アウディはドイツの高級車メーカーで日本でもメルセデス・ベンツやBMWと同じく人気のあるメーカーです。
そんなアウディですが、環境対応車であるハイブリッド車に関してはどうなのでしょうか。
今回はアウディのハイブリッド車についてご説明します。
アウディのハイブリッド車の特徴
アウディはドイツのメーカーで小型車から高級車までを手がけるメーカーですが、大きな特徴は4WDシステムの性能に定評があることです。
その特徴を活かしてSUVやスポーツカーが得意ですが、高級セダンにも積極的に4WDを展開する珍しいメーカーです。
現在アウディは同じドイツのフォルクスワーゲンの傘下に入っており、フォルクスワーゲンのハイブリッドシステムの提供を受けたりと様々な面で繋がりが深いです。ですが独自のハイブリッドシステムの開発も過去には行っています。
そんなアウディのハイブリッド開発の歴史と、現在のシステムをご紹介しましょう。
アウディのハイブリッド開発
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アウディはドイツでも創業がかなり古いメーカーで、過去様々な革新的な技術の研究開発と実用化を進めてきました。
ハイブリッド車は日本のトヨタが世界に先駆けて量産化に成功した技術で、1997年発売のプリウスが世界初の量産ハイブリッド車です。
しかしハイブリッド車自体の技術開発はそれ以前から世界中の自動車会社が行っており、アウディもそのうちの一社です。
アウディは1989年にはアバントというステーションワゴンをベースとしたハイブリッド車の試作を行っており、エンジンで前輪の駆動と発電を、モーターで後輪の駆動と回生発電を行うハイブリッドシステムを設計しました。
この車は「アウディ・100 アヴァントデュオ」という名前でモーターショウなどにも登場し、この時代はアウディはハイブリッド車で頭角を表していました。
その後も1991年にも別の試作車を設計するなど開発には積極的で、それが1つの完成を見たのは1994年です。1994年にアウディは「アウディ80duo」というハイブリッド乗用車を市場投入しており、”世界初市販ハイブリッド車”としてみれば実はトヨタよりアウディのほうが先行していたのです。
しかしこの車は当時としては価格が非常に高く、ハイブリッド車という車種の価値もまだ不明だった時代ですので、セールス面では失敗に終わりました。
その後もアウディは1997年に「アウディ A4duo」というハイブリッド車を登場させ、従来はガソリンエンジンだったところをディーゼルエンジンとモーターの組み合わせで発売しました。
この車も市販されたものの90代の限定生産で、価格は6万マルクと日本円で4,000,000円〜5,000,000円とやはり高価な車でした。
この結果からアウディはハイブリッド車の市販化から撤退し、その開発資源をクリーンディーゼルエンジンへとシフトさせます。
しかし皮肉なことに同年の10月にはトヨタが初代プリウスを発売し、2,000,000円台の価格と世界トップクラスの燃費性能をもって衝撃的なデビューを果たしました。
プリウスも初期には販売に苦戦したものの、その後の改良などによって人気が高まり、いまや世界で知らない人はないぐらいの車になりました。
この成功でトヨタが世界のハイブリッド車のトップメーカーとなったことを考えると、アウディも低価格のハイブリッド車開発に成功していれば、今と状況は大きく変わったことでしょう。
アウディのハイブリッドシステム
さてハイブリッド車の開発から一旦離れたアウディですが、その後のハイブリッド車人気を受けて開発を再開し、2012年にようやく量産車として発売を開始しています。
アウディA6のハイブリッドシステム
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アウディとして初めての本格的な量産ハイブリッドとなったのは、中型セダンのA6をベースとしたA6ハイブリッドです。
この車にはベースのアウディA6にも搭載された2.0L TSFIエンジンをベースに、アウディ独自のパラレルハイブリッドシステムが組み合わされました。
