ディーゼルエンジン車は欧州で大人気の車種で、近年日本市場でも人気が高まっている車種です。
ですがディーゼルエンジン車というと燃費がいい、低速トルクが高いというイメージがあり、スポーツカーのような車種のイメージは薄いと思います。
今回はそんなディーゼルエンジン搭載のスポーツカーについてご説明します。
ディーゼルエンジンのスポーツカーは少ないが存在する
ディーゼルエンジンはガソリンエンジンとともに自動車用エンジンの主流の一つですが、それぞれのエンジンには車種のイメージというものがあります。
ディーゼルエンジンとは?仕組み/構造を簡単にわかりやすく解説!特に日本では乗用車系の車種がほとんどガソリンエンジンとなっており、ディーゼルエンジンはトラックやバスなどの商用車のイメージや、SUV系の車種のイメージが強くあります。
ですが欧州では乗用車系の車種にもディーゼルエンジンは浸透しており、乗用車の台数シェアの半数がディーゼルエンジン車という割合になっています。
その車種構成は決してトラックやSUVだけではなく、コンパクトカー、セダン、MPVなど非常に豊富です。
現在国産車のディーゼルエンジン車にはスポーツカー系の車種はないのですが、欧州ではどうでしょうか。
日本に導入されたディーゼルスポーツカーとは?
「スポーツカー」と聞くとなんとなく速い車、カッコいい車というイメージはあると思いますが、実はちゃんとした定義はありません。
ですが一般的には
- 2ドアクーペ
- 最高出力、速度重視のエンジンスペック
- 高い加速性能
などを持つことがスポーツカーに求められるものです。
さて現在世界中ではさまざまなメーカーからディーゼルエンジン車が登場していますが、日本に輸入車として導入されている車種には上記の特徴を持つような車種がありません。
海外の輸入車にはスポーツカーやさらに上のスーパーカーと呼ばれるような車種も多数日本には導入されているのですが、それらは全てガソリンエンジンかガソリンハイブリッドに限られており、ディーゼルエンジンモデルは導入されていません。
というのも日本ではやはりガソリンエンジン車のほうが人気が高く、ディーゼルエンジン車にスポーツカーのイメージがほとんどないことが理由です。
今後導入される可能性もなくはありませんが、可能性は低いでしょう。ですが世界に目を向けてみれば何車種かはそういった車種も存在しています。
ディーゼルエンジンのスポーツカー
世界中を見回してみてもディーゼルエンジンのスポーツカーは本当に少ないのですが、それでも次のような車種は存在します。
BMW 840d
BMW 840dはBMW最高級スポーツカーである8シリーズクーペに最新のクリーンディーゼルエンジンを搭載した車種で、2018年6月に登場した新しい車種です。
8シリーズはいわゆるグランドツアラーと呼ばれるタイプのスポーツカーで、流麗な2ドアクーペタイプで大型のゆとりのあるボディとなっています。
8シリーズには840dのほかにガソリンエンジンモデルのM850iもあり、世界最高クラスの性能を持つディーゼルエンジンとガソリンエンジンが用意されています。
スペック | 840d | M850i |
エンジン型式 | B57D30T0型 直列6気筒2993ccツインターボ | N63B44D型 4,394cc V型8気筒DOHC |
最高出力 | 320ps/4,400rpm | 530PS(390kW)/5,500rpm |
最大トルク | 69.2kgf·m/1,750-2,250rpm | 76.5kgf·m(750N·m)/1,800-4,600rpm |
※直列6気筒、V型8気筒、ツインターボ、の詳細は以下の記事をご参照ください。
直列6気筒エンジンの特徴!どんな音?搭載車を日本車/外車の車種からそれぞれ紹介!V8エンジンの特徴!どんな音?搭載車を日本車/外車の車種からそれぞれ紹介!ツインターボエンジンとは?仕組みは?搭載車を日本車/外車の車種からそれぞれ紹介!この2モデルのスペックを比較してみると、エンジンの最高出力、最大トルクともガソリンエンジンモデルのほうが高く、エンジンの排気量の高さから自然吸気エンジンであっても高い性能が得られています。
一方クリーンディーゼルエンジンは1,400ccも排気量に差があるので、いくらツインターボエンジンであってもスペックは低いのです。
ただ燃費やCO2排出量など環境性能の面ではクリーンディーゼルエンジンのほうが高く、この2モデルは求められている性能が違うのです。
