ディーゼルエンジンは自動車用のエンジンのひとつで、ガソリンエンジンとともに世界中で使われています。
ですがディーゼルエンジン車はガソリンエンジン車より「エンジンブレーキが弱い」と言われており、運転感覚の違いが昔から言われています。
今回はそんなディーゼルエンジン車のエンジンブレーキについてご説明します。
ディーゼル車のエンジンブレーキの効き具合
ディーゼルエンジンはガソリンエンジンとおなじレシプロエンジンの内燃機関ですが、その燃焼構造には違いがありそれがエンジンブレーキの違いに影響します。
レシプロエンジンとは?種類は?仕組みや構造まですべて解説!内燃機関の種類と仕組み/構造!外燃機関との違い4つと類似点4つ!将来性あり?!結論から言えばディーゼルエンジン車は同クラス、同排気量のガソリンエンジン車と比較するとエンジンブレーキが弱くなる特徴を持っており、その運転感覚には違いがあります。
まずはエンジンブレーキがどのような仕組みで生まれるかをご説明し、その後にディーゼルエンジン車について解説します。
エンジンブレーキの仕組み
エンジンブレーキは車の運転中にアクセルをオフにした際に車がググッと減速する現象で、ブレーキを踏んでいなくても減速するのでちょっとしたスピード調整などに使えます。
エンジンブレーキが難しい仕組みで起こっていると思っている人も多いのですが、その仕組みは非常に簡単で、エンジン自体が抵抗となることで起こる減速現象です。
車の運転中にアクセルをオフにするとその時点でエンジンへの燃料供給がカットされ、アイドリングのエンジン回転数に落ちるまでは基本的にエンジンが動いていない状態になります。
ですが車は走行しているので、タイヤとエンジンが繋がっているとタイヤが回転することでエンジンを回しているような状態になります。
この状態でもエンジンのピストンやコンロッドは運動していますが、それはタイヤから伝わる回転によって動いているだけですのでエンジンはただの抵抗となり、車のスピードを落とすブレーキとなります。
またエンジンが動く際には吸気の吸い込みによるポンピングロスや、油圧や補機類の作動に費やされる出力分のロスがあり、エンジン全体で見ると非常に大きな抵抗が生まれます。
もしアクセルオフしたあとにギアをニュートラルにし、エンジンとタイヤを完全に切ってしまえばエンジンブレーキはなくなりますが、そういう運転を意識することはほとんどないので、車の減速中には必ずエンジンブレーキがかかっているといっても良いでしょう。
ディーゼルエンジンとガソリンエンジンの差
ディーゼルエンジンのガソリンエンジンも
- シリンダー
- ピストン
- クランクシャフト
などの本体構造はほとんど同じで、大きな違いは燃料の燃焼方式にあります。
ディーゼルエンジンは圧縮着火エンジン、ガソリンエンジンは火花点火エンジンでそれぞれ燃料も違うのですが、実はこの差はエンジンブレーキの強さ弱さに関してはあまり関係がなく、最も大きく関係するのはスロットルチャンバーの有無です。
ガソリンエンジンのポンピングロス
スロットルチャンバーはガソリンエンジンで主に使われる部品で、吸気管の途中に設置する開閉弁です。
ガソリンエンジンは出力の制御は空気量によるもので、出力の低い時には吸気管をスロットルチャンバーで絞って空気量を減らし、高出力になるほどスロットルチャンバーが開いていきます。
このとき吸気管を絞った状態というのは吸気を吸い込む際に大きな抵抗となります。この抵抗を「ポンピングロス」と呼ぶのですが、例えばあなたがストローで空気を吸うときに一部を指で潰して狭くすると、吸うのに結構な力がいると思います。
エンジンも一緒で、スロットルチャンバーが絞られれば絞られるほどポンピングロスは大きく、この抵抗はエンジン全体の抵抗の3割にも及ぶ非常に大きなものです。
エンジンブレーキがかかっている時にはスロットルチャンバーは最も絞られた状態にあるのでポンピングロスが大きく、これがエンジンブレーキの強さを高めています。
なおガソリンエンジンの仕組みの詳細は以下の記事で解説しているので、詳しいところまで知りたい方はこちらもあわせて参考にしてみてください。
ガソリンエンジンのメリット3つとデメリット5つ!仕組みと将来性の特徴を解説!ディーゼルエンジンの場合は?