パラレルハイブリッドシステムはエンジンとトランスミッションの間に1基のモーターを持つシステムで、このモーターでEV走行や回生発電などを行い、エンジン走行時にはモーターでアシストも行います。
2012年当時では世界中のメーカーが同様のシステムを独自開発していましたが、アウディとしては日本メーカーからは大きく遅れて登場したこととなります。
A6ハイブリッドはベース車両の上質さやアウディの持ち味である走りの良さなどは評価され一定の販売を収めましたが、大きな車で燃費も10km/L〜15km/L前後とそこまで良くなかったことから、とくに燃費の良いハイブリッド車が多数ある日本ではあまり売れませんでした。
とはいえこの時代はハイブリッド車の存在がメーカーの環境対応策をアピールする上でも重要だったので、発売することに意味があったともいえます。
A6ハイブリッドは2015年にはモデルが廃止され、わずか3年の発売期間となりました。また同じハイブリッドシステムは「Q5」、「A8」といった別の車種にも展開されましたが、何れも短期間でモデルは販売終了しています。
アウディのプラグインハイブリッド
アウディはそれまでのハイブリッド車から大きく環境性能を向上させる技術として「プラグインハイブリッド車(PHEV)」を投入し、2015年にA6ハイブリッドと交代するように「A3スポーツバックe-tron」が登場しました。
プラグインハイブリッドは詳細は別記事でご説明していますが、最大の特徴はハイブリッドシステム用のバッテリーを外部から充電できる点にあります。
従来のハイブリッドシステムは電力を生み出しているのは結局エンジンだったので燃料が必要でしたが、プラグインハイブリッドは外部の電源から充電できるので燃料の節約ができることになります。
またプラグインハイブリッドはバッテリー容量の大きさを活かしてモーター走行を長距離で可能となり、その間はエンジンを停止させることでも燃費を高く出来ます。
アウディはこのハイブリッドシステムには1.4Lエンジンとパラレルハイブリッドシステムの組み合わせとしてあり、基本的には従来のシステムの発展型となっています。
違いとしてはバッテリーの大型化と充電機能の追加で、次世代のハイブリッド車として十分な性能を持ちます。
ハイブリッド走行時の燃費は23.2km/Lとなかなか高いですが、それ以上にモーター走行が50km前後可能となっているので、普段使いでは電力だけで十分往復できる性能です。
このハイブリッドシステムはフォルクスワーゲンが採用しているシステムと全く同一のもので、グループとして共用されるパワートレインです。
アウディのハイブリッド車としては最高の性能を持つA3スポーツバック e-tronですが、現在は販売終了となっており、現在一時的にアウディのハイブリッド車ラインナップは0となっています。
アウディのハイブリッド車の耐久性/故障のしやすさ
アウディのハイブリッド車は日本国内ではあまり見かけることはありませんが、信頼性に関しては日本車には一歩及ばないレベルです。
A6ハイブリッドの発売時にアウディは一度サービスキャンペーンを行ったことがあり、ハイブリッドの制御関連によるものです。
燃料が不足した状態で始動を繰り返すとハイブリッド用バッテリーの容量が低下し、最終的にはバッテリー不足で始動できなくなってしまうというものです。
国内では販売台数が少ないこともあってあまり話題にはなりませんでしたが、ハイブリッド車の市場経験という点では一歩遅れていると言っても良いでしょう。
ですがプラグインハイブリッドになってからはフォルクスワーゲンのシステムに変わったことでこういった故障はなくなり、今現在は一定の信頼性を確保しているでしょう。
アウディのハイブリッド車の評価・評判
アウディのハイブリッド車に対する評価というのは、次のツイートのような内容が多く見られます。
アウディA 6のハイブリッド
はヤバイ!
FFなのにすごいクイックだし、
6シリのグランクーペよりも
ケツ出るし
アウディはBMWとベンツに負けない様に頑張ってる分物凄い
技術力がある!
ドイツ車は本当に面白い!!
