かつてWRCを制し、世界の頂点に立った車「インプレッサ WRX」。
ニーズに合わせ、現在は「インプレッサ」と「WRX」という別ネームとなってしまいましたが、インプレッサWRXの英雄譚は、今後も語り継がれて欲しいものです…。
話が逸れましたが、今回はそんな名車の血脈を宿した後継モデル「WRX STI」の加速性能について解説をしていきましょう。
普通車と一線を画した加速性能を、「0-100km/h加速」や「オーナーの口コミ」なども参考にしながら、元GDB乗りの私が紹介していきたいと思います。
WRX STIの加速性能
「インプレッサ WRX」といえば、スバルの誇る「AWD」、堅牢な「高剛性ボディ」、そして「ドッカンターボ」と評される水平対向4気筒ターボ「EJ20型」エンジンが特徴です。(ドッカンターボの詳細は以下の記事をご参照ください。)
ドッカンターボとは?メリット3つとデメリット1つ!搭載車を軽自動車からも紹介!その加速性能は、世界を舞台に磨き続けてきた「技術の結晶」といえるでしょう。
ラリー競技で泥臭く鍛えられたエンジンやシャシーによって、低速からガツンとトルクを発揮するので、インプレッサは「ドラックレース」でも人気のあるモデルです。
後継モデルのWRX STIは、「インプレッサ」のネームが外されましたが、その実力はいかほどでしょうか?
0-100km/h加速からわかるWRX STIの加速性能
まずは、単純に「どれくらい速いのか?」紹介したいと思います。加速性能をイメージするのに役立つのが、発進から100km/h加速に達するタイム、通称「0-100加速タイム」です。
一気に100km/hまで加速する機会なんて、実際にはほとんどありませんが、加速性能の指標としては有効といえるでしょう。
WRX STIについては、このタイムが「4.7秒」と公称されています。
発進から5秒かからずに100km/hへ達するので、かなりの加速力であることがわかりますね。オーナーさんの間では、「ノーマルで4.4秒出る」ともいわれていますが、公称値を信用しておきましょう。
ちなみに、先代モデルの「インプレッサ WRX STI(GVB型)」が0-100km/h加速タイム「4.9秒」といわれているので、加速性能に関しては進化しているようです。
エンジン性能をチェック
「じゃあ、エンジンのパワーってどれくらいあるの?」
加速性能がイメージできたところで、次はエンジン性能が気になりますよね。こちらは、スバル公式ページから抜粋したWRX STIのエンジン性能表です。
項目 | 諸元 |
エンジン型式 | EJ20型 |
種類 | 水平対向4気筒DOHC16バルブ ICターボ |
排気量 | 1,994cc |
最高出力 | 329PS/7,200rpm |
最大トルク | 44.0kg・m/3,200~4,800rpm |
※水平対向4気筒、DOHC、ターボ、エンジンの詳細は以下の記事をご参照ください。
水平対向4気筒エンジンの特徴!どんな音?搭載車を日本車/外車の車種からそれぞれ紹介!DOHCエンジンとは?仕組み/構造は?ツインカムとの違いとは?!ターボエンジンとは?仕組み/構造は?メリット2つとデメリット4つ!排気量は従来通り2.0Lですが、出力は最高で329PS、トルクは最大44.0kgf・m。
この性能は、NA(自然吸気)エンジンに例えると、3.5Lクラスの数値に匹敵します。(NAエンジンの詳細は以下の記事をご参照ください。)
NAエンジン(自然吸気エンジン)とは?メリット5つ!音が最強の魅力?!「EJ20型」は、「ショートストローク」の形式をベースに過給機を合わせることで、高回転高出力を誇る生粋のスポーツユニットです。2,500~3,000rpmを超えブーストがかかったとき、爆発的なトルクを生んで推進力を得ます。
