トヨタ エスティマはミニバンの火付け役ともなった中型のワゴン車で、そのフォルムが特徴的な車です。
今回はそんなエスティマのデザインについてご説明します。
エスティマのデザイン
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トヨタ エスティマは1990年にトヨタが発売したMPV(マルチパーパスビーグル)で、後に「ミニバン」というカテゴリーが発展する元ともなった重要な車種です。
以前から乗用車のカテゴリーの中にはバンというタイプがあり、箱型の車で車内スペースを広く確保することを優先しており、おもに荷物をたくさん載せる商用車や多人数乗りのファミリーカーとして便利に使える車と言われていました。
昔はいわゆるキャブオーバータイプと呼ばれるバンが一般的で、運転席が車の一番前に位置してシートの下にエンジンが搭載されるタイプでした。
このキャブオーバータイプでは車の全長をフルに車室として使えるのでスペース効率に優れる半面、エンジンが車室の真下にあって車内にエンジンの騒音が直接伝わる、ドライバーの視点が高くなるなどのデメリットがあり、効率重視の商用車ならともかく乗用車としては残念な部分でもあります。
そこで初代エスティマはエンジンはキャブオーバータイプなものの搭載方法を工夫して高さを思いっきり減らし、乗用車とほぼ変わらない運転席の高さを持ち、車の全高を低く構えたスタイリッシュなバンが登場しました。
初代エスティマは騒音や乗り心地の面でまだまだ気になる部分は多かったものの、そのスタイルで一躍有名になり大人気車種になりました。
その後エスティマは2代目にフルモデルチェンジされてエンジンもFF式に変更され、まさに現在のミニバンの流れをくむ構造に初代エスティマから継承されたデザインコンセプトを盛り込んでいます。
エスティマはその後3代目として2006年にフルモデルチェンジを行いましたが、このモデルがエスティマとしては最終モデルとなりました。
今回はこの3代目エスティマのデザインについてご紹介していきます。
エスティマのエクステリアデザイン
エスティマのエクステリアデザインは初代エスティマが構成した「タマゴ型のボディ」というデザインコンセプトを継承しており、このスタイルこそがエスティマとなっています。
参考:gazoo.com
まず簡単に初代エスティマをご紹介しますが、初代エスティマのボディデザインは車のフロントからリアまでなめらかにつながるフォルムとなっており、横から見るとタマゴのような丸みを帯びたフォルムになります。
車の大部分をキャビンが占めているので車内が広々と確保されており7人〜8人もの大人数の座席と広い荷室を確保して、ファミリーカーとしてとても便利な車になっています。
一方で現在トレンドとなっているトールワゴンタイプのミニバンとは違って車高は低めに設定されており、スポーツカーのようなスタイリッシュなフォルムとなっています。
参考:gazoo.com
これに対して最終モデルとなった3代目エスティマは初代エスティマの面影を残しながら、よりパキっとしたメリハリのあるデザインになっています。
特に切れ長のヘッドライトはかなりシャープでカッコよく仕上げてあり、エンブレムのあるフロントグリルも小さくまとめて引き締まったフォルムが素敵です。
またエスティマの特徴であるボンネットからフロントウインドウ、ルーフまでひと繋がりになったフォルムは空力的にも優秀で、ミニバンながら走行時の安定性も高い車に仕上がっています。
参考:gazoo.com
エスティマのフォルムはサイドからリアまで一貫して統一感のあるラインで仕上がっており、特にウインドウの全体がブラックで統一されているため質感も高くなっています。
テールランプの形状もシャープでフロントマスクとの統一感があり、ミニバンながらカッコいいリアのフォルムに仕上がっています。
またエアロパーツなどもよく似合うフォルムに仕上がっているので、スポイラーやバンパー、スカートなどをスポーティに仕上げるカスタムにもよく適応しています。
