現在、販売台数、規模ともに世界トップに君臨するフォルクスワーゲン。
日本では高級車として販売されていますが、そもそも「フォルクスワーゲン」という名前を和訳すると「大衆車」という意味。
確かに、造りはドイツらしい高級車のそれを思わせますが、メルセデス・ベンツやBMWと比べるとチープな感じは否めなくもない。
フォルクスワーゲンは高級車? それとも大衆車? そんな疑問にお答えします。
フォルクスワーゲンはお買い得な大衆車
フォルクスワーゲンの誕生に、ナチスのヒトラーが関わっているのは有名な話。ヒトラーは第二次世界大戦を引き起こした独裁者とされていますが、国の未来を思う気持ちは誰よりも強かったのです。
国民に一家に一台車を持つべきであるとして、安価乗用車「ビートル」の愛称で親しまれるフォルクスワーゲン・タイプ1の設計をフェルナンディド・ポルシェ博士に命じたのはヒトラーなのです。
フォルクスワーゲンは、その成り立ちからして大衆車メーカーの代表といえる存在です。(成り立ちの詳細は以下の記事をご参照ください。)
フォルクスワーゲンはどこの国の車?国産車との違いはこの4つだ!だからといって、フォルクスワーゲンの車は同じくドイツの高級車メーカーであるメルセデス・ベンツやBMWと比べてみても、それほど見劣りすることはないでしょう。
むしろドイツ車らしく質実剛健な車づくりがされています。それは、メーカーうんぬんではなく、ドイツ人の気質とドイツの道路事情がもたらすものだからです。
ドイツ車の特徴とは
ドイツの道路事情といえば速度無制限の高速道路アウトバーンが有名ですが、ドイツの自動車メーカーである以上、大衆車であってもアウトバーンを安全に走行できるだけの性能を持たせなければなりません。
実際にアウトバーンを200km/hで走れる車はごく一部ですが、一般道でも制限速度が100km/hに設定されていることから、日本よりはるかに高い速度域を想定されたるのがドイツ車の特徴です。
快適な乗り心地
高速走行時に車体にはとても大きなの力が加わるため、余計な動きを抑えるためにサスペンションは固く締め上げる必要があります。
そのため、フォルクスワーゲンに限らずドイツの車は総じて乗り心地が堅いと評されるのです。
一方、ドイツの都市部の道路に目をむけると、古くからある石畳がいまだに数多く残され、凸凹した路面は、車にとっては最悪の環境。
単純にアウトバーンの200km/h走行に合わせた締め上げられたシャシーで石畳を走行した場合、乗員はおろか内部機械までもダメージを負ってしまいます。
そのため、ドイツ車のサスペンションは低速域では柔らかくして乗り心地を確保し、高速域では固く締め上げた相反する条件を克服したサスペンションにセッティングにする必要があります。
そのセッティングは、あらゆる路面で過不足ない走行性能と快適な乗り心地が求められる高級車と同じ条件であるため、ドイツ車は総じて高級車と認識されるのです。
高いボディ剛性
高い次元でバランスされたサスペンション性能を発揮させるには高いボディ剛性を必要とします。
また高級車特有のドアの閉まりにくさは、ドアとボディの隙間が少ない証拠です。
ドアヒンジ一つ取ってみても、ドイツ車は鋳造ブロックで強靱につくられており、開け閉めの際の動きや、閉まる時の振動の伝わり方が緻密で高精度の機械であることを思わせるのです。
高級車であってもプレス鋼版で作られる日本車のドアヒンジでは、ドイツ車のような味わいは出せるはずもなく、それどころかドイツの石畳を走り続けるうちにドアは下がり落ち、まとも閉まらなくなってしまいます。
これが「良い車はドアの開け閉め一つで分かる」といわれる所以。そして、ここまでに車を造り込めるのは、世界一几帳面と言われるドイツ人ならではのなせる業なのです。
ドイツ車の特徴は以下の記事でもさらに詳しく解説しているので、こちらもあわせてご参照ください。
比較してみた!ドイツ車と日本車の決定的な違い5つ!価格からみるフォルクスワーゲン
フォルクスワーゲンの価格帯は、現在日本でラインナップされているのはコンパクトカーのVW UP!の160万円から、DセグメントセダンであるVW アルテオンの549万円。
フォルクスワーゲン新型アルテオンとは?内装や特徴を解説【東京モーターショー2017】もっとも高い価格が付けられているのはゴルフのハイパフォーマンスモデルのVW ゴルフRの556万円。
