トヨタ「FJクルーザー」は国内で、2010年12月〜2018年1月まで新車販売されていた大型SUVです。
無骨さとお洒落さを兼ね備えたFJクルーザーには魅力を感じる人も多いはずです。
そんなFJクルーザーをはじめとした、大型SUV(四駆)には稀に3ナンバーではなく、1ナンバーを装着した車が見受けられます。
ここではFJクルーザーの1ナンバー登録事情について徹底的に解説していきます。
FJクルーザーを1ナンバーにできるか?
そもそも本当にFJクルーザーは1ナンバー登録することができるのでしょうか。実際にFJクルーザーを1ナンバー登録した車両は存在しています。
中古車情報サイトで数が少ないものの、実際に販売されているものを確認することができます。
もちろん、1ナンバー登録するには複雑な条件等がありますが、構造変更されて無事にそれらの条件を満たすことで1ナンバー車として車検に合格していることは間違いありません。
1ナンバー化はしたほうがいいのか?
よく「維持費が安くなるから1ナンバーが良い」と耳にしたりしませんか?
果たしてそれは本当なのでしょうか。
1ナンバーにすることでどのようなメリットやデメリットがあるのか、結果1ナンバーに変更するのと3ナンバーのままどちらがお得なのか、徹底的に解説します。
1ナンバー化によるメリット
1ナンバーは維持費が安く済むという意見は、車にかかる税金が3ナンバーと比較して、大幅に安くなるところからきています。
具体的に解説していきましょう。
自動車税が安い
3ナンバーの普通乗用自動車の場合、自動車税の税額は排気量0.5L毎に区分されています。一方で、1ナンバーの貨物自動車になると最大積載量によって税額が区分されています。
また、グリーン化特例により新車登録から13年を超える車については重課され増税となります。
この自動車税には、1ナンバーと3ナンバーで税額に大きな差があります。
1ナンバーの方が安く済むのですが、新車登録13年を超えた際の増税割合も1ナンバーの方が少なく済みます。
- 1ナンバー…10%割り増し
- 3ナンバー…15%割り増し
2018年現在、初期ロットのFJクルーザーでも13年を超える車両はありませんが、ここでは参考までに「13年超え」の場合の自動車税額についても紹介します。
4LのV6エンジンを搭載するFJクルーザーの自動車税は、3ナンバーの場合以下の通りです。(エンジンの詳細は以下の記事をご参照ください。)
V6エンジンの特徴!どんな音?搭載車を日本車/外車の車種からそれぞれ紹介!- 13年未満…66,500円
- 13年超え…76,400円
1ナンバーの場合は乗車定員によって2通りの税額となります。
4名以上の乗車が可能な貨物自動車は、貨客兼用車となり、同じ1ナンバーのFJクルーザーでも乗車定員2名の場合と比べて割高になります。
- 13年未満…8,000円
- 13年超え…8,800円
- 13年未満…16,000円
- 13年超え…17,600円
FJクルーザーは1ナンバーの場合でも5名乗車のままが多いので、後者を参考にしていただければ良いでしょう。
その場合、1ナンバーと3ナンバーとで新車登録から13年未満の車で年間50,500円もの差があります。
このように排気量が大きいFJクルーザーは、自動車税の負担も大きく変わることが分かります。
重量税が安い
重量税は車検時に納付する税金です。
1ナンバーの場合は1年毎の車検なので毎年納付することになり、3ナンバーは2年毎の車検なので2年に1回の納付となります。
1ナンバーの場合は車両総重量500kg毎に区分され、3ナンバーは車両重量500kg毎に区分されます。
「車両重量」はその名の通り車そのものの重量を指し、「車両総重量」とは乗員1名を55kgとして、定員乗車した時の乗員全員の重さと車両重量を合わせた重量を指します。
