ホンダ フィットはホンダのコンパクトカーで、扱いやすいサイズとハイブリッドモデルもある環境性能の高さが特徴です。
今回はそんなフィットのサイズ感で車中泊に向くかどうかを見ていきましょう。
フィットの車中泊に向かない点
ホンダ フィットはホンダを代表するコンパクトカーで、現行モデルで4代目となります。
フィットは軽自動車よりワンサイズ大きなコンパクトカーという幅広い層が扱いやすい車として登場し、利便性とコストパフォーマンスの高さで人気の高い車です。
4代目の現行モデルはつい最近の2020年にフルモデルチェンジを果たした新しい車で、外観サイズやデザインのブラッシュアップとともにハイブリッドモデルを強化するなどコンパクトカーとして高水準にある車です。
また近年人気が高いSUV風のデザインを持つ「CROSSTAR」もラインナップに追加され、デザイン的に押し出し感の強いモデルもあります。
そんなフィットですが、近年SUV人気の高まりとともに人気の出てきた車中泊については車のサイズ的にはあまり得意なモデルではありません。
車中泊は旅先で宿やキャンプなどで宿泊するのではなく車内で1泊を過ごす方法で、アウトドアやキャンプ需要が高まるとともに安価に過ごす手段として一般化してきています。
しかし車中泊にはある程度の車内の広さや、寝台となる車内のシートアレンジ、広さなどが必要で、コンパクトカーであるフィットでは難しい部分もあります。
そんなフィットが車中泊にあまり対応できてない部分を見るために、まずフィットの大まかなサイズをご紹介します。
スペック | フィット | |
価格 | 1,557,600円〜2,186,800円 | |
乗車定員 | 5名 | |
全長 | e:HEV CROSSTAR、CROSSTAR:4,090mm その他仕様:3,995mm | |
全幅 | e:HEV CROSSTAR、CROSSTAR:1,725mm その他仕様:1,695mm | |
全高 | FF:1,515mm〜1,540mm 4WD:1,540mm〜1,565mm | |
室内長 | 1,955mm | |
室内幅 | 1,445mm | |
室内高 | 1,260mm | |
ラゲッジルーム | 高さ | 840mm |
幅 | 1,000mm | |
奥行き | 650mm | |
運転席寸法 | 高さ | 約1,200mm |
幅 | 495mm | |
奥行き | 約900mm | |
助手席寸法 | 高さ | 約1,200mm |
幅 | 495mm | |
奥行き | 約900mm | |
後席寸法 | 高さ | 約1,200mm |
幅 | 1,250mm | |
奥行き | 約900mm |
フィットは外観サイズとしては全長が短めの小型車で、およそ4,000mm前後という扱いやすいサイズとなっています。
一方で全幅は1,700mm前後と比較的ワイドであり、外観サイズに規制のある軽自動車と比べると全長および全幅でゆとりのあるサイズとなります。
全高などは従来のコンパクトカーと同じく低いスタイルで、近年人気のあるトールサイズワゴンとは違います。
車内のサイズについては室内長、室内幅ともに一般的なコンパクトカーのサイズで、広々としているわけではありませんが必要十分なサイズといえます。
またラゲッジスペースもそれなりに奥行きのサイズが確保されており、普段使いのラゲッジスペースとしては十分なサイズでしょう。
しかし車中泊となるとこの車内のスペースでは不足している部分も多く、コンパクトカーということで車中泊というシーンを考慮した車ではないので仕方ない面もあるでしょう。
車内のフルフラットモードではサイズが狭い
まずフィットが車中泊に向いていない点としては車内のシートアレンジにあり、寝台となるスペースが少ない点が何より問題です。
フィットは前席と後席の2列シートを持つ車ですが、車内のシートアレンジはいろいろなモードがとれます。
その一つにフルフラットモードがあるのですが、これはフィットの後部座席を前側に収納することで、ラゲッジルームの床面とシート背もたれの背面をフラットにするモードです。これは主にラゲッジルームの拡大に使われるもので、大きな荷物を載せる際に便利です。
また長い荷物を載せるときなどはさらに助手席の背もたれを後側に倒すことで、ほぼ車内の全長をラゲッジルームとして使うことも出来ます。