ですがどちらのモデルも10,000,000円超えの超高級車種であり、環境性能よりはスペックの高さが魅力なので、日本に導入されているのはガソリンエンジンモデルのみとなります。
メルセデス・ベンツ Eクラスクーペ
メルセデス・ベンツ Eクラスは同社の中大型セダンで、Cクラスと並んでメルセデス・ベンツを代表するセダンです。
そんなEクラスには2ドアクーペモデルのEクラスクーペがあるのですが、欧州市場ではこの車種にクリーンディーゼルエンジンが設定されています。
EクラスはCクラスよりワンランク上級のセダンとして設定された車種ですが、その派生車種が2ドアクーペ化されたEクラスクーペです。
フロントマスクのデザインはセダンと共通であるものの、ボディラインは後方に行くに従って低くなる伝統的なクーペスタイルとなっています。
Eクラスクーペにもガソリンエンジンモデルとディーゼルエンジンモデルの2車種が設定されており、スペックには差が生まれています。
スペック | E220d(ディーゼルエンジン) | E400 4MATICクーペ(ガソリンエンジン) | E300クーペ(ガソリンエンジン) |
エンジン型式 | 2.0L 直列4気筒 DOHC ICターボディーゼル | 3.0L V6 DOHC 24バルブ ツインターボ | 2.0L 直4 DOHC 16バルブ ターボ |
最高出力 | 194ps(143kW)/3,800rpm | 333ps(245kW)/5,200-6,000rpm | 245ps(180kW)/5,500rpm |
最大トルク | 40.8kgf・m(400N・m)/1,600-2,800rpm | 49.0kgf・m(480N・m)/1,400-4,000rpm | 37.7kgf・m(370N・m)/1,400-4,000rpm |
※直列4気筒、V6、ディーゼルターボ、の詳細は以下の記事をご参照ください。
直列4気筒エンジンの特徴!どんな音?搭載車を日本車/外車の車種からそれぞれ紹介!V6エンジンの特徴!どんな音?搭載車を日本車/外車の車種からそれぞれ紹介!ディーゼルターボとは?速いのがメリットで寿命がデメリット?搭載車種も紹介Eクラスクーペには1種類のディーゼルエンジンモデルと2種類のガソリンエンジンモデルがありますが、最高出力に関してはディーゼルエンジンは直4ガソリンエンジンにも達していません。
最大トルクはさすがにディーゼルエンジンのほうが高いですが、上級の3.0Lガソリンエンジンには及びません。
この車種も日本には導入されていますが、そのエンジンラインナップはガソリンエンジンのみとなっています。
プジョー RCZ
プジョーRCZはコンパクトカーベースの小型オープンカーで、特徴的な曲線を帯びたスタイルが魅力的な車です。生産期間は2010年〜2015年の間で、現在は絶版となっています。
RCZにも2種類のガソリンエンジンとディーゼルエンジンモデルが準備されていました。
スペック | ディーゼルエンジン | ガソリンエンジン(6MT) | ガソリンエンジン(6AT) |
エンジン型式 | 2.0L 直列4気筒DOHCICターボディーゼル | 1,598cc 直列4気筒DOHCターボ | 1,598cc 直列4気筒DOHCターボ |
最高出力 | 163ps/3,750rpm | 200ps(147kW)/5,800rpm | 156ps(115kW)/6,000rpm |
最大トルク | 34.7kgf・m/2,000-3,000rpm | 28.0kgf・m(275N・m)/1,700rpm | 24.5kgf・m(240N・m)/1,400-3,500rpm |
RCZのガソリンエンジンは同じ排気量で2種類の最高出力が設定されており、6MTモデルが200馬力を発生させる高出力ユニットです。
それに対してディーゼルエンジンは排気量こそ大きいのですが、最高出力に関しては200馬力まではいかず、ガソリンエンジンの6ATモデルとほぼ同じとなっています。
ですがRCZのエンジンラインナップではディーゼルエンジンのほうが最大トルクがかなり高く、低速域での加速の良さはディーゼルエンジンに大きなアドバンテージが生まれています。
この車種ではディーゼルエンジンはうまく魅力を引き出せていると言えますが、いずれにしてもディーゼルエンジンモデルは日本未導入であり国内で楽しむことは難しいです。
もしディーゼル車を買おうと考えているなら、あわせて正しい値引き交渉のやり方も覚えておくといいですよ。
