トヨタ プリウスはハッチバックタイプのハイブリッドカーで、世界的に見てもトップクラスの燃費性能を持っています。
そんなプリウスですが車に乗っているとある日「ハイブリッドシステムチェック」という表示が出ることがあります。
今回はプリウスのハイブリッドシステムチェックについてご説明します。
プリウスのハイブリッドシステムチェックとは?
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プリウスのハイブリッドシステムチェックはプリウスにある様々な警告表示の一つで、主にハイブリッドシステムが原因のトラブルがあると表示されます。
日本の車は世界的に見ても非常に信頼性の高い車であり、普通に車に乗っている間はそこまで大きなトラブルに見舞われることは少ないです。
しかしそれでも長年乗っているとどうしてもトラブルは増加傾向にあり、エンジンやトランスミッション、電気系統などにトラブルが起こったときには車のダッシュボードにいろいろな警告灯が表示され、ドライバーに問題があることを知らせてくれます。
そういったときには車を点検に出すなどしてトラブルの原因を特定し、調整や修理、部品交換などによってトラブルを解消します。
トヨタ プリウスはハイブリッドカーというタイプの車で、その最大の特徴はガソリンエンジンとともに電動モーターを搭載してこの2つを併用して走行する点です。
ハイブリッドカーではエンジン走行での非効率な点をモーターで補うことで全体的な効率を向上させ、結果的にエンジンでの燃料消費を抑えて燃費を大幅に向上させます。
プリウスではモーターで走行するシーンは発進時や低速域に限られますが、その他にモーターは車が減速する際には発電機として使用して充電も行います。
その切り替えは車が自動的に判断して行うのですが、プリウスは可能な限りモーターを積極的に使用するので使用頻度はかなり多くなります。
またプリウスにはハイブリッドシステムとしてモーター以外にも専用の電動部品が搭載されており、主に次のような部品があります。
ハイブリッドシステム | 役割 |
電動モーター(交流式) | ハイブリッドカーの走行用モーターと充電用の発電用モーターをそれぞれ搭載 変速機と一体化 三相交流モーター式 |
駆動用バッテリー(直流式) | 走行用モーター駆動用の大型バッテリーで直流式バッテリー プリウスは駆動用バッテリーと別に補機バッテリーも搭載 |
インバーター | 電動モーター用のDC-AC変換器およびモーター回転制御 直流電源のバッテリーから交流式モーターへの送電のために交流変換を行うとともに、電力コントロールでモーター回転も変化させる |
DC-DCコンバーター | 電源の直流変換器 主に高電圧の駆動用バッテリーから12V補機バッテリーへの電圧変換を行う |
これらを総称してハイブリッドシステムと呼んでいるのですが、これらハイブリッドシステムのどこかに不具合や故障が起こった際に「ハイブリッドシステムチェック」の警告がでます。
ハイブリッドシステムチェックが出るとプリウスのダッシュボード上の情報ディスプレイに文字で表示されるとともに、警告音も鳴るようになります。
車の状態としてはハイブリッドシステムチェックが出たあとも走行可能な場合もありますが、障害の程度によっては自力走行不可能になることもあります。
またハイブリッドシステムチェックが一度出ると基本的には問題があるのですが、場合によっては時間で自然に回復することもあります。
いずれにしてもハイブリッドシステムチェックが出た場合にはハイブリッドシステムに深刻な問題が発生したときなので、即座に車の修理点検を行う必要があります。
ハイブリッドシステムチェックが出て走行できる場合
ハイブリッドシステムチェックはハイブリッド関連の部品に不具合が発生したときに表示されるものですが、表示されてすぐに走行不可能になる場合とまだ走行可能な場合があります。
駆動用バッテリーの劣化
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ハイブリッドシステムチェックが出ていても走行可能な場合の原因としては「駆動用バッテリーの劣化」が考えられ、ハイブリッドシステムチェックの点灯は部品交換が必要という合図です。
プリウスの駆動用バッテリーは内部が小型のバッテリーをいくつも連結した仕様となっており、それぞれのバッテリーの単位をセルと呼んでいます。