しかし助手席まで倒すモードでは背もたれはリアシートの上に一部乗っかるような形になるので、完全なフルフラットではなく段差の多いものとなります。
その状態ではとても車中泊をする構造ではないので、フィットで車中泊をしようとすると助手席は使わず後部座席とラゲッジルームの間のフラットな空間を使うことになります。
ですが後部座席のスペースとラゲッジルームの奥行きを合わせても1,600mm弱の奥行きしか取れず、体の小さな人ならともかく成人男性では寝れるスペースではありません。
それでもなんとかそのスペースで寝るためには車の前後方向ではなく斜め方向に寝ることはでき、対角線上であればなんとか1,700mm〜1,800mmぐらいのスペースを作り出すことが可能でしょう。
車中泊が可能なのはせいぜい1名まで
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フィットでなんとか車中泊をしようとするとフルフラットなスペースを斜めに使わなければならないのですが、そうすると当然ながら一度に寝れるのはせいぜい1名までとなります。
車中泊を使うシーンというのは旅行の際がほとんどであり、遠くへの旅行やキャンプ、アウトドアなどとなります。
そうなると殆どの場合は何人かで一緒に行くことが多くなりますが、車中泊をするとなるとフィット1台では寝るスペースが少なすぎます。
つまりフィットで車中泊を前提とした旅行をするのは厳しい面が多いということで、あらかじめそれを考慮しておかないと旅先でトラブルとなることでしょう。
フィットで車中泊をするのはなんとか1名がギリギリなので、必然的に一人旅がメインとなります。
そういう使い方であれば車中泊は十分満足に過ごせますし、あらかじめ寝台をセットしておけば夜に寝るだけでなく道中で一時休憩するときなどにも使えるでしょう。
またもしドライバーも同乗者も身長があまり高くない方であれば横並びになんとか2人で寝ることができるかもしれないので、事前に寝るとどのぐらいのサイズ感となるかを確認することが重要です。
ラゲッジルームに段差がある
さてフィットは一応シートアレンジとしてはフルフラットモードがあるのですが、実際には完全なフラットではなく段差が一部にあります。
フィットはラゲッジルームの後方側はフラットなのですが、後部座席とつながる前側に多少の段差が生まれており、前側が高くなっています。
その状態で後部座席を収納すると、後部座席の背もたれの背面はその段差の上面とフラットになるので、ラゲッジルームの平面は多少低くなってしまうのです。
これはフィットがラゲッジルームの下側にハイブリッドモデル用の大型バッテリーやシステムを搭載しており、その搭載スペース確保のために段差がどうしても生まれてしまいます。
そのためフィットで寝台を作ろうとするとまっ平な寝台は作り出せず、車の前後どちらを前にするかによりますが頭か足が低くなってしまいます。
そうなるとなかなかきちんとした安眠ができるわけではなく、車中泊の快適性はあまりよくありません。
ただでさえ斜めに寝ることになるのが多いので、それに加えて段差があるというのは車中泊にはあまり向かないといえるでしょう。
しかしこれに関しては対策も可能で、後ほどご説明する車中泊用のマットなどを駆使して段差を吸収すれば快適な寝台は作り出せます。
ですが初めて車中泊をするときなどはそれがうまくいかないことも多いので、当初は寝づらくなる人もいるでしょう。
ラゲッジスペースが少ない
フィットの車内はなんとか車中泊をするためのスペースは確保できますが、そうなると後部座席とラゲッジルームは寝台でほぼ占有されてしまうので車中泊をする際の荷物置き場が少なくなります。
車中泊を前提として旅にいくときにも当然ながら荷物はいろいろと必要で、普通の旅行ならともかくキャンプやアウトドアではその荷物の量は多いです。
運転中はその荷物をラゲッジルームや後部座席のスペースに入れておけばよいのですが、車中泊をするときにはそれらの大きな荷物を別のところに置いて置かなければならずフィットの車内のサイズではなかなかそういったスペースもありません。
空いているスペースとしては寝ているスペースの空きスペースや、運転席、助手席などを使うことになります。