過去のインプレッサ WRXに比べると、回転フィーリングが滑らかになり、エキゾーストがマイルドになりました。エンジンが唸らないので、アクセルを踏んでいると「もう100km/h?」という感覚。
今ではすっかり静かになってしまいましたが、個人的には、スバル車の「不等長サウンド」が大好きでした…。現行スバル車の「パワフル&クリーン」なキャラクターも魅力的ですけどね。
ボディの作りこみもバッチリ
加速性能に重要なのは、なにもエンジン出力だけではありません。
ボディの「軽量性」「剛性」なども非常に大切なのです。パワーがあっても、ボディが重ければロスが大きいですし、ボディが弱ければパワーに負けてしまいます。
WRX STIは、機械的なメカニズムを徹底的に追及され作られているので、限りなく理想に近いボディ構造をしています。効率よく剛性を確保することで、車重は従来と同程度の「1,480kg」に留められました。
結果として、エンジン性能に対して軽量なボディが生まれたのです。
出力・トルクが負担する重量を「パワーウェイトレシオ(以下、PWR)」「トルクウェイトレシオ(以下、TWR)」と呼びますね。
これは、加速性能にとって非常に重要なものですが、WRX STIはトップクラスの数値を確保しているのです。
以下は、WRX STIのPWR・TWRの数値です。
- PWR:4.50kg/PS
- TWR:33.63kg/kgf・m
さらに、スバルの優れた駆動技術「シンメトリカルAWD」によって、この性能を効率よく路面へ伝えることができるのも、加速性能においては大きなアドバンテージとなります。
もしWRX STIを買おうと考えているなら、あわせて正しい値引き交渉のやり方も覚えておくといいですよ。
このやり方を知らないと最大60万円以上も損しますよ。詳しく知りたい方は、下記の『たった1分で車を60万円値引きできる裏技』のページをご覧ください。 たった1分で車を60万円値引きできる裏技!安く購入する秘密のテクニックとは?!WRX STIの実際の加速感
数字やメカニズムを解説しただけでは、いまいちピンときませんよね?
というわけで、実際のオーナーさんの投稿をご覧いただきたいと思います。TwitterやYouTubeからいくつかピックアップしてみたので、紹介しましょう。
Twitterでオーナーの投稿をチェック
VABの〜80くらいの加速の良さに慣れると普通車の加速のしなさっぷりに切なくなりそう
— グロウ@9月 VA VM系オフ (@glow_moon) 2018年8月27日
こちらのオーナーさんはWRX STI(VAB)の加速に慣れてしまったせいで、普通車に乗ると物足りなくなく感じてしまったようです。
スポーツカーに乗っているとよく起こる現象ですよね。私は過去にインプレッサ(GDB)乗っていましたが、レンタカーを運転したときによく感じていました。(インプレッサの加速性能の詳細は以下の記事をご参照ください。)
インプレッサは速いのか?加速性能から0-100km/h加速タイムまで解説!WRX STIの方が、このギャップはすごいでしょうね…。
5人乗せてあの加速とブレーキの効き…
やっぱVAB良いよな〜🙄
Kenさんの運転だったけど楽しめた!
スタンドも貰えたし🙆 pic.twitter.com/nClrGNnFI3— 西のF倉さん(やっち) (@Nasubi_Yatti) 2017年7月23日
加速性能が高いので、人数を乗せてもパワー不足にはなりません。そして、加速力があるということは、ブレーキ性能も強化されているということなので減速も難なくこなします。
このように、トルクが確保されていれば走行性能だけでなく、実用性も高いレベルで発揮できるのです。
今日は友達とWRX STIに試乗してきた!