FJクルーザーの場合、通常の3ナンバー登録を前提とした場合の新車での諸元表は以下の通りです。
- 車両重量「1,940kg」
- 車両総重量「2,215kg」
この数値から、一般的に3ナンバーの場合は「〜2,000kg」の区分、1ナンバーの場合は「〜2,500kg」の区分での重量税となります。
少しややこしいですが、FJクルーザーの場合は概ね以下の税額となります。
- 13年未満…32,800円
- 13年超え…45,600円
- 18年超え…50,400円
- 13年未満…9,900円
- 13年超え…12,300円
- 18年超え…13,200円
3ナンバーに合わせて2年単位で見ると13年未満で13,000円の差があり、18年を超えると24,000円の差があります。
自動車税も重量税も年数が古くなればなるほど、1ナンバーと3ナンバーの税額の差は広がることになります。
なおこれをいったら元も子もないですが、税金や維持費を気にするよりも、車購入時の値引き交渉のやり方を気にした方が経済的ですよ。
このやり方を知らないと最大60万円以上も損しますよ。詳しく知りたい方は、下記の『たった1分で車を60万円値引きできる裏技』のページをご覧ください。 たった1分で車を60万円値引きできる裏技!安く購入する秘密のテクニックとは?!1ナンバー化によるデメリット
維持費の面で言うと逆にデメリットとなる項目もあるので注意が必要です。
ということで、1ナンバー化によるデメリットも具体的に解説しましょう。
自賠責保険料が高い
自賠責保険は基本的に、車検毎に更新のタイミングを迎えます。
自賠責保険料は1ナンバーの方が割高です。
- 3ナンバー…25,830円 / 24ヶ月
- 1ナンバー…23,970円 / 12ヶ月
※2017年4月改定の自賠責保険料です。
同じ24ヶ月で比べると、1ナンバーの方が倍近く高い保険料を払うことになりますね。
任意保険料が高い
1ナンバーは普通貨物自動車なので業務使用と判断され、保険の適用が「家庭用」ではなく「業務用」となります。
家庭用よりも業務用の方が保険料率は高くなります。
- 保険等級の継承ができない
- 運転者年齢条件割引が適用されない
さらに上記のような理由もあり、どうしても1ナンバーの任意保険料が高くなってしまいます。また、車両保険が3ナンバーより高くなる傾向にあります。
FJクルーザーはまだ新しい車なので、車両保険を付帯するユーザーは多いでしょう。
ちなみに運転者年齢条件割引が適用されないことで、25歳までの若い年齢のドライバーにおいては、通常の3ナンバー車両で任意保険に加入した場合より保険料が安くなる場合があります。
毎年車検を受けなければいけない
毎年、車検を受ける手間や費用を考えるとこれも1ナンバーならではのデメリットとなります。
ただディーラーや専門店できちんと車検整備しているのであれば、車自体は安心して乗り続けることができるでしょう。
一方で車検整備費用を浮かしたいという人は、陸運局に自ら車を持ち込んで車検を通す「ユーザー車検」という方法を取る人もいます。
必ず必要な法定費用に書類代数十円と検査費用1,800円をプラスするだけで、何の問題もなければ検査に合格することができます。
手間かもしれませんが、ディーラーや専門店で車検を受けるより、数万円単位で節約することができます。
しかし12ヶ月の法定点検が実施されないことになるので、必要な整備を怠った状態でユーザー車検を受け続けることはおすすめしません。
節約のためにとユーザー車検を考えているのであれば、2〜3回に1回ほどに留めておくのが無難でしょう。
高速道路料金が中型車区分になる
同じ車でも3ナンバーの場合の高速道路料金区分は「普通車」で、1ナンバーだと「中型車」になります。