エスティマは車高の高いトールワゴンではないので全体的なフォルムがスポーティで、実にスタイルはカッコいいミニバンです。
エスティマのインテリアデザイン
次にエスティマのインテリアデザインについてご紹介します。
参考:gazoo.com
エスティマのインテリアはスタイリッシュにまとまっている部分が多く、運転席や助手席周りのインパネがシンプルながら実にまとまりの良いデザインとなっています。
エスティマはセンターメーターレイアウトを採用しているのですが、左右に大きく丸く構えたセンターメーターはゆとりを感じさせるデザインです。
センタークラスターは比較的シンプルに仕上がっているものの、エアコンダクトやメッキパーツなどを適切に配して質感は高いです。
またインテリアの仕様によっては一部にウッド調のデザインを取り入れることもでき、高級感も十分です。
参考:gazoo.com
エスティマは車内に3列シートを装備したミニバンですが、乗車定員は7人〜8人となっており2列目シートによって乗車定員が変わります。
8人乗りでは2列目がベンチシート式の3人掛けですが、7人乗りではこの写真のように左右分割式のキャプテンシートになっており、非常に居住性と高級感にあふれた仕様となっています。
またシートの表皮には高級感のある本革シートも装着することができ、満足感は十分な車に仕上がっています。
一方で3列目シートが車の後部まであるのでこの状態でのラゲッジスペースはあまり広くなく、また車高が低いことで上下のスペースも確保されていないので、大きな荷物を載せるためには3列目シートの収納が必要です。
エスティマは現在トレンドの高級ミニバンというカテゴリーではないのですが、車内の質感はかなり高級感はあります。
エスティマのボディカラー
エスティマは既に生産終了した車種ですが、3代目エスティマだけのモデル期間で次のようなボディカラーが設定されました。
エスティマ(3代目) | ホワイトパールクリスタルシャイン |
シルバーメタリック | |
ミディアムシルバーメタリック | |
アイスチタニウムマイカメタリック | |
ブラック | |
スパークリングブラックパールクリスタルシャイン | |
ダークレッドマイカメタリック | |
レッドマイカメタリック | |
ボルドーマイカメタリック | |
ダークシェリーマイカメタリック | |
シルキーゴールドマイカメタリック | |
ダークブルーマイカ | |
ライトブルーマイカメタリック | |
グレイッシュブルーマイカメタリック | |
ライトパープルマイカメタリック | |
エスティマツートンカラー | ブラック & レッドマイカメタリック |
ブラック & アイスチタニウムマイカメタリック | |
ブラック & ダークシェリーマイカメタリック |
エスティマのボディカラーにはかなりカラフルなカラーが数多く用意されていますが、定番カラーと呼ばれるホワイト、ブラック、シルバー系のカラーは数色が継続して採用されています。
しかしそれ以外のカラーは頻繁に入れ替えが行われており、レッドやワインレッド、ボルドーなどの高級感のある赤色が意外と多く設定されていて鮮やかです。
その他にはブルーやパープル、グレーなどの淡いカラーも多いのですが、全体的に明るいカラーが設定されておりシックなカラーは少ないです。
さらにシルキーゴールドマイカメタリックは豪華な明るい金色のボディカラーで、数あるミニバンの中でもあまり見られない素敵なカラーです。
加えて3代目エスティマにはツートンカラーが設定されており、下側のボディ本体と上側のウインドウやルーフが別のカラーとなっています。
上側はブラックカラーで統一されていますが、下側にいくつかのボディカラーが設定されてそれぞれ独特のカッコよさがあります。
ツートンカラーは現在様々な車種で増えてきていますがエスティマの時代にはかなり珍しいカラー設定であり、エスティマのデザインと相まって非常にスタイリッシュです。
エスティマは人気か?
