賑やかな繁華街、会社の飲み会の帰り道に歩道から手を上げて待っていると、スッと3BOXのセダンが止まってくれ、ガチャッと助手席側のリアドアが開く。
近づいてみてみるとその車がクラウンだったということが多々あります。
近年いろいろなタクシーを見かけることが増えてきましたがそれでもクラウンのタクシーは多く見られます。
なぜタクシーにクラウンは多いのでしょうか?
実はクラウンがタクシーとして多いのは、タクシーの車両基準の法律と世間のイメージによって作り上げられたものだったのです。
タクシーのクラウンの特徴
タクシーは当時日産も開発していましたが経営危機とともにタクシー事業から撤退し、トヨタの独壇場となりました。そのためタクシーといえばクラウンというイメージが浸透しています。
ではクラウンタクシーはなぜここまで普及したのでしょうか。クラウンタクシーの特徴を見ていきますが、実はクラウンタクシーはクラウンであってクラウンではなかったのです。
タクシー仕様のクラウンは実はクラウンではなかった
街なかでよく見るタクシーとして使われているクラウンはクラウンコンフォートといい、一般向けに販売されているクラウンとは設計もシャシもまったく異なる車なのです。
※一般向けのクラウンの詳細は以下の記事をご参照ください。

車体自体は当時すでに3ナンバーサイズになっていたクラウンとは違い、車両のサイズは日本の道路事情に合わせ、5ナンバーで収まるサイズのX80系という当時販売されていたマークⅡセダンをベースに開発されました。
そして当時のタクシーの車両基準に合わせるために、Cピラーを垂直近くに立てて後席の入り口が広くなるように設計し直し、内装はタクシー用の計器などが配置しやすいようにシンプルに設計されています。
さらに燃料は当時からタクシーにとって主流だった、税金の安いLPガスが燃料となっており、その大きなタンクがしっかり詰めて、なおかつ顧客の荷物も積みやすいセダンタイプであるなど、すべてがタクシー専用設計の車両なのです。
そういった設計を施しタクシー専用車両のコンフォートが開発されました。
それを車内空間を広くするためにストレッチさせ、上級の雰囲気を持たせるために外観をクラウンのイメージで手直しし、中型のタクシーとして開発されたのがクラウンコンフォートだったのです。
つまり、クラウンコンフォートは本当のクラウンではないのです。
タクシー専用車ならではの特徴
タクシー専用者であるためには
- 高耐久な車両
- 安定した整備性
- 一般車両より安い車両価格
- 経済性のある燃料代
が必要となってきます。タクシー専用車のクラウンコンフォートはこれらの特徴をしっかり満たしています。
高耐久な車両
タクシーは走行距離が非常に多く、1日に200km~300kmほど走ります。一般の車両だと5年ほどかけて5万キロになりますが、タクシーは1年で5万kmぐらい走ってしまいます。
そのため一般的な車両と比較すると、車自体の消耗は非常に早くなります。
したがってエンジンや車体の耐久性は一般の車に比べ非常に高くなっておりなかなか壊れないようにできています。
なお一般の車の寿命については以下の記事で詳しく解説しています。興味のある方はこちらもご参照ください。

安定した整備性
いくら高耐久でも消耗もしますし壊れることもあります。そんなときすぐに対応できるように部品の供給が安定していますし、構造が複雑ではないため整備工場も選びません。
日夜走り続けなくてはいけないタクシーとしては、安心して使えるというのが必要不可欠です。
一般車両より安い価格
タクシー部門から日産はすでに撤退しており、タクシー車両には競合がいないため、競い合う必要もなければ流行を追う必要もなく、商用なのでそこまで過剰な高級感の必要がなく、乗り心地の良さがあれば良いというのが現状です。
そのためタクシー専用車両とはいえど、開発された当時の設計のまま現在まで生産されており、価格も227万円~251万円と安く販売されているのもメリットです。
経済性のある燃料代
走行距離が非常に多いタクシーは燃料代が多くかかるため、燃料代が気になるところです。そこでクラウンコンフォートには税金の安いLPガスを燃料としています。
そのためガソリンに比べると非常に経済的です。
ところが構造が20年前の車両のため燃費は10-15モード燃費で9.8km/lであり、いくらLPガスは税金が安いとはいえど、2,000ccの車としては良いとは言いがたいところもあります。
現行型のクラウンタクシーは全く別
ちなみに街なかで現行の形のクラウンのタクシーを見かけることがあると思います。
しかしそれらのタクシーはメーカーが作ったものではなく、タクシー用に個人もしくは会社がタクシー用に架装した車両なのです。
そのため今お話した仕様とは全く違いますのでご注意ください。
もしクラウンの購入を考えているなら、値引き交渉の正しいやり方を覚えておくといいですよ。
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タクシーのクラウンの多さ
クラウンコンフォートがタクシー専用に作られており、競合車もすでにいなくなっているため、タクシーにクラウンが多くなる理由はわかりました。
では実際にタクシーとして走っているクラウンは多いのでしょうか?
今走っているタクシーの8割はトヨタ車
タクシーはクラウンが多いというよりは、小型タクシーのコンフォートやハイブリッドカーのプリウスなどトヨタ車が多いと言えるでしょう。

実は現在走っているタクシーの約8割がトヨタ車です。
タクシーは平成27年にタクシー車両の基準が緩和されるまでは、車両に関する決まり事が多く一般の車両をタクシーにするのはなかなか難しい状況でした。
そのため高級車など特殊な車両がほしい場合以外は、トヨタのクラウンコンフォートやコンフォートを選択する以外にありませんでした。
しかし現在、そのタクシーの車両に関する基準が緩和されたため、いろいろな車がタクシーとして使うことがことができるようになりました。
それにより燃費の悪いLPガス車ではなく、ガソリン車でも燃費の良いハイブリッドへの転換が図られます。そんな中で、認知度が高く見栄えの悪くないプリウスのタクシーが増え始めていました。