とはいえフィットの車中泊のシーンとしては1人旅がメインとなるので、荷物の量としては少なくすることも可能でしょう。
また運転席や助手席だけでなくダッシュボードの上なども活用すれば、それなりに荷物を載せておけます。
フィットで車中泊をする方法
フィットは車中泊をするにはあまり適さないサイズ感ですが、なんとか車中泊を行うには次のような方法となります。
車内レイアウトの変更
まずフィットで車中泊をするには寝台となるフラットな空間をつくるところから始まりますが、まずは後部座席の収納から始まります。
フィットの後部座席には後ろへのリクライニング機能はありませんが、その代わり前側への収納機能があります。
この機能を使うには後部座席に付いているレバーを操作するのですが、ほぼワンタッチで収納直前まで機能するのでとても楽です。
多少手でも位置の調整などが必要ではありますが、一度やり方を覚えてしまえば2度目からは悩むことはないでしょう。
後部座席の収納を行えばその状態でラゲッジルームとの間がほぼフラットとなり、前述した段差がある以外は寝台が完成します。
寝方としてはその寝台に対して斜めの対角線上に寝ると広さを最大まで活かせますが、できるだけ前後のサイズを広げるためには運転席および助手席を一番前までスライドさせてさらに背もたれも前に倒すと良いでしょう。
そこまでやっても成人男性などには多少窮屈なスペースにはなりますが、フィットクラスのコンパクトカーとしては頑張っているほうでしょう。
車中泊用のアイテムを活用する
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フィットの車内のサイズとしては斜めに寝台を使うことでなんとか寝れるサイズですが、それに加えてさまざまな車中泊用のアイテムを駆使すると快適さは増します。
まず車中泊に必須ともいえるアイテムが寝台に敷くためのマットで、スポンジやエアーマットなどさまざまなサイズのものがあります。
車のフルフラットモードはあくまでも荷室として使うものなのでその感触は固く、快適に寝るにはやはり布団となるマットが必要です。
フィットには専用の車中泊マットなどはあまりありませんが、汎用品でも十分使えるので車内のサイズに収まるものを選びましょう。
その他にフィットにはラゲッジルームに段差がありますので、その段差を吸収するための別のマットもあると良いです。
段差はいくら小さくてもマットだけで吸収するのはなかなか難しいので、底上げ用の別のマットやボードなどがあれば完全にフルフラットな寝台にすることができます。
段差吸収用のマットは市販品ではサイズが合わないことが多いので、自作するのも良いかも知れません。
それに加えて必要なのは車全体のウインドウを遮光するカーテンやボードで、車内で寝ているときに外から入ってくる光を遮断するためのものです。
これは意外と車中泊には見落としがちなものですが、車のウインドウにしっかりフィットするものでないと光が漏れてきて結構気になるものです。
車中泊には駐車場などの街灯や他の車のヘッドライトの光が入ってくるので、遮光のためのアイテムをしっかり揃えると安眠できるでしょう。
車中泊の際には換気を必ず行うこと
フィットなどのコンパクトカーで車中泊をする人には初めて車の中で一晩を過ごす人も少なくないでしょうが、その際に車内の換気を忘れる人も少なくないでしょう。
車中泊をするときには当然のことですが防犯的な面や虫などの侵入を防ぐために、車のドアもウインドウも締め切った状態で寝たいと考える人がほとんどでしょう。
それ自体は間違ってないのですが、実際にその密閉状態で一晩寝てみると、朝に起きたときに息苦しさを感じたり汗をかいていたりします。
これは寝台が悪いのではなく車内の二酸化炭素濃度が上昇しているためで、寝ている人の呼吸によって車内の空気を消費することで生まれています。
普通に家で寝ているときにはいくら締め切っていてもこういうことにはならないのですが、より密閉度の高い車の中では一晩でもそれなりに影響があります。
そこで車中泊をするときには車内の換気が必要であり、最も簡単なのは窓を少しだけ開けて寝ることです。
しかしそれでは虫が入ってきたり外の音が入ってきてうるさくなるので、最善の方法はエアコンを一晩中つけておくことでしょう。