2Lターボ、300馬力の加速力はすごかったなw
50kmで6速に入れちゃうような運転の僕には完全に宝の持ち腐れな車でした😇 pic.twitter.com/ySOa4YlMgm— ふも (@moffmoffk9) 2018年8月5日
こちらの方もWRX STIに試乗して、加速力の大きさに驚いているご様子。
300PSを超える馬力を有しているので、街乗りでは持て余すほど。普段使いにはハイスペック過ぎる気はしますが、車好きにとって、性能の高さは一種のロマンですよね。
試乗してきました。
新型WRXSTI。
もうね、褒めるポイントしか見つかりません。
ほんの数キロ市街地走っただけだけど、加速も制動もハンドリングも素晴らしい。
そして!やっぱMTのスポーツカーは楽しいです。
これから先2年、お金貯めます。#SUBARU#WRXSTI pic.twitter.com/TC2414WKza— Hiro [MI] (@Person_of_F55) 2017年7月23日
こちらの方も試乗して、その仕上がりに大満足のようです。
わずかな距離を走っただけで、クオリティの高さをしみじみと感じたみたいですね。もはや「褒めるポイントしかない」と評しているほど。
加速性能についてはもちろんのこと、制動もハンドリング、そして「走る愉しさ」が詰め込まれた、本物のスポーツカーなのです。
YouTubeで加速動画をチェック
こちらは、メーターパネルをメインに撮影した加速動画です。1分あたりから加速が始まります。
まずタコメーターが「280km/h」まで目盛りがあることに驚きですよね?普通車ならあり得ません。
そして注目の加速感ですが…100km/hまで一気に上昇しています。これが日本最高クラスの加速なのです。回転数も8,000pmという領域に達しています。
メーターだけでは味気ないので、外から撮影された加速動画もご覧ください。こちらは海外で撮影されたもののようで、見た感じではノーマル車両ですね。加速は2分から始まります。
世界に誇るスバルのAWDだけあり、4輪を路面にグリップさせてグイっと加速しています。これぞ4輪駆動のなせる加速。
これを見ていると、その昔、WRCを制した頃の映像が頭に投影されます…。
WRX STIの加速性能を他の車と比較
加速感についてご覧いただいたところで、続きましてライバルと呼ばれる国産車と、その実力を比較してみたいと思います。
今回、比較対象に選んだのはホンダ「シビック TypeR」、日産「フェアレディZ NISMO」、レクサス「LC500」です。
レクサスだけ価格が上ですが、シビック・フェアレディZに関しては紛れもないライバル車なので、加速性能の違いが気になるところですね。
ホンダ シビック TypeR
まずは、ホンダのフラッグシップスポーツ「シビック typeR」です。
高回転に特化した「VTEC」の進化系ユニットを採用しており、その加速性能は折り紙付き。
エンジンスペックの諸元はこちらをご覧ください。
項目 | 諸元 |
種類 | 水冷直列4気筒DOHC16バルブターボ |
排気量 | 1,995cc |
最高出力 | 320PS/6,500rpm |
最大トルク | 40.8kg・m/2,500~4,500rpm |
車両重量 | 1,390kg |
PWR | 4.34kg/PS |
TWR | 34.07kg/kgf・m |
0-100km/h加速タイム | 5.7秒 |
※直列4気筒エンジンの詳細は以下の記事をご参照ください。
直列4気筒エンジンの特徴!どんな音?搭載車を日本車/外車の車種からそれぞれ紹介!現行モデルは「2.0L VTEC ターボ」ということで、過去のシビックとはキャラクターがずいぶん違いますね。
最高出力は320PS、最大トルクは40.8kgf・mに達します。エンジンのパワーだけで見ると、WRXの方が数値としては上です。
車重が100kg近く重いのでPWR・TWRはいい勝負となりますが、それでもわずかにWRXが勝っています。
加えて、0-100km/hタイムで見ると1秒近く速いので、発進からの加速性能についてはWRXの方が上手といえるでしょう。
VTECの性能を考慮すると、中~高速域の加速についてはいい勝負をするかもしれません。
なおVTECターボについては以下の記事で詳しく解説しています。詳細まで知りたい方はこちらもご参照ください。