ディーゼルエンジンはガソリンエンジンと出力調整の方法が違い、燃料の量によって出力を上下させています。
出力が低ければエンジン内に噴射する燃料は少なく、出力を高めるごとに燃料を増やして燃焼エネルギーを高めています。
ディーゼルエンジンは吸い込む空気をスロットルチャンバーで調整する必要がなく、ある意味空気は自然に吸い込む量で決まっています。
また近年のクリーンディーゼルエンジンはターボチャージャーによる過給が一般的となっており、より効率的に空気を取り込むことが可能です。
クリーンディーゼルエンジンとは?メリット2つとデメリット3つ!仕組み/構造の特徴まで解説!ターボエンジンとは?仕組み/構造は?メリット2つとデメリット4つ!そのためディーゼルエンジンにはスロットルチャンバーによるポンピングロスがなく、この点がガソリンエンジンに対してエンジンの効率や燃費の面で大きなアドバンテージとなります。
ところがエンジンブレーキのことに関して見た場合には逆の影響があり、ポンピングロスが無い分だけガソリンエンジンよりエンジンブレーキの効きが低下します。
これがディーゼルエンジンのエンジンブレーキが弱いと言われている所以であり、ポンピングロスがどれだけ大きな抵抗だったか、ということです。
ただしそれ以外の機械的なロスに関してはむしろディーゼルエンジンのほうが大きく、ピストンやコンロッドが頑丈で重たい分、動かす際の抵抗は大きいです。
なお現在最新のディーゼルエンジンには、実はスロットルチャンバーの部品自体は付いているのですが、ガソリンエンジンとは全く役割が異なります。
ディーゼルエンジンの場合にはフェールセーフのために設置されており、エンジンが故障して暴走した際に吸入空気を止めるための部品で、通常走行時には常に全開となっていてエンジンブレーキには寄与しません。
なおディーゼルエンジンの仕組みの詳細は以下の記事で解説しているので、詳しいところまで知りたい方はこちらもあわせて参考にしてみてください。
ディーゼルエンジンとは?仕組み/構造を簡単にわかりやすく解説!ディーゼルエンジンのエンブレ対策
ディーゼルエンジンのエンジンブレーキが弱いということは昔から知られていたことで、エンジンブレーキを強くするために別のシステムを組み込む場合があります。
これは主にディーゼルエンジンが主に使われる大型トラックや大型バスなどで採用される技術で、乗用車用にはそこまで使われることは少ないです。
大型トラックなどは車両重量が重たく、またさらに重たい荷物などを運ぶためにブレーキへの負担が大きいので、エンジンブレーキが普通のブレーキの補助用として非常に重要なのです。
エンジンブレーキを強化するためにはエンジンからタイヤまでの間の動力系のどこかで抵抗を作り出す必要があり、そういったエンジンブレーキ強化技術をご紹介します。
排気ブレーキ
排気ブレーキはもっとも普及しているエンジンブレーキ強化技術であり、エンジン抵抗を高めるために排気ガスを流れにくくして排気抵抗を増やす技術です。
前述したポンピングロスは吸気の抵抗による抵抗でしたが、エンジンに吸い込む方だけではなく排気する方にも抵抗は存在します。
これを「排気抵抗」と呼ぶのですが、排気の流れが悪いほど排気ガスを押し出すために力が必要なので、これがエンジンの大きな抵抗となります。
こちらは例としては注射器で空気を押し出す際に、注射器の口が狭くなった時に押し出す力がより必要となることと同じです。
排気ブレーキはこの排気抵抗をわざと生み出してエンジン抵抗を増やすシステムで、排気管の途中にスロットルチャンバーと同じようなバルブをもたせています。
通常の走行時にはバルブは開放されており排気抵抗は低い状態ですが、減速時に排気ブレーキのスイッチやレバーをオンにすることでバルブが閉まり、排気抵抗の増加によってエンジン抵抗が増えます。
この効果によりエンジンブレーキが強くなりディーゼルエンジンであってもガソリンエンジンに匹敵するエンジンブレーキを実現できます。
この排気ブレーキは導入が比較的容易なシステムで、大型車だけではなく小型トラックや乗用車にも採用例があります。
ただし効果としてはエンジンブレーキを強くする以外の効果がなく、乗用車ではコストをかけるだけの必要性が少ないために採用例は少ないです。
なお排気ブレーキが動作した後、減速が終わってバルブが開放されると、排気ガスが一気に流れることで「プシュー」という音が出ます。