通常、中型車の料金は普通車の1.2倍ほど割高になりますが、休日割引が適用されないので土日・祝日は更に割高になります。ちなみに休日割引の割引率は通常料金の30%です。
1ナンバーと3ナンバーの維持費を比較
ここまで、1ナンバーのメリット・デメリットを解説してきましたが、結局本当に1ナンバーにする方が維持費が安く済むのでしょうか。
新車登録から13年未満のFJクルーザーを例に、以下の維持費の2年間分を計算してみます。
- 自動車税
- 車検時の費用
- 自賠責保険料
- 自動車重量税
- 法定点検費用・定期交換部品費用・車検代行費用として一律5万円に設定
- 自動車税…66,500円×2年
- 自賠責保険料…25,830円
- 自動車重量税…32,800円
- 車検その他費用…50,000円
合計241,630円
- 自動車税…18,000円×2年
- 自賠責保険料…23,970円×2年
- 自動車重量税…9,900円×2年
- 車検その他費用…50,000円×2年
合計203,740円
差額は37,890円となり、確かに1ナンバーの方が維持費が安く済むことに間違いありません。
実際にはここに1ナンバーの方が高くなる任意保険料と高速道路料金が加わるので、差額はさらに小さくなります。
しかし、2年に1度ユーザー車検で車検を通すことができるのであれば、「車検その他費用」として計算した分の約5万円が更に節約できるので、その差額は87,890円となります。
ユーザーの加入する保険内容や高速道路の利用頻度にもよりますが、これだけの差があれば1ナンバーの方が維持費が安く済む人が多くなるでしょう。
1ナンバー登録する人が抑えるべきポイント
実際に1ナンバー化はした方が良いのでしょうか。
1ナンバー登録する方法の詳細はのちほど解説しますが、個人で1ナンバー登録をするのは敷居が高く、手間を考えるとあまりおすすめしません。
1ナンバー登録してFJクルーザーに乗ることを考えているのであれば、以下の2つのパターンから選ぶのが良いです。
- すでに1ナンバー登録された中古車を購入
- 1ナンバー登録のノウハウがある専門ショップで購入
そして、新たに1ナンバー登録するのであればそのための費用がいくらかかるのか必ず確認しましょう。
さらに、以下の2つのポイントを購入前に確実に把握しておきましょう。
- 高速道路の利用頻度によって、3ナンバーと比較して年間でどれくらい利用料金に差ができるのか
- 加入予定の自動車保険会社では、自分の場合1ナンバーと3ナンバーの違いでどれくらい保険料に差ができるのか
これらは人によって大きく変わってくるので、重要なポイントです。
ここで試算した費用と先ほど計算した維持費を合わせて、自分自身にとって本当に1ナンバー化がお得なのか考えましょう。
また、わざわざ1ナンバー登録してとにかく車両の維持費の節約を…と考えるのであれば、ユーザー車検をやる覚悟くらいはある方が良いでしょう。
なお維持費の節約については、以下の記事でも解説しています。こちらもあわせて参考にしてみてください。
安く抑えよう!私が実際に成功した車の維持費を節約する3+1の方法!FJクルーザーの1ナンバー登録のやり方
素人がFJクルーザーを1ナンバー登録をするのは簡単なことではありません。
なぜなら複雑な法令等によってプロのクルマ屋さんでも「問題なくできる」「USモデルであればできる」「できない」と三者三様の意見があるためです。
先ほども1ナンバー登録したFJクルーザーに乗りたい場合は、もともと1ナンバー登録された車両を購入するか、ノウハウのある専門ショップでの購入をおすすめしました。
それでも1ナンバー登録のやり方を知っておきたいという人のために、要所を抑えて簡潔に解説します。
1ナンバー登録、最大の壁はブレーキ性能の証明?
