現在は販売されていないホンダ「エリシオン」ですが、中古市場ではいまだに人気が衰えていないといいます。
「スポーティ&ダイナミック」なスタイリング、贅沢な「室内空間」、ミニバンとは思えない「軽快な走り」はさることながら、最大の理由は、上級ミニバンのなかで圧倒的に「廉価」という点につきるでしょう。
同じ程度の車体でも、エリシオンは100万円ほど相場が安いですからね…。
というわけで今回は、中古市場で人気沸騰中なエリシオンについて、「年式の違い」にスポットを当てて解説をしていきたいと思います。
マイナーチェンジで変更された点について、「前期型」「後期型」における違いを徹底的に分析してみましたよ。どうぞご覧ください。
エリシオンの前期と後期の共通点
まずは、マイナーチェンジ前後でも共通している部分について解説しましょう。
マイナーチェンジを5回も!?
通常、マイナーチェンジの間隔は3~4年程度で、変更を境目に「前期」「後期」という呼ばれ方をします。
ところが、エリシオンは5回にもわたってマイナーチェンジが行われたので、明確に区分することが難しい車種なんです。
販売期間は2004年からの8年間ですから、かなり頻繁に改良されていますよね? 一部のホンダファンからは、エリシオンの各年式をこのような通称で呼ばれているようです。
年表 | 時期 | モデル通称 |
販売開始 | 2004年5月13日 | 前期型 |
MMC1回目 | 2005年9月29日 | 中期型 |
MMC2回目 | 2006年12月21日 | 後期型 |
MMC3回目 | 2008年12月22日 | 後期改良型 |
MMC4回目 | 2009年9月3日 | |
MMC5回目 | 2010年11月18日 |
ただし、それほど大きな変更点があるわけではないので、「ビッグマイナーチェンジ」にあたる2回目(2006年)を区切りとして「前期型」「後期型」と区分するのが一般的な認識でしょう。
共通点① 基本コンセプト
マイナーチェンジとはいわゆる「商品改良」ですから、大きな路線変更はしません。そのため、開発段階で打ち立てられたコンセプトは全モデルを通して共通しています。
ずばり、そのコンセプトとは「新世代プレミアム8シーター」。
エリシオンが登場したのは、トヨタ「アルファード」や日産「エルグランド」が大ヒットしていた時期です。上級ミニバン市場に対抗するための策ということですね。(アルファード、エルグランドの詳細は以下の記事をご参照ください。)


エリシオンの特徴は
- 上質なスタイリング
- 優れた乗り心地
- 贅沢な室内空間
という3点に加え、ライバル車よりも廉価だったことが挙げられます。
価格はモデルチェンジにともなって若干変動しましたが、クルーザーをモチーフにした「スポーティ&ラグジュアリ」なスタイリングは全モデルに共通していました。
共通点② 搭載エンジン
マイナーチェンジということで、搭載しているエンジンもすべて共通です。
エリシオンは「2.4L」「3.0L」の2種類のエンジンラインナップとなっています。それぞれの性能は以下をご覧ください。
項目 | 諸元 | |
エンジン型式 | K24A | J30A |
種類 | 水冷直列4気筒 DOHC16バルブ | 水冷V型6気筒 SOHC24バルブ |
最高出力 | 160ps/5500rpm | 250ps/6000rpm |
最大トルク | 22.2kg・m/4500rpm | 31.5kg・m/5000rpm |
排気量 | 2354cc | 2997cc |
内径×行程 | 87.0mm×99.0mm | 86.0mm×86.0mm |
タンク容量 | 70L | 70L |
ガソリン | レギュラー | ハイオク |
燃費 | 10.2km/L | 9.5km/L |
※直列4気筒、V型6気筒、エンジンの詳細は以下の記事をご参照ください。


小排気量モデルは「K24A」型エンジンを搭載しており、どの回転域でも平均的に力強いトルクを発揮します。
大排気量モデルは、「J30A」型エンジンを搭載し、走行状況に応じて「6気筒燃焼」と「3気筒燃焼」を切り替えることで、クラストップの「高出力・高トルク・低燃費」を実現しました。
また、全モデルにおいて国土交通省の定める「平成17年度排出ガス基準75%低減レベル(★★★★低排出ガス車)」認定を受け、「平成22年度燃費基準+5%レベル」も達成しています。
