「たぶん、車に興味ない人に聞いたら、ワンエイティって読めませんよね。」
姉妹でいえば、姉にあたるシルビアよりもヤンチャ娘で、そこがまた魅力的。
10年弱しか販売されていませんが、20年経った今でも多くの車好きから支持される、まさに名車。
今回は、その180SXの「年式の違い」を解説していきたいと思います。
普通の車であれば、ヘッドライトの形だとか、目に見える部分だけを追求してしまうもの。
しかし180SXは、1世代だけであるゆえに「前期」「後期」の違いを、奥の奥まで確かめたくなります。
年式のごとの違いについて、徹底的に吟味してみたので、次に180SXを考えている方は、かなり参考になると思いますよ。
180SXの前期と中期、後期の共通点
180SXは、5代目シルビア(S13型)の輸出仕様車「240SX」を、日本で乗りやすい規格に落とし込んだモデル。そのため、シルビアの姉妹車として有名です。
販売期間は1989年~1998年の、わずか10年弱でした。90年代といえば、日産が経営難を抱えていた時期ですからね。2度のマイナーチェンジを経るものの、フルモデルチェンジをせず一代でその幕を閉じることになったのです。
- 1989~1991年:前期型(RS13・KRS13)
- 1991~1996年:中期型(RPS13・KRPS13)
- 1996~1998年:後期型(RPS13)
各モデルは91年、96年のマイナーチェンジで区別されます。共通する部分を紹介しながら、180SXという車について解説していきましょう。
シャシー構造は全モデル共通
トランスミッション、サスペンション、フレームなど、シャシーはすべて同じ構造になっています。
ボディタイプ | 3ドアクーペ |
駆動方式 | FR |
全長×全幅×全高 | 4,520×1,690×1,290mm |
室内長×室内幅×室内高 | 1,650×1,430×1,065mm |
ホイールベース | 2,475mm |
トレッド前/後 | 1,465/1,460mm |
車両重量 | 前期:1,170kg 中期:1,190kg 後期:1,220kg |
これらは標準グレードの数値です。グレードによって、寸法や重量など若干変動しますが、すべてFR(後輪駆動)で、5MTと4ATの3ドアクーペ。
余談ですが、ネームの「SX」という言葉には、ミドルクラスクーペという意味合いがあります。
北米市場を狙った日産のクーペラインナップには「ZX」「SX」「NX」という3つのネームがあり、240SXは中核モデルとして販売されていました。
この理念は一貫されていたので、2度のマイナーチェンジを受けましたが、基本的なコンセプトや性能などは変化していません。
デザインはほとんど共通
ハンドルとシート、空調類など、装備に関わる部分は改良が施されていますが、それを除けばインテリアは共通のデザインになっています。
同様に、ホイールやエアロパーツ、灯火類のデザインは異なりますが、他は共通のエクステリアを採用。
エクステリアにおいて、180SXらしさが漂うのは、
- リトラクタブル・ヘッドライト
- リアウィンドウ
- テールランプのシルエット
の3点でしょう。
リトラクタブル・ヘッドライト
NSXやRX-7など、往年のスポーツカーに見られるリトラクタブル・ヘッドライト。180SXも、その代表的な車種に数えられます。
シルビアを北米で販売するとき、ヘッドライトをリトラクタブル形状に変更したのは、こんなワケがあります。
「当時のシルビアでは、ヘッドライトの高さがアメリカ規格に合わなかった…」
結果として生まれた240SXのエクステリアは、180SXとして日本にも登場するのです。シルビアと区別するため、マイナーチェンジをしても一貫してリトラクタブルでした。
リアウィンドウ
あまり注目しないと思いますが、180SXはリアウィンドウも特徴的。なんとハッチバック形状のリアウィンドウは、全面ガラスで覆われているのです。
もちろん、内側にはフレームが這っていますが、外から見ると、サイドからリアにかけてガラスで包まれているように見えます。なかなか斬新ですよね?
