トヨタ ヴィッツはトヨタのコンパクトハッチバックカーで、価格の安価なエントリーモデルの1つです。
今回はそんなヴィッツでの車中泊について見ていきます。
ヴィッツの車中泊に向かない点
参考:toyota.jp
ヴィッツはトヨタのコンパクトカーの中では最小クラスの小型車で、その歴史も長く3代目まで20年近く続く車です。
現在はヴィッツは「ヤリス」という車名に変更されて4代目という形で継続されていますが、今回の記事では3代目ヴィッツについての車中泊を見ていきます。
ヴィッツはトヨタのコンパクトカーとしても小型の車で、全長や全高が小さくまとまっている車です。
価格も安価で軽自動車からのサイズアップにちょうどよく、トヨタでのエントリーモデルの一つとして存在感があります。
しかしヴィッツにもトヨタの最新技術などは盛り込まれており、特にトヨタが得意とするハイブリッドシステムを搭載したヴィッツハイブリッドは高い燃費性能を誇っています。
近年車の利用方法の一つとして車中泊というものが注目されているのですが、これは旅行の際にホテルや旅館を利用する代わりに車の車内で一晩を過ごす方法です。
車中泊のメリットはホテルや旅館にかかる費用をなくして旅費を節約できる点にあり、この特徴から人気が年々高くなっているものです。
また車中泊はキャンプのような過ごし方もできるので、車中泊専用のオートキャンプ場も登場しています。
そんな車中泊ですが一般的にはミニバンなど大きい車が使われるのですが、ヴィッツでの車中泊はどうなのでしょうか。
これを見るためにまずは車の大まかなサイズをみていきます。
スペック | ヴィッツ | |
価格 | 1,203,400円〜2,361,700円 | |
乗車定員 | 5名 | |
全長 | 3,945mm | |
全幅 | 1,695mm | |
全高 | FF:1,500mm 4WD:1,530mm | |
室内長 | 1,920mm | |
室内幅 | 1,390mm | |
室内高 | 1,240mm | |
ラゲッジルーム | 高さ | 865mm |
幅 | 1,000mm | |
奥行き | 620mm | |
運転席寸法 | 高さ | 約1,000mm |
幅 | 約500mm | |
奥行き | 約900mm | |
助手席寸法 | 高さ | 約1,000mm |
幅 | 約500mm | |
奥行き | 約900mm | |
後席寸法 | 高さ | 約1,000mm |
幅 | 約1,200mm | |
奥行き | 約900mm | |
3列目寸法 | 高さ | 3列目シートなし |
幅 | ||
奥行き |
ヴィッツは普通車の中でもサイズの小さなコンパクトカーとなっており、外観サイズも全体的に小さめです。
全長は3,945mmと短いのですが、全幅については1,695mmと5ナンバーサイズギリギリとなっているので意外とワイドです。
ですが全高はコンパクトカーらしく低めのフォルムとなっており、扱いやすさや立体駐車場への駐車のしやすさがあります。
車内のサイズについてはコンパクトカーとしては標準的なものとなっており、室内長は2列シート5人乗りの車としては一般的なサイズ感です。
室内幅は多少広めではありますが広々としているわけではなく、後席のベンチシートに3人がちょうど座れるぐらいです。
ラゲッジスペースについては狭すぎるということはありませんが、大幅に広いサイズでもありません。
こういったサイズを持つヴィッツですが、車中泊に対しては不便な部分が多く次のような点が向かない点です。
車内がフルフラットにできない
参考:toyota.jp
まずヴィッツが車中泊に向かない点は車内のシートレイアウトにあり、快適に寝られる寝台が作れない点にあります。
車中泊には快適に車内で寝るためにいくつかの条件があるのですが、その1つがフルフラットな寝台が作れるかどうかです。
車の車内は構造やデザインなどで凹凸や段差が多いもので、そこで寝る場合には快適さがあまり得られないことが多いです。
しかし近年の車はシートアレンジなどでさまざまな使い方をすることができ、それを駆使してフルフラットにすることで自宅で寝る場合と近い快適な寝台を作れます。
ヴィッツにもシートアレンジはいろいろ備わっているのですが、それを駆使してもフルフラットにはなっておらず快適な寝台にはなりません。
ヴィッツのシートアレンジでは後部座席を折りたたんでラゲッジスペースとつなげるモードがあるのですが、このモードではフルフラットではなく段差があちこちにあって快適に寝られる構造ではないのです。
