クライスラー PTクルーザーは特徴的なデザインを持つアメリカ車で、日本にも輸入されたことがある車です。
今回はそんなPTクルーザーの故障に関してご説明します。
PTクルーザーの故障率
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クライスラー PTクルーザーは2000年から2010年まで生産された5ドアハッチバックカーで、日本にも正式に輸入されたことのある車です。
PTクルーザーの最大の特徴はそのデザインにあり、1930年代の同社の名車である「エアフロー」を彷彿とさせるレトロフィーチャーなデザインをしています。
一方で車のベースは当時のクライスラーのセダンであるネオンなどと同じプラットフォームを採用しており、車両の性能やエンジンなどは当時の最新のものとなっています。
日本仕様も設定されたため正規輸入された車は右ハンドル車となっており、国産車より多少サイズ感は大きいもののその奇抜なデザインからコアな層に人気の車となりました。
現在では生産中止となり1代限りとなった車ではありますが、まだ走っている車を見かけることもあります。
そんなPTクルーザーの故障については次の点をもとに見ていきます。
クライスラーの自動車耐久品質調査
自動車の故障率というものは各自動車メーカーが独自に調査して情報を集めているのですが、この情報は社外秘の重要情報であり一般には公開されません。
そのため車の故障についてはメーカー以外の民間調査会社の情報を見る必要があり、その中で米国J.D.パワー社が公表している「自動車耐久品質調査」というものがあります。
この調査は各国市場で新車を購入したユーザーから購入3年〜5年の間に起こった不具合を聞き取り調査し、それをメーカーごとのランキングとしたものです。
この調査では車種単体の故障率や故障件数はわかりませんが、メーカーを比較して国産メーカーとクライスラーがどの程度の差があるかがわかります。
PTクルーザーは2010年までしか生産されていませんが、その当時の米国市場での調査結果が公表されていますので、こちらを参考にします。
ランキング | メーカー | スコア |
1 | ポルシェ | 110 |
2 | リンカーン | 114 |
3 | ビュイック | 115 |
3 | レクサス | 115 |
5 | マーキュリー | 121 |
6 | トヨタ | 128 |
7 | ホンダ | 132 |
8 | フォード | 141 |
9 | メルセデス・ベンツ | 142 |
10 | アキュラ | 143 |
業界平均 | 155 | |
19 | クライスラー | 166 |
この当時はランキング上位にはポルシェと米国メーカーがランクインしていますが、日本メーカーではレクサスが3位につけています。
それに対してクライスラーは19位と下位につけており、全体の不具合件数を平均した業界平均スコアを下回る結果になっています。
一方で国産メーカーの殆どは業界平均より上に位置しており、このことからクライスラーは全体的に日本車よりも故障が多いといえます。
日本市場でのこの調査は当時行われていませんが、日本に導入されたPTクルーザーは基本的に米国仕様と同じですので、全体的な不具合の状況も同様に考えればよいでしょう。
PTクルーザーの信頼性評価
J.D.パワー社は自動車耐久品質調査とは別に車種ごとの様々な評価も公表しており、米国市場メインではありますが信頼性評価も公表しています。
PTクルーザーも2010年の信頼性評価が公表されており、故障件数や故障率などの数字は公表されませんが、星の数で評価が出ています。
参考 2010 Chrysler PT Cruiser Reliability & RecallsUS News & World ReportPTクルーザーの信頼性評価結果は星3点となっており、評価としては平均的な数値になっています。
それに対して米国の日本車各社は星4点〜4.5点の車が多く、この調査でも国産車に比べると信頼性で一歩劣ることがわかります。
ですがPTクルーザーは前年、前々年とももっと高い評価は受けており、周りの車の評価が相対的に高まったことによる平均点の上昇が星3点という結果になったのでしょう。
中古のPTクルーザーの故障しやすさ
PTクルーザーは現在では中古車としてしか入手することはできませんが、PTクルーザーのような特徴的なデザインの車は他にないこともあり、まだ一定の人気があります。
ですが輸入車は国産車よりも一般的に信頼性が低い傾向があることから、中古車に関しても故障の多さは気になる点です。
国産車の場合は車の寿命として考えられているのが年式10年以上もしくは走行距離100,000km以上というものがありますが、それに対して輸入車は年式5年以上もしくは走行距離50,000kmを越えたあたりから故障が増加する傾向にあります。
そのため輸入車は国産車以上に年式と走行距離が気になるわけですが、PTクルーザーの場合すでに生産終了から9年近く経過していることもあり、全ての中古車は年式9年以上の古い車となっています。
また走行距離に関しては中古車によって状況が違いますが、年10,000km程度を乗った車であれば既に走行距離が100,000kmに近い車も少なくありません。
つまりPTクルーザーの中古車は現在故障の発生する可能性が高い車が多いといえ、国産車の同程度の中古車よりも今後の維持費などが高くなることが考えられます。
また樹脂部品などは10年近く経過したことで経年劣化がかなり進んでおり、色が変わったり強度が低下して破損することも多くなるでしょう。
PTクルーザー オーナーの評判
PTクルーザーに関しては今でも愛好して乗っている方も多いのですが、その故障に関してもかなり沢山の評価がTwitterに投稿されています。その中から3点ご紹介しましょう。
昔、色気出してクライスラーのPTクルーザーで配達してたんだけど故障多過ぎてビジネスユースで使える車じゃなかった(^^;)(笑)もう懲りたっすよ!1ミリもモテなかったしwww