このやり方を知らないと最大60万円以上も損しますよ。詳しく知りたい方は、下記の『たった1分で車を60万円値引きできる裏技』のページをご覧ください。 たった1分で車を60万円値引きできる裏技!安く購入する秘密のテクニックとは?!ディーゼルエンジンのスポーツカーが少ない理由
ディーゼルエンジンのスポーツカーは無いわけではありませんが、その絶対数は世界的に見ても少ないです。
それにはディーゼルエンジンの特徴がスポーツカーに向かない部分が多いのが理由で、主に次のような理由が考えられます。
最高出力が比較的低い
前述でディーゼルエンジンのスポーツカーと同一車種のガソリンエンジンとスペックを比較しましたが、ここからも分かる通りディーゼルエンジンは最高出力がどうしても低くなりスポーツカーに向いているとは言い難いです。
エンジンの最高出力はそのまま車の最高速度の高さに直結しており、スポーツカーの魅力である速さを追求するためには最高出力の高さは欠かせません。
しかしディーゼルエンジンはエンジン本体系が重たく最高回転数がガソリンエンジンより低くなってしまうので、比較するとどうしても最高出力の面では劣ってしまうのです。
その分ディーゼルエンジンには最大トルクの高さという特徴があるのですが、この特徴は車の加速性能を高くすることは出来てもスピードの伸びが頭打ちとなってしまい、初期加速だけが良くても最高速度という面で劣ります。
(クリーン)ディーゼルエンジンのトルクが大きい理由!トルクの大きい車種ランキングとともに解説!また燃費の良さというメリットもスポーツカーには必ずしも必要なものではなく、ディーゼルエンジンのメリットが活かしにくい車種といえるでしょう。
騒音、振動が大きい
ディーゼルエンジンは燃焼方式の違いや本体重量の重さなどからガソリンエンジンより騒音や振動が大きく、どうしても上質感や官能的なサウンドといった面で大きく劣ります。
ディーゼルエンジンには特徴的なカラカラ音(ノッキング音)がエンジン音に混ざるのですが、この音は一般的には耳障りな雑音と言えるもので、スポーツカーのようなエンジン音が重要な車種においては車の魅力を大きく減退させるものとなってしまいます。
またディーゼルエンジンはガソリンエンジンより振動も大きく、車の乗り心地なども悪化してしまいます。
これらは遮音材やエンジンマウントのか医療などである程度改善はできるのですが、それにはコストや重量もかかりますし、そもそもそういったデメリットの少ないガソリンエンジンがあるのですからそちらを採用するのが自然な流れと言えるでしょう。
なおディーゼルエンジンの音については以下の記事でも取り上げているので、興味のある方はこちらもあわせて参考にしてみてください。
(クリーン)ディーゼルエンジンの音の特徴!カラカラ音の原因と低減対策まで全て解説!エンジン重量が大きくなる
スポーツカーにとって車の軽量化は最高速度や加速性能、コーナリング性能などを左右するとても重要なもので、車を軽くすることがなによりのチューニングと呼ばれたりします。
ですがディーゼルエンジンはどうしてもガソリンエンジンより重量が重たくなりがちで、スポーツカーには大きく不利な点です。
ディーゼルエンジンは本体系の部品を頑丈にしなければならず、どうしても同排気量のガソリンエンジンに比べると本体系の重量がかさむ特徴があります。
またディーゼルエンジンは最高出力を高めようとするとどうしても排気量を高くする必要があり、スポーツカー用としてディーゼルエンジンを設計すると同出力のガソリンエンジンのほうが軽量コンパクトに仕上がるのです。
これらの点からディーゼルエンジンをスポーツカーに使用すると車両重量を増やしてしまうので、エンジンスペックをそのために消費してしまうという悪循環にも繋がります。こういった点からディーゼルエンジンはスポーツカーには使いづらいのです。
ディーゼルエンジンのスポーツカーに近い車種
日本市場には何車種もの輸入車のクリーンディーゼル車が導入されていますが、その中でスポーツカーに近い車種なら何車種か存在します。
すべてセダン系の車種なのですが、エンジンスペック的にはスポーツカー並のものを備えており、スポーツセダンという位置づけの車たちです。
BMW 7シリーズ
BMW 7シリーズはBMW最高級のセダンで、重厚感のあるエクステリアデザインと、高級な内装が特徴の車です。
スポーツカーとは少し違う車種ですが、エンジンスペックだけを見ればスポーツカー並の性能はあります。
メーカー | 車種 | 燃費 | 最高出力 | 最大トルク | 価格帯 |