またシート自体もフラットに倒れるわけではなく斜めになっているので、車中泊には不向きです。
寝台の前後サイズが不足している
ヴィッツのシートアレンジではこのフルフラットモードでのサイズもあまり多くなく、足を伸ばして快適に寝るには厳しい場合が多いです。
車中泊には寝台の形状も重要ですがそのサイズも重要で、寝る時に足をしっかり伸ばして寝ることができないと窮屈さを感じてしまいます。
そのサイズは寝る方の身長によって少し違うのですが、一般的なサイズとして考えると成人男性で170cm位を想定することになります。
しかし必要なサイズは身長ギリギリでも窮屈感を感じてしまうものなので、実際には1,800mm〜1,900mmぐらいは必要です。
これに対してヴィッツのシートアレンジでは後席とラゲッジスペースを利用しても1,500mm〜1,600mmぐらいの奥行きしか確保できず、車中泊用の車としてはサイズが不足していると言えます。
前席を前側にスライドさせればもう少しは広がりますが、それでも1,700mmぐらいとなっており寝るにはギリギリのサイズです。
身長が低めの方ならともかく背の高い人では足を少し曲げないと寝られないことがあるでしょう。
このように寝台の形状やサイズが車中泊には不向きなのですが、ヴィッツというコンパクトカーのサイズ感としてはある意味仕方ない面ではあります。
前席を利用しても段差が大きい
ヴィッツの車内でもっと前後のスペースを利用しようとすると前席分のスペースも欲しくなるのですが、ヴィッツのシートアレンジでは前席をうまく使うことはできません。
ヴィッツのシートアレンジでは後席を折りたたむとラゲッジスペースとつながる構造となっており、これは元々ラゲッジスペースの奥行きを拡大するための機能です。
そのため段差などが少しあってもラゲッジスペースとしては問題ないのですが、車中泊を想定されていない構造となっています。
ここからさらに前後のサイズを増やすなら前席を使うことになるのですが、ヴィッツのシートアレンジでは前席を完全に収納することはできません。
後席を倒した状態で前席を最大限までスライドさせたりしても、背もたれを後ろに倒すと後席の後ろに乗り上げてしまいフラットにはなりません。
角度も結構付いた状態で止まってしまうので、その状態で車中泊用の寝台とするには段差がかなり大きくて快適性はありません。
もしここを利用すれば2,000mm以上の前後サイズは確保できますが、快適な寝台とするにはさまざまなものを駆使して段差を解消しなければならないでしょう。
室内高が低く窮屈感がある
参考:toyota.jp
ヴィッツの車内はコンパクトカーとしては標準的なサイズなのですが、車中泊用としては室内高が狭めです。
ヴィッツのようなコンパクトハッチバックカーは全高が低めに設定されていることが多く、車の軽量化や立体駐車場への対応など利便性を考慮して設計されています。
ミニバンやSUVなどは車高の高さで居住性を高めたり走破性を高めたりすることはありますが、ヴィッツのようなスタンダードなエントリーモデルには不必要な面でもあり、コンパクトカーとしてはヴィッツのサイズ感が標準といえるでしょう。
ですが車中泊をする上では天井の低さは少し不便な部分が多く、特にヴィッツの構造では天井がかなり近くなります。
ヴィッツの車内の段差をなんとか吸収してフラットな寝台を作ったとしても、実際にはその上に車中泊マットなどを敷くのでよりスペースが狭くなります。
元々ラゲッジスペースの上下で865mmの高さなので、その上に段差吸収をしたりマットを敷くとかなり狭くなるでしょう。
仰向けならば寝ることは可能ですが、寝台から起き上がったり寝返りを打つ際にはちょっと不便です。
車中泊時の荷室が少ない
ヴィッツで車中泊をする際には車内のスペースの殆どが寝台となるので、その分荷室が少なくなって不便となります。
車中泊では車内で快適に寝ることができるかが良くフォーカスされるのですが、車中泊は旅行の際の宿泊手段として使われるので以外と荷室が見落としがちになります。
旅行の際にはいろいろな荷物を車に積み込んでいくので勢いその量が多くなるのですが、普通の旅行であれば荷物は車に積み込んだままで旅館やホテルに泊まれます。
またキャンプのときなどでも荷物が多くてもテントに宿泊するので、荷物の一部は車に載せておけます。