しかし、タクシーとして重要な後席の頭上空間が狭かったり、シートの座り心地が良くなく、高級感もないため評判はよくないのが事実です。
それでもクラウンはタクシー運転手に人気
そのためタクシーのイメージが強く、高級感と乗り心地などすべて持っているクラウンをいまだにタクシーとして選ぶ企業や個人タクシーのユーザーは非常に多いのが現状です。
またタクシーの架装業者もクラウンをタクシーに架装する実績が多く、部品の供給や作業効率、さらに価格も抑えられるため、タクシーと言えばクラウンと言える状態のようです。
今後もトヨタのタクシー市場の独壇場は続く
今ではクラウンコンフォートの新規生産も終了してしまいましたが、現在はトヨタがタクシー専用車のジャパンタクシーというLPガスハイブリッドのワゴン車を発表、販売しています。
そのためクラウンコンフォートは今後さらに減っていくこととなるでしょうがトヨタのシェアは揺るぎないでしょう。
なおJPNタクシーについては以下の記事で詳しく解説しています。興味のある方はこちらもご参照ください。

タクシーにクラウンが多い理由
実際にトヨタ車がタクシー車両をほぼ独占しているのが現状です。
ではなぜトヨタ車が多い、ではなくクラウンが多いと感じられるのか、まとめていきます。
タクシーにクラウンが多く感じるのは6つの理由がありました。
車両規制によりクラウンコンフォートが守られてきた
政府の決めたタクシー車両の基準の厳しさによって、タクシー専用に作られた車両以外の車両がタクシーになりにくく、唯一タクシー車両を生産していた日産もほぼ撤退したためタクシー市場はトヨタのほぼ独占になりました。
そのため大量仕入れをするタクシー会社は価格の安いクラウンコンフォートをタクシーに採用することとなったのです。
そのため必然的にタクシーはクラウンコンフォートが多くなっていきました。
高耐久の車両の新規開発が進まない
タクシーは走行距離が非常に多く、耐久性の高いFR構造の車が人気がありました。しかし現代ではすでに室内効率や、コストの理由からFFのセダンが主流になってきていました。
いくらそのFF車の耐久性の向上を訴えても、FR神話を崩す程にはなりません。
そのためわざわざタクシー車両のために専用のFR車を作るようなことをするメーカーはおらず、結局はクラウンコンフォートの独壇場になってしまいました。
メーカーにとって採算が取りにくいため社力が強くないと維持できない
さらにタクシーは交換部品の供給が常にある状態でないといけないため、メーカーとしては部品の在庫や生産維持など採算の取りにくい部門であります。
したがってある程度余力のある会社じゃないとタクシー車両を維持するのは難しいのが現状なのです。
そのためトヨタがこの市場を独占しているのは、当然の結果だといえます。
タクシー=クラウンのイメージができあがっている
こういった事情から、タクシー=クラウンというメージがすでにでき上がっており、タクシーにクラウンを導入するのには抵抗がほとんどありません。
さらに一般車両をタクシーに架装する業者もクラウン需要が多いため、ワンオフの部品になりにくく、他の車両に比べ改造費用が安く済むという現状もあります。
クラウン=ステータス
やはり日本の高級車といえばクラウンというイメージが有り、クラウンのタクシーはお客さんに受けが良いようです。
せっかくなら高級車に乗りたいという顧客心理もあり、未だにクラウンのタクシーは人気があるようです。
なおクラウンが高級車かどうかという話題は以下の記事で取り上げています。興味のある方はこちらもあわせて参考にしてみてください。

クラウン=日本の道路に合っている
ステータスという話がありましたが、クラウンだけでなくBMWやベンツといった高級車に値する車も多々あります。


そんななかでもクラウンが選ばれる理由としては、日本人が好む乗り心地に仕上がっているという点です。
やはり海外メーカーの車だったりすると、足回りが硬めであったりクラウンに比べると乗り心地が悪いという印象があるそうです。
さらに故障したときなど部品代も結構かかり、運転手側としても相当な負担を強いられるため、国産車で、高級なイメージのあるクラウンはタクシーに最適な車のようです。


クラウンは整備工場が豊富
クラウンは国産車のため部品供給や価格が安定しています。それにハイブリッドなどと違い整備工場も選ぶことはないため、維持管理という面でも安心できます。
もしものトラブルや、定期的な点検など、安心して整備に出すことができるのもタクシーとしての素質です。
もはやイメージだけでなく、ステータス性、整備性、認知度とどれをとっても優れているクラウンは、タクシードライバーや会社にとっては間違いのない選択肢となっているようです。
今後クラウンタクシーは減っていく可能性あり
クラウンは現在でも非常にたくさんのタクシーとして走行しているのがおわかりいただけたと思います。
しかしそのクラウンコンフォートも生産が終了し、トヨタの次世代タクシーであるジャパンタクシーに切り替わっています。
大きなタクシー会社は今後こちらを導入していくことになり、クラウンコンフォートは街なかから姿を消していくでしょう。
しかしステータス性、整備性、認知度とどれをとっても優れているクラウンは個人タクシーや上級タクシーといったステータス性を意識したこだわりのある車両へと変化し、存続していくこととなっていくでしょう。
クラウンについては以下の記事でも取り上げているので、興味のある方はこちらもあわせて参考にしてみてください。

