ポルシェは日本でも知る人の多いドイツのスポーツカーおよび高級車メーカーで、とくにスポーツカーに対するイメージが強いメーカーです。
そんなポルシェですが近年はエコカーのひとつであるハイブリッド車を相次いで登場させており、注目されています。
今回はそんなポルシェのハイブリッド車についてご説明しましょう。
ポルシェのハイブリッド車の特徴
ハイブリッド車は内燃機関のエンジンと電気モーターのどちらも1台の車に搭載した車種のことを指し、近年は燃費改善効果が非常に高いことで特に注目を集めています。
現在ハイブリッド車は世界中でさまざまな車種が開発、生産されるようになりましたが、その流れの大本は日本のトヨタ自動車が1997年に発売したトヨタ プリウスです。
当時は世界中のメーカーがハイブリッド車を開発していましたが、その中で先陣を切って量産化にこぎつけたのがトヨタでした。
プリウスは当時としては非常に高い低燃費性能と、2,000,000円台の比較的低価格な特徴を活かし、またたく間に世界中で人気となりました。
このような流れがあるのでハイブリッド車の元祖はトヨタだと思われていることもあるのですが、歴史を遡ってみると実はポルシェこそがハイブリッド車の元祖なのです。
そんなポルシェのハイブリッド車の歴史と、現在最新のポルシェのハイブリッドシステムをご紹介します。
ポルシェのハイブリッド開発
ポルシェは創業が1930年ごろという長い歴史を持つメーカーですが、最初は創業者であるフェルディナンド・ポルシェ博士のデザイン事務所として始まりました。
ですがポルシェ博士自体はもっと前から車の設計に携わった方であり、フォルクスワーゲンの有名な車であるビートルを設計したことでも知られています。
そんなポルシェ博士が1896年に開発した「ローナーポルシェ」こそ世界初のハイブリッド車で、もともと完全な電気自動車として開発されたローナーポルシェに後から発電用のエンジンを搭載したことが始まりです。
当時はまだバッテリーの性能が悪い割に重量が重かったので、その代わりに発電用のエンジンを搭載したのです。
ポルシェ博士は電動車に高い興味を持っており、これ以降も度々ハイブリッド車を制作しています。特に珍しいのは軍事面での利用で、第一次世界大戦時の牽引砲や、第二次世界大戦時にポルシェ博士が設計した戦車でもエンジンを発電機としてモーターが走行を行うハイブリッド車がありました。
しかしポルシェは第二次世界大戦後には一般的な自動車メーカーとしての経営に移り、経営自体もポルシェ博士から後継者へと移ったことで、ポルシェとしてハイブリッド車の開発は一旦なくなります。
ポルシェとしてその後正式にハイブリッド車の開発に参入するのは21世紀に入ってからで、前述のハイブリッド車とは全く違う形での導入となりました。
ポルシェ初のハイブリッド車
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ポルシェがメーカーとして初めて発売したハイブリッド車は、2011年発売の「カイエンS ハイブリッド」です。
初代ポルシェ博士が最初のハイブリッド車を開発してから110年経過し、ようやくポルシェ初のハイブリッド車が登場しました。
カイエンはポルシェの新時代のベストセラー車で、世界的な人気があるクロスオーバーSUVです。カイエンの登場前までポルシェはスポーツカーしか製造してきませんでしたが、そのために経営が厳しくなっており、その打開策として登場したカイエンの大成功で経営を持ち直した過去があります。
そんなカイエンは同じドイツのフォルクスワーゲンとの共同開発車となっており、デザイン以外のエンジンやプラットフォームの多くをフォルクスワーゲン トゥアレグと共通化した車種です。
初代カイエンは2002年から2010年までのモデルでしたが、ハイブリッド車が登場した2代目カイエンもフォルクスワーゲンとの共同開発というコンセプトは変わりません。
そしてハイブリッドシステム自体もフォルクスワーゲンとの共同開発となっており、3.0L V6ガソリンエンジンにスーパーチャージャーを組み合わせたパワフルなエンジンをベースとしてハイブリッドシステムを組み上げています。
ハイブリッドシステムは1モーター式のパラレルハイブリッドシステムで、モーターのアシストがあるので走行性能は非常に強力なハイブリッド車となりました。
一方でハイブリッド車の最大の特徴である燃費に関しては、実燃費で10km/Lいかないほど良好ではなく、スペックの高さから燃料消費量が多く、またカイエンが重量のある車なので仕方ない点ではあります。