価格が低いにも関わらず、アルファード・エルグランドと遜色ない「運動性能」に加え、優れた「燃費性能」を兼ね備えていることが人気の秘訣でした。(アルファード、エルグランドの燃費の詳細は以下の記事をご参照ください。)


共通点③ 基本構造
もちろん、車としての基本構造も共通しています。
全モデルに共通する「優れた機能性」を解説しましょう。
独自の低床プラットフォーム
エリシオンは、新開発した独自の「低床プラットフォーム」を採用しています。重心が低い位置にあるので、大柄なボディからは想像できないほどの安定感を実現しました。
足回りも絶妙なセッティングが施され、ミニバン特有のゴツゴツした感触はまったく感じさせません。
また、乗り心地へのこだわりは静粛性にも現れています。
3.0Lモデルの「J30A」型エンジンは、6気筒と3気筒を使い分ける「気筒休止エンジン(VCM)」と呼ばれる特殊なものです。性能は高いものの、気筒休止時に音や振動が発生することが欠点とされていました。
この欠点を補うため、「液封エンジンマウント」によるアクティブ制御、「消音スピーカー」によるノイズの対処など、エリシオンにはボディ側にあらゆる工夫を施されています。
結果として、「運動性能」「燃費性能」を高いレベルで発揮しつつ、「静粛性」も両立させることに成功しました。
居住性抜群の室内空間
フロア構造をより平面へ近づけたプラットフォームによって、エリシオンは広い室内空間を確保しています。
室内空間にゆとりが生まれたことで、上質な3列シートを配置することができました。ラッケージルームも、スマートな外見からは予想できないくらいの容量を確保しています。
低床に設計されているので、大開口の両側スライドドアと相まって、2列目への乗り降りを容易としています。
「チップアップ&スライド機構」により、シートを動かして3列目への移動もスムーズ。この機構によりシートは回転もできるので、対座式にシートアレンジすることも可能。
この優れた「居住性」と「使い勝手」も、全モデル共通で備わっています。
もしエリシオンを買おうと考えているなら、あわせて正しい値引き交渉のやり方も覚えておくといいですよ。
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エリシオンの前期と後期の違い
それでは、マイナーチェンジで変更されたポイントを解説していきたいと思います。
先ほど説明した通り、2006年のマイナーチェンジを区切りとして「前期型」「後期型」と扱っておりますので、ご了承ください。
違い① ランプ類のデザイン
まずは、マイナーチェンジ前後での変更点がわかりやすい「ランプ類」から解説しましょう。
- ヘッドライト形状を変更
- テールランプのガーニッシュ変更
- フォグランプ形状を変更
このように、ランプ類3点はすべてデザインが変更となりました。ざっくり言うと、前期型は「丸みを帯びたデザイン」、後期型は「角ばったデザイン」へというイメージです。
エリシオンは長い釣り目のヘッドライト形状をしていますが、前期型は角がやや丸く、小ぶりなデザインとなっています。一方、後期型は角が強調されて、少し大き目なデザインなデザインです。
同様に、フォグランプも前期型は丸い形状をしているのに対し、後期型は横に長い「楕円形」をしています。そのため、後期型はエッジの効いたフロントマスクになっており、キリっとした印象を受けますね。
テールランプは、前期・後期で形状は共通であるものの、レンズ間のガーニッシュが異なります。
前期型はレンズが左右独立したタイプですが、後期型は左右のレンズ間に、クリアのガーニッシュが装着されています。レンズと同色なので、テールランプが一直線につながったデザインになっているんですね。
そのため、リアビューを見れば前期か後期かすぐわかります。ガーニッシュにはリフレクターが埋め込まれているので、夜間でも後ろから見れば判別が可能。
好みが分かれるポイントなので、一体型デールが嫌いな人は、ガーニッシュをボディ同色に塗りつぶすこともあるようです。
違い② ボディ形状
ボディ形状は大まかに共通していますが、細かい部分の形状が微妙に異なります。
- フロントバンパーの形状
- ラジエーターグリルの形状
- リアバンパーの形状
- ルーフエンドの形状
ボディ形状で見分けるポイントは、この4点です。前期型はスタンダードな形状をしてますが、後期型はエアロ感が増し、スポーティな印象を受けます。