このリアウィンドウも、3モデルで共通点といえます。
テールランプ
180SXは後ろ姿もかっこいいですよね。水平につながったテールランプが特徴的。個人的にはリアビューの方が好きだったりします。
RX-7や、あとは「ダッヂ チャージャー」とかに見られるテールランプ形状。
このテールのシルエットも、共通するデザインです。
もし180SXの購入を考えているなら、値引き交渉の正しいやり方を覚えておくといいですよ。
このやり方を知らないと最大60万円以上も損しますよ。詳しく知りたい方は、下記の『たった1分で車を60万円値引きできる裏技』のページをご覧ください。 たった1分で車を60万円値引きできる裏技!安く購入する秘密のテクニックとは?!180SXの前期と中期、後期の違いを解説
それでは次に、3モデルの異なる点を解説していきたいと思います。マイナーチェンジというくらいですから、けっこう改良されているのです。
前期型の特徴
初代180SXは、シルビアの姉妹車でありながら、「ターボモデルのみラインナップする」などして、スポーツ志向の強いモデルとして位置づけられていました。
スポーツカーに憧れる若者に大人気で、過激に走る人が後を絶たず、保険料が高い車になってしまったのは有名な話です。
なおターボエンジンについては以下の記事で詳しく解説しているので、興味のある方はこちらもご参照ください。
ターボエンジンとは?仕組み/構造は?メリット2つとデメリット4つ!前期型のみの「CA18」エンジン
前期型は、中・後期型とは異なる、「CA18 DET」エンジンが採用されています。
エンジン型式 | CA18DET |
最高出力 | 175ps(129kW)/6,400rpm |
最大トルク | 23.0kg・m (225.6N・m)/4,000rpm |
総排気量 | 1,809cc |
このエンジンは、名前のとおり排気量1809cc。イメージとしては、240SXのエンジンをダウンサイジングした感じです。(ダウンサイジングターボの詳細は以下の記事をご参照ください。)
ダウンサイジングターボとは?デメリット/欠点2つとメリット3つ!搭載車種も紹介中期型からは1998ccなので、本当の意味で「180SX」なのは、前期型だけなんですね。ちなみにエンジンのヘッド部が黒いため、前期型は「黒ヘッド」とマニアたちに呼ばれています。
インテリアの特徴
デザインは中期型とさほど変わらないため、前期型の外見的な特徴はそれほどありません。強いて挙げるなら、以下の2点でしょう。
- フロントバンパーのナンバープレート上に、ダミーのダクトが2個ついている
- シートがヘッドレスト一体型
「バンパーのダクトか、ヘッドレストの形状を見れば、前期型を見た目で判断することができます」
グレード
前期型は1989年~1991年に販売されました。カラーバリエーションは7色で、グレードは以下です。
- タイプⅠ:標準グレード
- タイプⅡ:上位グレード
- ハイキャスⅡ:マルチリンクサスペンション、4輪操舵システムを採用したスポーツグレード
中期型の特徴
180SXは、1991年と1996年にマイナーチェンジが行われました。
デザインに関しては変更点が少ないですが、そのかわり機能性が大きく改良されました。中期型が一番ヒットしたので、販売台数も多いです。
後期型と共通の「SR20」エンジン
中期型から「SR20 DET」エンジンが搭載されるようになります。DOHC16バルブの、2000ccターボ仕様。(DOHCエンジンの詳細は以下の記事をご参照ください。)
DOHCエンジンとは?仕組み/構造は?ツインカムとの違いとは?!エンジン型式 | SR20DET |
最高出力 | 205ps(151kW)/6,000rpm |
最大トルク | 28.0kg・m (274.6N・m)/4,000rpm |
総排気量 | 1,998cc |
見てわかるとおり、前期型よりも性能が上がっています。
エンジンのヘッド部が赤いことから、前期型と区別して「赤ヘッド」と呼ぶことも。他には「SR」というニックネームも使われます。
前期型とは装備が違う
エンジン排気量が大きくなるのですから、駆動系や制御系も強化する必要がありますよね?中期型はボアアップ(排気量増加)に合わせ、いくつかの装備に手が加えられました。
- リアブレーキの容量アップ
- ABSの標準装備化
- デファレンシャルギアの仕様変更
- ドライブシャフトの仕様変更
- タイヤ幅の変更(195mm→205mm)
これらは、あくまでも「強化」なので、さほど大きな変更ではありません。実際、走っていても大きな差は感じないでしょう。見た目にもわかりませんしね。
ただし、もしドリフト目的での購入を考えているのなら、デフ(ディファレンシャルギアの意)の規格には気をつけましょう。
前期型はR180ですが、中・後期型はR200という規格です。
フランジの穴数も5穴→6穴に変更されているので、チェックしてくださいね。そうでないと、交換するときに面倒なことになってしまうので…。
インテリアの変更点
これも細かい点ですが、前期型とは若干インテリアの違いがあります。1度目のマイナーチェンジでは以下の点が変更されました。
- ハンドル:形状を変更(エアバックを装備)
- エアコン:操作方法と表示を変更
- シート:調整式デザインを採用
- シートベルト:後部座席のシートベルトを3点化
- ウィンドウ:プライバシーガラスを採用
一番最初に買った車は日産の「180SX」でした。