3代目エスティマは2006年にフルモデルチェンジされた車ですが、異例の長寿車種となっておりなんと2019年まで13年に渡ってラインナップされていました。
その間の年間の販売台数からエスティマの人気の推移を見ていきましょう。
エスティマ年間販売台数ランキング | 順位 |
2006 | 4位 |
2007 | 6位 |
2008 | 13位 |
2009 | 16位 |
2010 | 16位 |
2011 | 19位 |
2012 | 20位 |
2013 | 20位 |
2014 | 30位 |
2015 | 30位以下 |
2016 | 30位以下 |
2017 | 30位以下 |
2018 | 30位以下 |
2019 | 30位以下 |
3代目エスティマが登場した2006年当時はまだミニバン系の車種というと車高が低めのものが主流であり、その中でエスティマはかなりの人気車種でした。
2006年には4位、2007年には6位とかなりの人気を誇っていましたが、2008年頃から少しずつ減速してはいます。
それでも2014年までの8年間に渡って年間販売台数で30位以内には入っており、トールワゴン系ミニバンが主流となった2008年以降も定期的に売れ続けていたのはすごいです。
またモデル期間中に開発されたさまざまなトヨタの最新技術もエスティマには取り込まれており、特に安全装備の進化は2006年当時とは格段の差があります。
しかしエスティマがこれほどの長期間に渡って売れ続けていた理由はそのデザインに寄るところが非常に強く、登場から15年近く経過しているのに今でもカッコいいと感じるデザインの車というのはなかなかありません。
インテリアのデザインなどには少し古さも感じますがそれでもエスティマというスタイリッシュな車としてしっかりまとまっており、最新型のミニバンと並べてみてもエクステリアデザインはまだまだ魅力にあふれています。
3代目エスティマはそのモデル期間中に500,000台弱の総販売台数を達成しており、トールワゴン系でないミニバンとしてはかなり人気車種だったといって良いでしょう。
エスティマの評判
エスティマのデザインについてはtwitterにさまざまな評判が投稿されており、その中からいくつか意見をご紹介しましょう。
#現行ないマン
エスティマ伝統のワンモーションフォルムと威圧感のないデザインがお気に入りです(^^) 残念ながら新車販売は終了してしまいました。 pic.twitter.com/gwE0saO1mY— みっくん (@mi1_2bztak1783) October 15, 2021
こちらの方はエスティマが販売終了したことに残念がられていますが、デザインについてはお気に入りだったそうです。
威圧感のないデザインというのが今ではなかなか貴重な存在となっており、エスティマが長く愛された理由でもあります。
トヨタエスティマが生産中止?
この50系エスティマは、当時からすでに「デカいツラでやたら下品なメッキギラギラ」なミニバンが多かった中で、唯一【シンプルで知的】を感じさせてくれたグッドデザインだった。
ウインドウグラフィックも綺麗だ。
もうこういう顔は作ってくれないのかな。 pic.twitter.com/83hZa0IC6L
— 宮尾岳 (@GAKUJIRA) August 31, 2019
こちらの方もエスティマのデザインをとても高く評価されており、知的とまで評されていますね。
最近のミニバンではメッキパーツを多用した押しのつよいデザインがトレンドなのですが、エスティマのフロントマスクはそのトレンドとは違う方向性なので好感が高いのですね。
『みんなのためにエスティマを買いたい』的なことを家族に話したことがあるのですが、トヨタ車の中でもエスティマのデザインが大好きで、実は利便性というよりは玩具として一度は所有してみたいと思ってのことでした。
— CAP (@spacecraft_tw) June 23, 2020
こちらの方はエスティマの購入を検討されたようですが、なによりデザインが優先で実用性の面は2番目だったようです。
ミニバンとしての実用性ではトールタイプワゴンのほうがスペース効率は良いのですが、エスティマはなによりスタイリッシュなデザインが良いのです。
エスティマの欠点
エスティマは長年に渡って一定の人気をキープしてきた車でそのデザインのカッコよさには定評があるのですが、一方で次のような点が現在のトレンドとは少し外れており、販売台数の面では他のミニバンに及ばない部分でもあります。
押し出し感の強くないデザイン
エスティマのエクステリアデザインはスポーティでスタイリッシュなカッコいいものなのですが、現在のミニバンのトレンドとはデザインが外れており人気がいまいちな理由です。