しかし車中泊となると旅行の荷物を持ったまま車内で寝ることになるのですが、荷物を載せていたラゲッジスペースや後席のスペースは車中泊用の寝台として使われてしまうので、荷物はその他の車内スペースに置かなければならなくなります。
ですがヴィッツの車内のスペースでは前席ぐらいしか荷物を置いておけるスペースは残っておらず、そのサイズもあまり広くはないので、車中泊時の荷室が結構問題となるでしょう。
そのためヴィッツでの車中泊では荷物の量が重要であり、あらかじめその大きさや量を考えておいたほうが良いでしょう。
ヴィッツで車中泊をする方法
ヴィッツでの車中泊はあまり快適なものではないですが、なんとか車中泊をするには次のような方法があります。
車内のフラット化
参考:toyota.jp
車中泊で快適に寝るためにはフラットであることが必要ですが、ヴィッツではそのままの車内ではフラットにはできないのでいろいろな対策が必要です。
まずヴィッツで車内をフラット化するのは後席とラゲッジスペースをつなげたスペースなのですが、このスペースは段差や凹凸が多いのでそこを対策しないと快適な車中泊にはなりません。
最初は後部座席の背もたれを前側に倒すところから始まりますが、この操作自体は簡単でレバーひとつで完了します。
しかしその状態ではラゲッジスペースとの間に大きな段差が生まれるので、そこを埋めなくてはなりません。
ラゲッジスペースの段差に対してはヴィッツの純正アクセサリーである「アジャスタブルデッキボード」を使うとある程度は解消できますが、それだけで完全に解消はしません。
そのため段差を吸収するためのクッションであったり、車中泊アイテムの段差吸収ボードなどを駆使することでかなり段差を解消することができるでしょう。
ですがこれに加えて前後のスペースも不足する時には、前席を前側にスライドさせて多少はスペースを増やせます。
その際には前席と後席の間に隙間があいてしまうので、そこもクッションやボックスなどで埋めなければ寝台としては使えないでしょう。
このようにヴィッツの車中泊には準備が多く必要で、初心者向けではないでしょう。
車中泊のアイテム準備
この投稿をInstagramで見る
ヴィッツでの車中泊を過ごすにはフラット化の準備も必要ですが、その他に車中泊アイテムも用意しなければなりません。
車中泊を快適に過ごすために必須なものは最低でも2つあり、車中泊マットと遮光ボードもしくは遮光カーテンが必要です。
まず車中泊マットですが、これは車内の寝台の上に敷くことで布団代わりのクッションになるもので、車内の寝台は感触が固いのでこういったものが必須です。
車中泊マットは市販品として様々なものが販売されているので、その中からヴィッツの車内にマッチするものを探すと良いでしょう。
ただヴィッツのフラットモードでの寝台は小さめなので、あまり大きなものを入れると逆に不便となります。
もう一つの遮光アイテムは車のウインドウを塞ぐためのもので、これは車の外から入ってくる街灯の光や他の車のヘッドライトの光などを防ぐためのものです。
これがないと車中泊のときに光が気になって安眠できないので遮光は必須であり、こちらも市販品の車中泊アイテムとして様々なものがあります。
遮光カーテンなら収納も楽ですがなかなかヴィッツのウインドウにフィットするものはないので、汎用品の遮光ボードを加工して自作するほうが費用面でもフィット性の面でも良いでしょう。
このほかにも車中泊を快適にするアイテムはさまざまなものがあり、工夫することでヴィッツの車中泊であっても快適性は上げられるでしょう。
車中泊の注意点
車中泊には事前の準備も重要ですが、その他に注意点もあります。
車中泊の注意点とは寝ている間の車内の換気をしっかり行うということなのですが、これが意外と車中泊を始めて行うときなどに見落としがちです。
もし防犯などを考えて窓を締め切った状態で車中泊を行うと、最初は良いのですが一晩車内で寝たあとで朝目覚めると、息苦しさを感じたり汗をかいていたりします。
これは密閉度の高い車内の空気を呼吸によって消費したためで、二酸化炭素が増えたことによる影響です。健康に影響があるほどではありませんが、快適に寝るためには車内の換気が必要なのです。
換気を行う上で一番簡単な方法は窓を少しだけでも開けることなのですが、窓を空けているとそこから虫が入ってきたり外の音が入ってくるので快適さが下がります。
そこで車の装備を活用してエアコンを稼働させておくのが便利であり、エアコンを外気循環モードで動かしておけば換気をしながら温度管理も出来ます。