大型トラックなどが信号での停車時にプシューという音を立てているのは、この排気ブレーキを開放した音なのです。
圧縮開放ブレーキ
圧縮開放ブレーキもエンジンの抵抗を増やしてエンジンブレーキを強化する技術で、シリンダーとピストンによる空気の圧縮と膨張による抵抗を一時だけ増加させるシステムです。
ディーゼルエンジン(ガソリンエンジンもですが)にはシリンダーの上部に吸気と排気のバルブがあり、その開閉によってシリンダーへの給排気をコントロールします。
通常はピストンの上下に合わせて効率の良い最適のタイミングで開閉するようなバルブタイミングが設定されているのですが、圧縮開放ブレーキはこのバルブの開閉を逆に利用し、エンジンの抵抗となるようなタイミングにするシステムです。
圧縮開放ブレーキはおもに2つの段階に分かれており、まずエンジンのピストンが上昇する際には燃料は噴射せずに空気のみを圧縮します。
圧縮には大きな力が必要なのでこの抵抗がエンジン抵抗の増加につながるのですが、ピストンが上死点付近に来たときには排気バルブを開放して圧縮した空気を排気として流します。
このことから圧縮開放ブレーキと呼ぶのですが、普通は圧縮して圧力が高い空気がピストンを逆に押すので無駄にならない所を、排気として圧力を開放してしまうので無駄をしているわけです。
また逆にピストンが下がった膨張時には吸気も排気もバルブを閉じてあり、ピストン内部は負圧となることからこれも抵抗の増加となります。
この2つの効果によってエンジンブレーキ作動時にエンジン抵抗を大きく増加させることができるので、エンジンブレーキの強化が可能となります。
圧縮開放ブレーキは前述した排気ブレーキと一緒に作動させることが殆どで、合わせ技でエンジンブレーキを強化します。
エンジン抵抗を直接的に増加させる大きなメリットがある一方で、圧縮開放ブレーキは圧力がかかった空気を一気に排出するのでその排出音が大きいことが問題です。
アメリカではこのシステムを「ジェイクブレーキ(Jake Brake)」とも呼びますが、その音の大きさから住宅地などで「No Jake Brake」という看板があるなど、その影響がわかる事例です。
圧縮開放ブレーキはシステムが結構複雑で大型車に採用されることがほとんどで、中小型車に使われることはほとんどありません。
リターダー
リターダーは近年大型トラックやバスのエンジンブレーキ強化技術として注目されているもので、前述の排気ブレーキや圧縮開放ブレーキと一緒に使われます。
リターダーは前述の2つとは違い、エンジンから車輪までつながる動力軸の途中に抵抗となる構造を組み込み、スイッチオンオフで抵抗の有り無しを切り替えられるシステムです。
その多くはエンジンからディファレンシャルギアまでつながるプロペラシャフトに流体式や電磁式の抵抗発生装置が組み込まれます。
減速時にシステムをオンにすることでプロペラシャフトの回転抵抗が増え、それがエンジンブレーキとして作用します。
世界的に普及しているシステムは流体式と呼ばれるもので、プロペラシャフトの周りを水やオイルなどの液体で満たしてあります。
その液体をローターで撹拌することで流れによる流体抵抗が生まれ、それがリターダーとして作用します。液体を介しているので抵抗に付き物の発熱を抑えることがメリットです。
また国内のトラックメーカーでは別方式である永久磁石式リターダーのほうが普及しており、これはモーターの電気的な抵抗をリターダーとして利用するものです。
電気モーターは回転して発電する時にその発生電流に比例した抵抗があり、プロペラシャフト側に磁石を、その外側に電流を流せるローターを設置します。
ローターに電流を流すとモーターとして作動し始めるので、このときだけ抵抗が生まれてエンジンブレーキを強化できます。
流体式に比べて抵抗が少ない点は有りますが、比較的コンパクト、低コストで導入できます。またこの他にも永久磁石式を電磁石に変えた電磁式リターダーもあり、こちらは電車などで使われることが多いです。
これらのリターダーは導入に大きなコストと搭載スペース、重量増大があるために、2000年頃までは採用例が限られていました。
ですが大型トラックも燃費向上のために小排気量のエンジンが増えるとともに、さらなるエンジンブレーキ強化が必要となったため近年になって導入が一気に進んだ技術です。