フォルクスワーゲン ゴルフの口コミ/評判!価格から外装や走行性能まで全てチェック!国産車と比較するとフォルクスワーゲンの方がやや高い価格設定となっていますが、その車体の造りと装備を考えると、それは適正価格です。
国産車で同じスペックのシャシーを開発して販売するとなると、現在のフォルクスワーゲンの価格を優に超えてしまうでしょう。
高級車として販売されるレクサスが、最近になってようやく鋳鉄ブロックのドアヒンジを採用し始めたことがそれを物語ります。
高級車のスペックで大衆車として作られ、高級車として海外で販売される大衆車というややこしい事情を抱えるのがフォルクスワーゲンという自動車メーカーの車です。
つまり、フォルクスワーゲンの車は高いスペックを備えながら価格を抑えた「お買い得車」と言い換えることができます。
もしフォルクスワーゲンの購入を考えているなら、値引き交渉の正しいやり方を覚えておくといいですよ。
このやり方を知らないと最大60万円以上も損しますよ。詳しく知りたい方は、下記の『たった1分で車を60万円値引きできる裏技』のページをご覧ください。 たった1分で車を60万円値引きできる裏技!安く購入する秘密のテクニックとは?!フォルクスワーゲンの世間からのイメージ
次に、フォルクスワーゲンの車が大衆車なのか、高級車なのかを消費者の視点から探ってゆきます。
「フォルクスワーゲンは高級車だ」というツイート。
あっディーラーに行ったらアルテオン試乗させてもらったよ。やっぱ高級車は違うねえ。#VW #Arteon pic.twitter.com/1VbBUVCpzT
— 神谷! (@showA7120) 2018年1月21日
「フォルクスワーゲンは大衆車だ」というツイート。
VWは所詮 大衆車でカローラのライバル。比較しても一長一短で、日本国内での使用ならカローラが圧倒的に良い。
今までブランドイメージ作りに日本人が騙されていただけで、それが剥がされれば売上大幅ダウンは当然です。#VW https://t.co/r0mGmYYu8s— 団塊世代の旅人 (@bike_bito) 2015年11月23日
フォルクスワーゲンを大衆車として見る方もいれば、高級車として見る方もいます。
フォルクスワーゲンは日本国内では、高級感を演出
世代や時代でも受ける印象は変わると思いますが、車を工業製品として見た場合、家電製品と同じように自国で造った製品がもっとも優れた製品になるのは間違いありません。自国民の癖を理解しているためです。
だからこそ、日本の代表的な大衆車はトヨタ カローラであり、ドイツの代表はフォルクスワーゲン ゴルフなのです。(カローラの詳細は以下の記事をご参照ください。)
カローラフィールダーの試乗レビュー!乗り心地の感想・インプレッション!カローラスポーツの試乗レビュー!乗り心地の感想・インプレッション!しかし車の市場が世界に広がれば、経済成長率の高い日本市場を無視するわけにはいきません。
日本での使用に最適化して造られるカローラのシェアの何%かを奪うためには、どうしても高級輸入品としての価値を付加した高級車として売り出す必要があります。
そのためある程度高いグレードエンジン搭載車に、本革シートや加飾した内装で高級感を演出するという、あえて高い価格で売り出さなければならないメーカーの販売戦略があるのです。
それが、ドイツでは大衆車であるはずのフォルクスワーゲン車が、日本では高級車であるというイメージの定着につながってしまいました。
VW ゴルフとトヨタ カローラアクシオの価格差
2018年5月現在販売されているVW ゴルフとトヨタ カローラアクシオの価格を比較してみます。
ゴルフは「1.2L TSI Trendline 7速DSG」の254万が最低グレード。
カローラアクシオの最低価格は1.3L CVTで153万ですが、イコールコンディションとするためにガソリンエンジンの中間グレードである「カローラアクシオ1.5G CVT」172万円とを比較します。
その価格差は約80万円ですが、ゴルフはダウンサイジングされた1.2L直噴ターボエンジンに、7速デュアルクラッチトランスミッションが搭載されています。
ダウンサイジングターボとは?デメリット/欠点2つとメリット3つ!搭載車種も紹介直噴ターボとは?メリット3つとデメリット4つ!カーボンや耐久性のトラブル・不具合が多発?!仮に、ゴルフに一般的な1.5LエンジンとCVTを搭載したとしたら、およそ50万円ほどは価格が抑えられるでしょう。するとその価格差は30万円程度。