1ナンバー登録にあたっての最大の壁は、平成11年に改定された法令によりブレーキ性能試験を受けてパスするか、同一型式の1ナンバー車と同じブレーキシステムであることを証明することです。
このように1ナンバー(貨物自動車)としてのブレーキ性能条件を満たしていることを公的に証明する必要がありました。
しかしブレーキ性能試験は数十万円もの費用がかかり現実的ではありません。
そこで着目されたのが並行輸入されたFJクルーザーです。
並行輸入されたUSモデルのFJクルーザーには、FMVSS(米国連邦自動車安全基準)をクリアしていることを証明するステッカーが貼られています。
この安全基準の中にはブレーキ性能についても規定があり、FMVSSの証明があれば日本国内での1ナンバー登録に必要なブレーキ性能試験が不要になります。
国内でFJクルーザを1ナンバー登録するのに一番厄介になるブレーキ性能の証明が不要となれば、1ナンバー登録も現実味を帯びてきます。
並行輸入車なので左ハンドルという点を受け入れることができるのであれば、並行輸入のFJクルーザーをあえて選択するというのも有りでしょう。
こうした背景から、「FJクルーザーの1ナンバー登録はUSモデルであれば可能である」…という意見が出てきたのでしょう。
ブレーキ性能の証明は不要に?国内モデル1ナンバー化の敷居が下がった?
先ほど紹介した平成11年の法改正は業界内において有名な話で、1ナンバー登録事情についてもここまではご存知の方も多いかもしれません。
しかし、平成27年に規制が緩和されたことで事実上、ブレーキ性能の証明が撤廃されました。
このことを知らない人がまだまだ多いことが、FJクルーザーを1ナンバー登録できる・できないの意見を二分する理由になっています。
ブレーキ性能の証明という壁で1ナンバー登録を諦めていたユーザーには朗報といえますね。
FJクルーザーを1ナンバー登録する手順
FJクルーザーを1ナンバー登録するためには、構造変更申請を行い検査に合格する必要があります。
1ナンバー登録するために、ノーマル状態を改造する必要がある場合は事前に改造を済ませて、そのことを証明する書類を用いた事前審査を行います。
「1ナンバー登録に際してUSモデルは5人乗りのまま、国内モデルは4人乗りになる」
上記のような意見も見受けられるので、まずは専門ショップや直接、管轄の陸運局に問い合わせてみて改造の必要の有無を確認してみましょう。
改造を行った場合には、事前審査書類を陸運局に提出します。以下の書類が必要となります。
- 車検証のコピー
- 改造自動車等届出書
- 改造等概要説明書
- 改造箇所の添付書類
改造自動車等届出書は陸運局で入手可能です。
事前審査は1週間程度で終わり、事前審査が無事にパスできればいよいよ車両を陸運局に持ち込んでの検査です。
検査前に、予約サイトから検査の予約をする必要があるので忘れずないようにしましょう。
陸運局では受付で1ナンバー登録のための構造変更検査を受ける旨を伝えれば、必要な書類一式を購入できるので必要事項を記入して、後は各窓口で指示に従い書類提出・検査を進めていけば問題ありません。
どうすればいいのか分からなかったり、もし車両側に不備がある場合はどうすればokなのか…といった疑問があれば、検査官に質問して答えてもらうのが良いでしょう。
こうして実際の車両が無事に検査に合格すれば、晴れて1ナンバーのFJクルーザーに乗ることができます。
安心してFJクルーザーを1ナンバー登録するなら専門ショップに任せるのが吉
ここまで、1ナンバー登録のやり方とその際に注意すべき点について解説してきました。これらは本当にごく一部分を簡単に解説しただけです。
実際にはプロの車屋さんでももともとが3ナンバーの車を1ナンバー登録するために、何をどうすべきか全てを把握するのは難しく、手間と費用の問題もありリスクを負うくらいであれば、最初から1ナンバー登録は無理だと断るお店も少なくないでしょう。
今となっては珍しくなった3ナンバー車の1ナンバー登録は、専門的かつ豊富な経験値が必要です。
とにかくFJクルーザーの1ナンバー登録にこだわりたい人は、ランドクルーザーに代表されるようなクロカン車に精通した専門ショップで、FJクルーザーを購入するのが、結局は1番の近道となるでしょう。
なおFJクルーザーについては以下の記事でも取り上げているので、もっと詳しく知りたい方はこちらもあわせて参考にしてみてください。
FJクルーザーは雪道に弱い?雪道走行の性能について徹底分析しました!FJクルーザーがキャンプに最適な理由4つ