ですがこういった面からフォルクスワーゲンのトゥアレグ ハイブリッドも含めてセールス面ではあまり売れなかった車種となり、現在はラインナップから外れています。
最新のハイブリッドシステム
ポルシェはカイエン ハイブリッド以降もハイブリッド車の開発に着手しており、そのベース車はポルシェ初の高級ラグジュアリーカーである「パナメーラ」です。
パナメーラも新時代のポルシェを代表する車種の1つで、同社初の4ドアのスポーツラグジュアリー車はポルシェらしい高級車として一気に人気が高まりました。
そんなパナメーラも現行車は2代目となり、このモデルからハイブリッドが設定されました。そしてこの世代からポルシェはプラグインハイブリッド車へと進化し、より高い環境性能を持つハイブリッドシステムを搭載しています。
プラグインハイブリッドは従来のハイブリッド車の進化系とも言える車種で、ハイブリッド用の駆動バッテリーを車の外部から充電できることが特徴です。
従来のハイブリッド車はバッテリーの充電は車の走行エネルギーをもとにしており、その大本はエンジンなので結局燃料を消費して充電していることになります。
ですがプラグインハイブリッドであればエンジンとは別の外部電源を使ってバッテリーを充電するので、その分エンジンの使用率が下がり燃料消費量を減らせる特徴があります。
またプラグインハイブリッドではバッテリー容量も強化されているので、モーターだけの走行が50km程度は可能で、充電を繰り返せばモーターだけでずっと走行することも可能です。
日常での買い物などならその距離内で十分往復できるので、まったくエンジンを稼動させない運用も可能となっています。
このことによりプラグインハイブリッドは従来のハイブリッド車より燃費を大幅に向上させることも可能で、ポルシェのみならず世界中の自動車メーカーが相次いで投入しています。
スペックなどについては後ほどご説明しますが、現在のポルシェはプラグインハイブリッドが環境対応車のメインとなっています。
ポルシェのハイブリッド車の耐久性/故障のしやすさ
ポルシェのハイブリッド車は国内市場でもまだ台数が少ないため、耐久性や信頼性の面でのデータはあまりありません。
過去、カイエンやパナメーラではリコールを何度か出しているポルシェですが、内容を見てみると全てエンジン関係のトラブルであり、ハイブリッドシステムに関するものではありませんでした。
またポルシェは世界的にも故障が少ないことで定評のあるメーカーで、同じドイツのメルセデス・ベンツやBMWよりも信頼性の面では高い評価を受けています。
そのためポルシェのハイブリッド車も一定以上の耐久性や信頼性を持っているといえ、安心して乗れるハイブリッド車のひとつといえるでしょう。
ポルシェのハイブリッド車の評価・評判
ポルシェはハイブリッド車のラインナップが少ないためにその評価はあまり聞かれません。
ですが最新のパナメーラのプラグインハイブリッドに関して次のようなツイートがあり、結構評判は良いようです。
EVに乗るとアクセルのツキの良さに感動するのだけど、パナメーラ 4 E-Hybridではそれが再現されててエンジンの苦手なところを電気でうまく補い、かつ高速燃費は15km/Lくらいと営業の方が言ってたので462psの車としてかなりすごいと感心した。#パナメーラ #ポルシェ
— masayasui (@masayasui) May 5, 2018
パナメーラのプラグインハイブリッドはモーターでエンジンのサポートをする走行モードもあり最大スペックを発揮できるのですが、モーターの持つトルクフルな加速感が電気自動車のようで良いようです。また燃費が15km/L前後と、このクラスの車としてはかなり良い方でしょう。
また将来的なポルシェのハイブリッド戦略も去年発表されており、大きな流れとなりそうです。
ポルシェ、ディーゼル撤退 EV注力! すでに販売を縮小しており、今後はハイブリッド車や電気自動車(EV)に力をいれる、ドイツ勢でディーゼル車からの撤退を表明したのは初めて! | 日本経済新聞 https://t.co/fQpMiutwMo
— CarBiz & CarLife (@CarBiz_CarLife) September 24, 2018
これまで欧州勢はディーゼルエンジンに注力してきておりハイブリッドはあまり重要視してこなかったのですが、数年前に起こったディーゼルエンジンの不正事件をきっかけに大きく方針が変わりました。