ただ車のエアコンはエンジンをかけずに作動させるとバッテリーが上がる危険があるので、エンジンをかけっぱなしでアイドリング状態にしてからエアコンを動かしましょう。
その際には燃料切れにならないようガソリンの残量には気をつけて、タンクに余裕をもたせることを忘れないようにしましょう。
フィットの車中泊が快適な理由
さてフィットは車のサイズ感的には車中泊には向かない部分もありますが、一部適している部分も見受けられます。
車内にコンセントが設置できる(ハイブリッドのみ)
フィットにはバリエーションモデルとしてハイブリッドモデルがあるのですが、そのハイブリッドモデルは標準装備として車内にコンセントを設置することができ車中泊のときにはなかなか便利です。
フィットハイブリッドにはハイブリッドシステムを動かすための大型バッテリーなどのシステムが組み込まれていますが、その性能を活かして100Vのコンセントを車内の各所に設定できます。
フィットの標準モデルであるガソリン車では設定できないもので、車内で家庭用の電化製品が使えるといろいろな楽しみが増えるのでおすすめです。
しかし容量的にフィットハイブリッドのコンセントは100V 100Wまでなのであまり電力消費の多いものは使えませんが、それでもいろいろと楽しめるでしょう。
また車中泊の際には基本的にエンジンをかけっぱなしにしているのでバッテリーが上がる危険もなく、便利に使える装備です。
一人旅用なら価格が安価で入手しやすい
フィットは車中泊用の車としては不便な部分が多く大人数でのたびには厳しいですが、一人旅用の車として考えればコストパフォーマンスに優れた面はあります。
これまでコンパクトカーはコストの安価な面が最大のメリットであり、車内の広さやシートレイアウトの使い勝手などはとても車中泊ができるものではありませんでした。
しかしフィットを始めとする最近の車はかなり便利になっており、狭めとはいえフルフラットな空間が作れるのは大きなメリットです。
フィットはガソリンエンジンモデルなら1,500,000円台から、ハイブリッドモデルでも2,000,000には達しない価格帯から手に入れられますので、一人でレジャーやキャンプに使う車として購入するには十分ありでしょう。
一人旅なら荷物の量も控えめに過ぎますし、車中泊用のアイテムを揃えても余裕があり便利です。
車中泊にはいろいろなアイテムを揃えたり経験的にわかってくることも多いので、そのはじめの一歩としてフィットを選ぶのは悪くないでしょう。
フィットの車中泊の口コミ・評判
フィットで車中泊をするときの評判などはtwitterにもいろいろ投稿されているのですが、その中からいくつかご紹介します。
車中泊にFIT pic.twitter.com/jKBp5kif9k
— でるちん⊿ (@DL_ScuderiaSzk) September 26, 2020
こちらの方はフィットの車内でしっかり寝台を作って車中泊を行っていらっしゃいますが、斜めに寝ることなく前後でスペースが確保できたようですね。
助手席側にしっかり伸ばしてありますが、助手席がスポーツ用シートになっているにもかかわらずしっかりスライドできるようになっていて便利ですね。
軽自動車とかで助手席も倒してその上に布団敷いて車中泊する絵ちらほら見かけるけどあれちょっとやってみたさある
俺のFITじゃ出来ないんだよなぁ— クェーサー@免許マスター (@evo388140757) October 1, 2020
こちらの方もフィットで車中泊を考えていらっしゃいますが、コンパクトカーではなかなかフルフラットモードが出来ない車も多く大変な部分はあります。
最近は軽自動車でも車中泊を視野に入れた設計担っている車もあり、フロントシートもしっかり倒してフルフラットモードにできる車種が増えてきています。
総評
フィットはホンダのコンパクトカーのベーシックなモデルであり、車の外観サイズ、車内の広さ、燃費の良さなどがコンパクトカーとしては便利で扱いやすいスペックにまとまったバランスの良い車です。
一方で車中泊となるとなかなか特殊な車の活用シーンであり、近年盛り上がっているとはいっても専用の構造や装備はあまりないのは仕方ないでしょう。
しかしシートアレンジや車内の使い方を駆使したり人数を少なくするなどすればフィットでも十分に車中泊は可能なので、ひとまず車中泊もできる便利な車として考えるとよいでしょう。