VTECターボエンジンとは?搭載車は?邪道と言われる理由は仕組みにあり!?日産 フェアレディZ NISMO
「GT-R」をはじめ、スポーツカーに力を入れている日産。価格などを考慮すると、WRXのライバルとしては「フェアレディZ」が挙げられるでしょう。
エンジンスペックの諸元はこちらをご覧ください。
項目 | 諸元 |
種類 | V型6気筒DOHC |
排気量 | 3,696cc |
最高出力 | 355PS/7,400rpm |
最大トルク | 38.1kg・m/5,200rpm |
車両重量 | 1,540kg |
PWR | 4.34kg/PS |
TWR | 40.42kg/kgf・m |
0-100km/h加速タイム | 5.1秒 |
※V型6気筒エンジンの詳細は以下の記事をご参照ください。
V6エンジンの特徴!どんな音?搭載車を日本車/外車の車種からそれぞれ紹介!フェアレディZの特徴は、なんといっても大排気量のNAエンジンから繰り出される、ナチュラルなトルクです。
排気量で勝ってるだけあり、最高出力はWRXを上回る355PSを発揮し、PWRはWRXを超えます。トルクはやや劣るものの、38.1kgf・mという力強さ。
車重はありますが、3.7L NAのパワーによって0-100km/h加速タイムは5.1秒を記録しています。
とはいえ、「ターボ」と「AWD」のアドバンテージがあるため、単純な発進加速はWRXが上手です。排気量に差があるので、これ以上の加速となると勝負はわかりませんね。
フェアレディZの加速性能については、以下の記事でさらに詳しく解説しています。詳細が気になる方はこちらも参考にしてみてください。
フェアレディZの加速性能を解説!0-100km/h加速タイムはどのくらい?レクサス LC500
レクサスブランドから2016年に登場したラグジュアリー2ドアクーペが「LC」。
外見は「エレガント&クール」な印象ですが、中身はパワフルな5.0Lエンジンを積んでいる、筋肉質なモデルです。
1,000万円を超えるモデルですが、あえて格上と比較してみましょう。
エンジンスペックの諸元はこちらをご覧ください。
項目 | 諸元 |
種類 | V型8気筒DOHC |
排気量 | 4,968cc |
最高出力 | 477PS/7,100rpm |
最大トルク | 55.1kg・m/4,800rpm |
車両重量 | 1,940~1,960kg |
PWR | 4.07~4.11kg/PS |
TWR | 35.21~35.57kg/kgf・m |
0-100km/h加速タイム | 4.4秒 |
※V型8気筒エンジンの詳細は以下の記事をご参照ください。
V8エンジンの特徴!どんな音?搭載車を日本車/外車の車種からそれぞれ紹介!フェアレディZと同様、LCの特徴は、大排気量のNAエンジンから繰り出されるナチュラルなパワーです。
ただし、フェアレディを大きく上回る5.0Lエンジンによって、最高出力は477PS、最大トルクは55.1kgf・mというマッスルっぷり。
V8エンジンで武装している分、車重は2t近くありますが、0-100km/h加速タイムは4.4秒を記録しています。単純な加速なら、LC500はWRXよりも速いです。
これは、5.0Lの大排気量によって力ずくで加速させているからでしょう。ボデイは2tありますが、PWRで見れば、WRXよりも小さい4.07kg/PSですからね。
WRX STIは国産最高クラスの加速性能
というわけで、WRX STIの加速性能について解説してきました。
比較対象には挙げませんでしたが、国産車なら「GT-R」や「NSX」も格上の存在です。
さすがに「日本で最も加速性能が高い」とはいえませんが、トップクラスなのは間違いないでしょう。
むしろ、格上の1,000万円を超えるモデルばかりなので、コストに対する加速・走行性能は国産No.1ではないかと個人的には信じています。
以上、WRX STIの加速性能についてでした。
ほかにも加速性能について解説している記事はございますので、興味のある方はこちらもあわせてご参照ください。
日産GT-Rの加速性能を解説!0-100km/h加速タイムはどのくらい?ランエボは速いのか?加速性能から0-100km/h加速タイムまで解説!