— はなお (@ULI8783) June 14, 2017
PTクルーザーはその特徴のあるデザインから見た目を重視するビジネスユースで考えた方も多くいらっしゃいましたが、この方のようにあまりの故障の多さに不便だったということもあるようです。
ビジネスユースではとにかく走行距離が多くなる傾向にあり車の劣化も早いので、もともとの信頼性が低いPTクルーザーでは厳しいでしょう。
僕もプロボックス買うときに悩んだのがPTクルーザー。けど、ミッションが壊れやすくて修理にもう1台買えるぐらい用意しとかんとあかんと言われてやめた。ちなみにその個体は既にパワーウィンドウ故障ハッチバック勝手に落ちてくる等々既にワケアリでした
— へる@genocide (@uranium6699) December 14, 2018
こちらの方もビジネス車としてトヨタのプロボックスかPTクルーザー化で悩まれたようですが、やはり問題は故障でありプロボックスを選ばれたようですね。
しかもPTクルーザーは既に故障のある状態であったそうで、古くなったPTクルーザーの中古車はこういった状態の車も少なくありません。
PTクルーザーほすぃなぁ。でも、故障が多いらしい。
うーーん。買っちゃおうかなぁ。— うたた寝。新人気分de! (@de97451417) January 26, 2015
こちらの方は2015年にPTクルーザーを検討されているのですが、故障の多さの評判にもかかわらず欲しいとおっしゃっていますね。
故障が多いというのは車を選ぶ上では大きなデメリットなのですが、それを超える魅力がPTクルーザーのデザインにはあるのです。
PTクルーザーの故障事例
PTクルーザーの故障事例はいくつもあるのですが、その中から代表的な故障事例をご紹介します。
パワーウインドウの窓落ちトラブル
パワーウインドウは窓ガラスを電動で上げ下ろしをするシステムですが、窓落ちはこのパワーウインドウが下がったまま上がらないトラブルのことを指します。
窓落ちトラブルは経年劣化によってパワーウインドウを動かすパワーウインドウレギュレータが故障することで起こるのですが、特にパワーウインドウレギュレータを構成する電動モーターや樹脂部品などが破損することで起こります。
国産車でも古くなるとパワーウインドウレギュレータは故障しやすい部品ではありますが、PTクルーザーのような輸入車はもっと早い時期に故障することが多いです。
PTクルーザーは既に殆どの車が経年劣化が激しい状況にあるので故障しやすい箇所であり、前述のツイートにあったように故障した状態で売られている場合もあるようです。
修理にはパワーウインドウレギュレータの交換が必要で、費用は100,000円〜200,000円程度が必要です。
ですがPTクルーザーは生産終了からそろそろ10年となるので部品も少なくなってきており、今後は厳しい状況が続くでしょう。
サンルーフからの雨漏り
PTクルーザーの仕様にはルーフにガラスが入っているサンルーフが設定されている車がありますが、その部分から雨漏りが起こって室内が濡れるというトラブルが起こります。
サンルーフははめ込み式にしても開閉式にしてもガラスとルーフの間に水密シールが入っているのですが、この水密シールの経年劣化によって密閉が保てなくなり雨漏りが起こります。
PTクルーザーはこの故障の報告が多いのですが、かつてこの部分のトラブルによってリコールなどを起こしており、もともと弱点部位の1つなのです。
現存する車はリコール対応によって修正品に変わっているはずなのですが、それでもトラブルが多いということは基本的な信頼性設計がまずかったのでしょう。
修理には水密シールの部品交換が必要になりますが、大きな部品なので修理費用は高額で100,000円前後は必要となるでしょう。
しかし最大の対応策は、なによりサンルーフ仕様のPTクルーザーを買わないことです。
エンジンからのオイル漏れ
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PTクルーザーのデザインはレトロなものですがエンジンに関しては当時の最新エンジンが搭載されています。
ですが海外メーカーのエンジンの信頼性は国産車に比べると低い面があり、とくにオイル漏れに関してはPTクルーザーでも多いトラブルとなります。
オイル漏れはエンジンの各部の合わせ目やホースの接続部分などオイルシールがされている箇所から漏れることを指しますが、始めはにじむ程度だったオイル漏れも時間が経つに連れてひどくなっていき、最終的にはエンジンからポタポタ垂れるような状況になります。
当然オイルの減少も問題なのですが、垂れたオイルが排気管などに当たって発火するなどのトラブルもあるので、オイル漏れはひどくならないうちに速やかに対処しなければなりません。
オイル漏れの修理はエンジンのオイルシールであるガスケット類やゴムホース類の交換が必要となり、一つ一つの部品代としては数万円程度のものです。
ですがオイル漏れの修理にはエンジンの分解を伴うことが多く、車からエンジンを下ろしたり分解することでの作業に要する費用が高く、トータルでは数十万円クラスになることもあります。
また一箇所だけでなく複数ヶ所でオイル漏れが起こることがありますので、それらをまとめて直すのはかなり大変です。
現存するPTクルーザーはこれらオイルシールの経年劣化が大分進んでいるはずなので、オイル漏れのトラブルは今後もかなり多くなるでしょう。
PTクルーザーは買っても大丈夫か?
PTクルーザーはその特徴的なデザインから現在でも魅力的な車のひとつで、中古車ショップなどで見かけたら欲しくなる人も多いでしょう。
しかし故障という観点からいうとPTクルーザーの現存車は状態が悪いと言ってもよく、今から購入したら故障は覚悟して置かなければなりません。
また故障も一箇所だけではなく様々な箇所に起こることが予想されますので、維持費もかなりかかってきます。
それでもPTクルーザーが欲しい!という人もいらっしゃるでしょうが、想像以上に大変な事態が多いので、車にかけられる費用をしっかり確保できる人にしかおすすめできません。