日本のカタログ燃費重視するやり方でなく、買った後本当に満足させてくれるものがある— こぺすけ (@Century1Kohei) December 16, 2017
アウディのハイブリッドは国産車に比べると燃費の面で少し劣勢ではありますが、それでもドイツ車ならではの走りの良さや上質感は国産車にはない魅力であり、燃費以外の面で満足感があるようです。
またアウディのハイブリッド車への移行は次のような変化も出てきています。
2000年代前半からアウディがアルペンワールドカップのスポンサーに付いてるけど、今シーズンか先シーズンあたりからパネルや横断幕の広告が「quattro」から「e-tron」に変わってしまった、これも時代なのか
— にゃん (@mawarist) March 23, 2019
「quattro」というのはアウディが開発した全輪駆動システムのことで、これまでアウディを代表する言葉として様々な面で広告塔として使われてきました。
しかしそれがプラグインハイブリッドや電気自動車を表す「e-tron」に変わったことは、アウディの環境対応へのシフトを如実に表すものとなっています。
アウディのハイブリッド車の種類・ラインナップ
アウディのハイブリッド車は前述したように現在ラインナップにはありませんが、今回はA3スポーツバックe-tronのご紹介をします。
車種 | 駆動 方式 | 燃費 | EV走行 可能距離 | エンジン | エンジン 最高出力 | エンジン 最大トルク | モーター 最高出力 | モーター 最大トルク | 価格帯 |
A3 スポーツ バック e-tron | FF | 23.3km/L | 52.8km | CUK型 1,394cc 直列 4気筒DOHC ターボ | 110kW(150ps)/ 5,000rpm-6,000rpm | 250N・m/ 1,500rpm-3,500rpm | 55kW(75ps) | 330Nm | 56,400,000円 |
A3スポーツバック e-tronはコンパクトハッチバックのA3がベースとなっており、搭載されるエンジンは比較的排気量が小型です。
ですがターボエンジンということで出力は高く、これによってハイブリッド車であっても高い走行性能を持っています。アウディといえばAWDですが、燃費重視のe-tronについてはFFとなっています。
燃費性能やEV走行可能距離も高い性能を持ちますが、一方で日本での価格は5,000,000円台中盤とこのクラスにしては高額で、燃費だけを見るなら国産車とは大きく価値観の違う車といえるでしょう。
なおA3スポーツバック e-tronが現在販売終了となっているのは販売不振が理由ではなく、WLTP(Worldwide harmonized Light vehicles Test Procedure)という燃費基準の対応のためだそうです。
今後発売予定のアウディのハイブリッド車
アウディは今後プラグインハイブリッドのラインナップを拡充すると発表しており、今後はアウディの環境対応車はプラグインハイブリッドが中心となるようです。
現在発表となっている車種は「Q5」、「A6」、「A7」、「A8」となっており、アウディの主要SUVやセダンにプラグインハイブリッド車が設定されるようです。
ですが合うでィの発表では2019年に6車種のプラグインハイブリッドが登場するとなっており、他の2車種も気になるところです。そのうちの1つは現在ラインナップから外れているA3でしょうか?
またもう一つの流れとしてアウディはマイルドハイブリッド車も発売を予定しており、現在発表されている中ではフルモデルチェンジを果たしたA6にモデルが設定されるといわれています。
マイルドハイブリッドシステムはコストを重視した簡易的なハイブリッドシステムのことで、現在ドイツを中心とする欧州勢は「48Vマイルドハイブリッドシステム」という最新のシステムを搭載した車種を拡げてきています。
アウディもこの流れに乗った形となり、プラグインハイブリッドとは別のハイブリッド車も登場するようです。
マイルドハイブリッドシステムは燃費改善効果は限定的ですが、特に車両価格の上昇を抑えることに効果があり、コンパクトカーなどのコストが重要な車種にも展開されるとうれしいですね。
アウディのハイブリッド車の理想的な運転方法・コツ
アウディのハイブリッド車の主体はどうやらプラグインハイブリッドとなるようですが、輸入車のプラグインハイブリッドには1点注意点があります。
プラグインハイブリッド車は充電プラグを利用してバッテリーを充電するのですが、その充電方法のひとつに「急速充電」というものがあり、非常に短時間で充電が完了する便利な技術となっています。
本来は電気自動車に利用されるものですが、同様のシステムはプラグインハイブリッドでも利用できるようになっています。
ですが海外の車種は日本国内で展開している急速充電器の規格とは違っており、日本では輸入車の殆どは急速充電ができません。
国産車のプラグインハイブリッドなら利用できるのですが、輸入車では外出中などに便利な使い方が出来ないため、長距離移動時には電気だけで走行というわけには行きません。
そのため必ずガソリンの残量などを注意して、エンジン走行もできるようにして置かなければなりません。
現在急速充電器の規格が日本と欧州で規格争いの真っ最中であり、それが解決しない限りは今後も輸入車のプラグインハイブリッドは急速充電が使えない状況は続いていくでしょう。