確かに国産車に比べ豪華なゴルフですが、装備を考慮すればVW ゴルフがそれほど高級な価格設定とは思えなくなります。
VW新型アルテオンとトヨタ クラウンアスリートあたりを比べてもそれは変わりがありません。(クラウンアスリートの詳細は以下の記事をご参照ください。)
クラウンアスリートの試乗レビュー!乗り心地の感想・インプレッション!かつてはさらに大きな価格差がありましたが、自動車販売のグローバル化が進む現代においては、物質的な価格差は少なくなってきています。
それにともない、日本で輸入車を購入する障壁が低くなってきているのも事実です。
なおカローラアクシオについては以下の記事で詳しく解説しています。詳細が知りたい方はこちらもあわせて参考にしてみてください。
カローラアクシオの試乗レビュー!乗り心地の感想・インプレッション!フォルクスワーゲンのドイツやその他海外での位置付け
フォルクスワーゲンは海外ではどういう位置付けなのでしょうか。
今度はグローバルな視点から解説します。
外国に行くとついつい気になるのが走っている車のメーカー。#スウェーデン だから #VOLVO 一色かと思いきや約半数程。3割程度が #VW だった。#トヨタ #日産 はかなり健闘している印象。 #BMW も多い。
後は米仏車は目立たず、韓国車がイタリア車より多かった。— michiyuki (@michiyuki_mw) 2017年9月8日
世界トップシェアを誇るフォルクスワーゲンだけに、実際に走っている台数も一番多いことになります。
フォルクスワーゲンが高級車メーカーであれば、世界中の大半の人が金持ちということになってしまうので、やはりフォルクスワーゲンは大衆車というべきでしょう。
ただし、ドイツで20,910ドル(日本円で約220万円)で販売されるゴルフが低価格車というわけではなく、カローラと同じくあくまでスタンダード車。
カローラの下にヴィッツがあるように、ゴルフの下には、VW ポロ、UPがラインナップされます。(ポロの詳細は以下の記事をご参照ください。)
VWポロのフルモデルチェンジ!新型の内装や画像を公開【東京モーターショー2017】具体例を挙げると、フォルクスワーゲンは南米でトップシェアを誇っていますが、主力となるのは現地モデルのVW ゴルという車(ゴルフではなくゴル)。
エタノール燃料でも走行可能なフレックス燃料対応とし、排気量1.0Lのベーシックモデルで約105万円ほどと、世帯年収が約40万~120万円のブラジル国民に配慮した車づくりもすすめています。
トヨタも2018年後半からブラジル新設する工場で、現地向けのヤリスを生産する予定ですが、ブラジルでのトヨタの知名度はまだ低いのが現状。
フォルクスワーゲンはその規模を活かし、新興国を含む世界全体の需要をみたす大衆車メーカーとして一歩先を進んでいます。
フォルクスワーゲンは洗練された大衆車
フォルクスワーゲンは名実ともに、世界を代表とする大衆車メーカーであり、フォルクスワーゲンのつくる車は大衆車です。
高級車に分類される車は、グループ傘下のアウディが担当し、さらに上の超高級車はやはりグループ傘下のベントレー、ブガッティがあるため、フォルクスワーゲンは高級車をつくる必要がないということになります。(関係の詳細は以下の記事をご参照ください。)
フォルクスワーゲンの傘下ブランド・会社の一覧!ポルシェやランボルギーニも?ただし、アウディ、ベントレー、ブガッティ、またスーパースポーツメーカーのポルシェには、それぞれブランド独自の理念があるため、それぞれのブランドで表現できない高級車が必要になれば、フォルクスワーゲンが自らのブランドで高級車をつくることでしょう。
「良い車はドアの開け閉めで分かる」「車好きなら一度はドイツの車に乗れ」
そういわれるように、ドイツを代表する大衆車フォルクスワーゲンは、ドイツの土壌と気質と歴史から生み出される、一級の精密機械とも呼べる素晴らしい車。
それは高級車と認識されても、あながち間違いではないほどに洗練された大衆車なのです。
フォルクスワーゲンの車は、誰もが認める高級車ではありませんが、車の本質というものを味わいたい方には、ぜひおすすめできる車です。
これからフォルクスワーゲン車を買おうと思っている方は、以下の記事もぜひあわせてご覧ください。購入の参考になりますよ。
フォルクスワーゲンは故障が多い?壊れやすいのか故障率をもとに解説!フォルクスワーゲンとトヨタの関係は?提携してる?撤退した?わかりやすく解説!