BMW | 740d xDrive | 15.4km/L | 235kW(320ps)/ 4,400rpm | 680N・m(69.3kgf・m)/ 1,750-2,250rpm | 14,260,000円〜 16,440,000円 |
BMWは高級セダンであっても走行性能を重視しており、他の輸入車メーカーよりもエンジンスペックが高めな特徴があります。
7シリーズのディーゼルエンジンも320馬力を発生する高性能ユニットで、最大トルクも70kgf近いという、乗用車用ディーゼルエンジンとしては最上級クラスのものです。
大型セダンなのであまりスポーツカーといった感じはありませんが、走りは十分満足のいくものでしょう。
なおBMWについては以下の記事でも取り上げているので、興味のある方はこちらもあわせて参考にしてみてください。
BMWは故障が多い?壊れやすいのか故障率をもとに解説!BMWで安いモデルは?いくらから買えるか安い順に紹介!ALPINAシリーズ
ALPINAはBMWを専門に行うチューニングメーカーで、BMWの既存車種をベースにハイスペックでさらに高級な車を目指して開発されます。
そんなALPINAも日本には導入されており、クリーンディーゼルエンジンモデルは通常のBMWの車種に比べるとかなり性能が高くなっています。
その中でセダン系の車種は次の3車種があり、既存のBMWの車種よりもかなりのスペックアップを果たしています。
メーカー | 車種 | 燃費 | 最高出力 | 最大トルク | 価格帯 |
ALPINA(BMW) | ALPINA D3 BITURBO LIMOUSINE | 17.0km/L | 257kW(350PS)/ 4,000rpm | 700Nm(71.4kgf・m) / 1,500-3,000rpm | 10,310,000円〜 11,050,000円 |
ALPINA(BMW) | ALPINA D4 BITURBO LIMOUSINE | 17.0km/L | 257kW(350PS)/ 4,000rpm | 700Nm(71.4kgf・m)/ 1,500-3,000rpm | 11,400,000円 |
ALPINA(BMW) | ALPINA D5 S BITURBO LIMOUSINE | 14.7km/L | 240kW(326PS)/ 4,000-4,600rpm | 700Nm(71.4kgf・m)/ 1,750-2,500rpm | 12,990,000円 |
ALPINAには命名規則があり、それぞれBMWの車種名にあわせた名称となります。
D3であれば3シリーズのカスタムカーであり、D4は4シリーズ、D5は5シリーズとそれぞれの車種に合わせたALPINAの車種があります。
これらALPINAシリーズにはほぼ同性能のクリーンディーゼルエンジンが搭載されており、最高出力は350馬力に達するものもあります。
また最大トルクが70kgfを越えており、前述のBMW 7シリーズを除けば他メーカーのディーゼルエンジンを遥かに凌駕する性能を持っています。
ALPINAはまた内装の豪華さも増しており、エンジンスペックの高さと相まってクリーンディーゼル車の中では最上級の性能を持っていると言えるでしょう。
もし日本でスポーツカーに近い車種のクリーンディーゼル車を探しているのであれば、ALPINAがベストな選択肢です。
マセラティ ギブリ
もう一車種高級セダンでスポーツセダン寄りの車種としてあげられるのが、イタリアの高級車メーカー マセラティのギブリという車種です。
マセラティも昔から世界有数の高級車メーカーとして名を馳せており、同社のデザインはスポーティなものが多いのが特徴です。
ギブリは同社の高級セダンという位置づけですが、その性格はスポーツセダンという感じのものです。
メーカー | 車種 | 燃費 | 最高出力 | 最大トルク | 価格帯 |
マセラティ | ギブリ | 17.0km/L | 202kW(275ps)/ 4,000rpm | 600N・m(61.2kgf・m)/ 2,000-2,600rpm | 9,330,000円 |
BMW系列のスポーツセダンに比べると多少エンジンスペックは控えめですが、それでもディーゼルエンジンとしては十分高性能です。
またギブリもデザインはスポーティですので、スポーツカーの代わりとなる車種の候補にはなります。
なおマセラティについては以下の記事でも取り上げているので、興味のある方はこちらもあわせて参考にしてみてください。
マセラティのオーナーになるには年収はどれだけ必要か計算してみた!マセラティは故障が多い?壊れやすいのか故障率をもとに解説!