いろんな場所の走行会とか出まくった結果、16万kmも走らせました。その時の写真がこちら。中期型のシャンパンゴールド。#180SX#RPS13 pic.twitter.com/VyVYwul4WW— まーずP (@mars180sx) 2018年4月9日
排気量は小さかったですが、前期型はスポーツ要素が強いモデルでした。シートがヘッドレスト一体型というのは、これを表していますよね。
その点中期型は、インテリアが充実して、よりデートカーっぽくなった気がします。とはいっても、十分スポーティですが。
グレード
中期型は1991年~1994年式のモデルと、1994年~1996年式のモデルで、仕様が少し異なります。94年までは前期と同じく、タイプⅠを標準とした以下のようなラインナップでした。
- タイプⅠ:標準グレード
- タイプⅡ:上位グレード
- スーパーハイキャスパッケージ:マルチリンクサスペンション、4輪操舵システムを採用したスポーツグレード
ところが、日産の経営難が影響し、94年に工場を移転されて生産性が落ちてしまいました。ラインナップを見直しを図った結果、販売されるグレードが一通り変更されたのです。
- タイプR:標準グレード
- タイプX:上位グレード
- スーパーハイキャスパッケージ:マルチリンクサスペンション、4輪操舵システムを採用したスポーツグレード
- タイプX ニスモ:NISUMO製の装備を施されたスペシャルグレード
後期型の特徴
180SXの最終型となる年式のモデルです。2度目のマイナーチェンジでは、機能的な面に関してはあまり手は加えられませんでした。車としての内容は、中期型と同程度です。
しかし、エクステリアデザインを大きく変更し、よりスポーツカーらしい外見となって登場。さまざまな事情から生産終了こそしましたが、今でも根強いファンがいます。
NAモデルをラインナップ
これまで、180SXはターボモデルのみのラインナップでしたが、後期型になって「タイプG」「タイプS」というNA(自然吸気エンジン)モデルも取り入れられました。(NAエンジンの詳細は以下の記事をご参照ください。)
NAエンジン(自然吸気エンジン)とは?メリット5つ!音が最強の魅力?!エンジン型式 | SR20DE |
最高出力 | 140ps(103kW)/6,400rpm |
最大トルク | 18.2kg・m (178.5N・m)/4,800rpm |
総排気量 | 1,998cc |
やはり、ターボモデルと比較すると、パワー不足感は否めませんね。しかし、当時は環境問題や、売り上げ低迷などもあり、ラインナップを広げる必要があったのでしょう。
とはいっても、180SXを乗りたい層にはターボばかりが売れてしまうので、それほど世に出回りませんでした。ある意味で、希少価値の高いモデルかも。
ターボについては以下の記事もございますので、こちらも参考にしてみてください。
ターボエンジン音の特徴!「プシュー」「キーン」音の正体とは?エクステリアを大きく変更
フロントバンパーがやや大型化されました。それに伴い、リトラクタブル部も若干形状を変更。ウィンカーとフォグランプの形状もスタイリッシュに仕上がっています。
ホイールのデザインもアルホイールに変更。スカイライン(R33)やシルビアの一部グレードと、共通の純正ホイールを装備。
後期型はサイドやリアのスポイラーを、よりスポーティなデザインに変更し、ワイド感が強調されています。純正の状態なら、ボディラインは後期型が一番かっこいいと思います。
テールランプのシルエットは同じですが、レンズの表面にスカイラインに似た4灯デザインを採用。夜になると、4個の光源が光る造形になりました。
「テールランプの造形を見れば、後期型を判断できますね」
シルビアにはNA(自然吸気エンジン)モデルがラインナップされているものの、180SXはターボモデルのみという強気なコンセプトでした。
なおターボ車をこれから買おうと思っている方は、以下の記事も参考にしてみてください。
ターボ車の注意点4つ!乗り方から手入れ/メンテナンスまで解説!グレード
1996年~1997年式モデルは以下のグレードがラインナップされています。NAモデルの標準グレード「タイプG」は、97年式以降に加わり、98年に生産終了を迎えます。
- タイプS:NAモデルの上位グレード
- タイプR:標準グレード
- タイプX:上位グレード
- スーパーハイキャスパッケージ:マルチリンクサスペンション、4輪操舵システムを採用したスポーツグレード
180SXを買うなら中期か後期がおすすめ
180SXはドリフトに興味のある方におすすめ。
「ドリフトがしたい!」
「リトラクタブルが乗りたい!」
「日産のFRが乗りたい!」
という方には、ぜひ乗って頂きたいです。パーツも豊富で、なんといっても安いですからね。友人の話では、インプレッサの半分の額でフルエアロ化できたようですし。
買うなら、中期型か後期型をおすすめしますよ。やっぱりパワーが違いますからね。中期と後期では、正直カスタムしたら違いなんてないと思います。
個人的にはタマ数の多い中期型を狙ってもらいたいですが、少しでも新しいモデルが欲しいなら後期型でもいいと思います。
180SXに搭載されているターボについては、以下の記事もございます。こちらもあわせて参考にしてみてください。
ターボ車のエンジンオイルの交換時期は?おすすめのオイルはこれ!ターボエンジン車は燃費が悪い?燃費向上は走り方次第で可能?!