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ディーゼル車のエンジンブレーキ時の燃料消費
ディーゼルエンジンのエンジンブレーキ作動時には基本的に燃料はカットされており、その間の燃料消費量は0となります。
これをうまく活用すれば燃費の改善にも繋がりますが、決して減速時全てで燃料カットされているわけではありません。
ディーゼルエンジンに限らずガソリンエンジンでもアクセルオフのときには基本的には燃料供給はカットされます。ですがエンジン回転数が下がっていくとエンジン保護やストール防止のために燃料供給が再開され、エンジンが再稼働します。またアイドリング回転数まで下がると当然エンジンは動きます。
減速にエンジンブレーキを使うことは通常の摩擦ブレーキの使用を減らすことに繋がり、減速時に悪くなりがちなエンジンの燃費を改善する効果が有ります。
自動車の燃費の改善は年々要求が厳しくなっており、エンジンブレーキもその一つになりつつあり、またエンジン排気量の小排気量化ともマッチします。
また燃費とは関係ないものの、摩擦ブレーキの発熱や消耗を防ぐ効果も有り、安定した制動と寿命の延長が図れます。
なおディーゼルエンジンの燃費については以下の記事で詳しく解説しているので、興味のある方はこちらもあわせて参考にしてみてください。
クリーンディーゼル車は燃費が悪い?低燃費車を比較してランキングで紹介!ディーゼル車での理想のエンジンブレーキの使い方
ディーゼルエンジン車のエンジンブレーキが弱いのは構造上しかたないのですが、大型車はさまざまなシステムでエンジンブレーキを強化することで対策しています。
ですが中小型の乗用車ではそういったシステムへの要求は少なく、車の仕様や乗り方などでエンジンブレーキを強めに使うことになります。
車の仕様によるエンジンブレーキ
車の仕様ですが、現在日本ではオートマ車がほとんどとなっていますが、エンジンブレーキを重視するのであればマニュアル車のほうが有利です。
オートマ車は変速が不要で楽なのですが、エンジンとトランスミッションのあいだにトルクコンバーターという流体クラッチがり、エンジンブレーキの反力はトルクコンバーターに吸収されたりしてエンジンブレーキが弱めになります。
それに対してマニュアル車はエンジンとトランスミッションが機械的なクラッチで繋がっており、クラッチが繋がっている限りはエンジン抵抗が直接タイヤに伝わりエンジンブレーキが強くなるのです。
現在国産メーカーでディーゼルエンジン車を積極的に投入しているのはマツダですが、マツダ車には国産車では珍しくディーゼルエンジン+マニュアルという仕様が用意されています。(ディーゼル車の車種の詳細は以下の記事をご参照ください。)
クリーンディーゼル搭載車一覧とおすすめ車種まとめ!SUVからミニバンまで全て紹介!マニュアル車はクラッチ操作やギアの切り替えなど面倒な点はありますが、一方で運転の仕方でエンジンブレーキを調整できるのが便利な点です。
車の乗り方によるエンジンブレーキ
マニュアル車はクラッチの操作やギアの選択でエンジンブレーキを強力に使えますが、オートマ車でも乗り方によってはエンジンブレーキを強くすることが可能です。
オートマ車は基本的にギアをD(ドライブ)に切り替えれば自動的に変速が出来ますが、マニュアルモードもあり、1速、2速などに切り替えができます。
これらは例えば登り坂などでトルクが必要な時にギアを固定するために使うのですが、エンジンブレーキを強くするためにも使えるのです。
高いギアから低いギアに切り替えると、その適正な回転数の差の分が抵抗として発生するので、これをエンジンブレーキとして活用できます。
普通はオートマ車でこの切り替えをすることは殆どないのですが、エンジンブレーキの弱いディーゼルエンジン車では積極的にこの機能を使うことで強めに減速が可能となります。
オートマ車でもマニュアル車に近い操作をする必要はありますが、その分燃費などには良い影響が有りますので、ぜひ積極的に活用するとよいでしょう。
なおディーゼルエンジンについては以下の記事でも取り上げているので、興味のある方はこちらもあわせて参考にしてみてください。
クリーンディーゼルが今後普及しない理由3つ!将来性はあるか未来予想!規制が厳しすぎる?!ディーゼルエンジン車の価格/値段が高い5つの理由!コスパとしてはお得なのか解説!