ハイブリッドシステムチェックの点灯はこのいくつもあるバッテリーセルの一部が経年劣化によって電圧の低下などを起こしており、バッテリーが寿命に近づいている証です。
プリウスのシステムは常に各バッテリーセルの電圧などを監視しており、劣化によってバッテリー性能が低下したことを検知するとハイブリッドシステムチェックを点灯させます。
ハイブリッドシステム用の駆動用バッテリーは非常に容量の多いものでその寿命や耐久性も高いのですが、それでも使用していくたびに劣化は避けられず、年式が10年超えたプリウスや走行距離が100,000km前後になっているプリウスではかなり劣化が進行しています。
それでもセルによって劣化のばらつきはあり、ハイブリッドシステムチェックが点灯しても正常に動作するバッテリーセルが残っているのであればプリウスはまだ自走が可能です。
それでもそのまま乗っていればほかのセルも劣化が進んで使用不能となるので、そうなる前に交換が必要になります。
駆動用バッテリーの交換
ハイブリッドシステムチェックが出た際には即座にディーラーや自動車修理工場に持ち込んで原因の特定をする必要がありますが、その結果駆動用バッテリーが劣化していると判明したときには駆動用バッテリーの交換が必要となります。
プリウスの駆動用バッテリーはそのサイズが大きいため、プリウスの後部座席の下辺りに床面に張り付くような形で搭載されています。
このバッテリーは通常車で使われる12Vバッテリーとは全く違うものなので、劣化した駆動用バッテリーの交換は専用の部品と交換することになります。
以前はプリウスの交換バッテリーはトヨタ純正の新品しか選択肢がありませんでしたが、プリウスが市場で一般的になった結果中古品の駆動用バッテリーなどにも交換できる状況になっています。
しかしネックとなるのはその駆動用バッテリーのコストで、もし新品の交換用バッテリーにするときにはおおよそ200,000円前後の部品費用がかかります。
さらに駆動用バッテリーの交換には専門の技術が必要なので、その工賃などを考えると200,000円〜300,000円ぐらいは部品交換に必要という非常に高額の修理になってしまいます。
もし中古品やリビルド品の駆動用バッテリーに交換するのであれば部品費用で100,000円前後まで抑えることは出来るのですが、それでも車の修理としては高額ですよね。
その際は車自体の年式が古くなっていたり走行距離も多い状態となるので、駆動用バッテリーの交換をするのであれば車の乗り換えを検討する方も少なくありません。
ハイブリッドシステムチェックが出て走行不能の場合
ハイブリッドシステムチェックが出たあとで車がスローダウンして走行不能となってしまった場合には、駆動用バッテリー以外のハイブリッドシステムの部品故障が考えられます。
なおこの際には車の自走ができなくなってしまっているので、まずはレッカーや保険会社の車の陸送サービスなどを活用し、プリウスをディーラーや自動車修理工場に持ち込むところから始まります。
ハイブリッドシステム:インバーターの故障
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ハイブリッドシステムチェックで故障しやすい部品というとその代表格がインバーターで、ハイブリッドシステムの中で負荷の高い部品なので経年劣化による故障が起こりやすい部品ではあります。
インバーターは直流式の駆動用バッテリーと交流式である駆動用モーターや発電機をつなぐ役割の部品で、バッテリーの直流電源を交流に変換するとともにモーター自体の回転制御も行います。
プリウスのハイブリッドシステムは何100Vで電流も大きな大電流が使用されており、それが常に流れ込むインバーターはその影響で電子回路に大きな負荷や発熱が起こります。
そのためにハイブリッドカーのインバーターは水冷式にしてあるとともに部品自体の耐久性も非常に高い設計にはしてありますが、それでも年式が古くなったり走行距離が100,000kmを超えてくればメーカーの保証を超えて故障する確率は上がっていきます。
ハイブリッドシステムチェックによってインバーターの不具合が検出された場合にはインバーターの部品交換が必要となりますが、インバーターも高額部品の一つで部品交換には100,000円〜200,000円ぐらいが必要となります。
インバーターにもリビルド品や中古部品などはあり費用を抑えることもできますが、それでもやはり車の修理としては高額修理になるでしょう。