その流れにいち早く対応したのがポルシェで、ディーゼルエンジンをやめて電動車に注力するようです。
ポルシェのハイブリッド車の種類・ラインナップ
ポルシェの現行ラインナップにハイブリッド車はパナメーラしかありませんが、パナメーラハイブリッドには2モデルの設定があり、スペックには大きな違いがあります。
車名 | 駆動方式 | エンジン | カタログ 燃費 | 最高出力 | 最大トルク | 価格 |
パナメーラ 4E ハイブリッド | 4WD | 2,894cc V型6気筒 ツインターボ | – | 330ps(243kW)/ 5,250-6,500rpm | 45.9kgf・m(450N・m)/ 1,750-5,000rpm | 14,360,000円~ 15,580,000円 |
パナメーラ ターボSE ハイブリッド | 4WD | 3,996cc V型8気筒 ツインターボ | – | 550ps(404kW)/ 5,750-6,000rpm | 78.5kgf・m(770N・m)/ 1,960-4,500rpm | 28,310,000円~ 30,440,000円 |
パナメーラのハイブリッドには2種類のエンジン仕様があり、4Eハイブリッドの方は3.0L V型6気筒ツインターボエンジンという、国産車ではハイスペックのエンジンです。
300馬力超えの出力と45kgfというトルクはスポーツカーとしてみても遜色ないものです。そこにさらにモーターのスペックが加わることでかなりの走行性能を持つのですが、それでもプラグインハイブリッドですのでモーターだけで走行する際にはラグジュアリーカーの上質感を持っています。
もう一つのターボSEは更に強力なエンジンが組み合わされており、ハイブリッド車とは思えないほどの出力とトルクを持つ4.0L V8ツインターボエンジンとなっています。
エンジン出力だけでも世界のスーパーカーと戦えるほどのスペックですが、この性能でプラグインハイブリッド車とはかなり攻めた仕様といえるでしょう。
この2モデルはエンジンは違いますがハイブリッドシステムは同一で、1モーター2クラッチシステムがエンジンとトランスミッションの間に搭載されています。
なおパナメーラのプラグインハイブリッドは日本では燃費性能が公表されていませんが、前述した通り15km/L近い燃費性能があるようです。
ですがプラグインハイブリッドなので、充電によるEV走行を多用すればそれだけ燃費は伸ばすことが可能です。
今後発売予定のポルシェのハイブリッド車
ポルシェは前述したように今後ハイブリッド車や電気自動車を重視する戦略を立てており、ハイブリッド車やプラグインハイブリッド車、EVが増えていくことが予想されます。
ただ現時点ではEVではいくつか開発予定の情報があるのですが、ハイブリッド車に関してはあまり目立った動きはないようです。
そもそもポルシェは車種自体が少ないですし、パナメーラ以外の半分はスポーツカー、半分はSUVと、そこまでハイブリッド化する車種ではないのです。
ポルシェ最小の車はクロスオーバーSUVのマカンですが、こちらにはEVの開発計画が上がっているようで、ハイブリッドはまた別となるでしょう。
ただパナメーラのプラグインハイブリッドは登場してまだ数年というところなので、今後も当分はラインナップに残っているでしょう。
ポルシェのハイブリッド車の理想的な運転方法・コツ
パナメーラのプラグインハイブリッドは充電を繰り返せば燃費が大幅に伸びるのですが、一方で日本国内で運用する場合には「急速充電」という機能が使えない点に注意しなければなりません。
急速充電は電気自動車などには必須の技術で、数十分という短い時間でバッテリーをフル充電することが可能なシステムです。
プラグインハイブリッドにも同様のシステムは搭載されていることが多く、長距離運転時などに利用できればEV走行距離をより延長することができます。
ですが欧州車に採用されている急速充電規格は、日本で普及している規格と全く違っており、互換性がないため利用できません。
急速充電器は現在欧州と日本で規格争いが起こっていることからこのような問題が起こっているのですが、まだ解決していないためどうしても利用は不可能です。
そのためパナメーラのプラグインハイブリッド車では100Vや200Vの普通充電しか利用できず、充電時間はそれなりに長い時間を見て置かなければならないでしょう。
とはいえガソリンさえ積まれていればエンジン走行で長距離移動はできるので、電気自動車のように移動できないという問題にはなりません。