ミニバンという車種はこの20年間国内では人気車種の一つとなっており、セダンやステーションワゴンなどを大きく超える車内スペースの広さを持つ快適性の高い車種です。
昔はワゴンということで大人しいデザインの多かったミニバンですが、ここ10年ぐらいは高級ミニバンが一躍大人気の車種になってきていて、圧倒的な広さと快適性、質感の高さで満足感を感じられる車がトレンドとなってきています。
その中でミニバンのエクステリアデザインも高級路線になってきており、特にフロントマスクのデザインが押し出し感の強い派手なものが好まれるようになりました。
特に同じトヨタで言えば大型ミニバンのアルファードや中型ミニバンのヴォクシーなどが圧倒的に人気なのですが、これらに共通するのはクセの強いフロントマスクデザインです。
これに対してエスティマのデザインは全体的にスタイリッシュにまとまっていることで高級感よりはスポーティさを感じるものであり、デザインコンセプトは真逆なことがわかります。
またエスティマのフロントマスクには派手な大型グリルや高級感を感じさせるギラギラなメッキパーツなどはなく、大型ミニバンと比べるとわかりやすいアイコンが少ないのです。
エスティマのそういった部分が良くて高級ミニバンよりも好きという方も少なくないのですが、国内市場で現在トレンドである方向性とエスティマのデザインにはどうしても乖離があるので人気という面で差があるのです。
ただしエスティマの基本デザインが2006年当時という古いものであるということが大きな理由ではあるのですが、一方で現在では珍しいデザインの方向性を持つミニバンであったことが異例の長寿車種になった理由でもあるでしょう。
トールワゴンに劣る車内スペース
エスティマのデザインでもう一つトレンドに合っていない点がミニバンとしてのスペース効率で、車高が低めのミニバンであるエスティマでは特に車内の上下サイズはそこまで大きくありません。
現在のミニバンのトレンドはトールワゴンタイプのミニバンで、車高が1,700mm〜1,900mmもあり、その高さは車内スペースの拡大に使われています。
トールワゴンタイプのミニバンの車内はとにかく天井が高くて解放感が高く、ただ乗っているだけでもゆとりを感じて快適なものです。
また大きな荷物を載せるためのスペースも上下方向に広くなっており、多人数乗りをしながら沢山の荷物も乗せられるということでファミリーカーとしては最高の車種なのです。
これに対してエスティマは車高が1,750mm前後の車で乗用車としてはそこそこ高めなのですが、ミニバンとしてみると現在のトレンドからは低めの車種になります。
車高が低いとデザインがスタイリッシュになったり空力特性が良くなって走りが良くなるなどのメリットはあるのですが、車内スペースの確保としてはトールワゴンタイプのミニバンには及びません。
現在のトレンドはミニバンはとにかく車内の広さが優先される傾向にあるので、エスティマでは不利な部分が多いのです。
エスティマの値段
最後にエスティマの新車販売時の価格と現在の中古車価格についてご紹介します。なお中古車価格については大手中古車情報サイトであるカーセンサーとgoo-netで調べています。
エスティマ | 新車価格 | 中古車本体価格相場 | |
エスティマ(3代目) | 2,667,000円〜5,235,055円 | カーセンサー | 100,000円〜3,590,000円 |
goo-net | 128,000円〜3,290,000円 |
エスティマは新車時の価格にはグレードによってかなりの価格差がある車種ですが、一般モデルの価格帯は2,600,000円〜3,500,000円ぐらいの車種となっており中型ミニバンと同クラスです。
ですがエスティマにはさまざまな特別仕様車や上級グレード等があり、その中には4,000,000円を超えるものや特別仕様車として5,200,000円程度まで価格が上がったモデルもあります。
ですがそれは一部であり、ある程度の質感の高さがあるモデルは4,000,000円弱で十分手に入りました。
中古車価格としては非常にモデル期間が長い車種ということで安い価格から高い価格まで幅広い中古車があり、最低価格はなんと100,000円程度から購入できる車種となっています。
ですが初期型の3代目エスティマは既に発売から15年程度経過しているかなり古い車となっているので、中古車としてのクオリティの見極めは重要です。
ですが最高価格帯では3,500,000円前後が最高額なので上級グレードのエスティマがある程度下がった価格で手に入り、現在であれば最終型などはまだまだ十分なクオリティが残っているので十分お買い得といえます。
エスティマのデザインは今でもスタイリッシュで好きな人にはたまらないものとなっているので、中古車として手に入れるのには現在はコストパフォーマンスがとても良い時期といえるでしょう。