なおエアコン稼働時にはエンジンはアイドリング状態にしておく必要があり、燃料の残量なども気をつけましょう。
ただしアイドリング時に急な積雪などで排気管が詰まったりすると、排気ガスの逆流の恐れがあります。
もしそういった状況で車中泊を行う場合には、安全のために窓を少し空けておくことをおすすめします。
ヴィッツの車中泊に向いている点
ヴィッツは車内のサイズやシートアレンジなどの面で車中泊には向かない車ですが、次の点はそれを多少カバーしてくれる面です。
アジャスタブルデッキボードである程度段差が解消できる
参考:toyota.jp
まずヴィッツの車中泊ではどうしても後席とラゲッジスペースの段差が気になる点なのですが、これに対してヴィッツの純正アクセサリーである「アジャスタブルデッキボード」を装着すると多少解消します。
アジャスタブルデッキボードはラゲッジスペースに装着するオプションなのですが、これはラゲッジスペースの段差をある程度減らす効果があります。
アジャスタブルという名称の通りこのアジャスタブルデッキボードは取り外し自由で、これを出し入れすることでラゲッジスペースを分割してつかったり、または広いスペースを確保して大きな荷物を積み込むなどの使い分けができます。
アジャスタブルデッキボードでラゲッジスペースを上下に分割すれば、いわゆるアンダーラゲッジのような形になるのです。
このアジャスタブルデッキボードが装着してあればフラットモードを作った時にもある程度段差が解消されているのですが、実際にはそれでもまだ気になるレベルの段差は残ってしまいます。
ですが段差が小さくなった分それを解消するクッションや段差吸収ボードの量は減らすことができるので、うまく活用することである程度は利便性があがるでしょう。
価格が安価で一人旅用ならば悪くない
ヴィッツは1台で一応2人での車中泊は可能なのですが、一人旅の車中泊だけを想定すれば多少快適さはあがります。
ヴィッツの寝台の左右幅的には横並びに一人ずつ寝ても十分なスペースがあるのですが、前後の奥行きが短めなので背の低い人でないと並んで寝るのは少し窮屈感があります。
ですがもし一人旅としてヴィッツの車中泊を利用するのであれば、寝台を車の前後方向ではなく斜め方向に使うことができるので、対角線上でより長いスペースで寝ることができます。
この寝方をすれば約1.4倍ぐらいの長さを確保できるので、そこそこ身長がある人でも寝ることはできるでしょう。
またヴィッツはコンパクトカーの中では価格も控えめな車であり、その点を考慮しても一人旅用の車中泊ができる車としては便利でしょう。
一人であれば荷物の量も限定的でそんなに窮屈にはなりませんし、全体的に旅行の費用も抑えられるのでエントリーモデルとしては十分なサイズ感を持っていると言えます。
快適な車中泊が過ごせるかどうかはやはり段差解消など事前の準備は必要になりますが、一人であれば試行錯誤を繰り返して快適さを追求できるので初めて車中泊する車としても悪くはないでしょう。
ヴィッツの車中泊の口コミ・評判
ヴィッツの車中泊に関してはtwitterにも投稿があるのですが、その中からいくつかご紹介します。
レンタカーのヴィッツ 平らにならない。
この車で初日から車中泊だと体が持たないちょっと高いけどネットカフェ— しずおかJG726 (@sizuoka_jg726) September 1, 2020
こちらの方はレンタカーということであまり準備が出来ない状態で車中泊を過ごしていらっしゃいますが、やはり車内がフラットにならないということで車中泊は断念されたそうです。
車中泊は確かに費用を抑えることはできますが、旅行の疲れを取ることを考えるとヴィッツではちょっと不安な面がありますね。
ヴィッツは大人2人横になって車中泊できる💪 pic.twitter.com/p7RxCyUUc9
— TAKUYA∞ (@takuya230130) October 31, 2020
こちらの方はヴィッツで2人での車中泊をしておられ、問題点を解消すればこういった使い方もできるようです。
たださすがに2名以上は窮屈すぎるので車中泊は厳しく、この使い方がギリギリといえるでしょう。
総評
ヴィッツはコンパクトカーとしてはエントリーモデルであり、乗用車としての使い勝手やコストパフォーマンスなどメリットは多い小型車です。
ですが車中泊となるとそのコンパクトなサイズ感と一般的なシートアレンジがあまり適しておらず、ある程度事前の準備をしっかりしていないと快適な車中泊にはならない車です。