するべき点であり、ジムニーの中古車にはとにかく見極めが大事です。
これからジムニーを買おうと思っている方は、以下の記事もぜひご覧ください。購入の参考になりますよ。
ノーマルでも神ってる?ジムニーが最強と言われる5つの理由ジムニーは横転しやすい車なのか?本当のことを暴露します!