まず、フロントバンパーですが、バンパー下の”張り出し”が強調され、よりエアロっぽくなりました。
フロントマスクで一番わかりやすいのは、グリル形状ですね。
前期型は「別体式グリル」を採用しており、バンパー部とボンネット部で分かれています。エンブレムはグリル上部に配置。
対して後期型は「一体式グリル」となっており、全体的に大きい形状をしています。ヘッドライトとの間隔も狭くなり、エンブレムの位置も中央に配置されているので、前期・後期でまったく異なるデザインです。
続いて、リアのエクステリアですが、前期型はルーフエンドが丸みを帯びていますが、後期型はルーフスポイラーが備えられています。
前期型はリアバンパー下も丸いデザインですが、後期型はフロント同様、”張り出し”感が増したデザインです。
そのため、フロント・リア共に、後期型の方がスポーティでダイナミックなルックスに仕上がっていますね。
違い③ インテリアの意匠
- 内装色にブラックを追加
- HDDナビをオプションに追加
内装については、オプションが追加されて、より豪華な選択ができるようになりました。
前期型の内装色は「グレー」「キャメル」の2色のみでしたが、後期型はこれに「ブラック」が増えています。さらにナビが充実しているので、インテリアにこだわりたい人にはうれしいところです。
違い④ グレードのバリエーション
前期と後期では、グレードの展開も大きな違いがあります。詳細はこちらのグレード一覧表をご覧ください。
グレード一覧表
年式 | 2.4Lモデル | 3.0Lモデル |
前期 | X type G type Gプレミアム G AERO HDD NAVIエディション M type | VZ type VX type VG type VGプレミアム VG HDD NAVI AEROエディション |
後期 | G type Gエアロ type G エアロ HDDナビスペシャルパッケージ G エアロ HDDナビスペシャルパッケージ MX type LX type LX HDDナビスペシャルパッケージ | VG type VGエアロ type VG エアロ HDDナビスペシャルパッケージ |
パッと見てわかるのは、エアログレードの有無ですね。前期型はスタンダートなフォルムをしており、エアロを強調したグレードは用意されていません。
一方、後期型にはエアログレードが豊富に用意されていますね。後期型はよりスポーティさが強調されたモデルですが、外観だけでなくグレードにも表れているのです。
HDDナビのパッケージも積極的に採用していますが、これは2005年のマイナーチェンジから導入されたました。マニアに言わせれば中期型からの採用ということですね。
さらに、後期型では3.0Lモデルのグレードが減っていいますが、これには理由があります。
エリシオン プレステージの登場
2006年に後期型となり、「スポーティかつダイナミック」なスタイルに磨きがかかったエリシオンですが、変更点はこれだけではありません。
3.0Lと3.5Lの2種類からなる最上級モデル、「プレステージ」が登場したことも大きなポイントといえます。3.0Lグレードが減ったのは、これが理由だったんです。
プレステージはグレードというよりも、エリシオンから派生した「上級車種」というポジションです。イメージとしては、「クラウン マジェスタ」のような感覚でしょうか…。(クラウンマジェスタの詳細は以下の記事をご参照ください。)

今回はプレステージについては深く言及しませんが、このモデルはとにかく人気がありました。実際、エリシオンが廃されたのは2012年のことですが、プレステージは2013年まで販売されていましたからね。
そのせいか、おそらくエリシオン プレステージのことを「後期型エリシオン」だと勘違いしている人も結構いると思います。
前期と後期をどっち買えばいいか
さて、上級ミニバンの中でも手ごろな価格が魅力のエリシオンですが、現在は前期型のタマ数がかなり減っています。後期型の販売期間が6年なのに対し、前期型は3年しか販売されていませんからね。
「タマ数の多さ」「エクステリアのかっこよさ」を考えると、やはり後期型モデルの購入をおすすめしたいところ。私のような「インテリアはブラック派」の人はなおさらです。
ただし、前期型のエクステリアも評価は非常に高いので、程度のいい車体に出会えたら検討する価値はありますね。
エリシオンについては以下の記事でも取り上げているので、興味のある方はこちらもあわせてご参照ください。