またインバーターが故障するような状況はだいたいメーカーの保証期間を超えた状態なので、修理費用は全額自費になり、それをきっかけに車の乗り換えをする方も少なくありません。
ハイブリッドシステム:DC-DCコンバーターの故障
もう一つ故障の可能性があるのがDC-DCコンバーターという部品で、こちらも大電流を扱う部品です。
DC-DCコンバーターは直流電源での変換器で、主に駆動用バッテリーの数百Vを車で一般的に使われる12Vまで落とす効果があります。
これによって補機バッテリーへの充電やエンジンを始めとしたハイブリッドシステム以外のところの電源をまかなっています。
またプリウスには電動式のエアコンなども搭載されており、そちらへの給電もDC-DCコンバーターから給電され、ハイブリッドシステムの中では地味な下支えをしている部品となります。
DC-DCコンバーターはインバーターよりは負荷が低めとはいえやはり経年劣化によって部品の故障は起こるものであり、こちらも年式や走行距離の多さによって故障確率は上がります。
DC-DCコンバーターが故障してしまうとまず補機バッテリーへの充電ができなくなってしまうので、エンジンの始動や運転、制御用コンピューターの可動など車の主要な電源関係が使用不可能となってしまいます。
そのためDC-DCコンバーターの故障でも走行不可能となり、部品交換をしなければいけなくなります。DC-DCコンバーターも部品費用としては100,000円〜200,000円もの高額修理部品となります。
モーター故障の可能性は低い
インバーター、DC-DCコンバーターと来るとハイブリッドシステムとして残った駆動用モーターが気になるところですが、モーターやその隣りにある発電機についてはそこまで重大なトラブルは起こりにくい部品です。
プリウスは普通の車でいうトランスミッションの部分に2つのモーターを搭載しており、その間と駆動軸、そしてエンジンをつなげる形で遊星歯車機構が使われています。
2つのモーターは1つは走行専用、1つは発電専用となっており、プリウスのハイブリッドシステムの特徴となっています。
当然この駆動用モーターや発電機に不具合があればハイブリッドシステムチェックが点灯して走行不能には陥るのですが、実際この2つの部品が故障する可能性はほかのインバーターやDC-DCコンバーターに比べれば低いです。
モーターや発電機は比較的その構造がシンプルなものであり、プリウスではそれぞれ専用のケーシングに収められて冷却機構も供えられているので、かなり頑丈です。
モーターや発電機がもし故障したら100,000円前後の修理費にはなりますが、実際モーター周りではエンジンや遊星歯車機構などのほうが故障する可能性は高いでしょう。
なおエンジンなどの故障の際にはハイブリッドシステムチェックは点灯せず、普通の車と同じエンジンワーニングランプやソノホカの警告灯が点灯するので原因は分けられるでしょう。
ハイブリッドシステムチェックが出たが勝手に消えた場合
ハイブリッドシステムチェックはハイブリッドシステムのどこかに不具合が出ると点灯し、駆動用バッテリーの容量以外のトラブルでは車がスローダウンして走行不能になります。
しかしたまにハイブリッドシステムチェックが出ても時間を置けば消えることがあり、その後に走行可能となることがあります。
ハイブリッドシステムが出て車が走行不能となったときには路肩などに停めて対応を考えることになりますが、エンジンを一度切ってサイドイグニッションオンしても基本的にはハイブリッドシステムチェックが出たままになります。
しかし部品の故障の程度によっては時間経過で一度ハイブリッドシステムチェックが消えることがあり、そのときには自走できるようになります。
例えば駆動用バッテリーの電圧が多少戻ったり、ハイブリッドシステムの部品内部の温度が下がったりして解消することもあるのですが、根本的なトラブルの原因は解消されていないので自走している間にまたハイブリッドシステムチェックが出て走行不能になる可能性は高いです。
運が良ければそのままディーラーや修理工場まで持ち込むこともできますが、もう一度ハイブリッドシステムチェックが出たら無理せずに陸送するようにしたほうが良いです。
もしだましだましハイブリッドシステムチェックを消しながら走行したとしても原因が解消するわけではないので、いつかは部品修理をしなければなりません。
なおハイブリッドシステムチェックは補機バッテリーを一度カットしたり、プリウスの整備モードに入れたりすれば一時的に消すことは可能ですが、緊急時ならともかくあまりおすすめできる方法ではありません。